そして今回はちょっぴり最初からクライマックスだったりします。
Soul25. 探し物、見つかりました。
――6月初旬。梅雨を目前に控えた頃。
PM22:30、某ショッピングセンター、駒王店付近。
俺、歩藤誠二は偶然にも数体のはぐれ悪魔と遭遇。通りがかった一般人を襲おうとしていたため
グレモリー部長らの到着を待たずに
改めて言ってはいるが、割といつもの事だったりする。
実際、最近夜の通り魔事件が続発していたりするのだ。
……いつぞやグレモリー部長に言った件、三日坊主だったか。
BOOST!!
BOOT!!
「全速力でここから離れるんだ、早く!」
通行人が逃げ去るのを確認した後、俺ははぐれ悪魔に向き直る。
む。この灰色の外殻は……
以前、俺が虹川さんのファーストライブのときに戦ったはぐれ悪魔だ。
確か
……だったはずだ。別ルートで悪魔の駒による変異を遂げた種なのか
あるいはこいつらが持つ毒によってこの姿になってしまった種なのか判別はつかないが
まぁ、そんなことはどうでもいい。
ショッピングセンターは既に閉店したとは言え、まだ従業員が出てくる可能性がある。
通行人に被害を出すなど、絶対にあってはならない。
そのためにも、速やかにこいつらを殲滅する。
連絡はしたとは言え、いちいちグレモリー部長を待っていられるか!
「……実体化してる以上、こんな時間に高校生がうろついている訳ないものな。
さっさと片付けて、俺もお暇させてもらおうか!」
SOLID-FEELER!!
SOLID-LIGHT SWORD!!
短期決戦。そのために俺は右手に光剣、左手に触手を実体化。
左手の触手で相手を引き寄せ、右手の光剣で突き刺す。
光の槍では出来ない。相変わらず、素手どころか
「捕らえる!!」
左手をはぐれ悪魔めがけてかざす。それを合図に、俺の左手からは数本の触手が伸び
あっという間にはぐれ悪魔をまとめて捕らえる。そのまま触手を巻きつけ、今度は引き寄せる。
思いっきり引っ張られる形で、はぐれ悪魔の集団はこっちに向かって飛んでくる。
触手による拘束が解かれても、彼らの意思に反した動きを強要され、引き寄せられている。
つまり、今彼らは身体の自由が利いていない。
そしてそこに、俺が光剣を携えて待ち構えているのだ。
……そう、答えは一つ。
「ぃやああああああっ!!」
気合一閃。光剣の出力を上げ、はぐれ悪魔の腹めがけて光剣を突き刺す。
彼らの弱点は頭だが、この場合は腹を狙った方が命中率に優れるだろうと判断したのだ。
読みどおり、まとめて串刺しになる形ではぐれ悪魔は光剣を突き立てられた。
止めとばかりに、俺はさらに光剣の出力を上げる。
体内に流れ込む光力に耐え切れなくなったのか、はぐれ悪魔は軒並み爆発。
相手の残存戦力はゼロ。交戦経験のある相手とは言え
俺一人ではぐれ悪魔の殲滅に成功したのだ。
普通なら喜ぶべきところだが、今の戦い方で少し、嫌なことを思い出した。
一、二週間前に起きたなんたらゲームでの戦いだ。
俺はあの時も、大筋は異なるがこのようにして敵を撃退した。
今回は人助けの範疇に納まっている(と、思いたい)が、あの時は完全な私闘だった。
私闘で他人――悪魔とは言え――を殺していいものか。俺が思うに答えはノーだ。
……いや、いつかはやらなければならない時が来るのかもしれないのだが。
願わくばそんなこと、起きてほしくはないものだ。たとえ相手が誰であろうとも。
……その事態が起こりうる、最大の懸念は対リアス・グレモリーなのだが。
俺が俺――宮本成二に戻るには、最悪グレモリー部長や
その眷属と戦わなければならないかもしれない。
もしそうなった時、俺は俺に戻れるのだろうか。
それとも彼らとの戦いを避け、俺に戻ることを諦めるのだろうか。
……いや、今その事を考えるのはよそう。折角俺の身体の在り処が分かったのだ。
俺の身体を取り戻す。そして、俺は人間に戻る。その達成はもう目前なんだ。
ふと、俺の左手の神器――
誰かの気配を察知したらしい。新手のはぐれ悪魔かと思い、周囲を見渡すが誰もいない。
「……誰だ!?」
辺りは静まり返っている。この辺りは裏路地に入っており、遠くには車のヘッドライトや
表通りの街灯の光が夜の闇の中で激しく主張をしている。人間の世界であるという主張を。
それに対し、この辺りは薄暗く、先ほどまでの戦闘と相まって
ここが人ならざるものの世界であるかのような、そんな雰囲気さえ漂わせている。
そんな中に忍ぶ気配。到底、人間のものではあるまい。
さっき警告音を発したレーダーも、既に沈黙している。動作不良なのだろうか?
「いない……幽霊、って訳でも無さそうだな。そもそも、俺には幽霊は見える」
俺自身が幽霊に近い存在であるが故に、幽霊は見える。
それでも姿を現さないのは、余程姿を消すのがうまい幽霊か、或いはそれ以外か。
姿を見せぬ何者かについて思案をめぐらせていると
遠くからサイレンの音がこちらに向かってくる。
マズい。さっき逃げた人が警察を呼んだのかもしれない。
これ以上ここにいたら、こっちが職質されてしまう。それは御免だ。
俺は実体化を解き霊体に戻り、この辺りから逃げるように去っていった。
勿論、このすぐ近くで目を光らせていた存在になど、気付いているはずもなかった。
――――
――ショッピングモール付近でのはぐれ悪魔騒動の翌日。
PM15:48、駒王総合病院付近。
「なぁセージ。寄り道は構わないけどよ、今日は部長が俺んちに来るんだ。
だからさっさと用事を終わらせちまおうぜ」
『……怪しまれないために、親御さんから買出しの依頼を引き受けさせたんだろうが。
これで、ある程度の時間の都合はついた。後はさっさと行くぞ』
授業が終わった後、俺はイッセーを誘導してこの場所に来ていた。
当たり前だが、授業が終わればすぐに部活動だ。
そして今日は何故だかイッセーの家でやるらしい。
曰く、旧校舎の大掃除を行うためらしいが、だったら何でイッセーの家なんだ?
全く以ってその意図が読めん。まあ、どうでもいいことをあれこれ詮索するのもつまらないが。
そんな状況なので、イッセーをこの場に差し向けるには少々の工夫が必要になった。
それが親御さんに買出しの依頼をさせる、というものだ。
正当な理由があれば、多少遅れても文句はあるまい。
ダメもとで話を振らせてみたが、運よく買い忘れがあったり、グレモリー部長らに出す
お茶や茶菓子の確保という名目で買出しの依頼は無事受注できた。
これは口実。カモフラージュとは言え蔑ろにもできないので、その買出しは既に済ませている。
そこまで突発的ながらも用意周到に策を弄した、その目的はただ一つ。
――駒王総合病院にあるらしい、俺の身体を取り戻す。
俺は本来、宮本成二という人間なのだが
今は事故で歩藤誠二と言う名の悪魔兼霊魂と化している。
そんな俺だが、俺の人間の身体がようやく見つかりそうなのだ。
駒王総合病院。宮本成二の見舞いに行った松田と元浜によれば、そこに俺の身体があるらしい。
考えてみれば、救急車で運ばれたのだから病院にあるのは当たり前なのだが。
どこの病院か、と言うのは最近になってようやく知ることができた。
病院と言っても、大きいのから小さいのまで色々だからだ。
と言うわけで、早速駒王総合病院にやって来たのだが――
『……やはり悪魔が元締めの町なだけはある。病院に除霊札が貼られているとは。
となると、入る方法を考えないとな……』
しかし随分とピンポイントで準備してくれたものだ。
神社仏閣教会の類は悪魔出禁なのはまあわかる。
しかし、病院も出禁になるものだろうか。
そうなれば、イッセーが俺の見舞いに来ないわけも分かるのだが。
……いや、そうじゃない。ここに除霊札があるのは偶然じゃなく
誰かが作為的にやったことだろう。犯人探しをするつもりはないので
ただ邪魔なものがあるとだけ認識しておくことにした。
……それ以上に、こんなことが出来る奴を俺はそれほど知らないってのもある。
そしてそれは、願わくば犯人であって欲しくないと思う人物だからだ。
……そこまでして、俺の身体を取り戻す邪魔をしたいのか?
俺の身体を取り戻されると、何か不具合でもあるのか? それとも……?
まあ、この件については情報が少なすぎるし、身体を取り戻すことに比べれば些細なことだ。
いらぬ事を考えるのはよそう、うん。
……さて。以前、イッセーに憑いてあれこれ実験したことがある。
五感については全て共有できるのは幾度となく証明されている。
その主となるのはイッセーの側だ。イッセーは悪魔ではあるが幽霊ではない。
……ならば、除霊札をパスできるのではないか?
そう思い、俺はイッセーを半ば強引に俺――宮本成二の見舞いに行かせることにした。
「なぁセージ。こうして毎日顔を突き合わせているのに見舞いに行くってやっぱ変じゃないか?」
『俺らにしてみればな。だが、松田と元浜はかなり訝しんでいたぞ。
「イッセーが全然セージの見舞いに行かない」ってな。
顔だけでも出しておけ。あの二人に、要らん疑いをもたれたくなかったらな』
「あ。そ、そっか。あいつらは俺が悪魔だってことや、お前の事も知らないんだもんな」
そう。対外的には兵藤一誠は普通の男子高校生だし、宮本成二は未だ重体。
歩藤誠二などと言うものは存在さえしない。それがあるべき姿なのだ。
悪魔だ神器だ赤龍帝だなどと言っている、そっちのほうが不自然……のはずだ。
『分かったら頼むぞ。いくら口実は作ったとは言え、あまり遅いとグレモリー部長に怪しまれる。
そうでなくとも、最近何やらマークされている気がするんだ』
「部長がお前を? いくらなんでも考えすぎだろ」
イッセーはそう言うが、俺にはいくらかの心当たりがあった。
一つ。相変わらず公園や橋の下で寝ている俺だが、最近どうも気配を感じる。
お陰で今一つ良質な睡眠が取れないため、霊体でいる時間を増やしている。
こうしてイッセーに憑いている間も、気を抜くと寝そうだ。
そしてもう一つ。以前、部活が終わった後オカ研の部室から何やら話し声がしていたのを聞いた。
話の内容は全て把握できなかったが、その日を境に色々不可解な事が起きている。
昨日のはぐれ悪魔戦の後の不可解なレーダーの誤作動も、関連しているかもしれない。
これは考えすぎかもしれないが、グレモリー家の誰かが俺を監視しているのではなかろうか、と。
何せ、元婚約相手を半殺しにし、グレモリー家に思いっきり泥を塗りたくった、その実行犯だ。
なんらかの報復がきても、おかしくはあるまい。
……それを甘んじて受けるほどお人よしでもないし
事の発端は他でもない、グレモリー部長本人だったりするが。
あれこれ考えている間に、俺達は駒王総合病院までたどり着いた。
早速、俺がここに単独で入れなかった理由――除霊札の存在について
イッセーに解説しようとするが、気付いたらもう入り口の自動ドアをくぐっていた。
……一応、言うだけ言っておくか。
『最初に言っておく。ここには除霊の結界が張られている。
悪魔よけまではないとは思うが、俺が憑いている事でイッセー、お前に悪影響が出たらすまん。
……と言おうと思ったが、どうやら大丈夫そうだな』
「後から言うなよ!? お前のせいで俺まで丸焼きになったらどうするつもりだったんだよ!?」
『すまんすまん。結果オーライでよろしく頼む。
……だが一つ忠告しとくぞ。実戦で今みたいな真似はやめてくれ。
そうでなくともお前はこの間だって……』
「わーった、わーった。お説教は勘弁してくれよ」
何はともあれ、作戦は大成功。ここからが本番だ。
イッセーは宮本成二の見舞いに。俺は俺の身体を取り戻す。
病室は松田と元浜から聞き出した。ここはもう病棟。もう目と鼻の先だ。
……ついに、ついに戻ってくるんだ! 俺の身体!!
『イッセー』
「なんだよセージ」
『……ありがとう。お前がいなければ、俺の身体は見つからなかった』
「なんだよいきなり。っつか、そういう礼ならお前がちゃんとお前の身体に戻ってからにしろよ」
『……それもそうだな』
つい、こみ上げてしまったか。何せ、待ちに待った俺の身体を取り戻せるのだ。
ここで感極まらなくて、むしろどうすると言うんだ。
俺はイッセーをナビゲートしながら、俺の身体があるという病室まで後一歩のところまで来た。
通路を曲がった先で、死角から出てきた人とぶつかってしまう。
いかん、焦ったか!
「うわっ!?」
「きゃっ!? だ、大丈夫?」
目の前にいたのは、俺達よりいくらか年上の女性。
アイボリー色のワンピースに、長い黒髪が映える女性。
イッセーの奴が目線を向けているお陰で見えてしまうのだが、胸も大きめだ。
ふと視線を逸らした先に見えた左手の薬指は、銀色に輝いている。
……あれ? この人って……
「大丈夫っす。すみません、俺らも急いでて……。そっちこそ大丈夫ですか?」
「ごめんなさい、ぼーっとしてたわ。私は平気。
もし痛くなったら、ここ病院だから言いなさいね?」
「は、はあ……」
間違いない。あの人は……あの時、夢で見た人。
なんで……なんで今の今まで忘れてたんだよ! こんな大事なことを!!
俺の……俺の……ある一点においては、俺の身体と同じくらい
いやそれ以上に大事なことなのに!!
俺は自分の身体をまだ取り戻していないことも忘れて、思わず彼女を追いかけてしまった。
――いくら再会を心待ちにしていたとは言え。今の状態はあまりにも迂闊だった。
『姉さん! 明日香姉さん! 俺だよ!』
「……?」
今まで何度同じ失敗をしてきたのか。今の俺は、宮本成二じゃないというのに。
歩藤誠二という名の、実体を持たず、宮本成二の記憶と人格だけを持った霊魂だと言うのに。
普通の人に、見えるわけがないというのに。
『ここだよ! 俺はここにいるよ!!』
「声が聞こえるけど……変ねぇ?」
けれど、俺は叫ばずにはいられなかった。
俺の身体と同じくらい、あるいはある意味それ以上に、再会を待ち望んだ人なのだから。
何せ、俺の――
「……病院だし、出るのかしらね?」
『待って! 俺はここ、ここにいるんだって!!』
俺の、俺の好きな人なのに――
『待って! 姉さん、待っ――』
結局、当たり前のことながらも彼女は俺に気付くことなくその場を去ってしまった。
声は届いているのに、俺だと言うことを伝えられないなんて。
「おいセージ、どうしたんだよ? ここ病院だぜ? もうちょっと落ち着けよ?」
『これが落ち着いて……!! い、いや、そうだな……。
すまない。ちょっと、思わず身体が動いてしまったんだ……。
理由は……また後で落ち着いたら話す……』
結局、病棟は謎の声が聞こえたと一時騒然とし、俺達も面会どころではないと
追い返される形になってしまった……
――――
俺達は病院にこれ以上いても仕方ないと言うことで帰路についていた。
俺の迂闊な行動で、折角のチャンスを不意にしてしまった。
しかし、言い訳がましいがいきなり好きな人に出会ったのだ。
それも、ここ数ヶ月会っていない人に。
それについても色々あるし、そもそも姉さんは――
「まったく。お前も色々無茶するよな。折角身体を取り返すチャンスだったのに。
なあ、あの人とお前、どういう関係なんだよ? 姉さんって言ってたけど……。
あれだけ拘ってた身体をほっぽって、しかも今の状態でうかつに他人に話しかけたら
騒ぎになることくらい、お前よく知ってるだろ?
それに、宮本成二には姉さんはいないんじゃなかったか?」
『……ああ、そのとおりだ。弁明するつもりはないが
今はまだ、この件については聞かないでくれないか……?』
イッセーには悪いが、俺は姉さんのことを他人には言いたくない。
姉さんとの約束事の一つでもある。姉さんとの約束は破りたくない。
「……まあ、いいけどよ。それじゃ、そろそろ帰ろうぜ。
いい加減帰らないと、部長が待ってるし」
『……すまないが、今日は不参加にさせてくれないか?
部長にはお前から言っておいてほしい……頼む』
今の気分で、グレモリー部長と顔を合わせたくはない。
俺自身、実のところ頭の整理がついていないのだ。
しかも、今グレモリー部長は結構大変なことになっている。まあそうだろうな。
その皺寄せが、こっちに来ないとも限らないからだ。
「あっ、おいセージ!」
イッセーの制止にも耳を傾けず、俺はイッセーの精神の中で五感を切り
引きこもる準備を始める。字面に起こすと何だか情けない話だが
実際そうなのだから仕方がない。
暫くは一人でいたいのだ。事あるたびに絡んでくるくせに
肝心なことには何一つ触れないグレモリー部長とは、今会ったら余計に辛い。
とりあえず、気持ちを落ち着かせようと思った矢先に、まだ共有を切っていない五感で
周囲をふと見ると、いつぞや出くわした黒猫がいた。
「おっ、黒猫だ」
『黒猫か……っ!? す、すまないがイッセー、ちょっとその黒猫に近寄ってもらえるか?
ああ、逃げたら別に追わなくても良いから。確かめたいことがある、頼む』
「オッケー。ってこいつ、怪我してるぞ!?」
しかし、何やら様子がおかしい。動きが鈍いのだ。よく見ると、怪我をしている。
それを放っておけるほど薄情になったつもりはない。
俺はイッセーに頼み、黒猫の近くまで移動してもらった。
近寄っても、黒猫は逃げる素振りを見せない。
『これは……イッセー。アーシアさんを呼び出してもらえるか? それと塔城さんを。
彼女、どうも黒猫を探していたらしい。それがこの黒猫ではないかと思うが、確証がもてない。
アーシアさんを呼ぶのは言うまでもない、怪我の治療だ。
悪魔にだって効くんだ、猫に効かない道理はなかろうよ。イッセー、頼む。
塔城さんの件については、俺の名前を出せば良いだろう』
「ああ、ちょっと待ってろよ……もしもし、アーシアか?
ああ、ちょっと総合病院近くの公園まで来て欲しいんだ。
変に思うかもしれないけど、猫が怪我してる。その手当てを頼みたいんだ。
それとセージからの言伝なんだが、小猫ちゃんにも来て欲しいって伝えて欲しいんだ。
セージが言ってたってことと、黒猫って単語で承諾はしてもらえると思うんだ。
部活始まってて悪いけど、頼めるか?」
電話越しの声だが、アーシアさんは承諾してくれたみたいだ。
塔城さんについても、一緒にいたらしいので来てくれるそうだ。
忙しいタイミングで、悪いことをしたかもしれないが……
猫の容態を考えると、アーシアさんに頼らざるを得ない。この近くに確か獣医は無いからだ。
それに、下手に動かすのも良くないだろう。
「それにしてもセージ。お前結構小猫ちゃんと仲良くないか?
猫探し、頼まれたんだろ?」
『……その質問をあえて穿った見方をさせてもらうと、そういう意図は無い。
頼み事についても、それは俺らの日頃の行いの賜物だろう、エロ龍帝。
彼女がどう思っているかは、それは俺の与り知るところじゃないがな。
それに――いや、なんでもない』
『……今の命名に悪意を感じるのは気のせいか? 霊魂の』
……ああ、やっぱそういう質問が来るか。
別に俺は塔城さんと特別な関係になるつもりは無いんだがなあ。
そもそも、俺には明日香姉さんがいる……もう数ヶ月もまともに会ってないし
姉さんは……だけどな。なので、ドライグのぼやきに耳を塞ぎつつ
イッセーの疑問には適当に返しておくことにした。
……イッセーの方に似たような質問を返しておくべきだったか?
結局、引きこもろうと思ったが黒猫の件がある以上はそれもできず
黒猫の容態を見ながら、アーシアさん達を待つことにした。
――――
待つこと数分。向こうから駆け寄ってくる金髪の少女が見える。
普段ならよく転ぶのがアーシア・アルジェントという子なのだが
そこは塔城さんが手を引いているのか、転ぶことなくこっちの――公園の方にやって来てくれた。
「あっ! おーいアーシア、小猫ちゃーん!」
「はぁっ、はぁっ……お、お待たせしましたイッセーさん!」
『ああ、来てくれたか。この子だけど……アーシアさん、頼めるかな』
「……私からもお願いします」
アーシアさんは息が整うのを待たずに
思ったとおり、瞬く間に黒猫の怪我は完治した。
……しかし、どこで怪我をしたのだろうか。
怪我の度合いから交通事故じゃないだけ、マシだと思いたいが。
もしどこぞのバカが虐待をやっているようなら、然るべき対応を取るべきかもしれないが。
俺は基本、はぐれ悪魔以外に悪魔の力を振るわないが
悪事を働く人間には驚かし程度に力を振るうこともやむをえないと考えている。
動物虐待や弱いものいじめ、犯罪を見てみぬ振りなんか出来ないからな。
……誰かさん曰く「悪魔の仕事は人助けじゃない」らしいがな。
あの時は従おうと考えていたが、思えばあの時から面従腹背になってた気がしないでもない。
「……ふぅ。これで、猫ちゃんの怪我も治りました!」
「そっか! よかったなお前! ちゃんとアーシアにお礼言うんだぞ?」
『あっ、おいイッセー!』
俺の忠告を聞かずに、イッセーは迂闊にも猫の腹を触ろうとしていた。
それを感じ取った黒猫は、イッセーに爪を立て威嚇の体勢を取っている。
……ああ、言わんこっちゃ無い。初対面の、しかも人馴れしてるとは言え野良猫の腹を触るなんて
猫の生態にある程度詳しい奴ならやらないミスだ。
「いてっ! お、お前何するんだよっ!」
「……イッセー先輩が悪いです。猫のおなかは、触っちゃダメです」
『ああ。俺もよく昔はやったなあ。
猫のおなかを触れるのは、長い間一緒にいた飼い猫くらいだぞ?』
そう。ある程度本で勉強したとは言え、当時小学生の俺が悪戯心を起こさないはずも無く。
しょっちゅうちょっかいをかけては、遊びにも近いリアルファイトを繰り広げていたのだ。
……勿論、猫相手ということは踏まえてのものだが。
最近――と言っても数ヶ月前だが――はうちのも高齢になったからか、あまり反応を示さない。
さわり心地はいいのだが、それはそれでつまらん。
イッセーが引っかかれただけならいいのだが、黒猫はそのままどこかに行ってしまった。
ね、猫だし仕方ないが……。これが普通の野良だったらそのままにしてるが、あの子は確か……
『あっ……! 塔城さん。この間言ってた猫、あの子でよかったか?
だとしたらすまない、迂闊だった……』
「……間違いないです。でも、無事だって分かればそれで良いです」
「えっ!? あの黒猫、小猫ちゃんのだったの!? ご、ごめん! 俺、知らなくて……」
後悔先に立たず。起きたものは仕方がない。
猫の行動範囲ってのものはそれほど広くないし、多分また見つかるだろう。
怪我の原因が分からないのが気がかりだが……
猫の喧嘩って、アーシアさんを呼ばなければならないほど
酷いものになるって気がしないのだが。それだけが不安だ。
こういう時、使い魔でも飛ばして調べられれば良いんだが……
無いものねだりをしても仕方がない。
こればっかりは触手や溶解スライムではどうにもならないし。
「行っちゃいましたね……ってそうだイッセーさん!
もう部活始まってますよ!」
「……こっちの用事は済みました。そっちも済んだのなら、早く戻りましょう」
「ああ、用事は済んでるぜ……で、どうするセージ? 参加するのか?」
『いや、さっきも言ったように今日はやめとく。少し疲れたから、眠らせてくれ。
寝るから、五感の共有は切るぞ? それじゃ、おやすみ……』
言うだけ言って、俺はイッセーの精神世界――オカ研の部室を模した空間の中――で
机に突っ伏して、眠ることにした。
目覚めたのは部活が終わってから。途中で黒猫の対応をしていた件も伝わっていたが
グレモリー部長はいい顔をしなかったそうだ。粗方
「イッセーのお母様の言伝ならまだ良いわ。けれど野良の黒猫を助けるために
私の集合の指示を蔑ろにするのは、眷族としてはあまり褒められた行いじゃないわね」
とかのたまったんだろう、と言うのは考えすぎだろうか。良いじゃないか、動物救助。
うろ覚えの宮本の記憶だが、川に落ちた犬を助けて遅刻したことが
あったような、なかったような。
元浜をカツアゲから助けたのは、割とはっきり覚えているんだがな。
さて、そこから先の顛末をイッセーから聞いたのだが
何やらこっちはこっちで大変なことが起きていたらしい。曰く――
――木場祐斗が、部活中に血相を変えて飛び出し、現在も消息不明である。
と。
第一章途中でチラッと出た人が再登場してます。
セージが熱を上げてますが、左手の薬指の銀色……
セージがグレイフィアさん(人妻)に反応していたのは、そういうことでした。
そのほか、インベスや黒猫など第一章の登場人物が再登場してます。
サブタイ通り、探し物は色々と見つかってます。
原作と違い、この時点で木場が飛び出してます。
普通に幽霊と対話できる人がいるので、原作とは違うアプローチで
木場の過去に迫ることになると思います。
街のパトロールを三日坊主にしたり、木場が飛び出しても対応しなかった誰かさんが
相変わらずアレなのは、ちょっと原作からデフォルメした無能描写……だと思いたいです。