まだ原作主人公のイッセー視点です。
Life0. 俺が悪魔になった理由
俺、兵藤一誠は私立駒王学園に通う高校二年生。人並みに青春を謳歌している俺にも
ついに待望の彼女ができました! 名前は天野夕麻ちゃん。とってもカワイイ!
今なら断言できる、今が人生で最大級に至福の時だと!
そんな彼女とのデートを明日に控え、気が気でもいられないところにこいつらはやって来る。
松田と元浜。俺のダチだ。この二人、相当なスケベだ。俺もなんだけどね。
だが俺は、こいつらとの決定的な違いを持っている。そう、彼女がいることだ!
ああ、なんて心が晴れやかなんだろう。この幸せをこいつらにも分けてやりたい!
そう思って、俺は写真を二人に見せてやることにした。
ありえない! そんな顔をしている二人とは裏腹に、ちょっと怖い目つきで見ている奴がいる。
宮本成二。俺はセージと呼んでる。こいつも俺のクラスメート。
元浜がカツアゲされてるのを助けて以来、時折俺達とも話している。
その一件以来「駒王番長」とも呼ばれ、様々な噂が立ち密かに注目株らしい。
マスコット枠の1年の塔城小猫ちゃんやイケメン枠の2年の木場。
そしてなにより学園の二大お姉さまこと3年のリアス・グレモリー先輩や
姫島朱乃先輩ほどじゃあないが。
エロ談話には食いつきが悪いが、俺は知ってる。
コイツはコイツでこっそりエロ本買っているのを!
と言うか、男子高校生たるものエロ本を買わずしてなんとする!
そういえば、つい勢いで彼女いない軍団に入れちゃったけど、セージは彼女いるんだろうか?
そういう話はセージから聞いてないしなぁ。
「兵藤、今朝のニュースじゃ明日は晴れって言ってたが
明日のデートに雨具とヘルメットは用意しとけよ。
お前さんに彼女が出来るなんざ、嵐か災害の前触れだからな」
コイツは変なところで真面目だ。絶対にこういう場所でエロ談話をしないし
俺のこともいつまでたっても苗字呼びだ。
そして、こんなふうに時々イヤミを言う。ちくしょう、お前だってイケメン枠じゃないくせに!
それと松田と元浜、笑うんじゃねぇ! 元浜は何かセージと話してるみたいだし
俺は松田に狙いを絞ってネックハンギングを仕掛けようとしたところで、SHRの鐘が鳴る。
畜生おまえら、覚えてろよ。
――――
「兵藤。お前このあと時間があるか? 明日のプランについて、俺なりに穴場を教えてやる。
こう見えても、この街の人気スポットや穴場には詳しい」
珍しいな、セージの方から誘ってくるなんて。確かにコイツは原付持ちだし
色々回ってるから詳しそうなイメージがあるし、なにより松田や元浜には
デートについては何も期待できない。やっぱセージ彼女いるのかな?
二つ返事で返そうとしたところ、どこから聞きつけてきたのか
俺達の話に難なく入り込める唯一の女子、桐生藍華が乗り出してくる。
「え? なになに、アンタデートに行くの? ふっふっふ、だったらこの私が――」
「すまない桐生さん。それはまた今度にしてくれ。ま、そのうち別の機会もあるだろ……多分」
おいセージ、多分ってなんだよ多分って! それはあれか!
俺が初デートで夕麻ちゃんに振られるの前提で考えてないか!?
だからそういう話振ってきたのか!? だったら悪いが――
「あー、そうじゃないんだ。せっかくの初デートで、何より兵藤はデート経験ゼロだろ?
だったら、下手に女性意見を取り入れるよりは、思い切って男の意見で行ってみたらどうだって
話をしたいんだ」
納得されてる。っつーか、デート経験ゼロってなにげに酷いこと言ってないかセージ。
事実だけどさ。事実だけどさ! あの桐生の食付き具合から考えて
こりゃ今度色々聞かれるだろうな。だったら精一杯惚気けてやるぜ!
気合を入れてる俺とは裏腹に、セージはいつもの仏頂面でカブにまたがっている。
ヘルメットを投げよこしてくるって事は俺に乗れって事か。
何でかこいつ家近いくせにバイク通学なんだよな。だから番長とか言われるんじゃないか?
そうして俺達が向かったのは、街の中にある在り来りなハンバーガー屋だった。
「セージ、ここがデートスポットか? いや、高校生らしいっちゃらしいけどよ……」
「バカ言え。ここで話すんだよ。明日ここに来る来ないは兵藤の勝手だが
ちゃんと本命は用意してある。俺をなめるな」
さっきから思っていたが、やけにセージの口調が荒い。
そういえば、朝夕麻ちゃんの写真見せた時も変な顔してたしな。
……そうか。セージ、俺に嫉妬してるな?
それでいい加減なプランを提案しようとか考えてないだろうな?
だったら、さっさと帰って明日の準備を――
「俺に付き合ってくれた礼だ、バーガーセットくらいは奢ってやる。早く来いよ」
する前に貴重な意見を聞くのも大事だよな! 何てったって初デート! 失敗は許されない!
さあセージ、お前の屈託のない意見を俺に教えてくれ!
「そうだな。まず高校生って自覚を持て。学生デートなんだ、アホみたいに高いところや
洒落たところに行く必要はない。適当に洋服屋や雑貨屋、安いレストランに行って公園で解散。
これでいいんじゃないか?」
え? それでいいの? それなら遠出もしなくて済むし、そうすれば夕麻ちゃんと過ごせる時間も
その分長くなる!それに俺の財布のことまで考えてるなんて……
セージ、やっぱりお前に相談して正解だったよ!
それにバーガーセットまで奢ってもらえるなんて……セージ、今度から兄貴と呼ばせてくれ!
……あ、そっちのケはないけど。
セージに礼を言い、解散したあと俺は家に帰り、ひたすら明日のシミュレーションを重ねていた。
程なくして母さんが帰ってくる。聞けば、買い物中にセージに会ったらしい。
やれ若いのに大変ねぇとか、あんたにもこれくらいの甲斐性があれば……
とか言ってるが、大きなお世話だよ。明日のことで頭がいっぱいなのと
セージに奢ってもらったバーガーセットが原因で晩飯の味はよくわからなかった。
最も、母さんはそれを見越して作ってたみたいだけど(これもセージに聞いたらしい)。
その夜、俺は興奮して眠れなかった。
だって、明日は俺の記念すべき初デート! 興奮せずにはいられないッ!!
けど、寝坊するのもマズイよなぁ。目覚まし、よし!
俺の手持ちの目覚ましをフル動員して、準備万端よし寝るぞ!
……寝られねぇ。
結局、なかなか寝付けなかった俺は何とか遅刻せずに
寧ろ早く着きすぎてしまうことになってしまった。
そして、この寝られない夜が、俺の人間としての最後の夜だとは――
――この時は、俺自身にも想像できなかった。
――――
次の日の朝。いよいよ待ちに待った夕麻ちゃんとのデート。
興奮しすぎて早く来すぎてしまったが、なぁに些細なことさ。
いやあ、まさか「今来たところだよ」を言える日が来ようとは!
父さん、育ててくれてありがとう! 母さん、産んでくれてありがとう!
俺、兵藤一誠は今日、新たな道に足を踏み入れます!
などとにやけていると、向こうから夕麻ちゃんがやって来た。つ、ついに来た!
「ごめんねイッセーくん、待った?」
「いや、今来たところだよ」
言えた! 俺、言えたよ! 噛まずに言えたよ!よーし、今日は幸先がいいぞ!
さあ、目指すはセージが教えてくれたショッピングモールだ!
駒王町で一番大きいんじゃないかと思うショッピングモール。CMソングでも有名なところだ。
ここには食品や雑貨以外にも、フードコートやブティック、ゲームコーナー
それから映画館といろいろ入っている。
確かにここなら一日潰せそうだ。俺はセージに感謝しつつ、夕麻ちゃんの手をとって
ショッピングモールの中に足を踏み入れた。
デートは色々大変だった。お店の物を倒してしまったり、いきなり変なやつに絡まれたり。
けれど、夕麻ちゃんがいる手前かっこ悪いところは見せられない。俺は懸命に事態の収拾に乗り出した。
正直言ってすごく疲れたけど、夕麻ちゃんといられるならそれでもいい。
初めてのデートだ、絶対に成功させたい。おいしそうにデザートのパフェを頬張っている
夕麻ちゃんを見ていると、俺の苦労も吹っ飛ぶもんだ。
結局、俺たちは雑貨店やブティックを見ながら、ショッピングモールの中でその日一日を過ごしたのだった。
――――
夕方の公園。もうじき解散の時間なので、その前に夕麻ちゃんのリクエストでここに来る事になった。
おおっ! これはも、もしかして……ファーストキス!? お、俺、ついにやったよ!
ありがとうセージ! お前のおかげでデートは大成功だ! 明日松田や元浜にも自慢してやる!
「ねぇイッセーくん、お願いがあるんだけど……」
ああ、俺夕麻ちゃんのお願いなら何でも聞くよ! 何でも言ってよ!
――死んでくれる?
……え? ごめん、よく聞こえなかったんだけど。死んで……え?
夕麻ちゃん、そういう冗談言う子なんだ。ちょっとびっくりしたよ。
それに背中の羽やその手の光とか、すごい手が込んでる。
これ、あれだろ? ドッキリだよな?
そう言い聞かせる俺の頭は、目の前に飛び込んできたカブで現実に引き戻された。
「おい、何してんだてめぇら!!」
「……ちっ。何故邪魔が入ったのよ」
カブにのってやって来たのは、昨日俺にデートプランを教えてくれたセージだった。
何でここにセージがいるのか、そんなことを考える余裕なんか今の俺には無かった。
「いいから乗れ! 逃げるぞ!」
「ど、どういうことだよセージ、わけわかんねぇよ!」
俺はセージに投げよこされたヘルメットを言われるがままにかぶり
半ば強引に後ろに乗せられた。俺が乗ったのを確認すると
セージは公園の中だというのにお構いなしにカブを全速力で走らせる。
その後ろでは何かがはじけた音がする。も、もしかして夕麻ちゃんの仕業かよ!?
ど、どうなってるんだ!? 夕麻ちゃんは一体何をしようとしてるんだよ!?
「お、おいセージ、これ一体どういうことだよ!?」
セージに聞くが、返答は来ない。俺は、俺たちは一体どうなったって言うんだ!?
しばらくセージのカブは走り続け、また別の公園までやって来た。
俺はセージに水を貰い、呼吸を落ち着ける。セージの方も、冷静そうに見えるが
相当汗をかいているようだ。そりゃそうだ。あんなの、現実にありえるわけが無い。
「……一応聞くが、殺されるような覚えなんざあるわけないよな」
「あ、あってたまるかよ……な、なんでだよ……夕麻ちゃん、なんで……」
そうだ。何で俺が夕麻ちゃんに殺されなきゃならないんだ。
会って間もないし、今日初めてデートに行っただけなのに。
もしかして、俺のデートで何かまずいことをやったのかな。
「兵藤、とにかく今の状況は非常にまずい。あれは何なのか俺にもさっぱりだ。
しかし向こうがあきらめてない以上、あまり同じ場所にじっとしているのも危険だ」
「だ、だから逃げるってのか……そ、それしかないよな、やっぱ」
俺たちは水を飲み終え、再びカブに跨り道をひた走る。目の前の信号が青になり、前進すると
今度は目の前にコートと帽子をかぶった男が車道の真ん中につっ立っている。
セージがクラクションを鳴らすが、微動だにしない。セージが避けようとハンドルを切るが
俺たちはそのまま横転してしまう。叩きつけられた体が痛む。
セージ、セージは大丈夫か!? 俺に付き合って死んだとあっちゃ、俺も死んでも死にきれない!
「兵藤、おい兵藤、生きてるか!?」
「ああ、ちょいと身体ぶつけちまったけどな。けど、もしかしてあいつも……」
セージは無事だった。だが、俺たちの目線の先にはさっきの怪しい男。
もしかして、こいつも俺たちを殺す気なのか!?
「フン、レイナーレの奴め。あれだけ息巻いておいて取り逃がすとはな。
これは計画を見直さなければならないか?」
「な、何なんだよ、お前たち……!!」
計画? 何のことだよ? 俺には何がなんだかさっぱりわからない。
どうして、どうして俺たちが殺されなきゃならないんだ!?
セージも俺も、逃げることを諦めてない。セージがカブに手を伸ばそうとした瞬間
そいつはさっきの夕麻ちゃんみたいな
光の槍をセージのカブめがけて投げつけてきた。
「おっと、逃げるなよ」
光の槍がセージのカブに突き刺さる。カブはそのまま爆発してしまった。
すまんセージ! 俺のせいで……!!
それにしても、一体あいつらは何者なんだ。何故俺を殺そうとするんだ。何故、何故!?
「兵藤、今のうちに逃げるぞ。今しかチャンスが無い!」
「あ、ああ……」
俺たちが逃げ込んだのは路地裏。このまま逃げ切れば助かるのかもしれない。
けれど、俺は何故だか逃げ切れる気がしなかった。
そして案の定、俺たちの目の前には彼女が、夕麻ちゃんがいた。
「お、お前……!!」
「ひどいわイッセー君。私のお願いも聞かずに行っちゃうなんて。
それから、そっちの人間。よくもこのレイナーレの邪魔をしてくれたな。
人間の分際で小賢しい、
セイクリッド・ギア? それが俺と何の関係があるんだ。
俺はただ、夕麻ちゃんをデートに誘っただけじゃないか!
セージはそれ以上に関係ない! 夕麻ちゃん、きみは一体何者なんだ!?
何で俺を殺そうとするんだ!?
「じゃあイッセーくん、今度こそ……死んでちょうだい!!」
夕麻ちゃんは俺めがけて光の槍を投げつけてくる。あ、あれはカブも破壊するほどのものだ。
俺なんかが食らったら、ひとたまりも無い。俺、本当に殺されるのかよ!?
――けれど、その光の槍は俺には刺さらなかった。
「ぐあああああっ!!」
「せ、セージ!?」
セージ。松田や元浜と同じ、俺のクラスメート。俺のダチ。
そのセージが今、俺の目の前で光の槍に貫かれている。
貫かれた場所からは、血が止め処なくあふれている。ま、まずい! すぐに救急車を呼ばないと!
「自分から殺されにくるなんて、バカな人間ね。
まあ私にしてみれば、順番が変わっただけで大事じゃないのだけど。
さあイッセーくん、今度はあなたの番。私のために、死んでくれないかな?」
「な、何言ってんだよ夕麻ちゃん! セージが、俺のダチが死にそうなんだよ!
はやく、はやく救急車呼ばないと!」
俺は必死に夕麻ちゃんに懇願するが、まるで話を聞いてくれない。どうしちゃったんだよ!?
そうしてる間に、セージはどんどん弱っていく。どうすりゃ、どうすりゃいいんだよ!?
「イッ、セー……に、げ、ろ……!」
セージの弱弱しい声に呼応するように、夕麻ちゃんは俺めがけて光の槍を投げつけてくる。
それと同時に、背後からも光の槍に貫かれる感触があった。
――えっ?
そのまま、俺はセージと一緒に地面に崩れ落ちた。あ、俺も助からないのか――。
何で、何でこうなったんだよ……初めての、デー……ト、だった、の……に……。
父さ……ん、母、さ……ん、ごめ――
それが俺、兵藤一誠の人間としての最後の一日だった――。
ハーメルンでの投稿は初めてですが以後、よろしくお願いします。
次回からいよいよ本編主人公視点に変更します。