元ネタを茶化すつもりは全くありませんが、何かありましたらご一報のほどを。
翌朝。俺はもう実体が維持できないためくしゃみをしながら霊体に戻り、イッセーを探す。
憑依し直せばイッセーにうつすかもしれないが、風邪薬位は飲めるだろう。
と言うより、早いところ暖を取りたい。結局橋の下で寝ていたので、寒いのだ。
そんな矢先、イッセーが松田と元浜にクロスボンバーをくらっているのを目撃する。
この二人はいつから完璧超人に弟子入りしたんだ?
今のご時世なら磁力じゃなくて光通信で皮が剥げそうなクロスボンバーができるのだろうが
やはり人間だからそこまでは出来ないのか。
いや、そうじゃなくて。聞けば、「女子を紹介しろ」と言った二人にイッセーが紹介したのは
なんと世紀末覇者ないしキン肉魔法漢女ことミルたん。あー、そりゃこの二人にはキツいわー。
けれど半分はこいつらの自業自得じゃなかろうかとも思ったり。
スケベ根性だけで動くからそうなるんだ。相手がまだイッセーの知り合いでよかったな。
これがもしその筋の人だったら今頃ドラム缶の中身になってるんじゃないか?
ともあれ、色々地獄のような体験をした二人だが……霊魂の俺が聞いてもやはり背筋は凍る。
ドラム缶の中身にされるよりはマシかもしれないが……
うん、比較対象おかしいしな、ドラム缶は。
よかったな。夏の怪談シリーズはそれで行けるぞ――と、イッセーを通じて言っておいた。
その後イッセーは松田からキン肉バスターを、元浜からパロスペシャルを喰らっていた。
でも俺関係ない……っくしっ! さて、どうやって風邪を治そうか。
とりあえず悪いイッセー、風邪うつしちまったかも。あ、バカは風邪ひかないから大丈夫か。
――――
「……へっくしっ! 風邪ひいたかなぁ」
「だ、大丈夫ですかイッセーさん?
ごめんなさい、私の聖母の微笑じゃ風邪は治せないみたいで……」
一日の授業を終え、俺達とアーシアさん、そして木場の四人は部室に向かっている。
その途中、と言うか今日一日中イッセーはくしゃみをし続けている。
その原因はほとんど俺。都合よく保健室にも行けなかったため、結局風邪薬は飲めていない。
それによく考えたらイッセー自身は健康……なはずなので
そんな奴に風邪薬を飲ませるわけにも行かない。まあ、暖が取れるだけでもよしとしようか。
『あーすまん。風邪ひいてるのは俺だ。昨日シャワー出てから体拭くのも忘れて
その後色々あった上に野宿だったからな。風邪ひくなっていう方が無理だ……っくしっ!』
「ご、ごめんなさいセージさんっ! 私、てっきりイッセーさんの方かと……」
「よく分からないけど、何だか災難だったねセージくん」
結局、アーシアさんに余計な心配をかける羽目になってしまった。
やはり風邪は引くものじゃないな。不可抗力とは言え。
まあ、こうなったのも本をただせばグレモリー部長のせいなのだろうか?
まさか、シャワー浴びているときに乱入してくるとは思わなかったし。
これについては責任追及しても仕方ないな。したくもないし、色々な意味で。
などとあれこれ考えている間に、イッセーは木場にグレモリー部長の最近の様子を聞いている。
その件については、俺にはおおよその見当がついている。
だが、それを今言うのは微妙に憚られる。まだ、俺の推測に過ぎないからだ。
繋がってはいるから、多分間違ってはないはずなんだが……
「まいったね。僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」
ふと、部室に入ろうとした木場の足が止まる。む? 何やらただ事ではなさそうだが。
部室の中にはグレモリー部長、姫島先輩、塔城さん。ここまではいい。
だが、その他に――グレイフィアさんがいた。昨日の今日とは、また急な話だ。
そのせいか、部屋の空気が何やら詰まっている。これは面倒臭そうな展開になりそうだ。
それより何より、俺の予想が正しければ……
「全員……まあセージはイッセーの中にいるでしょうから、全員としておくわ。
揃ったところで部活を始めるけど、その前に話があるわ。実は私は――」
グレモリー部長が言い終える前に、床に魔法陣が現れる。
これは……グレモリーのじゃない、誰だ? そしてここから現れる炎は……
ちっ、ここは木造だぞ、火事になったらどうするんだ!?
「――この紋様は、フェニックスの……」
『何っ!? 知っているのか、木場!』
フェニックス。鳳凰とも称されるあれか! 不死身で、激しい炎を纏った鳥の!
魔法陣の炎が収まると、その中には歌舞伎町にいそうなチャラい系の男がいた。
こいつが、フェニックス――?
「よう、愛しのリアス。会いに来たぜ」
――なるほど。これで全部繋がった。この男の態度と
グレモリー部長の辟易とした表情を見ればわかる。こいつが婚約者か。
その部長の表情を知ってか知らずか、このチャラい婚約者は馴れ馴れしく部長の隣に座っている。
イッセーが何やら不穏な表情を浮かべているが、まあなんとなく考えていることはわかる。
それにしてもこの婚約者、あまり教養があるようには見えないんだが。
他人の家を悪し様に言うのは憚られるが、こんなのと政略結婚しなきゃならないグレモリー家って
相当ヤバいんじゃないのか?
大方、互いの親が目先の利益に釣られて無理やり引っ付けたって形だろうな。
結婚は人生の墓場。よく言ったもんだよ……何かこのフレーズも、幾度となく聞いた気がするんだが。
……はて。誰の愚痴だ? ま、今はそれよりも……
「おい、あんた部長に対して無礼だぞ! つーか、女の子に対してその態度はどうよ?」
『おいイッセー、落ち着け。つーか、お前が言うな……っくしっ』
マズい。イッセーがヒートアップし始めてる。こいつ、グレモリー部長や
アーシアさんの事になると見境無くなるからな。やれやれ、おアツイこって。
まあそのおアツイ想いも、婚約がある以上横恋慕になっちまうんだよなぁ。
それに対してフェニックスの方は、物凄い冷めた目でこっちを、イッセーを見ている。
まるで、自分とは格が違うものを見るような目。いつぞやのアイツと近いものを感じる。
イッセーはドヤ顔で自己紹介をしているが、向こうは表情ひとつ変えていない。
歯牙にもかけないとはこのことか。まあ、そうだろうな。
向こうは完全にグレモリー部長「だけ」が目当てだ。
「つーか、お前誰だよ?」
「……あら? リアス、俺のこと下僕に話してないのか?
つーか、俺を知らない奴がいるのか? 転生者? それにしたってよ」
「話す必要がないから話してないだけよ」
イッセーの問いかけにフェニックスが一瞬怪訝な顔をするが、グレモリー部長にあっさりと
言い負かされている。あ、これ完全に嫌われてるパターンだ。見ただけでわかる。
やれやれ。よほど強引な手法を使ったらしいな。どっちの親が、かはわからないが。
困惑しているイッセーに、グレイフィアさんがこの男の紹介をはじめる。
「兵藤一誠様。それと、一誠様に憑いておられる歩藤誠二様。
この方はライザー・フェニックス様。純血の上級悪魔であり
古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます」
……なにこれ。叩けば叩くほど出てくるこのあからさまないいとこの坊ちゃん臭。
この見た目では、さしずめドラ息子ってところかもしれないが。
「そして、グレモリー家次期当主の婿殿でもあらせられます」
「え、えええええええええっ!?」
『……やっぱりな』
間髪いれずに紡がれたグレイフィアさんの次の言葉に、イッセーは驚愕していた。
やっぱりな。このタイミングで出てくるんならそういうことだろう。
しかし、まぁ、何というか。俺の想像以上にアレだったのは、ちと驚いたが。
いや、これが悪魔のトレンドなのかもしれないが。
ふと、奴の目線がイッセー、いや俺を捉えた気がした。
俺が見えているのか、どうかはわからないが。
「おい。さっきそいつに『憑いてる』っつったよな? って事は出られるんだろ?
将来の主人がいるというのに、挨拶に出ないとはな。
本当、リアスの眷属はろくなのがいないな」
「おいセージ、出たほうがいいんじゃないか?」
『――ぐしっ。わかったよ。その代わり、俺は言いたいこと言ったら戻るからな。
正直、この空気は嫌いなんだ。さっきから煙たいし』
鼻を啜りながら、俺はイッセーに応えるようにして実体化する。
俺の渋々といった様子に、フェニックスのボンボンは不服そうだが、知ったことか。
「……お初にお目にかかります。私は歩藤誠二。
リアス・グレモリーが眷属にして『
「あっそ。まあなんでもいいけどよ。ほら、気のきかねぇ奴らだな。主の旦那が来たんだ。
お茶やお茶請け位用意するもんだろ。早くしろよ」
……なにこいつ。いつぞやとは違う意味で腹が立ってきたな。あの時ほどではないにせよ、だが。
イッセーが敵愾心をむき出しにしつつあるが、その気持ちもわからんでもない。
姫島先輩がそそくさとお茶を淹れに行くが、ちらりと見たその表情は
目が笑ってなかった。昨日、一体何を話したと言うんだ。まあ、なんとなく察しがつくが。
姫島先輩が淹れたお茶を飲みながら、フェニックスのボンボンは部長に馴れ馴れしく触ってる。
これ、どう見てもキャバクラで勧誘に来たホストにしか見えないんだが。
イッセーの方は、何やら勝ち誇ったような面構えをしてヨダレを垂らしている。
――くそっ。こっちにも頭の痛い奴がいた!
俺が内心頭を抱えていると、グレモリー部長の怒号が響く。
まあ、あれだけ馴れ馴れしくしてりゃあな。
「いいかげんにしてちょうだい! ライザー、以前にも言ったはずよ!
私はあなたとは結婚しないわ!」
「ああ、前にも聞いたよ。だがキミのところのお家事情は結構切羽詰っていると思うんだが?」
――やっぱりか。でなきゃ、こんな感じの悪い如何にも頭の悪そうなのが
婚約相手にあてがわれる訳が無いものな。いや、悪くはないのかもしれないけど……
グレモリー部長と対比したとき、不釣合いな印象をどうにも受ける。何かが噛み合わないんだ。
「余計なお世話だわ! 私が次期当主である以上、婿くらいは自分で決めるつもりだわ!
皆急ぎすぎなのよ。私が人間界の大学を出るまでは自由にさせるって話だったのに!」
「その通りだ。だが、ご両親も
先の戦いで多くの純血悪魔が死に絶え、お家断絶した家も少なくない。
純血の新生児がどれだけ貴重かは、キミもわかっているだろう?」
確か、以前言っていたな。悪魔と堕天使と天使の戦いがあったと。
その戦いの爪痕はまだ残っていると。その当事者は、尻拭いを新世代の悪魔にさせているのか?
だとしたら……根は深そうだ。
……ってちょっと待て。今ちらりとサーゼクスって名前が出たが。
もしかしてサーゼクス・ルシファーか?
俺は周囲に気づかれないように、グレイフィアさんにそっと耳打ちをする。
「グレイフィアさん、少しよろしいですか?」
「はい、なんでしょう?」
ふと、質問する段階になった途端に思い出した。
こう切り返されたらアウトだ。「何故サーゼクス様と私やお嬢様の関係を知っているのか」と。
……仕方ない、もう少し伏せておくつもりだったが
ここで
種明かしをしておけば、疑われることは無いだろう。
余計なことに引っ張り出される可能性も発生するが。
「つかぬ事を伺いますが、あなたにご子息、あるいはご息女はおられますか?
……隠しても無駄だと思うので打ち明けますが、私には他者のある程度の情報を調べる能力があります。
その際、魔王サーゼクス・ルシファー様の名前があなたを調べたとき、表示されたもので――」
「ええ。私には息子がおります。しかし、それがお嬢様のご婚約とどのような関係が?」
「――いえ。少し気になっただけですので。お答えいただきありがとうございます。
それと、調べた情報は外部には漏らしていませんので……っくしょん」
「当たり前です。それより誠二様。風邪をお召しでしたら、暖を取られたほうが良いかと存じますが」
あ、ありがとうございます。それはそうと彼女も純血悪魔。そしてその旦那にして
魔王のサーゼクスも当然、純血悪魔。なんだ。もう純血種いるじゃないか。しかもグレモリー家に。
その上でさらに純血種を望むとは……全く、悪魔らしく強欲だよ。
グレモリー部長のお怒りもごもっともだ。
「私は家は潰さないわ。当然、婿養子も迎え入れる」
「おお! ならリアス、早速俺と――」
「でも、あなたとは結婚しないわ。私は私がいいと思った者と結婚する。
古い家柄の悪魔にだって、それくらいの権利はあるはずよ」
おお。ここまではっきり言い切るとは。余程、腹に据えかねてると見た。
なるほど。グレモリー部長も自分の生涯を他者に決められるのは嫌いらしい。
まあ、誰だってそうだろうけど。
「……俺もな、リアス。フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ。
この看板に泥を塗られるわけには行かない。キミのためにわざわざ人間界まで出向いたが
正直、俺は人間界が嫌いだ。この世界の炎と風は汚い。炎を司る悪魔として耐え難いんだよ!」
ふむ。向こうにも背負ってるものがある、と。ただのチャラ男じゃなさそうだ。
だがこの世界を悪し様に言われていい気はしないな、この世界に住んでるものにしてみれば。
そもそも、一応神話に則るとこの世界の炎も神から賜ったんだがね。
――それよりなにより。アホみたいに見せびらかすのがあんたの言う高貴な炎なのか。
ここが木造なのは知らないわけでもなかろうに。燃えるぞ。マジで。
それとも、火事を起こしに来たのか。へぇ、良家のボンボンは放火が趣味でいらっしゃるか。
そのうち電波とか受信しそうだな。外宇宙の這い寄る混沌あたりからの。
俺の腹の中の皮肉を読み取ったかのように、フェニックスは語気を荒げ、炎を纏っている。
口に出して言っても良かったのだが、まあ一応眷属だ。
外交的に主の顔に泥を塗る真似は避けたい。
「俺はなんとしてもキミを冥界に連れ帰る。キミの下僕全部を燃やし尽くしてでもな!」
「やれるものならやってみなさい」
うわ。実力行使とな。形振り構わないのか。ちょっと待てよ。
さっき泥を塗るわけには行かないって言ったよな?
言ったそばから実力行使ってどんだけだよ。
くそっ、お家騒動で大火事起こすなんて! 他所でやれ、他所で!
チッ、しかも部長までヒートアップしてやがる!
そっちが実力行使をするなら、こっちだって――
――水汲んでくるか。
俺がシャワーからバケツ一杯分の水を汲み、両者にぶっかけようとしたその矢先
グレイフィアさんの口が開く。
「お嬢様、ライザー様。おやめください。これ以上やるのでしたら
私も黙って見ているわけには行かなくなります。サーゼクス様の名誉のためにも
私は遠慮などしないつもりです」
どうやら、俺が汲んできた水は空振りに終わったらしい。
グレイフィアさんの気迫に負け、二人とも引き下がったのだ。さすが、魔王の奥様。
さらに、グレイフィアさんはこうなることを見通していたかのように続けて言葉を紡ぐ。
「こうなることは予想しておりました。話し合いで解決しないのであれば
『レーティングゲーム』で決着をつけるのはいかがでしょう?」
レー……なんだっけ。正直、すっごい興味なかったからここの説明はかなり聞き流していた。
イッセーが木場に確認をとっているのを聞くが、成熟した悪魔同士で行われる
模擬戦のようなもので、悪魔社会においてはこの上ない娯楽にもなっている。
しかも、このゲームの戦績が現在の家の位にも影響する、現代悪魔社会において
切っても切れないもの、だそうだ。
あーそうだったそうだった。悪魔社会に興味がなかったから、完全に聞き流してたわ。
おや? だがその理屈で行くとグレモリー部長はゲーム参加経験がないことになるんだが?
と、疑問に思っているとその疑問に答えるかのようにグレイフィアさんが言葉を続ける。
「お嬢様もご存知のとおり、公式なレーティングゲームは成熟前の悪魔は参加権がございません。
しかし、非公式のレーティングゲームならば未成熟の純血同士の悪魔の試合も行われます」
「その場合、多くは身内同士かお家同士によるものよね。
全く、お父様はどこまで私の人生を弄れば気が済むのかしら……」
ふむ。どこの世界もお家騒動みたいなスキャンダルはこの上ない娯楽か。
まあ、対岸の火事みたいなもんなんだろうな。
ご立腹の様子の部長を見かねてか、グレイフィアさんが声をかける。
「では、お嬢様はゲームを拒否なさると?」
「まさか。こんな好機は無いわ。ゲームで勝負をつけましょう、ライザー」
……それが悪魔社会の常識と言われれば立つ瀬もないが
そんなホビー漫画みたいなノリでいいのか?
さっきまで悪魔社会の未来をかけた云々かんぬん言ってなかったか?
しかも相手の方はノリノリどころか自信満々だ。待ってましたと言わんばかりか。
「へー。受けちゃうのか。俺は構わない。だが、俺は既に成熟しているし
公式戦の成績も白星の方が多い。それでも受けるのか、リアス?」
なんと。これは向こうのペースに乗せられていないか?
オカ研面子は参戦経験が無いというのは話の中でもわかる。
今までの戦闘経験は、精々はぐれ悪魔討伐と先日の教会の一件くらいだろう。
この場合、万が一に受けない場合は家の意向を無視したことでペナルティ。
受ければ勝算はほぼゼロだから結婚。結婚か、ペナルティか。
なるほど、ほぼゼロの方に賭けたってわけか。
何もせずにってよりは余程立派だろうけれども、ねぇ。
おまけに現時点で完全に向こうのペースだ。戦う前からこれでは……
というよりも、何なんだよ
そんな競技感覚の戦闘なんて御免被るんだが。俺はサバゲーには興味がないんだ。
やりたい奴だけやってくれ。代理戦争みたいなもんだろ。やなこったよ。
そもそも俺は基本人助け以外で戦いたくない。
先日の教会の一件はアーシアさんを助けるって名目と
俺やイッセーの仇がいたからだ。今回はどう見繕ってもただのお家騒動。
正直、グレモリー部長が誰と結婚しようが、はっきり言って俺には興味ないんだが。
そりゃあ、俺みたいな所謂ショ・ミーンと良家のお嬢様じゃあ
結婚に関する見方も違うんだろうけれど。けれども自分の婚姻が嫌だからって
眷属けしかけてまで首を横に振るのか、そうなのか。
……まあ、眷属ってのは主の機嫌一つでどうにでもなるのが悪魔の世界らしいからね。
仕方ないね。
つまり俺は何が言いたいのかと言うと――やる気出ねぇ。
だがそんな俺の意向など知ったこっちゃないとばかりに
グレモリー部長は啖呵を切ってらっしゃる。
もう勝手にやってくれ。俺は知らん。
「やるわ、ライザー! あなたを消し飛ばしてあげる!」
「いいだろう。そちらが勝てば好きにすればいい。
だが俺が勝てば即座にリアスと結婚させてもらうぞ」
「承知いたしました。おふたりのご意思は私グレイフィアが確認させていただきました。
ご両家の立会人として、このゲームの指揮を取らせていただきます。よろしいですね?」
あーあ。もうトントン拍子で話進んじゃってるし。もう知らないっと。
俺は今度はイッセーに耳打ちし、半ば強引にとり憑く。
「あーあ。もう付き合ってらんねぇ。イッセー、俺興味ないから寝るわ。起こすなよ」
「あ、おいセージ!?」
あーあー聞こえない。そもそもあいつが来てから煙たいんだ。
くしゃみに加えて咳き込むとかこれ完全に風邪の症状だよ。
咳は誰かさんがアホみたいに火を見せびらかしてるから煙たいのが原因だろうけど。
確かに数刻前まで暖を取りたいとは思っていたが……違う、こうじゃない。
そんなことを考えながら模様替えしたイッセーの精神世界で寛いでいる。
オカ研の部室を模している。結構これはこれで、居心地がいい。
当然、イッセーの許可は得ている。オカ研の部室なら、って事で快諾が得られたのだ。
そんな時ふと、その煙たい奴が何か言っているのが聞こえた。
「なぁリアス、ここに居るのがキミの眷属なのか……うん? 一人減った気がするが、まぁいいか。
どうせ一人いてもいなくても変わらんだろう。悪いがこれじゃ話にならないんじゃないか?
キミの『
フェニックスは勝ち誇ったような態度を取っているが、俺は気にも留めていない。
何だか知らない間に勝負する流れになっているが……もし俺に発言権があるのなら
迷わずNOと言っていただろうな。全く、誰が得をするというのだろうな。
戦いなんて、しないに越したことは無いのに。
……うん? 今俺はイッセーに憑いてる、って事は……ふっふっふ。
俺は参加する気はないが、情報収集はお手の物だからな。そういう参加方法もありだろう。
うん。ありだ。俺が決めた。
BOOT!! COMMON-LIBRARY!!
(セージ、神器であいつを調べるつもりなのか? 今から戦う気満々じゃねぇか!
あれだけ部長の事嫌いだって言ってるのに、お前は本当によくやるぜ。よっ、このツンデレ野郎!)
『バカ言え。何で俺が他人様のお家騒動に首突っ込まにゃならないんだよ。
俺は戦う気はないが、グレモリー部長はそうでもないだろ? 俺だって一応は眷属だし?
正面切って戦う義理はないが、情報収集くらいはやってやるってことだよ。
それとグレモリー部長に対してデレているのはお前であって、俺は無い。覚えとけ』
イッセーの茶々に突っ込みを入れつつ、俺は
そう。正面切って戦うのはアホらしくてやってられないが、相手を調べるのは出来る。
実際に刃を交えるのは、やりたい奴がやればいい。
少なくとも、俺はグレモリー部長に対して命の危険を冒すまでの義理や忠誠心はない。
さて、早速情報を読み解こう――。
ライザー・フェニックス。フェニックス家の……ああ、これさっき聞いたから省略でいいや!
しまった、ハナからアナライズかければ良かったか。失敗したな。
と、頭を抱えているとつらつら流れている情報の中に有力そうな情報を発見した。
『既に悪魔の駒を全て使用しており、フルメンバーの眷属を従えている。
全員が女性で構成されており、各々の戦闘能力にはバラつきがあるものの
コンビネーションで補うものも少なくない。
自身の不死の特性とフェニックス家謹製の治療薬「フェニックスの涙」による
継戦能力は他の悪魔の追随を許さない、か……イッセー?』
「ぜ、ぜ、ぜ、全員女の子だとぉぉぉぉぉぉ!?」
そう。ライブラリの表示が終わったと同時に現れたフェニックスの眷属は
下は幼い見た目の少女から、上は俺の好みに近いお姉さまタイプまで、幅広く揃った女性。
そう、それはまさにイッセーが夢見たハーレムそのものであった。
……悪魔って、こんなんばっかなのか?
まあ、こいつらとも戦うことになるんだろうからこっちも偵察、偵察っと……
うわあ、数が多いから大変だ。一人一人表示させるのは大変だな。
こりゃ時間を食うアナライズなんてした日には日が暮れるかもしれないな。
この綺麗な人が「
「
えーっとそれから……「
な、なんて業の深い……と、とにかく情報収集が先か。えーっと……
……で、何をやってますかねこのチャラ男は。
自分の眷属とイチャついてるとは随分な余裕ですな。
仮にも婚約者の前でそういう行為に及べるというのは、ある意味尊敬できるよ。
で、今イチャついてるのが「
得物がチェーンソーとか、どこの殺人鬼だよ。
それからそれから……ん? おいイッセー、何をやろうとしてるんだ?
「お前じゃこんな事一生できまい下級悪魔くん」
「お、俺が思ってることをそのまま言うなぁ!!」
イッセー、わかりやすいリアクションどうも。でもうるさいからちょっと黙っててね。
今回、数が多すぎて全体に開示できないんだよ。それだけで時間と魔力食うし。
だからなんとか記録再生大図鑑に記録させたいところだ。
一度記録すれば、後は出力できる――アナログでだけど。
よし。なんとかライブラリ分は出力できた。後は――
COMMON-ANALYZE!!
アナライズだ。どんなに強い奴でも、弱点をうまく突けば倒せる。
ゼロに近い勝算を何倍にもできる。
世の中、小数点以下の確率もバカにできないが、せめて1%は欲しい。
そう考え、アナライズを実行したのだが――やはり、出力が遅いのが難点だ。
まあ、普通に考えれば弱点なんて晒さないものだし
それを調べるのは難しいのは当たり前なんだが。
何とか、俺がアナライズする時間が稼げればいいんだが――
――ってイッセー、何で赤龍帝の籠手出してるんだよ!?
「焼き鳥野郎! てめぇなんか俺のブーステッド・ギアでぶっ倒してやる!」
「あーめんどくせぇ。ミラ、やれ」
『バカ! 何やってるんだ! まだ相手の力量も読めてないのに、突っ込む奴がいるか!!
く、くそっ! せめて――!!』
SPOIL
EFFECT-STRENGTH!!
あーあ。アナライズ失敗だよこんちくしょう。今対峙してるのは「
小柄な体躯ながら、長い棍を使った棒術で戦う、フェニックスの眷属。
戦闘能力は最下位ながらも棍のリーチと小回りで、相手を撹乱する……か。
幸いライブラリ出力は終わってるから、そこから対策を練ればいいか。
「……っ、直撃したのに。この防御力、ただの『
「な、何だ!? 今の一撃、全く見えなかったぞ……!?」
せ、セーフか。しかしカードの判断を誤ったかも。確かに攻撃と防御は上げたけど
この様子じゃ向こうに一撃も加えられない。何せイッセーの奴、棒立ち状態だった。
『言わんこっちゃない。今お前一撃食らってたぞ。防御を上げてなければ吹っ飛ばされてた。
この様子じゃ、お前から一撃食らわせるってのは無理そうだぞ』
「へっ、今二段階目の倍加が済んだところだ! セージ! シンクロ強化だ!」
『待て、今対峙してるのは単なる一兵士。そこに全力出して潰したところで
向こうにとっちゃ痛くも痒くもない。寧ろ、こっちの程度の低さを知られるだけだぞ』
確かに俺とイッセーのシンクロを強化して、俺の力をイッセーに乗せればパワーは増す。
だが今の相手、パワーだけでどうこうできる相手じゃない。
良くて棍をへし折れる位だが、その次に集中攻撃を喰らわないとも限らない。
シンクロを強化すれば、俺に来るダメージも増えてしまう。
我が身可愛さと言えなくもないが、この状態で巻き込まれるのは御免だ。
アレな船頭に付き合う趣味は無い。
「ほう。『憑いてる』奴は『
そいつの言うとおり、ミラは確かに俺の眷属で、しかも最下位の実力だ。
仮にお前がミラに勝てたからって、だからどうだって言うんだ。
俺に勝てなきゃ、意味がないだろうが。
その前に、俺と戦うことが出来るかどうかすら、危ういけどな!」
そこまではっきり言っちゃうと、ちょっとミラって子がかわいそうに見えてしまう。
だが、俺がストレングスのカードで強化してようやくダメージを軽減できた程度には
棒術の心得がある相手だ。イッセーソロじゃ、現時点じゃ勝ち目は無いな。
「だったら俺一人でもやってやるよ! 喰らえええええっ!」
「動きは見えてます……はっ!」
イッセーの左手が、ミラの棍と激突する。
倍加した一撃で、ミラを突き飛ばすことはできた――が。
「どうだ!」
『……イッセー。言わなかった俺にも非はあるが
カードの効果時間はきちんと把握しておけ――痛っ』
「おいセージ、何を――ぐっ!?」
そう。寸前でカードの効果が切れ、パワーを強化した状態ではない
素の状態で殴り合う結果になったのだ。
それでも
当然、俺の方にもダメージは来ている。だからシンクロ強化は断ると言ったんだ。
これでシンクロ強化してたら骨が折れたかもしれん。
「弱いな、お前。ミラを吹っ飛ばしたのは褒めてやるが、所詮そこまでだ。
使い手がお前では豚に真珠ってところだな!」
「ち、ちくしょう……!」
まいった。反論しようにもグウの音も出ない。しかしここまでイッセーが向う見ずだとは。
やれやれ……俺は
こりゃイッセーのセコンドで出る必要があるかもしれないな。
などと考えていると、フェニックスは思いついたように口を開く。
「だが、少しでも使いこなせるようになれば面白い戦いができそうだな。
リアス、ゲームは十日後でどうだ?」
「……私にハンデをくれるというの?」
フェニックスの提案に、グレモリー部長はあからさまに不服な態度を示している。
まあ、気持ちは分からなくもないが……この状態で、どう戦えと言うんだ?
「不服か? 今すぐやっても結果は見えている。
感情論で勝てるほどレーティングゲームは甘くないぞ。
下僕の力を引き出す事にこそ
才能があっても活かせず敗北する者を俺は何度も見てきた」
「……わかったわ」
……物分りがいいのはいいことだと思うよ、うん。十日あれば、粗方のことは出来るだろう。
それに、それで負ければもう納得もするだろうよ。
それでも納得できないってのは――まあ、往生際が悪いってことだろうな。悪いけど。
そう考えていた矢先、フェニックスの目線がイッセーを捉える。
「おいお前。『
十日後だ。リアス、次はゲームで会おう」
そう言い残し、フェニックスとその眷属は魔法陣から帰っていった。
部室には、敗戦濃厚の空気が漂っていた。
今日の教訓
風邪でもないのに風邪薬を飲むのは止めましょう。
Q:悪魔の本拠地が火事になるのはおかしい!
A:館モノのエロゲのラストは火事と相場が決まってます。
……という冗談はさておき、悪魔の本拠地で悪魔が火を起こせば
そりゃあ火事になると思うんです。
仮に旧校舎が鉄筋構造だったとしてもフェニックス()
の火なので鉄筋だろうとお構い無しでしょうし。
尚、本作では旧校舎は木造にしてあります。