侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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この親にしてこの子あり

 

 そして私は、とんでもないことを失念していました。

 

「彩花……これは、どういう……」

「え、と……」

 

 そう。両親の! ご帰宅です! 当たり前だよ私だって両親がいるよ!

 ちょっと急いだように、いつもより早く帰ってきた両親。私は特に気にせずに二人を出迎えて、どこか安心した様子の二人をリビングに招き入れて。

 そして二人は、部屋のど真ん中に立っているニュクスを見て絶句していた。

 

「これは、その……」

 

 いつもより早く帰ってきたのも納得だよ! 二人もニュクスのあの姿を見ていたんだから、早く帰ってくるに決まってるよ! 最初にニュクスが現れた時に会話したのが私だっていうことも、両親は当然知ってるわけなんだし!

 お互いに無言で見つめ合うニュクスと両親。ニュクスは冷めた目で二人を見て、そして言った。

 

「私は侵略者である」

「……っ!」

 

 両親が、萎縮するように身を縮める。それを見て、私は思わず言ってしまった。

 

「ニュクス。晩ご飯いらないの?」

「それは困る……。その、初めまして。ニュクスです」

 

 威厳威圧感その他もろもろたっぷりだったのが、あっという間に霧散しました。かわいいニュクスのできあがり。

 

「え? え?」

「居候します」

「居候するの!?」

 

 なにそれそこは初耳なんだけど!?

 

「だめなの?」

「だめじゃないよ!」

 

 この子はうちの子だー!

 

「どうしよう敬子さん。俺たちの娘がおかしくなった」

「あらやだ政人さん。最初からでしょ?」

 

 おいこらお母さん。さすがにそれは聞き捨てなりません。仮にも自分の娘を頭おかしいって失礼じゃないかなあ!?

 ただ二人もさすが私の両親と言うべきか、なんかあっさりとニュクスのことを受け入れてしまった。とりあえずしばらく滞在するということだけ理解したみたい。

 いや、それどころか。

 

「いやあ、嬉しいなあ! 彩花がお友達を連れてくるなんて!」

「しかも居候! お泊まりよ政人さん! 今日はお寿司をとりましょう!」

「そうだね良い寿司とろうじゃないか!」

「カレーの匂いもわからんのか!」

 

 それはもう嬉しそうに電話に手を伸ばす二人の頭を叩いて、リビングの椅子に座らせる。二人は侵略者であることよりも、私が友だちを泊まらせるという方が重要らしい。

 今までなかったから、というのは分かる。分かるよ? それでもちょっと、こう……。もうちょっと何かないのかな……。

 ニュクスですら、両親の様子に頬を引きつらせてる。さすがにこんなにあっさりと受け入れられるのは予想外だったらしい。私だって予想外だよ。

 

「カレーもうすぐできるから、自己紹介でもしておいてよ……」

「自己紹介! そうだね! 忘れていた!」

 

 テンション高いなあ……。

 キッチンに戻って、器にご飯とカレーをよそう。そうしている間にも、三人の声が聞こえてくる。

 

「僕は望月政人。彩花の父親だよ」

「敬子、母親です。よろしくね?」

「ニュクス。侵略者、です。えと……」

「この子かわいいよ敬子さん!」

「かわいいわね政人さん! うちの子にしちゃいましょう!」

「そうしよう!」

「あわわわわ……」

 

 おお、すごい、ニュクスがたじたじだ。私の両親、やばくない? 主に頭が。

 

「はいはい落ち着いて。心配しなくてもこの子は私の妹になりました!」

「なるほど!」

「でかしたわ!」

「ええ……」

 

 カレーを並べながら言うと、両親から絶賛された。そうだろうそうだろう、褒め称えたまえ。ニュクスはどん引きしないでください。現実に引き戻されてしまうので。

 カレーライスを並べ終えて、改めて食卓につく。私とニュクスが並んで座る。それじゃあ、手を合わせて。

 

「いただきます」

「え、と……。いただきます?」

 

 ニュクスも私たちを真似してくれた。多分まだ意味は分かってないと思う。

 それじゃあ、カレーを一口。うん。美味しく作れたと思う。いくつかのカレールーをちょっとブレンドしただけだけどね。私のお気に入りだ。

 今回はニュクスも食べるので、お肉をちょっと多めにしてある。もちろんじゃが芋とかも入ってる。反応は、どうだろう?

 ニュクスを見てみると、一心不乱に食べていた。勝った。

 

「どう?」

「すごく……美味しい……!」

「あはは。よかった。でも、他だと料理とかってないの?」

 

 ニュクスはいろんな星に行っているみたいだから、きっとすごい料理のある星もあると思うんだけど。そんな期待をこめて言ってみたんだけど、ニュクスは気まずそうに顔を逸らしてしまった。

 

「その……」

「うん」

「私は、食べなくても平気だから……」

「…………」

 

 つまり、あれか? この子は食べなくても平気だからって、今まで料理とかほとんど食べてこなかったってことか? それは……それはだめでしょ。

 

「食事をしないなんて人生を無駄にしてるよ」

「そこまで!?」

「食事は生活の糧だからね。それを疎かにするなんて認められないな」

「ええ!?」

「決めたわ。あなたがここに住むなら、一日三食絶対に食べてもらうから」

「ええ……」

 

 うん。私も同じ気持ちだよ。でもね、お母さん。なんだか偉そうなこと言ってるけどさ。

 

「晩ご飯を用意するのは私なんですが?」

「…………」

 

 おい目を逸らすな。いや、やるけどさ。喜んでやるけどさ!

 

「ともかく! ニュクスには美味しいご飯とおやつを食べてもらう! これは決定です!」

「えと……。はい……」

 

 絶対に私は譲らないからな! ニュクスの胃袋を掴んでやる! 覚悟しろ!

 なんて言ってみたけど……。ニュクスに胃袋とかあるのかな? ちょっとだけ疑問に思いました。変な答えが出てきたら怖いから聞かないようにしておこう。

 

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