仮面ライダーゴーストは一切関係ありません(挨拶)
ゴースト先行PVで幕間ネタが一本かけそうでしたが
挟み込む場所が無かったから没になりそうな予感。
この投稿ペースだとこの章の決着はまだ少しかかりそうなので。
毎度の事ですがUA、お気に入り登録ありがとうございます。
聖剣使いとの下らない私闘は下らない結果で終わりを告げた。
だがそれでいい。私闘に崇高もへったくれも無い。
そういうのに喜びを見出す人種はまぁ、いるみたいだが
俺はそういう人種じゃないつもりだ。だから、下らなくて良い。
私闘の決着の少し後、時刻は日が傾きだした頃。目を覚ますと、また騒動が起きていた。
俺をソファまで運んでくれたであろう塔城さんに挨拶と礼を簡潔に述べ、状況の把握に努める。
寝起きで少し頭が回っていない気もするが。
「んあ……寝てたのか。手間をかけさせてしまったね。
おはよう塔城さん。なにやら色々慌しいようだけど、何事?」
「……おはようございます。実は、かくかくしかじかで」
曰く、案の定木場が出て行ったというのだ。その程度の事で何をうろたえているんだか。
特にグレモリー部長のうろたえぶりが半端ではなかったので、俺はつい口を開いてしまった。
この人絡みだとどうしても嫌味っぽくなるってわかっているのに。
「やれやれまたか。あのアホ主サマにも困ったものだな」
「……あの、セージ先輩。お手柔らかにお願いします。
何だかんだ言っても、私達はリアス部長の眷属ですから」
「……前向きに検討する、とだけ言っておくよ」
そうそれ。それが気に入らない。より正しく言えばそれ「も」、か。
悪魔の主従関係ってのは、ごっこ遊びで済ませて良いものなのか?
フェニックスの連中を見ている限りじゃ、そうは思わなかったが。
グレモリー部長の言う主従関係ってのは、中途半端なのだ。
悪魔の主従関係と、部活動の上下関係を一緒くたにして語らないで欲しい。
まして、冥界を背負って立っている魔王の妹が、だ。
部下が甘ちゃんなら主も甘ちゃんか。
甘いものは嫌いじゃないが、そもそも糖分の過剰摂取は本気で身体に悪い。
そう考えた結果が、こうして口を開いているわけだったりもするのだが。
「あらセージおはよう、起きていたのね。可愛い寝顔だったわよ?
それはそうと、あなたは祐斗の行きそうな場所を知らないかしら? と言うのも……」
「それはどうもおはようございます。こっちは寝起きで甘ったるい感情論振り回されて
胃がもたれそうですがね。そもそもあなたは人を何だと思ってるんですか。
部下ですか。ペットですか。それとも……失礼、今のはただの愚痴です」
「……寝起きで愚痴を言われるとは思わなかったわ」
シトリー会長と言う例もあるので、主が自分を「部長」と呼ばせているのは
まあ、よくないがよしとする。シトリー会長についてはそれほど詳しくないので
突っ込めないと言う実情もあるが。
だが、部活動と言うのは極めて限定的な空間におけるコミュニティだ。
悪魔の主従関係というのは、冥界の社交界においてオープンにしているコミュニティ、のはずだ。
まさか、人間界での学校生活を豊かなものにしたいと言う
リア充願望で眷属集めてやしないだろうな? などと
とんでもなく穿った見方をしてしまうのは、きっと俺の性格が悪いせいだと思う。
でも断りも無くペット扱いされたら意地の悪い対応を取りたくもなる。
……まぁ、それも俺だけかもしれないが。イッセーは満更でも無さそうだし。
「どうせまた何処かに行ったんでしょう。晩飯は外で食べると?
猫だって放っておけばそのうち帰ってきますよ……ふぁ~あ」
「……私出て行ってませんけど。あと、ご飯は鯖味噌がいいです」
「わかりましたわ。それじゃ、今日は鯖味噌にしましょうか」
むぅ。俺は公園にいる普通の猫を引き合いに出したのであって
塔城さんを引き合いに出したつもりは全くないんだが。
……今までも、これからも口にすることは決してないが小猫ってのもまた独創的な名前だな。
名付け親の顔が見てみたいものだ。自分のの子供に「小猫」なんて、普通つけない……よな?
俺も自分の子供を持ったことはまだ無いので、その辺はよく分からないが。
どっかの噺家にそんなような名前の人がいた気もするが……また事情が違うだろうし。
……子供、か。俺、将来は立派な父親になれるのかな。
俺自身が父親と言う生き物を知らないから、そこは自信ないんだよなぁ。
自分の子供の話をしてた姉さん、凄く楽しそうだったから多分、いいものなんだろうな。
……自信ないけど。色々な意味で。
などと物思いに耽っているとグレモリー部長はまた凄い剣幕で囃し立てていた。
だから何がそんなに気に入らないんだろうか。
「あ、あなた達ねぇ! 今どういう状況だか分かっているでしょ!?
聖剣使いだけでなく
そんな中で単独行動なんて私は断じて認めないわ! 何かあってからでは遅いのよ!?
それはあなたも日頃から言っていることじゃない!」
あ、俺の言ったこと理解してないわ。俺の言う「事が起きてからでは遅い」ってのは
何も知らない奴が被害に遭う事を指してたつもりなんだが。
木場だってさっきの話のときに同席してたんだから
神を見張るものの幹部が動いていることぐらい知っているだろう。
事情を知っている奴が被害に遭うのと
何も知らない奴が被害に遭うのは全く意味が異なるんだが。
前者はただの自己責任の上で生じたトラブルだが、後者は全く理不尽な蹂躙になるんだが。
……と言うかそれ以前に、だ。あんた……常日頃から眷属大好きオーラ出してるくせに……。
こういう肝心なところで、そういう態度取るわけか……ふーん……。
「……前に言いませんでしたかな? 主たるもの、己が眷属を信頼しろ、と。
今回のケースは、何故木場がああも頑なに単独行動を取ってまで聖剣の破壊に拘るか。
まずは彼のことを理解せねば、話が進まないのではないですかな?
止めるにせよ、後押しをするにせよ。
彼の事情を踏まえた上で、あなたは彼を悪魔にしたのでしょう? 違いますかな?
その割には、対応がどう見ても後手後手にしか見えませんがね?」
「……迂闊に祐斗の過去をぺらぺら話すのはよくないと思っただけよ」
ふーん。一応、それなりに考えてはいるわけですか。
ま、その結果逃げ出すように単独行動をとられちゃ世話ありませんな。
と言うか、完全に裏目に出てるよな、これ。
まぁ、一応考えてやったみたいではあるけど……。
……うん? いや違う。こいつアレだ。問題と向き合おうとしていない!
木場祐斗――イザイヤの出生にも関わる大事な事柄を
臭いものに蓋をするような態度で接してやがる!
そんなだから、木場の奴も独断専行せざるを得なくなったんだろう。
思えば今のアイツはかなり思い詰めている。
だから早く見つけ出さなきゃいけない部分には同意はする。
……けど、けどな。こうなった要因の一つが自分にあるってことは思いもしないんだろうよ!
「口では何とでも言えるんですよ。だが現にこうして彼は今単独行動を取っている。
彼にも事情があるのでしょう。それは当然です。裏表の無いやつなんて
俺はイッセーかアーシアさんくらいしか知りませんからな。
まさか彼が腹に一物をくわえていた事、見抜けないほど無能ではありますまい?」
「だっ、だれが無能よ! その言葉、いくら私の可愛い眷属でも許さないわ!」
俺も大人気ないかもしれない。何故無能という言葉を使ったのか。
以前部長がゴシップ誌を読んでいたときに酷く立腹した事があった。
ゴシップ誌の戯言程度、と思ったが何が部長をそこまでいきり立たせたのか。
単純に興味があったので俺もその後読んでみたのだ。
そこに踊っていたのは「無能」の二文字。それで俺は何となく察しがついた。
実際に無能かどうかは俺は知らない。そもそもリアス・グレモリーと言う人となり――
いや悪魔となりを、俺はまだ数ヶ月しか観察していない。それなのに無能判定は出来ない。
……まぁ、今までの行いを見るにそう言われるのもむべなるかな、と言ったところだが。
「……お話になりませんな。では俺は俺の方法で彼と会話を試みます。
相手は話の通じない生き物じゃないんですよ?
つまり、いくらでも説得や対話は可能だったはずです。
にもかかわらず、彼は飛び出してしまった。
それはつまり、彼との対話を怠った事に他なりません。
折角あった心を通わせるチャンスを無碍にした。それを無能といわずして何というんです?
俺が言いたい事は以上です、では失礼。これ以上無能な主に付き合っていられませんので。
……それからもう一つ。俺の身柄はともかく、俺の心――魂は今も昔も俺のものですので。
俺をモノにしたければ、それ相応の態度でぶつかってください。こんなやり方で
人の心をつかめるとお思いでしたら――バカめ、と言っておきましょう」
「待てよセージ! もう俺も我慢ならねぇ! 部長に謝れ、今すぐにだ!」
後ろでまた怒鳴っているが、俺はもう聞こえないフリをしている。
掴みかかろうとしてきたイッセーも、足払いをかけてスルーしている。
……まぁ、口が悪いのは事実だからそこだけは謝るか。
「生意気な口を利いてすみませんでした。だがこれ以上は謝らんぞ。
悪いが俺は自分の意見を取り下げるつもりはない。
木場が今ここにいない、それは紛れもない事実なんだからな?
まぁアレも忠誠心はあるほうだから、俺みたいに露骨に嫌味は言わないだろう。
そんなやつでさえ、このザマだぞ?
別にあいつは俺みたいにグレモリー部長が嫌いだから出て行ったってわけじゃないんだ。
それともアレか? 仲間は四六時中一緒にいないといけないって決まりでもあるのか?
だとしたら俺はそんなの御免だね。人間やめさせられた上に
仲良しこよしのお飯事に付き合えって……何の冗談だよ。寧ろ冗談であってほしかったよ」
「お飯事って……私、そんなつもりは……」
……ああ、結局言い過ぎるパターンか。なんだかこのパターンも多い気はする。
とは言えこれ以上は俺がこうなった理由にも触れることになるので言えないが。
毎度毎度、俺は言いたいことをずけずけと言っている。
本当に俺は眷族なのだろうか? 何か違うんじゃないかと、最近では思っていたりする。
「セージ! 待てよ、セージ!」
イッセー。お前、グレモリー部長の事になると見境がなくなるのははっきり言って悪癖だぞ?
これ、相手が俺だから良いようなものの他の悪魔や三大勢力関係者だったりしたらどうするんだ?
皆が皆、グレモリー部長に好意的ではないことくらい俺を見れば分かるだろうに。
「イッセー。これだけは言っとくぞ。
……喧嘩を売るなら相手と場の空気をちゃんと読め。じゃあな」
言うだけ言って、俺は木場を探すために部室を後にする。
出た瞬間俺の身体は霊体になるが、もうこれも慣れた。
――――
さて。木場を追いかけるために霊体になって町に繰り出してみると。
なにやら人だかりが出来ている。少し気になったので遠巻きに様子を見てみると……
……
氷上さんに連れられる形で、二人は路地裏に入っている。
まぁ事情聴取の際、人だかりから離れた場所へ行くのはよくあることではあるか。
「――で、路頭に迷って街頭募金を行ったと?」
「だから言っただろう! こんなまどろっこしいことをせず、異教徒から……」
「ゼノヴィアは黙ってて! そ、そうなんです。軍資……もとい生活費も底を尽きてしまい
このままでは今日の晩御飯にすら不自由する有様でして……」
何でこうなったのかは分からないが、事情聴取を受けているようだ。
保釈中の人間が身元引受人共々事情聴取を受けるって、それかなりヤバイと思うんだが。
さっきまで俺達と私闘を繰り広げていたとは思えない二人組みがそこにいたのだ。
「許可はとったんですか?」
「……え?」
「許可ですよ、許可。街頭募金の。無許可でやったら、アレだって立派な犯罪ですよ?
よく高校生が駅前でやってますけど、アレだってちゃんと
許可取るために交渉してるんですからね? よくいるんですよ。
『恵まれない人たちに愛の手を~』とか言って、集めたお金をちゃっかり
自分の懐にしまいこむ輩が。酷いときには全額やられますからね。
これについては捜査二課が広報を出していますから、暇なときにでも読んでみてください」
ご尤もだ。無許可の街頭募金なんて、どう考えても良心に付け込んだ詐欺だ。
……まあ、この辺は街頭募金の明るいイメージが強すぎて
無許可のそれは犯罪である、と言う認識を持っている人はもしかすると少ないのかもしれない。
……だが、仮にも人の良心を守る立場であろう宗教関係の人間が
人の良心を利用した詐欺を行うのは……許しがたいものがあるな。
とは言え、そういう詐欺を率先して行うのは宗教の連中だ。
やれこの壷を買えば幸せになれるとか、この絵はありがたいご利益があるとか
人の心に付け込んだ商売のうまい連中だとは思っている。是非はともかく。
「そ、そんなことはありません!
私だって、今しがたそこで聖ペトロ様……偉い人の絵を買ったんです!
聖ペトロ様のご加護を得られるように!」
「そうですか。それについても後ほどゆっくりと聞かせてください。
しかしだからって『他の人を騙す』って理屈が通るわけ無いじゃないですか。
とても黙って見過ごせるものじゃありませんよ。それに、君たちは確か……」
……マジか。まさか自分達がその手の詐欺に引っかかってたなんて。
氷上さんも無茶苦茶怪しい目で見ている。ゼノヴィアでさえ訝しんでいるほどだ。
もしかしてこのイリナっての……騙されやすいタイプ?
こんな少し考えれば怪しいって思うものに、宗教に携わる人間が引っかかるなんて。
所詮、宗教なんてそんなものかもしれないがね。
「ち、違います! この絵は本物です!」
「よせイリナ。言ってる事は分からないが、今見苦しいことになっているのだけはわかる」
「とにかく、ちょっと署でお話を聞かせてもらえますか?
……あ、一応言っておきますけど、カツ丼は自費ですからね?」
「ええっ!? あ、あれ奢りじゃないんですか!? ああ、主よ……」
そういえば聞いた事がある。よく刑事ドラマで出るカツ丼だが、あれはタダではない、と。
まあ、その代金を税金で払っていると考えると当たり前と言えば当たり前か。
そういえば警察って税金で動いてる組織だけど、よく
「イリナ、どうしたんだ?」
「これから警察に連行されるみたい。それでもってご飯も出ないって。ああ主よ……」
「何ッ!? そんなもの、無視してしまえ!」
「出来るわけないでしょ!? ただでさえ今私達が娑婆の空気吸えてるのは
上も上、かなり上のお陰なのよ!? 次やらかしたら
今度は私も汚い塀の中にぶち込まれることになるのよ!?」
「は、話はよく分かりませんが落ち着いてください……」
突然喧嘩を始めた二人。そりゃあ、前に一度ぶち込まれたゼノヴィアはともかく
イリナは帰国してまさか自分が警察の世話になるなんて思っても見なかっただろうよ。
その剣幕に、氷上さんもたじろいでいる様子だ。
結局、軽食を氷上さんが奢ると言う形で落ち着き、二人は氷上さんのパトカーに乗せられ
またしても警察に行く羽目になってしまったようだ。
――――
……事件が起きたのは、その暫く後。
既に日は沈み、俺の実体化にも問題がなくなりつつある時間帯だ。
パトカーが襲撃されると言う事件が起きたのだ。
ニュースで知ったのではなく、爆発のある方向に駆けつけてみたらこれだ。
パトカーは大破しており、辛うじて読めたナンバープレートから
それが氷上さんのパトカーだと言う事が分かる程度だ。
中に乗っていた人の安否は分からない。そして、犯人は――
「チッ。俺に恥をかかせてくれたポリ公かと思ったが違うのかよ。
ったく、バルパーのジジイが言う聖剣使いの死体も見つからねぇし」
やっぱりこいつか! 結構おおっぴらに動いてるな、こいつ。
……ん? 待てよ? バルパーって……確か聖剣計画の首謀者だったな。
ならば、こいつをつければこの事件の黒幕にたどり着くかもしれないか。
そう考え、俺は霊体のまま奴を見張ることにした。のだが。
「――なぁーんちゃってぇ! そこに隠れてるのは分かってるんだよォ!!」
聖剣がパトカーのエンジン部分に突き刺さり、タダでさえ大破していたパトカーは
無残にも爆発炎上してしまう。その衝撃で、三人分の人影が現れる。
ゼノヴィアに、イリナに……氷上さんだ。
二人はともかく、氷上さんはマズい!
「よーぅ。教会のワンコちゃん達じゃあーりませんかぁ。
俺ちゃん用があるのはあんた達の聖剣だけなの。
あ、そっちの青髪の子は助けてやっても良いぜぇ?
なんせ、あんたのお陰で俺って逃げ出せたようなもんだし?」
「う、うるさい! 今度こそお前をとっ捕まえてやる!」
ゼノヴィアは斬りかかるが、スピードではやはり向こうが圧倒的に上であった。
力には技、よく言ったものだが……この状況、はっきり言ってよろしくない。
「ゼノヴィア、加勢するわ!」
「お? いいのかい? そんなことしてると……
そこのはぐれ悪魔が、そのポリ公食っちまうぜぇ?」
「!?」
振りむくと、そこにはあの灰色の甲虫型のはぐれ悪魔がいた。
このタイミングで出てくるとは……まさかアイツ、使役しているのか!?
はぐれ悪魔を使役する……そんな芸当が可能なのか!?
い、いや……あれは確か仲間を増やすことだけを目的に動いてる
位の低い妖怪の成れの果てだった。
そういうタイプだから使役するのは簡単なのかもしれない。
バイサーみたいなデカブツが何体も出てくることを考えれば、よっぽど有情か。
それはそうと、いくらアイツはやろうと思えば人間でも相手取れるとは言え
あの時のあれは特殊なケースだっただけかもしれない。
このままでは、いずれにせよ氷上さんが危ない!
SOLID-LIGHT SWORD!!
となれば答えは一つだ。俺はおもむろに飛び出し、氷上さんに飛びかかろうとしていた
はぐれ悪魔の殲滅に入る。
「お二方! こっちは引き受ける!」
「げぇっ! クソ悪霊!」
「貴様は……どの面を下げてきた? 散々我々神の使徒を侮辱しておいて!」
「そうよ、あんたの力なんか借り無くったって!」
やはり二人は俺に対し相当ご立腹のようだ。まぁ織り込み済みだが。
だが、そんな視野狭窄に陥った態度を取っていても事態は改善しないと思うがね。
本当、これだから狂信者ってのは質が悪い!
「……今は所属がどうのこうの言っている場合か? 違うだろう!
こいつらは放置しておけば仲間を増やす!
それは即ち何も知らない連中が危害に晒されるんだ!
そうならないためには、悪魔も教会もあるものか!
お前たちは何のためにその剣を振るっているんだ!
どうしてもと言うなら、俺もついでに攻撃すれば良い!
はぐれ悪魔なら俺がきっちりしとめてやる。お前達に言わせば悪魔らしくないかもしれないが
俺は理不尽な破壊や死を望まない! それを齎す奴とは、何者であろうと俺は戦う!」
「相変わらず言う事がイミフなんですけどクソ悪霊君ぅ~ん、こいつらの聖剣奪ったら
今度こそてめぇをバラバラにしてやるからよ……。
俺も散々こけにされてもうぶち切れそうなのよね」
「お前みたいなやつに聖剣を渡せるか! あの悪魔も斬るが、まずはお前からだ、フリード!」
「あんたみたいなのと組むほど、私たちも落ちぶれてないってことよ!」
イリナとゼノヴィアはクソ神父の、俺ははぐれ悪魔の相手をそれぞれすることになった。
二人ともさっきの決闘で俺に言われたことを根に持っているのか、俺との共同戦線は不服らしい。
まぁ、どの道俺ははぐれ悪魔の相手だから結果は同じなんだがね。
……そもそも、考えている暇があったらこいつらの殲滅だ!
「くっ、超特捜課氷上より本部へ、連続殺人犯フリード・セルゼンと遭遇!
至急応援を願いたし! また、超常的危険生物も多数確認! 場所は――」
氷上さんは無線機で応援を要請している。
その間、俺が氷上さんめがけて飛んでくるはぐれ悪魔を斬り捨てる流れだ。
だが数が多い。一体何処にこれだけ潜ませていたんだ?
光剣ではぐれ悪魔をあしらいつつ、氷上さんの護衛をしていたが
無線連絡を終えた氷上さんも、いつの間にか拳銃を手に応戦していた。
「くっ、やはり拳銃じゃ効き目が無いか……君達! ここは自分が引き受けます!
早く逃げてください!」
「それは逆じゃないのか? どう見ても、そちらが逃げるべきだと思うが?」
「こんなときに冗談なんて言いませんよ! いいですか、自分は警官なんです!
そして君達は学生、警官が一般市民を置いて逃げるわけにはいかないでしょう!
さっきの君、志は立派ですが君はまだ自分よりも若い!
そんな未来を守るのもまた、警察の使命なんです!」
……言い返せない。悪魔だ聖剣使いだと言っても、最後はそこに帰結する。ここは人間の世界だ。
市民を守り、市民の平和な生活を維持するのが警察の役割だ。
それなのに今ここで氷上さんに逃げろと言うのは職務放棄しろと言っているのに等しい。
気迫の上では足手まといでは決して無いのだけど……。
……誰かさんなら足手まといって言い切りそうな気がした、なんとなくだが。
「……やっぱ俺、警官って奴ぁ嫌いだわ。その良い子ぶりっ子がムカつくんだよ!
決めた、お前は真っ先に真っ二つにしてやるから覚悟しな!」
「待てフリード! お前の相手は私だ!」
足止めをしていたゼノヴィアを無視し、クソ神父が氷上さんに斬りかかって来る。
まずい! 咄嗟の事だから身体が反応できない!
頼む、避けてくれ……ッ!!
氷上さんに聖剣が突きたてられるかと思ったその瞬間。
赤い影が割り込んできて、フリードの奴を思いっきり吹っ飛ばしていた。
あれは、まさか……
「
「間に合ったな。こいつの相手は俺が引き受けた。
しかしこっちの神器だが、悪いがもうタイムアップだ、使えん。
だから氷上、朝言っていたあの試作品……アレを使うときだ。
それとお前らは……いや、今は質問はしないし受け付けない。
この怪物どもを駆除し、あの連続殺人犯を今度こそ逮捕する!」
意気込む柳さんの手には、神器ではなく手錠と特殊警棒が握られていた。
それでもフリードに果敢に挑む。数の面でもこれで優位だ。
だが、柳さんが神器を使えないのはフリードにはご立腹だったらしく。
今奴の手には
「今日はご自慢の神器は無しですかぁ? 俺ちゃん舐めプをするのはいいけどされるのは大嫌いでねぇ。
つまりご機嫌ちょーななめ45度。だから今日はコイツでいたぶってやるぜぇぇぇぇっ!!」
「させないわよ! それっ!」
なんと、そこにイリナが
これがあれば、透明化など無意味だ。やるなぁ。
「あーっ! この野郎……クリーニング代はその首で払ってもらうからなぁ!!」
「私野郎じゃないもーん」
激昂したフリードがイリナに斬りかかろうとするが、その太刀筋はゼノヴィアに止められ。
距離をとればそこに柳さんが回りこみ。フリードは完全に優位性を失っている。
これなら俺ははぐれ悪魔の対処に専念できそうだな。
ふと、氷上さんを見るとパトカーの残骸から出てきた
ジュラルミンケースから何かを取り出そうとしている。
あんな頑丈なものに一体何を……はっ! まさか……
「武器を出します! 危ないですから離れてください!」
「ご心配なく! 警察に協力するのが市民の役目ですから!
武器の用意をする間、俺が奴らを食い止めます!」
やはり。氷上さんは武器を出そうとしていた。
となれば、俺がやることは一つ。その間氷上さんを守ることだ。
それ位ならば、俺にだって対応できる!
「柳さん! 開発部より届いた新装備、今こそ開封します!
超特捜課氷上より本部へ! 超常戦力への対処のため、神器相当の装備を使用します!」
『本部了解。速やかに事態を鎮圧し、被害を最小限に食い止められたし』
無線連絡を終えた氷上さんが、ジュラルミンケースを開封。
そこには、かなり大きなナックルのようなものが封入されていた。
『――氷上君、聞こえますか? 開発課の
そのIXA-01F――通称プラズマフィストはグリップを握ることで作動する
ナックル型の装備です。殴る際に電流を流し、相手の動きを封じることの出来る装備です。
試作品ですので、扱いにはくれぐれも注意してください。ではご武運を』
無線越しではっきりとは分からなかったが、やはりあの声は薮田先生だった。
あれ? 薮田先生って出張じゃなかったっけ?
いや、今そんなことを気にしている場合じゃない!
俺がはぐれ悪魔に向き直ると、氷上さんに呼び止められた。
「君、この装備はまだ未知数です。危ないから、なるべく離れてください!」
氷上さんがナックルのグリップを握ると、俺の神器やイッセーの神器みたいな
電子音声が鳴り響く。いかにもって感じの音声だ。
プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ス・タ・ン・バ・イ
「……はっ!!」
プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ラ・イ・ズ・アッ・プ
氷上さんが握ったナックルがはぐれ悪魔に接触した瞬間。
まばゆい光と共にスパークが発生。どうやら、高圧電流を相手に流す武器みたいだ。
しかもその威力たるや、曲がりなりにも悪魔である相手を一撃でしとめている。
……何だか凄いものが完成したなぁ。動きを封じるどころか、倒しているじゃないか。
MEMORISE!!
「柳さん! 薮田博士! 成功です!」
「よくやった氷上! そっちは任せる、だが無茶はするなよ!」
『エネルギー調整にまだ甘い部分があるかもしれません、くれぐれも気をつけてください』
「うおっ!? おいおい、これがひょっとしてクールジャパンって奴かよ!?」
驚いていたのはその場にいたほぼ全員だ。まさか人間の開発した装備で
はぐれとは言え悪魔を倒せるとは、思っても見なかったのだろう。
おまけに記録までしたが……今は使うのはやめておこう。
面白そうな武器だが、今実体化させると結構めんどくさそうだ。
ともかく、氷上さんの装備のお陰で一気に形勢逆転している。
さらに追い討ちとばかりに、こちらに援軍が来たのだ。
――木場だ。一体何処に行ってたんだ?
「これは……セージ君、どうなっているんだい?」
「クソ神父がはぐれ悪魔を率いてパトカーを襲撃。
パトカーに乗り合わせていた聖剣使い二人に警官一人と交戦、俺と警官もう一人が加勢。
警官が新兵器を使って残るは奴一人、今ここだ」
「把握。なら、やることは一つだよね!」
状況を把握したのか、木場もフリードに向き直っている。
はぐれ悪魔は既に全滅。となれば戦力比は6対1。卑怯ってレベルじゃないな。
「おい、おいおいおい!? いくらなんでもこりゃあんまりじゃねぇか!?」
「自業自得だ、フリード・セルゼン。今度こそお前を逮捕する」
氷上さんはナックルをしまい、手錠を手に一歩前に出る。
フリードの背後を取った柳さんによって、抵抗はできないように関節を決められている。
そんな様子を見た木場が、思わず警官の二人に声をかけていた。
……へ、変な真似はしないでくれよ?
「待ってください! 彼は聖剣――特殊な武器を持っています!
それを、自分に破壊させてくれませんか!?」
「相手の無力化というのならばともかく、現時点でそれは出来ない。
証拠品として押収せねばならない代物だからな。
態々言うからには事情があるのだろうが……悪く思わないでくれ」
「木場、自分の手で復讐を果たせないのは思うところがあるかもしれないが
ここは警察の言うことに従おう。
警察を敵に回したら、グレモリー部長にも責が行く。
そうなれば、問題はお前一人のものじゃなくなる」
今しがたゼノヴィアにボコられたのが効いたのか、木場は大人しく剣を収めてくれた。
さっきもそれ位素直だったらややこしくならずに済んだものを……まぁいいけど。
フリードも、圧倒的戦力差に観念したのか反撃の構えを見せていない。
まぁ、反撃しようにも出来ないって言った方が正しそうだが。
そりゃそうだろう。警官二人に剣を携えた悪魔や聖剣使いが計四人。
迂闊に動けば間違いなくアウトって状況だ。おまけに間接決められてる。
そんなわけなのか今度はすんなりと、その無数の血に染まった両手に
鉄の輪がかけられることになった。
「19時29分。フリード・セルゼン、殺人の容疑で逮捕。
お前が持っている聖剣とやらは押収させてもらうぞ。
……そういう訳だ。お前達、それについては政府を通じて
そちらに返還される手筈になっている。心配するな」
「……くそっ。てめぇら、これで勝ったと思うなよ!?」
「もう勝負ついてるから」
勝負と言うか、逮捕された時点で終わりだと思うんだがな。
柳さんがクソ神父から聖剣を三本奪い、当のクソ神父も氷上さんに引っ張られる形で
応援でやってきたパトカーに押し込まれる。
……ふと、今度は柳さんが俺達に向き直る。
「……さて。そこの二人はともかく、男子二人は初めてだな。
俺はテリー柳。駒王警察署
四人とも。今回の件、市民のご協力を感謝……と言いたいが。
なるべく危険なことに首は突っ込まないでくれ。
学生の本分は学業、だなどと頭の固い言い方をするつもりは無いが……。
本来、町の平和を守るのは大人の仕事だ。まだ日本国の制度では成人の定義は20歳以上だ。
悪魔だ聖剣だなどと言っても、それが現実である以上は大人はそれに合わせて動く。
子供が平和を守るのは、メルヘンやファンタジーの世界だけだ。
お前達が生きているのは、紛れも無い現実だと言うことだけは努々忘れないように。
……以上だ。なお質問は受け付けん、俺に質問をするな」
言いたい事だけ言う形で、柳さんもバイクに跨り、パトカーと共に走り去ってしまった。
何はともあれ、盗まれた聖剣は取り戻す事が出来、殺人犯も逮捕できた。
一件落着……じゃないか。主犯はまだいるか。とは言え、迂闊に手が出せない相手だが。
「随分呆気ない終わり方だったわね、ゼノヴィア」
「ああ。まあ無事に終わったんならそれでいいさ。コカビエルについては
改めて上に指示を仰ぐとしよう。
そういうわけだ、邪魔したなとリアス・グレモリーに伝えてくれ」
「……だ、そうだぞ木場」
「ちょっとセージ君。何で僕に押し付けるんだい?」
強奪された聖剣は日本政府から教会に返還される手筈らしい。
それを聞いて安心したのか、ふっと笑みがこぼれる聖剣使いの二人。
手を振ってその場を後にする背中を、男二人が見送っている。
木場も釈然としない様子だが、相手が警察では分が悪い。
と言うか、まだやるようなら今度は俺が実力で止める。
悪いが、先刻の私闘で脳筋が木場に話した事は大正解だ。
頭に血が上った木場に負ける要素はまあ、ないだろう。
……うん? って事は、随分時間が出来たな。ならば。
「丁度良い。木場、少し付き合え」
「えっ? セージ君、そう言う趣味が……」
「わざとか? 俺はそういう冗談はあまり好まないんだが。
……前に話した、俺にあんたの警護を依頼した人についてだ。
都合がつきそうだから、今から会いに行くぞ。
急で申し訳ないが、どうせ暇だろう?」
「いや、けど部長に……」
まあ木場の言わんとすることは分かる。
だが、今グレモリー部長のところに戻られてはぐだぐだになる恐れもあった。
つい先日グレモリー部長の強引なプランに異を唱えておきながら自分もこれか。
……ははっ、本当に他人のことをとやかく言えないな。
「んなもん電話越しでいいだろう。わざわざ部室に戻っても、ああだこうだ面倒だぞ?
踏ん切りがつかないようなら……もしもし
そちらで探していた人、見つかりましたんで……ええ、ええ。
はい、分かりました。じゃ、今から向かいますので。
……と、言うわけだ。こっちは依頼人を待たせている。早いところ行くぞ」
「……やれやれ。セージ君も相当強引だね。
じゃ、君に僕の事を依頼した人が誰なのか、教えてもらいに行くとしようか」
俺は半ば強引に木場を引きずり、海道さんとの待ち合わせ場所に向かうことにした。
だが、俺もその時はまだ知らなかった。
既に主犯格は動き出していたことを。
以前のレーダーの誤探知は、とんでもないものを拾っていたことを。
そして――
――堕天使と、教会の放逐者。そして冥界政府。
彼らの思惑は既に重なり合い、そこに白龍皇などと言う異物が紛れ込もうとしていることを。
人間の世界を、身勝手な思惑で塗り潰そうとしている連中が、跳梁跋扈していることを。
【速報】フリード・セルゼン逮捕【サイコパス神父】
実際の捕物に出くわしたことはありませんが(当然)
フィクションだと凶悪犯一人に対して警官が複数で当たるのなんてざらですから
戦闘にこそならなかったとは言え6対1とかアホみたいな戦力差が出来上がりました。
フリードがはぐれ悪魔を使役していますが、そのお陰でますます初級インベス臭く……。
尚、このはぐれ悪魔共々独自設定ですのであしからず。
悪魔や聖剣がある以上十分メルヘンやファンタジーかもしれませんが
この世界はそれが当たり前にある世界です。そんなものをメルヘンやファンタジーとは
ちょっと呼べないと思いましてこういう扱いになっています。
じゃあこの世界のメルヘンやファンタジーって何でしょう?
これは解説すると長くなりますし頭痛くなりそうですのでまたの機会に。
超特捜課の新兵器、プラズマフィスト。
ちょっと世界観的に大丈夫かなぁと思いつつも、人間の技術の粋と言うことで導入。
冥界なんてもっと凄いもの作ってますし。
元ネタは型番でモロですが仮面ライダーイクサのイクサナックル。
残念ながらこれで変身はできませんが、ナックルとしての性能は
本家にも劣らないトンでも兵器です。
劇中自衛隊宛の荷物と勘違いしたと言われたとおりの性能を描写できればと思います。
……そして同時にあの人の参戦フラグを立ててしまった気がしないでもなく
(本人は出ません、あしからず。出たら間違いなく作品が破綻します)
相変わらず赤髪の子に辛辣なオリ主ですが……
なるべくいちゃもんにならないようにはしてます。
何をもってどう取るかは人それぞれなので
如何ともしがたいのですが。
今回あちこちにオリ主が変なフラグ立ててます。