ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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筆が進んだので投稿しちゃいます。
次回はまた未定に戻りますが……


Special13. 家族って何ですか?

周辺のアインストの長であったディオドラが斃れたことにより、アインストの戦力は瓦解。

これにより事態は急激に好転。人間に対し危害を加える存在は

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)となったイッセーのみとなった。

 

しかし、アインストが瓦解したと言う事は、もう一つの悲惨な結末を意味していた。

アインストにさせられたディオドラの眷属や、兵藤夫妻もその運命からは逃れられなかったのだ。

 

まずディオドラの眷属だった元聖女たちだが――

 

 

――元々、壊れていたのだ。否、ディオドラに壊されていたというべきか。

ミルトカイル石も、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)も、彼女達を縛るものは何もなくなったというのに。

 

「ディおドらさま……? デぃオどラさまはどこ……?」

 

「わた……わたし……たち、に……じひ……じひをぉぉぉ……」

 

「あは……あはは……アたラしイ……ナかマぁ……」

 

「ワタシ……タチ……セイジャク……」

 

アーシアやアーリィを見て、仲間であると錯覚している。

自分達の置かれている状況が、わかっていないのだろう。

 

その様子に、アーシアは動揺し、ゼノヴィアは目を背けている。

かつては自分達と志を同じくしたであろう同輩の、変わり果てた姿に。

 

心身共にボロボロに朽ち果てた彼女達に、一同はかける言葉を持ち合わせていなかった。

殊更にアーリィは悪魔にされてしまった彼女の実の妹の末路が。

ゼノヴィアも聖槍騎士団によって連れ去られたイリナが被って見えていた。

 

(このままでは……イリナもこんなになってしまうのか!?)

 

(……もう、彼女達は限界だ。休ませてあげなければ。だが、その方法は……)

 

慧介が言葉を紡ごうとするが、その言葉はとても重いものであった。

何せ、人間である彼女達をともすれば殺さなければならないという発言にも取れかねないからだ。

病院に連れて行くにしても、ここまで壊れてしまってはもう手遅れだろう。

それに、悪魔化はともかくアインスト化の後遺症など前例がない。

黒歌のケースは奇跡的過ぎたのだ。

 

そんな一同の苦悩は、思わぬ形で決着を迎えることとなる。

一瞬にして、ディオドラの眷属だった元聖女達が三匹の怪物に喰われたのだ。

 

「……文句言うなよ。こんな残りカスでも、何も喰わねぇよりマシだろうが」

 

「貴様……フリード!?」

 

怪物とは、フリードの使役していた三匹の魔獣。

彼らによって、元聖女達はあっさりと始末されてしまったのだ。

 

「よぉ。見ねぇ顔も居るけどまぁいいや。

 俺もオーフィスの旦那に言われて掃除に来ただけだから。

 

 ……睨むなよ。どうせあいつら長く生きられないわ心も体もズタボロだわで

 どうしようもないだろ? だから俺様が介錯してやったんだ。今回ばかりは礼を言われこそすれ

 恨まれる筋合いはねぇと思うんだけどよ?」

 

「き、貴様! それがかつての……」

 

「面識ねぇのに一々気にしてられるかっての。面識あってもやる事は変わんねぇけどよ。

 それにしてもありゃ酷いと思わねぇか? あの赤龍帝のクソヤロウ。

 あんなになっちまったら、もう御終いだな。あっちは俺らにゃ怖くて手が出せねぇから……

 

 今日はこの辺で勘弁してやらぁ!

 てめぇらは精々仲良くあのイカレた赤いドラゴンに食い殺されちまえ!」

 

微妙に情けないが、核心を突いた捨て台詞を残しフリードは去って行ってしまう。

結局、ディオドラと言う禍の団(カオス・ブリゲート)にとっての汚点の存在を証明するもの――

眷属だった元聖女をこの世から抹消する事。

それが今回のフリードの目的だったのかもしれない。

目的を果たした今、フリードに覇龍を仲良く倒す義理など何処にもない。

寧ろ、潰し合ってくれれば好都合とさえ考えているのだろう。

口ぶりから、少なくともオーフィス――ウンエントリヒレジセイアはそう考えているのだろう。

 

「フリード! ……くっ、逃げ足の速い……」

 

「イッセーさん……あっ! イッセーさんのお父さんとお母さんも助けないと……!」

 

幸いにして、兵藤夫妻はフリードが見逃してくれたのか手出しはされていなかった。

そして、アインスト化が解けて人間としての姿に戻った兵藤夫妻だったが――

 

「わ、私達は……」

 

「しっかりしなさい。アーシア君、治療を」

 

最早悪魔の事も、自分の息子の事も割れている。

隠し立てしても仕方ないと考えたアーシアも

何のためらいもなく聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を兵藤夫妻に使用する。

 

……しかし、精神的なショックまでは治療することは出来なかった。

 

「ありがとうアーシアちゃん、幾らか楽になったけど……」

 

「あれが……あのバケモノがイッセー……なのね……」

 

沈痛な面持ちで首肯する一同。

兵藤一誠とは、兵藤夫妻がようやく授かった第一子である。

そして一番誠実な子になるように、との願いを込めて名付けられた経緯がある――のだが。

 

その結果がこれである。

小さなものは同じ学び舎の女子には直接的に、男子には間接的に心労を与え。

大きなものは今こうして駒王町を炎の海に包まんとしている。

 

その一部始終をアーシアから説明された兵藤夫妻は、悲しみのあまり泣き崩れてしまった。

待ちに待った自分達の子供が、こんな事になってしまったことに。

 

「なんとか……止める方法は無いんですか?」

 

今暴れている覇龍に、兵藤一誠の意思は無いに等しい。

実力行使で白龍皇のヴァーリと、アモンと融合したセージが止めようとしているが

それでも苦戦している有様だ。

 

「なんとか……なんとかイッセーさんにお二人の無事を伝えられればいいんですけど……」

 

――――

 

一方、覇龍を止める方法は無いかで悩んでいたのはセージも同様だった。

白龍皇も返り討ちに遭い、アモンの力をもってしても不利なことに変わりはない。

自分が表に出られない以上、頭を使う事で何とか状況を打開しようとしていたのだ。

 

(……考えろ! 幾らバケモノだって言っても中身は兵藤のままなんだ!

 何か……何か弱点があるはずだ!)

 

『リハビリ相手にはちときつい相手だな!

 だがな、俺も借りものの身体を無くすわけにはいかないんだよ!』

 

アモンの超音波の矢はイッセーが放った魔力弾にかき消されてしまう。

イッセーには魔力は殆どないはずなのだが、常時倍加されているのだろうか。

リアスさえ怯ませた超音波の矢に競り勝っているのだ。

このまま撃ち合っていては、事態は好転しない。

だからこそ、セージは起死回生の一手を繰り出すべくさっきから思案を巡らせているのだった。

 

そんな中、周囲のアインストが消滅していることにセージが気付く。

それは、アインストの生態を知るセージにしてみれば

「頭が倒された」事を知る切欠になったのだ。

 

「アモン、情報を確認したい! 一旦こいつの相手をヴァーリに任せる形にして距離を置く!」

 

「俺は構わんが、手短に済ませてくれよ紫紅帝龍。

 泣き言は俺の主義じゃないが、この相手を長時間はきつい」

 

ヴァーリの許可も得、セージに促される形でアモンはアーシア達と合流する。

その目的はただ一つ。アインストが消滅した確固たる証拠を得るためだ。

飛びのいて来たセージ――アモンを治療すべく、アーシアが駆け寄る。

 

「ありがとう、それに他の皆も……って兵藤の親御さん!?

 アインストになったはずじゃ……

 それとも、なって間もなかったから影響が少なかったのか……?」

 

「宮本君!? 君まで……君もまさか……」

 

この場にいるというその事実だけで、兵藤夫妻もセージの身の上を知る事となってしまう。

ただし、肉体を取り戻した後であるために

一番肝心な肉体を失っていた時期の事まで考えが及ばなかったのは

セージにとっては幸か不幸か、とても悩ましい所ではあったのだが。

 

「有体に言えば。しかし他所の悪魔はどうだか知りませんが

 俺はこの町をどうこうするつもりはありません。

 寧ろ、この状況を何とか打開できないかと考えてます。しかしその手段が……」

 

「こんな時に言うのもおかしな話ですけど、身体の奪還おめでとうございます、セージさん!

 アモンさんも、話の分かる悪魔みたいでよかったです」

 

アーシアからの祝辞を受け取り、礼を返すセージ。

一方、話が見えていない兵藤夫妻には「長くなるので後で話す」としか答えられない。

そうでなくとも「身体が無かったのでお宅の息子さんの身体を間借りしてました」

 

……などとはとても言えないが。

ともあれ、セージにしてみれば身体が戻ったという喜ばしい事実を受け入れる前に

目の前で暴れている兵藤一誠だったものを何とかすることが先になってしまった。

 

(ナイトファウル……あれはアインストじゃないから

 アントラクスもアルギュロスも効き目が薄い。

 神経断裂弾もさっき跳ね返された。経口で撃ち込めば効くかもしれないが……

 ……果たして、親の見ている前で子供を殺していいものか?)

 

アーリィの持つナイトファウルを見ながら、セージは猶も考えを巡らせていた。

さっきまではアインスト化していたから気にも留めなかったが、元に戻ったならば話は別だ。

兵藤一誠を、生きたまま元に戻す必要が出て来た。一難去ってまた一難、である。

その為には、まず無力化させる必要があるがそれもまた難しい。

真っ向から挑んでも、力で勝てる要素が見当たらないのだ。

 

(くっ……何か、何か手は……そう言えば、俺の身体が戻った理由。

 戻ってしまえば悪魔の駒の共有なんて……共有……共有……

 

 ……この手は、使えるか?)

 

悩んでいる最中、セージはふとある事に気付く。

今こうして体を取り戻せたのは、悪魔の駒で悪魔化した魂と

アモンが乗り移った事で悪魔化した体とで波長が合ったことによるもの。

ならばこの悪魔化の原因をリアス・グレモリーによるものでは無く

アモンによるものと解釈することで、悪魔の駒の共有を解除することは出来ないだろうか?

 

セージの判断はこうだ。

 

・本来、リアス・グレモリーの兵士の駒は兵藤一誠を相手に行ったものである。

 

・宮本成二はその魂が兵藤一誠に乗り移っていたためか

 その悪魔の駒の契約に巻き込まれてしまった形である。

 

・つまり、元々宮本成二とリアス・グレモリーの間に正規の契約関係はない。

 

・その一方、アモンは半ば強引ではあるが宮本成二相手に契約を行っている。

 

・兵藤一誠の悪魔化はリアスの、宮本成二の悪魔化はアモンの

 それぞれの原因だとすれば共有は無効になるはず。

 

『おい。悪いと思ったがちょっと記憶を覗かせてもらった上で言うが。

 ……「あの方法」ならやめとけ。幾ら外道の法って言っても

 解き方には正規の手順を踏んだ方がいいだろ。

 そんなものがあれば、の話だが』

 

セージが考えていた方法。それはかつて黒歌を呪縛から解き放つ時に使った

「悪魔の駒を強引に摘出する方法」だったのだが、今回は相手が悪すぎる。

 

まず単純に相手が黒歌の時とは比べ物にならないほど強い。

次に白音と言うサポートのお陰で的確に場所を絞れた前回と違い、場所を絞る方法がない。

そして何より、致死率のある方法かつ無免許の手術を親族の前でやるのは憚られる。

 

そしてアモンが言う正規の方法。それは――

 

「……話は聞かせてもらったわ。アモン、私にイッセーを手放せ……そう言いたいのね。

 けれど、あの子は悪魔の駒で生き長らえている状態よ。契約を解除したら……」

 

『その上で再契約すればいいだろ。そうすれば今度はこいつを巻き込まない』

 

「そして兵藤は悪魔として蘇る……か。

 それが正しいかどうかはさておき、一応生き長らえはするって訳か」

 

アモンの提案。それは今ある悪魔の駒を一度排除した上で

もう一度兵藤一誠を転生悪魔として蘇らせる方法。

しかし、それには問題があった。

 

……当時ならばいざ知らず、今の兵藤一誠を

リアス・グレモリーが転生させられるかどうか、という問題。

 

「悪魔の駒のメカニズムは俺も色々あったから知ってる。

 その上でやるってんなら俺は止めない。だが……

 

 親御さんの許可はしっかり取れ。今度は催眠術なんてちゃちなもんで誤魔化すな。

 兵藤一誠として確りと生きていくか、ここで災害として討たれるかの瀬戸際なんだ。

 そうでなくとも、大事な子供を訳の分からない存在にさせられるってのは

 当人には大事な問題だろうが。俺が今まで何を言ってきたか、忘れたとは言わさんぞ」

 

「……わかったわ」

 

セージから、兵藤夫妻に向き直るリアス。

その目的は、兵藤一誠を救うために悪魔にすると言うもの。

その一連の行動は、アーリィにとっては複雑な心境であった。

何故なら彼女は両親を悪魔に殺され、妹を強引に悪魔にされている。

そうした背景があってか、家族のいるものを悪魔に変えるという行為には

悍ましさを覚えていたのだ。

 

セージも、止めはしないと言ったものの内心では反対している。

しかし、悪魔の駒を用いた再契約に反対することは兵藤一誠を殺すこととイコールである。

そんな事を、両親である兵藤夫妻の前で表立っていうわけにはいかない。

 

改めて、セージとアーリィは悪魔の、この世の理不尽さにやるせないものを覚えていた。

人間を悪魔に変える外道の法などなくとも

人は自然に悪魔になってしまうものかもしれない。

そうだとしても、こうして生物的に悪魔に変えてしまう

洗脳してしまう道具が幅を利かせている事にアーリィは改めて悪魔と言う物に怒りを覚え

セージとアモンは複雑な心境になっていたのだ。

そして、肝心の兵藤夫妻の答えはと言うと……

 

「……息子を助けてくれたことには感謝いたします。ですが」

 

「人様に迷惑をかけてまで、わたしたちも息子を助けたいとは考えていません……」

 

「えっ……」

 

顔を伏せたまま答える兵藤夫妻に、リアスは驚きの表情を浮かべる。

 

「私達も怪物になってしまった事、朧気ながら覚えています。だからこそ、出した答えです」

 

「あのフューラーの演説も、全て正しい事と思っているわけでもありません。

 ですが、これ以上うちの息子のせいで悲しい思いをする人が居るのならば……」

 

「ですから! 私がイッセーを……」

 

声を荒げ「自分がイッセーを正気に戻す」と言わんとしたリアスの言葉を

兵藤夫妻の言葉が遮る。その眼は、真剣そのものであった。

 

「リアスさん、でしたね」

 

「ええ」

 

「正直に言いますリアスさん。私達はあなたを信用できません。

 何故なら、息子の事をもっと早くに教えて欲しかった。

 言いにくい事はあったでしょう。私達も、自分の息子が悪魔になりましたと言われて

 いきなりそれを信じられるかと言われれば怪しいものがあります。

 ですが、それでももっと早くに私たちに教えて欲しかった。

 今頃になって、怪物になろうとしている正にその時に教えられても

 私達ではもうどうしようもないんです。事実そうです。

 

 ……私達は、そんなに信用できませんか?

 私達から、親としての役割を奪って楽しいですか?」

 

「そ、それは……」

 

「……失礼。もうあの子も高校生、親離れ、子離れすべき時かもしれません。

 ですが、それは何事も平穏に過ぎてこそ初めて言えること。このような事態にあっては

 親離れ子離れ以前に、子の心配をしない親などおりません」

 

かつて、リアスは自分の親からも似た様な事を言われていた。

その為、兵藤夫妻の言葉に返す言葉がない。

リアスとて、駒王町の管理をしているとはいえまだ高校生。

少なくとも日本の法律では、まだ成人すらしていないし

そこまでの人生経験があるかと言われれば、否だ。

こうして事が起きてからでは、何もかもが遅いのだ。

 

何もかもが遅い、を体現したものはなにも兵藤一誠に限った話ではない。

ここにいる宮本成二もまた、奇しくもリアスによって――

より正しくはさらに別の存在によってだが――

運命を狂わされた存在であった。

 

「……グレモリー部長。いやリアス・グレモリー。

 俺は今でもあんたの事を信じてない。

 いや、むしろもう『俺には』関わるなとさえ思っている。

 だがあえて言う。兵藤一誠を止めるには

 今あんたが動かなきゃどうにもならない。

 

 ……赤龍帝の事、知っててやったにせよ知らずにやったにせよ

 今あんたはあいつに対して責任を取らなきゃいけない立場のはずだ。

 やるべき事はやれ。俺もやるべき事はやる……それだけだ。

 

 アモン、交代だ! 俺に考えがある!」

 

『おい、大丈夫なんだろうな? お前の身体はまだ完全じゃないんだぞ?』

 

表に出ていたアモンが下がり、セージの意識が表に出る。

それと同時に、右手に紫紅帝の龍魂が顕現する。

 

「モツ抜きはやらんが……似たようなことは出来るはずだ。

 だがそのためには……リアス・グレモリー。あんたが動け。

 えらそうなことを言って結局他人任せって所に思う所はいくらでもある。

 けれど、こうでもしなきゃ現状は打開できないんだ。

 

 ……だが、兵藤一誠を『殺して』事態を収束させる方法ならある。

 ああ脅しと思って貰っていいさ。けれど、俺の実力じゃそれが限界なんだ」

 

「殺して……まさかセージ、あなたイッセーの悪魔の駒を破壊するつもり!?」

 

「ああ」

 

セージの出した結論。これはさっきから変わっていない。

ただ兵藤夫妻を前にして言わなかっただけで。

しかし、兵藤夫妻もそれ相応の覚悟を持っていると判断した今、躊躇わずに答えた。

 

――兵藤一誠の殺害による、事態の収束と言う手段を。

 

『大体わかった。あの時は救助目的だったが、破壊だったら難易度はぐっと下がるからな。

 急所を狙えば、そこに近い悪魔の駒を序に破壊できるかもしれない。

 悪魔の駒を破壊さえすれば、悪魔の駒で生き長らえているあいつは止まるって寸法か』

 

フリッケンが納得したように答える。

それはつまり、フリッケンとアモンの力をうまく使えば

セージには実行可能と言う事を示していた。

 

(もう一つの方法は、ドライグをあいつから分離させる方法だが……

 ヴァーリの時も、一部しか奪えなかったからな。一部じゃ意味がない。

 あのクソビッチの実験、こういう時には使えそうなんだがな……!)

 

「宮本君……」

 

「すみません、おじさん、おばさん。

 俺には、これ以外の事態の収拾方法が思いつきませんでした。

 ですがこのまま放っておけば、ここのみならず

 世界中も焼け野原になってしまうかもしれません。

 俺は俺の家族を、大切な人を守りたい。

 そのためにはどんなこともする所存です」

 

「君にも、家族はいるんだものな……

 私達も、息子にこれ以上あんなことをさせることは出来ない!

 宮本君、出来るなら君に……」

 

「やめて! お願いだからイッセーを殺さないで! 私からイッセーを取らないで!」

 

事ここに及んでも、リアスは迷っていた。

イッセーを取るか、世界の平和を取るか。両方と言う選択肢もあったかもしれないが

ここまで来てしまった以上、それは至難の業だ。

セージは平和を、リアスはイッセーを、それぞれ取ろうとしていた。

 

しかしそのリアスの言葉に、兵藤夫妻よりも早く反応したものがいた。

家庭の事情を孕んでいる事柄だった故にだんまりを決め込んでいた、アーリィだ。

その言葉に対し、幾らかの怒気を孕んだ声でリアスに語り掛ける。

 

「ふざけないでください。いつからあの少年があなたのものになったんですか。

 家庭の事情に踏み込むほど、私も野暮じゃありませんが

 優先されるべきは家族の言葉じゃないんですか?」

 

「わ、私だってイッセーとは家族のような……それにあなたは部外者――」

 

「私が部外者だからなんだって言うんですか。

 部外者だからわかる、部外者でもわかる事はあるんですよ。

 そもそもあなたの言う家族だって、事後承諾で強引に家族にしただけの事でしょう?

 悪魔の駒がそう言う道具だって事は私だって知ってるんです。

 私も妹が毒牙にかかりましたから。

 このお二人が子供を授かるのにどんな道を歩んできたのか私は聞いておりませんが

 リアスさん、少なくともあなたの言う家族とはここ数か月程度のものでしょう?

 

 そんなあなたが、十何年も一緒に過ごしてきたお二人の決断に

 水を差すような真似をするのはおかしいと思うんです。

 私、おかしなこと言ってますか?」

 

開き直りとも取れるアーリィの剣幕に、リアスはたじろいでいた。

そこには、紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)とも呼ばれた彼女の権威は無かった。

いや、そもそもそんなものは初めから無かったのかもしれない。

ちやほやされ、周りから担ぎ上げられていただけなのかもしれない。

担ぎ手が居なくなれば、御輿は上がらない。

今のリアスは、担ぎ手のいない御輿なのかもしれない。

 

「さて。これ以上問答をしている時間はないみたいです。

 私は悪魔祓いで竜殺しじゃないですが、それでも出来ることをやるだけです。

 ここは私の知っている駒王町じゃありませんが

 それでも破壊されるのを黙って見ているのはやはりできません。

 だから、私も協力させてもらいますよ」

 

「無論、私もだ。どんな形であれ、この状況を止めないことにはな。

 今こそ、人々を守るために剣を振るう時だ!」

 

「ゼノヴィア君、アーリィ君。親不孝は罪だ。罪は……許されない。

 だがそれ以上に、無駄死にも許されない。俺も参加させなさい」

 

「私も、イッセーさんを止めるために私のできることをやります!

 皆さん、思いっきりやっちゃってください! ご両親は私が守ります!」

 

アーリィ、ゼノヴィア、慧介、そしてアーシアが名乗りを上げる。

特にアーシアの言葉は、兵藤夫妻を震わせているほどだった。

 

「全く……アーシアちゃんはこんなに逞しくなったというのに

 あのバカ息子と来たら……!」

 

「皆さん、どんな形でも構いません。バカ息子の事をお願いします!」

 

そしてさらに、名乗りを上げるものがいた。

 

「話は全て聞かせてもらったにゃん! 私達もあのバカに一撃入れるにゃん!」

 

「……まずはセージ先輩、おめでとうございます。でもそれは後ですね。

 あの変態をとっちめるいい機会です」

 

黒歌、白音の姉妹も家族と言う物の在り方については思うところがあるのか

戦線に参加すると名乗り出たのだ。

総がかりで覇龍を止めるという、物量戦の構えになった。

物量戦に呼応するように、セージが分身を生成する。

一人よりも二人、二人よりも三人。その構えでどんどん広がっていく。

アインストも居なくなった今、結界の維持にはソーナ達と朱乃、ギャスパー、木場が構えている。

 

「セージ君! 僕達も持ちこたえて見せる! だからイッセー君を止めてくれ!」

 

「ぼ、僕も頑張ります!」

 

「リアス。殺さずにイッセー君を止める方法はあなたにかかっていますのよ?

 私達の主だというのなら、こんな時くらいしっかりして見せてくださいな」

 

逆に言えば、これ位しなければ暴走した赤龍帝は止められないと言う事である。

いよいよ、肉体を取り戻したセージにとっては最初の。

イッセーにとっては最後になるかもしれない。

 

戦いの火蓋は、覇龍の咆哮と共に切って落とされるのだった――




あれこれ悩んだ結果、兵藤夫妻は「ひとまず」元に戻りました。
ムゲフロでは操られてた人はアッサリ元に戻りましたが
あれバケモノ化してないって区別はありますけれど……

>兵藤夫妻
原作では20巻位でやってそうな事を今やってます。
これ位前倒ししてるから、もう原作なんてあってないようなものですね(遠い目
今後どうなるかは、ちょっと私にも……

因みに、二人の言葉には「もしも自分が二人と同じ立場で、かつ事後報告されたら」
って意見をふんだんに取り込んでいます。
でもアーリィさんじゃないけど言わせてください。

「誠実って何ですか?」

>ディオドラの眷属
R-18タグ付きだったらもっと酷い事になってました。桐生と同じくらいか、もっと酷い事に。
フリードにお掃除されて退場。原作ではお掃除されたフリードが拙作ではお掃除する側に。
皮肉なもんですね(白目
因みに三匹の魔獣は元ネタ通り人間食ったりもしますが
眷属達はもう生命エネルギー的なものが残りカスみたいな状態だったので
本人ら曰く「クソ不味い」だったそうな。やられた(であろう)事をかんがえればそりゃあ。

>対覇龍
あのバカげた唄は抜きにして、リアス主導で動くかと思いきや
リアスが駄々こねたので結局総力戦。
改悪と思っていただいても構いません。ただライザーの時とか考えると
(成長していないという別の問題がありますが)こうなってもおかしくないかな、と。
人選は完全に趣味。木場入れても良かったけれど今回は「聖魔剣の応用」で結界張る役に。
一応リアスが契約解除→悪魔の駒再利用して再契約って流れのはずだったんですが。

実はセージをモツ抜きさせて悪魔の駒を破壊→イッセーの駒も消滅させようとも思ったんですが
これ微妙に矛盾するので没になった経緯ががが。
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