白い砂浜。コバルトブルーの大海原。そして、そんな海に並ぶ、空母の数々。
ここはニュクスが作った島……の、地下にあるプライベートダンジョンの海エリアだ。
「いやプライベートダンジョンってなんだよ! プライベートビーチ的なのりか!? アホか!」
「先輩! 落ち着いてください!」
叫ぶ私の隣で文ちゃんが宥めてくれる。本当に、私にはもったいないぐらいの後輩だよ。
さて、このダンジョンだけど、ニュクスが作った島の地下にあるダンジョンだ。最初は無骨なただ広いだけの部屋で、かつて討伐軍だった人たちが集められていた場所だけど……。今ではご覧の通り、ちょっと広めの島に広い海、というエリアになってる。
ちなみにここは三階層で、二階層はキャンプができる森、一階層は日光浴でのお昼寝が気持ちいい草原だった。なにやってんだあの子。
「ほらほら、先輩。ニュクスさんを見て落ち着きましょう」
「どでも! がわいい!」
「余計にひどくなった……」
空母を隅に押しのけて、ぷかぷか浮かぶニュクスがいる。浮き輪でぷかぷか浮かぶニュクス。とてもかわいい。ちなみに私たちも水着姿だ。
ぷかぷか浮かぶニュクスを眺めていたら、不意にニュクスが海に潜っていった。そして出てきたかと思えば、何故か大きな魚を引っ張ってきた。
魚……。いや、魚か? クジラだけど。
「お姉ちゃん! でっかいお魚!」
「戻してきなさい」
「はーい」
どこから連れてきたんだあの子は。それとも、クジラを参考にした魔物だったりするのかな。私には分からない。
クジラっぽい生き物を海の向こうに放り投げて、ニュクスが戻ってくる。どことなく晴れやかだ。私はそろそろ怒ってもいいと思う。
「あのね、ニュクス」
「なあに?」
「なんでこんなダンジョン作ってるの……?」
「最初のダンジョンは人がいっぱいだから……」
「あー……」
そうなんだよね。連日大賑わいだ。これが全員命がけとかだったらまた話が変わったのかもしれないけど、安全に観光もできちゃうからね。そんな人も多い。だから、本当に大賑わい。
そんな状態だから、魔石も大量に持ち込まれてるらしい。他の国への輸出も始まってるらしいけど、一部の国にはかなり高い値段で取り引きしているのだとか。
一部の国、というか、討伐軍に関わった国だけどね。自業自得です。
討伐軍のあの後は、結構悲惨なものだった。クーデターとか起きた国とかもある。まあ、私たちには関係ないけど。
ともかく。ダンジョンの人混みが嫌になってきたから、こうして私たちだけのダンジョンを作ったとのことだった。
「私も正直入りづらいと思っていたから、ちょうどいいけどね」
「魔物とも戦えるよ!」
「それはいいです」
別に戦いたいわけじゃないから。文ちゃんも苦笑いだ。
泳ぐことに満足したニュクスは、お昼ご飯を用意し始めた。バーベキューの用意を簡単に済ませて、網でお魚やお肉を焼き始める。いつものマイペースだ。
「ドラゴンのお肉だよー」
「ドラゴンのお肉!?」
なにそれ気になる!
焼き上がったのを食べた感想は、肉汁溢れる柔らかなお肉でした、とだけ。本当に美味しかった。
そうしてバーベキューを満喫して、森に戻ってキャンプの準備。晩ご飯はカレーを作るらしい。それに、飯ごう炊さんも。テレビで見たものをどんどんやりたがってる。子供かな? 子供だね。
私はそんなニュクスの様子に思わず笑みを浮かべて、そして、
「あ、そうだ。そろそろ新しい土地を使いたいんだよね」
そんなことを言われてしまって、思わず頬が引きつった。文ちゃんも絶句してる。
「新しい……土地……?」
「うん」
「何するの?」
「魔物育成とか、楽しそうだなって!」
ニュクスが言うには、人に懐きやすい魔物がたくさん生息する地域を作って、その場所でのみ魔物を捕獲したり戦わせたりできるようにしたいらしい。どこかのご長寿ゲームを思い出してしまう。いや、似たようなゲームは結構あるんだけど。
でもそれをリアルでやろうとするとは思わなかった。
「もちろん、安全性には配慮するよ。魔物は外に連れ出せないようにするし、地域内でも魔物の攻撃は人に届かないようにする。安心安全!」
「そ、そっかー……。えっと、また日本で?」
「んーん。次は、そうだねー……」
そうして、ニュクスが候補地として出した国は、かつて討伐軍に関わった国の一つだった。
これ絶対に断れないやつだ。唯々諾々と従いそう。それを狙っているのかもしれないけど。
「ニュクス……。一応、ある程度加減してあげてね……?」
「うん!」
分かってるのかな本当に。
ニュクスは楽しそうに頷きながら、さっと服を着替える。いつもの、侵略者としての服装だ。そうしてから、ニュクスはこほんと何度か咳払い。
これは、あれだね。侵略者ムーブの準備だね! 正直配信で素を出しまくっていたから、もう意味がないと思うんだけどね!
「まだまだ振り回されそうですね……」
そんな苦笑いの文ちゃんに、私も同じ表情で頷いてしまった。
ずっとたった一人でさまよっていたニュクス。ここに来て、たくさん笑っているけど、かつてはどうだったんだろう。分からないけど、せめて私と一緒にいる間は、たくさん遊んで笑ってほしいと思う。
そのためなら、多少の無茶は受け入れるつもりだ。多少は、だけどね。
ニュクスが杖を軽く叩く。するとかつてのあの時と同じように、目の前にニュクスが現れた。きっと、地球上にいる全員の目の前に現れているはずだ。
今頃、首相さんとかは胃薬を飲んでいるだろうけど頑張ってほしい。申し訳ないけど、私は最終的にはニュクスの味方だからね。
だから。
「こんにちは、人類諸君。私はニュクス。侵略者である」
今日もニュクスと一緒に、好き放題やらせてもらおう。
「まずは東の国をもらい受ける」
「いやなんでだよ!」
「いたい!」
チョップ! チョップだ! おばかめ!
好き放題やるけど、いい加減そろそろ怒られないようにしてほしいなと思いました。本当に。
「えへへ……」
…………。もしかしたら、これもわざとなのかな……?
まあ、でも。ニュクスが楽しそうならそれで良し、だ。今日もある程度、好き放題やらせてもらおうね。
了
本作はこれにて完結となります。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
書こうと思えば続きも書けますが……。ひとまずは、ここまでということで。
お姉ちゃんに甘える超越存在を書きたかったので、楽しく書けました。
最後に、面白いと思ってといただけたのなら、
お気に入りや評価などいただけると嬉しいです。
励みになりますので、よろしくお願い致します……!
ここまで読んでくれた皆様、ありがとうございました!
それではまた……。