解説は活動報告の方に載せたいと思っています。
イェッツト・トイフェルとの遭遇、冥界との関わり合い。
セージが出す答えは……
駒王町にある中規模の公園。
そこにバオクゥ、リーと落ち合った俺は
とんでもない来客を迎えることになってしまう。
魔王直属部隊、イェッツト・トイフェルのウォルベン・バフォメット。
奴が何を思って俺に接触してきたのかはわからない、だが推測は出来る。
一つは、俺に憑いているアモンの力を狙っての事。
もう一つは、ここにいるバオクゥとリーの始末。
前者は魔王陛下に対するカウンター的措置だろう。未だに俺には俄かに信じがたいのだが
アモンは魔王陛下と肩を並べ戦った、冥界の勇者としての一面を持ち合わせていたらしい。
どういうわけだか、今は裏切り者として扱われているが。
後者は、彼女らが冥界政府にとって不都合な記事ばかりを並び立てるから
それに対する制裁の意味合いを込めているのだろう。
実際、冥界にあるバオクゥのアジトは本人曰く襲撃されたらしい。
果たして、ウォルベンは何を企んでいるのか。
緊張が走る中、俺達はウォルベンと話をすることになった。
「単刀直入に言いましょう。歩藤……いや宮本成二さん。
あなたには我々に協力してもらいたいのです」
俺の懸念の答えの一つは出た。かねてから俺に目を付けていたイェッツト・トイフェルが
いよいよ俺のヘッドハンティングに出て来たか。
だが、俺はその提案に首を縦に振るつもりは無い。のだが……
『面白ぇ。要はお前らはサーゼクスら四大魔王をぶっ潰す魂胆なんだろ?』
「さすがは勇者アモン、話が早い。徒に冥界に損害を与えるばかりの四大魔王を駆逐し
我々こそが真なる『
その為には、あなた方盗聴バスターやジャーナリストの働きも不可欠ですし
事が成せた暁には人間界への不可侵条約も締結させましょう。
……私としても、人間と悪魔は相容れない生き物であると考えていますからねぇ」
……おいおい。結局旧魔王派と言ってる事が殆ど一緒じゃないか。
提案こそそこそこに魅力的だが、やはり俺は首を縦に振れない。
アモンは乗り気だが、そこに何かがあるとどうしてもうがった見方が出来てしまう。
「……だとしたら、何で私のアジトを襲撃したんです?」
俺が考え込んでいると、バオクゥから疑問が投げかけられる。
確かに、協力を要請する相手のアジトを襲撃するなんて、普通はしない。
しかし、彼らは魔王直属部隊でありながら魔王陛下に反旗を翻そうとしている奴らだ。
普通、と言うのがどの程度の事を指しているのかは俺にも分からないが
そんじょそこらのはかりで考えないほうが良いだろう。
そもそも、相手を出し抜くことに関しては長けていそうな相手だ。
「その件については申し訳なく思っていますよ。ですが我々も魔王直属部隊と言う性格上
魔王様からの命令には表向きには従わなければならないのです」
悪びれずにウォルベンはバオクゥに向かって語っている。
まるで「殺すのはいつでもできる。今は目的のために生かしておいてやっている」
と言わんばかりだ。イェッツト・トイフェルの性質上、それが出来そうなのが怖い所だが。
「要するに、お前らを始末する事なんざいつでもできる、死にたくなければ自分達に従え。
……そう言いたいわけか?」
「好きな風にとってもらって構いませんよ。協力していただけるのでしたら
あなた方の身の安全は我々が保証いたしますが」
クーデターの片棒を担がせるつもりか。これはますます首を縦に振れないな。
アモンはともかく、俺は冥界とは関わり合いになりたくないんだ。
……そう言えば、俺は仮面の赤龍帝として名前が売れていたが
今は一体どうなっているんだろうな。フェニックス領ではえらい目に遭ったが。
今となっては過去の名前だが、そこは気になる。
「そう言えば。俺はフェニックス家との一件で『仮面の赤龍帝』と言う呼び名が
良くも悪くも浸透していた。その件については今はどうなっている?」
「その件でしたら、もうフェニックス領以外ではそれほど騒がれてない印象ですよ。
今話題になっているのは魔王様のスキャンダルや、アインスト絡みの事件ですね。
本家赤龍帝を魔王様が連れ帰って、期待の新人として扱おうとしているのは
賛否両論起こっているみたいですよ?」
「否の方が割合が大きいけどな。
言ってみれば、自分の妹の眷属を権力で無理矢理つなぎとめてるんだ。
お陰で俺もやりたくもねぇグレモリー家への死体蹴りが出来ちまって
困ってるところなんだぜ?」
やりたくもない、と言っているが内心ほくそ笑んでいることがリーの言い方から察せた。
ここまで来るとグレモリー家がかわいそうに思えてくるな、自業自得な面もあるし
そもそも俺はその家に殺されそうになってる節もあるんだが。
「私としましてはアスタロトがグレモリーより先に潰れた事に驚きましたがね。
あれはもう再起不能ですよ。ディオドラに引導を渡した人間に
ぜひお会いしたいと思っているのですが」
「あ、俺もぜひ取材させてもらいたいところだな。人間がどうやって悪魔を、アインストを
撃退したのか気になってたんだ」
ウォルベンとリーの言葉に、俺は首を横に振る。
いくら何でもクロスゲートの向こうにいる人をおいそれと呼び出すわけにはいかない。
そもそも、クロスゲートは俺の知っている限りじゃあれからうんともすんとも言って無い。
「取材拒否かよ……チッ、しゃあねぇな」
悪態をつくリーに対し、ウォルベンは何かを悟ったのか頷いていた。
そう言えば、俺には盗聴器が仕掛けられて
それはイェッツト・トイフェルの仕業だって事を考えれば
あの事件の一部始終を知っていてもおかしくないわけか。
……全く、本当に厄介な相手だ。
敵に回すのは避けたいが、言いなりになるのも避けたい。難しい所だ。
何が恐ろしいって、こいつはただの尖兵に過ぎない所が底知れなさを増している点だ。
指揮官クラスはコカビエルの騒動の時に遠目に見たが。
「話を戻しましょう。成二さん。あなたに憑いたアモンは
四大魔王とも互角に戦えるはずの悪魔なのですよ。
しかし、今はベオウルフの事件でサーゼクス眷属を封じているとは言っても
四大魔王全てを相手取って勝てるとは我々も考えておりません。そこで……」
「俺達ジャーナリストが、世論を反魔王派に傾けさせたところを」
「あなた方が新政権を立ち上げて、打倒すると言う事ですね」
ウォルベンの目論見を察したように、リーとバオクゥが口を挟む。
武力で反乱を起こさないだけ旧魔王派に比べて平和的と言うべきか
人間社会らしいやり方をしているな、と思いつつ
そんなやり方が悪魔の世界で通るのか? と言う疑問も生じている。
兵藤みたいなのが持て囃されると言う事は、力の社会なのだろう。
そこに力を伴わない改革を持ち込んでも、通じるものなのか?
「話の理解が早い方は助かりますよ。幸いにして、今の魔王の支持率は半々と言ったところ。
あと一押しがあれば、四大魔王を更迭することも不可能では無いと我々は考えています。
そうなってしまえば、後は力で旧来の貴族を封殺してしまえば
晴れて新政権を立ち上げることが出来る、と考えているのですよ。
老いさらばえた今の貴族悪魔は、武力では現魔王に敵わないことを知っていますからね。
武力が厄介な現魔王を更迭してしまえば、後は力でどうとでもなるのですよ」
「力が無いから、力ばかりの四大魔王を立てて傀儡にする……
ま、
リーの指摘に、ウォルベンは黙って頷いていた。
バオクゥも心当たりがあるのか、リーの言う存在に思い当たる節があるような顔をしていた。
「大王派」……そうバオクゥは呟いたのだ。
「ある悪魔に曰く、『変化を求めない化石』だそうですよ。悪魔の将来を考えるならば
今の大王派が実権を握っている状態は、決して宜しいものでは無いはずなんですがねぇ。
……これは私個人の意見ですが、化石にはご退場いただこうと思ってもいますよ」
「こいつぁ面白ぇ! 俺を締め上げた時はなんだこいつって思いもしたが
中々面白いことしてくれるじゃねぇか!
よし決めた! 俺はお前らイェッツト・トイフェルにつくぜ」
その大王派と言うのを俺は詳しくは知らないが
どこにでも政治的なしがらみはあると言う事はわかった。
そして、それを快く思わない軍部組織によるクーデター。
それが、今のイェッツト・トイフェルのなそうとしている事なのだろう。
禍の団の脅威が消え去らぬうちに行動を起こすのは、時期尚早な気もするが。
「ふっふっふ……賛同していただきありがとうございます、リー・バーチさん……
他のお二方は、どうなさるおつもりですかな?」
「ちょっと待て。その前に
クーデターなんか、やってる暇はあるのか?」
「勿論、今すぐに事を起こすなんてそれは愚か者のすることです。
そう、神仏同盟に正面から反感を買いに行っている現魔王のようにね。
ですから、禍の団の弱体化を確認でき次第、即座に行動に移すつもりです。
その為の布石を、今の時点から打っているだけですよ。
……ああ、神仏同盟と手を組んで、四大魔王を駆逐するのも手ですねぇ。
ふっふっふ、良くも悪くも攻略のし甲斐がある相手ですよ……!」
俺の指摘に対しても、ウォルベンは不敵に笑っていた。
やはり、冥界のゴタゴタに巻き込まれるのはご免被りたいところだが……
「……考えさせてください。情報と気持ちの整理もしたいものですから」
「俺もバオクゥと同じく、だ。禍の団と戦うと言うのであれば協力は惜しまないが
冥界のいざこざに自分から首を突っ込めるほど、俺は冥界にいい感情を持っていない」
バオクゥはやはりアジトを襲撃するような相手と組みたくない心情が勝ったのか
イェッツト・トイフェルと組むことには後ろ向きのようだ。俺もそうだ。
答えの先延ばしに過ぎないかもしれないが、かといって正面切って
イェッツト・トイフェルと戦うのはあまりにも愚策だ。
四大魔王も俺にとって敵かもしれないが、敵の敵が味方である保証はない。
「おや。アモンの件もある事ですし成二さんはてっきり協力していただけると思いましたが……
まぁいいでしょう。当面の敵は禍の団であることに変わりはありませんし
ジャーナリストの協力が得られただけでも良しとしましょう。
では皆さん、またお会いしましょう」
そう言い残し、ウォルベンとリーは魔法陣で冥界へと転移したようだ。
リーは今後イェッツト・トイフェルのお抱えジャーナリストになるのだろうか。
これから、四大魔王へのバッシング記事が増えそうな気がするな。
「……セージさん。私はイェッツト・トイフェルを完全に信用したわけではありません。
ですが、四大魔王を更迭し大王派を放逐するのも冥界にとって必要なことだと思うのです。
そこで、自分が何をすべきかもう一度お師匠様と相談してみたいと思うのです。
ですから、一度お師匠様がいる
何かわかり次第、またお伝えしますので……」
そう言い残し、バオクゥは魔法陣で珠閒瑠市へと転移したみたいだ。
珠閒瑠市。一体どんなところなんだろうか。俺は行ったことが無いが。
――――
公園の緊迫していた空気は元に戻り、辺りは静寂が支配していた。
俺はイェッツト・トイフェルの事やアモンの事など、冥界に関する諸々を考えていた。
冥界での戦いは、俺の管轄を超えている気がしたからだ。
幾らアモンが憑いているからと言っても、そこまでアモンに従う理由は果たしてあるのだろうか。
『何を思い悩んでいるんだ。奴ら悪魔が人間界にちょっかいを出さなくなれば
お前の目的も果たせるじゃねぇか。俺としては、イェッツト・トイフェルと組むのは
賛成できると思うけどな』
『俺は反対だ。奴らは根本のところで悪魔だ。そこにお前が乗り込んでみろ。
いいように使われるのがオチだぞ』
アモンとフリッケンも、見事に意見が割れてしまっている。
こういう時、何も考えてない兵藤が少しだけ羨ましい。
見習うつもりは毛頭ないが。
俺は、果たしてどう動くべきなのだろうか。
イェッツト・トイフェルに協力し、冥界を平定させるべきなのか。
人間として、冥界のいざこざには首を突っ込まずにいるべきなのか。
……俺個人としては、後者を選びたい。
だがそれは、アモンとの約束を反故にする意味合いも含まれている。
悪魔憑きになった俺には、人間の世界で生きていくことは許されない事なのだろうか?
少なくとも、今の四大魔王の治世では冥界と人間界の関係が良くなることは無いだろう。
他所の国はわからないが、ここ日本とは相性が悪すぎる。
少々反則な気もするが、この事は神仏同盟に持ち込んでみることにした。
そう考え、腰かけていたベンチから立ち上がろうとしたとき
目の前に黒歌さんが現れる。留守番を頼んでおいたはずなんだけどな。
「お悩みのようね少年。お姉さんが相談に乗ってあげるにゃん」
「……暇だからって勝手に外に出んでください」
俺の一言に、黒歌さんは慌てて取り繕っていた。図星かよ。
だが、俺が考え込んでしまっているのも事実だ。ここは黒歌さんに話すべきなのだろうか。
まあ、言うだけ言ってみるか。
「出て来てしまったものは仕方ないから、いいとしますけど。
実は――」
今まで起きた事を話す。黒歌さんも冥界にいた時間が長かったからか
それなりの情報は知っているようだが、イェッツト・トイフェルの思惑については
今一つ要領を得なかったようだ。
「私にはそいつらの目的が今一ピンとこないけれど……
お兄さんはお兄さんよ。アモンがどうこうじゃなくて、お兄さんが何をしたいのか。
そこだと思うわ。それが裏目に出ちゃった私が、言えた事じゃないけどね」
裏目に出た……それは悪魔契約の事を指しているのだろうか。
深く追及はしないでおいたが。
それはそうと、俺のやりたい事……か。
平和に過ごせるのが一番なんだが、それは叶いそうにないからな。
かと言って、冥界のいざこざに首を突っ込みたくはない。
そうなれば、答えは一つ、か。
「アモン。お前には悪いが、やはりイェッツト・トイフェルと組む気は無い。
だが魔王陛下が俺達の世界にちょっかいをかけてくるのなら、俺は迎え撃つ。
積極的には攻めないが、かといって黙ってやられるつもりも無い。
……それが気に入らないなら、俺から出ていくなり、無理矢理言う事聞かせるなりして
意見を通してみるんだな。後者は無論抵抗させてもらうが」
『……チッ。今はそれで我慢してやるよ』
今は、と言うのが気になるが何とかアモンの言質も取れた。
そうなれば、俺がやるのは今までと同様、超特捜課で町の平和を守るために
活動を続けることだ。
「どうやら、お役に立てたみたいで嬉しいにゃん。その対価を支払って欲しい所だにゃん。
具体的には撫でて欲しいにゃん」
「その姿のままでは丁重にお断りさせてください。猫の姿ならともかく」
……ここにも色仕掛けしかけてくるのがいたよ。
まぁ、誰ぞと違って悪意が感じられないからまだいいか。それに、こっちは逃げ道がある。
猫を撫でるのは、俺も小さい頃からよくやっているから得意だし、癒される。
因みに鳥は好きでも嫌いでも無い――鶏肉は好きだが。
だがカラスを撫でる気にはどうしてもなれない。
姫島先輩に言い寄られるよりは、こっちの方がよほど安心できる。
あの人のアプローチは、好意に起因していない気がするし。
そんなアプローチに乗ってやれるほど、俺は安くないつもりだ。
……うん? って事は黒歌さんは……
……いやいやいやいや。深く考えるのは止そう。
そうでなくともまだ明日香姉さんの件の踏ん切りがついてない。
……果たして、無事でいてくれているのかな。明日香姉さんは。
――――
警察署に戻ると、既にオカ研の面々は解散していた。
黒歌さんがそのままついてきていたので、白音さんと対面した時にちょっとした騒ぎになったが。
「……留守番位きちんとしてください、姉様」
「あー、そこはまぁ結果オーライって事で。それよりオカ研と関わるって事は
多かれ少なかれ魔王陛下とも関わることになるだろうが、その件についてちょっと、な……」
そして、俺はその場にいた白音さんと祐斗、それからアーシアさんに
イェッツト・トイフェルの動向について話す事にした。一応他言無用とした上で。
その際、氷上さんら警察の人に盗聴の心配が無いかもチェックしてもらっているので
そう言ったところから情報が洩れる、って点も心配ない……筈だ。
「冥界は、そんなことになってたんですね……部長さん、いいように使われてないか心配です」
「そうだね。イッセー君の扱いもそうなんだけど
魔王様は、まるで僕らを実験動物か何かと見ているんじゃないかって気がするんだ」
実験動物か。確かに優秀な神器を持っていたり珍しい種族の眷属だったりしたら
そのデータは喉から手が出るほど欲しいだろうよ。
その代表例が兵藤って訳か。自分で言うのもなんだが、俺のデータも狙っているんだろうな。
その為にイェッツト・トイフェルを差し向けたって考えるのが普通だろうが
奴らは奴らで思惑がある。そこも合わせて俺は奴らの案には乗れなかったのだが。
魔王と言う役職上、そう言う事をしてでも悪魔と言う種を存続させたいのだろうが……
前にも面と向かって言ったが、人間はサルを人間に改造したりしない。はずだ。
チンパンジーやオランウータンに知育を行う事はあるが
それは少子化問題とは何の因果関係もない。そこの一線は弁えているはずだ。
その一線を超えたからこそ、悪魔の悪魔たる所以なのかもしれないが。
「実験動物……間違って無いわね。私も酷い目に遭わされたし
奴らにとって私ら別種族との約束なんて無きが如しよ。白音、その話は前に話したわよね?」
黒歌さんのシリアストーンに、白音さんも黙って頷く。
軽率な考えで悪魔になったことを恥じるとともに、自分のたった一人の妹を巻き込んでしまった
その後悔の念は、今なお黒歌さんを苦しめているのだろうか。
それについて、俺が出来ることは多分、無いのかもしれないが
せめて猫魈・黒歌さんとして彼女と接することが俺に出来ることでは無かろうか。
俺だって、悪魔の駒を抜いてハイおしまい、とは思っていない。
アフターケアは、可能な限り行うつもりだ。
「……それにしても、僕は本当に蝙蝠だね。部長に忠誠を誓うと言っておきながら
こうして部長に反旗を翻しそうなセージ君とも行動を共にしている。
セージ君、敢えて聞きたいけれど僕は騎士失格だと思うかい?」
「……主君の間違いを正すのも従者の役割だと、俺は思うぞ。
そのポジションに当たる人物がいないのは、グレモリー先輩にとっては不幸だと思っている」
「言って聞くタマかにゃん? 私にはそうは思えないけどにゃん」
祐斗の発言に対し、俺はそれも騎士の在り方の一つだと答えたが
黒歌さんはグレモリー先輩に対して辛辣な事を述べている。
まぁ、俺も黒歌さんの言う事は大体あってるように思えるんだが……
「セージさんは部長さんに間違いを指摘したりしないんですか?」
「前から俺はグレモリー先輩にも散々言っただろ、アーシアさん。それがこのザマだ。
俺はもうグレモリー先輩とも兵藤とも積極的に関わる気は無い。
特に兵藤、あいつはダメだ。アーシアさんの前で言うのも気が引けるが
あいつはもう身も心も悪魔になりきってる。人としての良心が、微塵も感じられない。
人殺しの事もそうなんだが、自分を生み育ててくれた両親に対する感謝ってものが
すっぽりと抜け落ちてる。俺に言わせば、それだけで評価は最悪だな」
「……以前の私なら、悪魔にだっていい人はいます、と言ったかもしれません。
けれど、今の私の言うそれは、きっとイッセーさんには当てはまらないかもしれません……
天野さんとは、それほど話した事も無かったですし、レイナーレを利用して
イッセーさんを殺そうとしたのも多分間違ってると思うんです。
けれどうまく言えませんが……力で誰かを踏みにじる、ってやり方がまかり通るのは
絶対に間違ってる、私はそう思うんです」
アーシアさんは真剣な面持ちで兵藤の、力を正しく行使しない者の在り方を批判していた。
考えてみれば昔のレイナーレも、今の兵藤も力で他人に言う事を聞かせようとしていた。
……って、これは俺もか。合意の上とは言え、グレモリー先輩に反旗を翻したんだからな。
普通ならここではぐれ悪魔になるんだろうが、俺にはもう悪魔の駒は無い。
だから、はぐれ悪魔になる要素は無いわけだ。
その代わり、冥界の裏切り者アモンが憑いているが。
「力で他者を踏み躙る……ここにいる皆に改めて言っておきたい。
俺がもしそんな存在に陥るようなことがあったら……全力で止めて欲しい」
「お兄さんはそんな人じゃないにゃん。私を助けてくれたし、白音の力にもなってくれた。
それがお兄さんの本質にゃん。きっとここにいる皆が同じ考えにゃん」
「……姉様を助けてくれたセージ先輩。私は信じてますから。
もしそうなっても、ここにいる皆で止めますから。心配しないでください」
「海道の件でも世話になったからね。敵うか敵わないかの問題じゃない。
誰かを止めるのは、何も力だけじゃないよ。セージ君」
黒歌さん、白音さんの姉妹の言葉に、祐斗の答えに俺は感激していた。
誰かを止めるのは力だけじゃない、か。力でねじ伏せるだけではない、別のやり方。
兵藤や魔王陛下は、その事が頭からすっぽりと抜け落ちているんじゃないか?
そう思えるくらい、力に頼ったやり方が目についてくる。
――そう、そこのイケメンのお兄さんの言う通りだよ。
ふと聞こえてきた懐かしい声。いや、実際には冥界から駒王町に帰って来た時に
一度だけ顔合わせをしていたから、そこまで懐かしい声じゃないんだが。
だが、俺が身体を取り戻したことで、霊体ではなくなった。
そうなってからは、初めて聞く声。
そして、それは彼女達とは異なる存在になった事を意味していた。
そう、声の主は――
――虹川姉妹。
俺が霊体になって、悪魔にされて初めて関わった騒霊バンドの少女達だ。
「セージさん、人間って……何なんでしょうね」
「僕達は既に悪魔になっている。だからこそ、君にはその道を大事にして欲しいんだ」
「猫は家に付く? そんなもん、迷信だにゃん」
「……この恩は、一生忘れませんから」
「……さ。これが泣いても笑ってもラストライブ。セージには世話になったからね」
「…………俺は」
次回、ハイスクールD×D 同級生のゴースト 最終回
Soul Final. 俺が人間であり続ける理由
11月20日(月) 20:00公開予定