「復学のヒューマンソウル」開始します。
活動報告でも述べましたが、「Special17. 向き合う時」で設定に関わる重大なミスがありました。
瞳の色は赤ではなく金色です。
お詫びして訂正いたします。
Soul79. 繰り返された邂逅
「は、初めまして……天野、天野夕麻です……」
「……!?」
その名前を聞いて、俺は驚愕した。天野夕麻。またの名をレイナーレ。
忘れもしない、兵藤一誠を殺害し、俺――宮本成二にも瀕死の重傷を負わせ
俺達が悪魔になるきっかけを作った堕天使だ。
最期はアーシアさんの
アーシアさんをも殺害し、俺や兵藤にコテンパンに熨された……筈だったんだが。
――!!
そう言えば、生死は不明と言っていた気がする。
色々あり過ぎて気にも留めなくなったが、まさか生きていたとは……ッ!!
「天野はこの間まで駒王総合病院に入院していたんだ。
だからというわけじゃないが、皆フォローをよろしく頼むぞ。
伊草も海外からやって来てこっちにホームステイしているから
まだ慣れていない部分もあるかもしれん、そこのところもよろしくな」
先生の話に、俺は腑に落ちないものを感じた。
ゼノヴィアさんの事じゃない。天野――レイナーレの事だ。
奴が駒王総合病院に入院? 一体どういうことだ?
堕天使が人間の病院で治療を受けるとでもいうのか?
俺のその沸き上がる疑問は、どうやら顔に出ていたらしく
松田と元浜に総がかりで突っ込まれることになった。
「おい、セージどうしたんだよ天野ちゃんの方をじろじろ見て」
「しかも顔怖いぞ、一体どうしたって言うんだよ? 悪い事するような子には見えないぞ?
ちなみに具体的なサイズは……」
「うっ、顔に出てたか。すまないな……あと元浜、そんな情報は要らない」
元浜がご自慢のアレを披露しようとしたため、俺はすかさず口撃を加えて制止させる。
状況が状況だから、ほんの少しだけ変わらない事に安堵もしたが
ほんの少しだけだ。褒められた行いじゃない事に変わりはない。
ともあれ、紹介も済み席に着いたところで引き続きHRの時間になったのだが
俺はと言うと、天野夕麻の事が気がかりで半分くらい頭に入っていなかった。
ふと、アーシアさんの方を見たがやはり驚いている様子だった。
祐斗や白音さんも、不思議そうな顔をして天野を見ているようだ。
これは、後で話をつけなければならないな……!
――――
「……おい。来て早々で悪いが話がある。ついて来い」
HR終了後。俺は早速天野夕麻を呼び出す事にした。
周囲は「デートか!?」と持て囃したがそんなんじゃない。
持て囃した奴に睨みをきかせて黙らせると
――どうでもいいが、こういう時
俺は天野夕麻を連れて、人気の少ない建物の裏へと来たのだった。
「な、何でしょうか……?」
「とぼけるな堕天使レイナーレ。よくもまぁ俺の前にその面を出せたものだな。
しかもまた懲りずに記憶操作で潜り込んでやがったとはな。
その学習能力のなさには呆れすら出てくるぜ。
さあ、その小汚い黒い羽根を出してみろ。今度は毟り取るだけじゃ済まさないけどな」
しらを切る天野に対して、俺はつい胸倉を掴んでいた。
その次の瞬間、俺の内部から待ったがかけられた。フリッケンだ。
「ひぃっ! や、やめてください……!!」
『待てセージ。
この怯えようは尋常じゃないぞ』
記録再生大図鑑を? 今更こいつを調べたってどうなるって言うんだ?
こいつは性懲りもなく俺の前に現れた。あれだけやったにも関わらず、だ。
それに、こいつとは以前に戦ったことがある。こうして前の名前を使って
のこのこやって来てる時点で新しい作戦を立てていたりはしないだろう。
もし立てていたとしても力づくで捻りつぶしてやる。
そうだ、俺はこいつに――
『そこまでにしろ。いいから俺の言う通りにやれ、気になるんだよ』
力が抜ける感覚に襲われつつも俺はフリッケンのアドバイスに従い
渋々ながら天野の胸倉から手を放し記録再生大図鑑を向けることにした。すると――
――天野夕麻。
5か月ほど前、堕天使レイナーレによって体をコピーする形で奪われる。
その後
駒王総合病院へと運ばれ治療を受けていた。
……な、なんという事だ!
俺が、他ならぬ俺の手でまさか同じ目に遭わせている人が居ただなんて!
俺は、俺はなんてことをしてしまったんだ!!
「……す、すまない! 人違いだった上に君の怪我の原因は俺にあるみたいだ!
なんと詫びていいのかわからない! 本当に申し訳ない!」
思わず、俺は土下座する勢いで天野――いや天野さんに謝った。
正直、あの時の俺はレイナーレを倒す、いや殺せれば他の事はどうだってよかった。
けれど、こうなってくると話が違う。
まさか堕天使が人間の体コピーするなんて事例があるだなんて……!
そんな事例、俺は一言も聞いてなかったぞ!
俺は、一体彼女になんと詫びればいいんだ!
「堕天使……そう言えばずっと前、黒い翼の天使様が私の夢に出て来たことが……
その時、私の夢を叶えてくれる代わりに力を貸してほしいって言われたことが……」
『……ん? おいセージ。この小娘からもう少し詳しく話を聞きだせ』
天野さんが身の上を語り始めたところで、今度はアモンの横槍が入る。
なんか、俺の身体って結構騒がしくなってる気がするんだが……
……それはさておき。
俺も天野さんの言う事は気になったので、話を詳しく聞きたいと思ったんだが……
(そうしたいのは山々だが、薮田先生に出頭するよう言われている。
そっちを済ませたいから、天野さんへの聞き取りは後日だな)
『チッ、面倒臭ぇ話だな』
「あ、あの……帰ってもいいでしょうか……?」
「あ、ああ。人違いで怖い思いをさせてしまって、本当にすまなかった……」
俺は天野さんに狼藉を働いたことを詫び、薮田先生のもとへと向かう事にした。
そこには祐斗と白音さんが既に来ていた。
序にグレモリーに会って退部届を叩きつけてやりたかったが……
そもそも薮田先生はオカ研の顧問じゃないから、いるわけが無いか。
「来ましたね、宮本君。きちんと学校に出てくるその姿勢は立派なものですよ」
「薮田先生、それを言いたいがためだけに俺を呼んだんですか?」
「まさか。今はちょうどグレモリー君の様子を彼から聞いていたところですよ」
パイプ椅子や瓦礫に腰掛けながら、薮田先生や白音さんが
祐斗の話に耳を傾けている。確かに俺としても現状のグレモリー家や
冥界の状況は気になるところ……って。
……何だか、俺身体を取り戻したってのにやってる事が変わらない気がするぞ?
「掻い摘んで薮田先生や小猫ちゃんには話したけど、セージ君も聞くかい?
……話してて疲れる内容だけどね」
「……悪い、頼む」
ため息を交えながら、祐斗が今のグレモリー家の状況や冥界の状況について話してくれた。
曰く――
一つ。氷漬けにされた兵藤は今は魔王城にて厳重に保管されているらしい。
二つ。グレモリーはその兵藤を復活させるべく修行に励んでいるらしい。
そして三つ。アモン復活の情報が冥界全土に知れ渡り、ちょっとした騒ぎになっているらしい。
「兵藤とグレモリーの事はまぁそうだろうなぁと思ったが……アモンの事もか」
「冥界の勇者にして裏切り者。セージ君にまさかそんな悪魔が憑いているなんてね」
「アモンのお陰で俺は身体を取り戻せたようなものだからな。
そして今は悪魔の駒の共有も外れて、自由の身ってわけだ」
『そう思うんなら、もう少し俺に協力してくれたっていいよな?』
『アモン、少し黙ってろ』
アモンの茶々をフリッケンと躱しつつ、俺は祐斗との情報交換を行っていた。
やっぱり、俺のやっていることは身体を取り戻す前と変わってない気がする。
まぁ、町がこんなではすぐ元の生活ってのも無理があるだろうけれどな。
「また冥界で一波乱起きそうな気がしてなりませんね。
シトリー君も家の都合で早退しましたし」
「他人事じゃないからね。僕も何だか投げかけられる視線が妙に痛かったし」
「……私もです」
この辺りにいる悪魔の存在は、大半がばれてしまっている。
或いは、ばらされてしまったのかは定かではないが
今の駒王学園は、
「一応、ここにいる悪魔は危害を加えないと私からもお墨付きを出したいところなんですが
生憎そうもいかないものでしてね……。
君達やシトリー君達が人に無闇に危害を加える悪魔でない事は知っています。
しかしながら、兵藤君はその素行のお陰で私が庇い立てすることが出来ないんですよ。
しかも都合の悪い事に、グレモリー君がこの町の管理をしていた事も知れ渡っています。
そしてこの町の現状です。庇い立てできますか?」
「それは……」
「……変態は自業自得、部長も……」
薮田先生の言う事は尤もであった。まさか教師ともあろう者が
問題行動ばかり起こしている輩を庇い立てするわけにも行くまい。
そして、グレモリーにしたってそうだ。ここに来てツケを払わされた形になっているようだ。
人間を蔑ろにしていたわけではなかったとしても、結果として蔑ろにしていたのが
この現状だ。そんな状況で庇い立てなどしようものなら暴動が起きる。間違いない。
「悪魔……いえ、三大勢力排斥論が立ち上がって、そしてそれが主流になりつつあるのも
時間の問題と言えるでしょうね。まあ、私にはある意味では関係のない話ですが。
スタンスは五大勢力会議の時から変えてませんからね。
……さて。宮本君の素行の問題もクリアできたことですし
私は教師としての仕事に戻りますよ。
避難所生活も苦しいかとは思いますが、もう暫くの辛抱と言う事で我慢してください」
俺の素行って……いや、祐斗や白音さんに比べたら高校生らしくないって気はするけど!
そう突っ込みたくなるのを堪えつつ、俺達は薮田先生を見送ることにした。
「……で、セージ君。彼女……天野さんの事だけど」
「結論から言おう、別人だ。だが、ただの赤の他人ってわけでも無い。
俺は怖がられてしまったから……祐斗、白音さん。二人に協力してほしいんだが……」
「やれやれ。あの時みたいに暴走でもしたのかい?」
「……仕方ありませんね」
心なしか、二人の俺を見る目が痛い気がする。
ああそうだよ、図星だよ! 仕方ないだろう、兵藤ほどじゃないが
あいつにゃ俺も因縁があるんだから!
それにしても、今学校に兵藤が居なくてよかったと言うべきか、なんと言うべきか。
アイツの事だから殴りかかり……はしないにしても
何かしら問題は起こしてくれそうな気がしてならん。
それ位にはあいつのことを理解しているつもりだ。
約束を取り付け、その日は解散することにした――
――――
翌日。学校は休みなので、近くの避難所に俺と白音さんは来ていた。
天野さんがどこの避難所にいるのか、俺は聞いていない。
仕方なく、掲示板を活用するなりして虱潰しに探す事になった。
「……いた?」
「……いえ、見てません。それにしても、堕天使も身体を奪う事があるんですね
奪うというか、真似たというか……ですけど」
『何か言いたそうだな、白猫。俺達は一応契約の上で身体を共有しているんだ。
セージ、わかってると思うが今度は俺の目的のために……』
「はいはい、わかってるってアモン。だが今はそれより天野さんだ。
そもそもお前が言い出したんだろうが、『彼女から情報を聞きだせ』って。
それと白音さん、どうやらレイナーレは何かの目的のために
天野さんの身体をコピーしたらしい。目的までは知らないけど」
アモンを交えつつ、俺達は天野さんの行方を追いながら
ここに来て生じたレイナーレの謎についても調査することになった。
何を思ってあいつが天野さんの身体をコピーし、兵藤に接近したのか。
いや、
問題は、何故天野さんの身体なのか、って事だ。
堕天使については、俺達ははっきり言って門外漢だ。
そこで俺は、記録再生大図鑑の情報に頼ることにした。
一体どれだけの情報が出力できるかはわからないが。
BOOT!!
「キーワードは……堕天使、人間、身体……
……ふむ、要領は得ないが……ふむ、ふむ……
なるほど……なるほど……
……ってふざけんな!!」
「!?」
記録再生大図鑑が出した情報に、俺は思わず大声で突っ込んでしまった。
それを聞いていた白音さんが驚いてしまう。あー……ごめん。
けれど、これは突っ込まずにはいられなかった。何せ――
――堕天使もまた、人間と契約を交わしその見返りを求める。
それによって力を得ており、言うなれば悪魔が人間とかわす契約と然程変わらない。
確かに、堕天使も見方によっては悪魔の一種と言える。
天使だってある意味悪魔みたいなものかもしれないし、見解の相違って奴だろう。
つまり、レイナーレは不敵にも当時グレモリーの管轄だったここで天野さんと契約を交わし
その身体をコピー、兵藤に接触したって訳か。
そう言えば、グレモリーが言っていたな。悪魔と堕天使は勢力争いと言う名の
縄張り争いが絶えず、そこを天使が漁夫の利を狙っているとか何とか。
相変わらずふざけた話だ。今はそれどころではないのか、そんな話はあまり聞かないが。
ま、それ以前に相互不干渉条約が設けられたんだっけか。
そのまま人間に関わらないでくれと切に願うよ。
そう考えていると、向こうで松田と元浜が桃色の髪の女性から何かを貰っている。
どこかで見たな……誰だっけ?
「お、セージ! いい所に来たな! 聞いて驚け、なんと桃園モモさんがここに来てるんだよ!」
「俺は正直好みじゃないんだけど、松田がどうしてもって言うから……」
桃園モモ? なんだそれ? 俺は桃は桃缶派だ。
……とここで俺は以前読んだ新聞を思い出す。
――グラビアアイドル、謎の失踪――
そのグラビアアイドルが、確か桃缶モモとかそんな名前だった気がする。
桃缶か。病院に入院してたら喰えてたんだろうか。
「セージ、桃缶じゃなくて桃園だ、も・も・ぞ・の!」
「どっちだっていいだろ。で、何でこんな危険地域にやって来たんだ?
天道寛みたく料理でも振舞いに来たのか?」
「違うって、慰問だよ。俺らにしてみれば天道の飯もアリだけど
グラビアアイドルの慰問も励みになるからさ!」
盛り上がる松田を、白音さんが白い目で見ている。どうどう。
そりゃ男性陣には受けはいいだろうけど、ちょっとこういう場所だとその需要はニッチじゃないか?
隙間産業は隙間産業だから機能するんであって
公におっぴろげてやられると違う気がするんだが……
それはそうと、グラビアアイドルがよくこんな危険地域の慰問にやってこれたもんだな。
天道寛はその正体を知っているから「ああ……」ってなるが。
……ん?
い、いやまさかもしかして……
『セージ。あの女に記録再生大図鑑を向けろ』
俺も気になったが、プライバシーに関する事は読まないぞ、アモン。
俺だってそう言う意味での記録再生大図鑑の使い方は祐斗の一件くらいしかやってない。
薮田先生に使って自爆したことはあるが。
『そんなのは俺も興味がない。いいから向けろ』
アモンのアドバイスに従い、俺は桃園モモを記録再生大図鑑で調べてみることにした。
するとそこには、とんでもない情報が出力されたのだった。
――桃レ園イモナモーレ
……あん? 何で記録再生大図鑑がただのグラビアアイドル相手にバグるんだ?
彼女ももしかして、天道寛みたく「裏側の顔も持っている」人間なのか?
だとしたら、こんなところにやってきた理由もわかるが……
とりあえず、俺はバグを取り除くために「
記録再生大図鑑を進化させようとしたが……
『セージ。いくらフューラー演説があったからって、知己がいる前で
やはりそう思うか、フリッケン。
俺も松田や元浜がいる前で神器の
この場は大人しくしていることにした。
そんな中、ふと俺と桃園モモの目が合う。
その瞬間、彼女が何かに怯える顔をしたのを、俺は見逃さなかった。
……だが、俺の何に怯えたって言うんだ……?
肉体を得てもセージのやっていることはあんまり変わってません。
イッセー憑依時代と比べたら心労度は大きく下がってる……筈なんですけど。
>天野夕麻
まさかのロイミュード方式。
某なでしこや072番みたくきれいな形では終わらないのはどういう事なんだろう。
今回セージが珍しく見境無くなってます。色々参ってるんです、彼も。
……と言うか(アニメ版はさておき)イッセーが気にしなさすぎなんだよ!
なお堕天使がロイミュード方式で身体をコピーするってのは拙作独自設定ですし
他の堕天使(アザゼルとか)はそう言う事はしてません(一応)。
>桃園モモ
原作ではちょい役がまさかの大抜擢。
実は記録再生大図鑑で正体モロバレしてるんですが
おわかり……ですよね?
原作ではイッセーが彼女のファンだったけど、元浜は性癖的に無しだろうと考え
ちょっと遠巻きに、松田はノリノリで彼女の慰問を受け入れています。
けれど正体を考えると慰問にも何か裏があるように思えるのは気のせい?