でも中身はイッセーと同レベルです。
はぐれ悪魔、か。先日俺が倒したやつとはまた違うタイプらしい。
だが危険度については変わりなく、悪魔の法に則って
駆逐せねばならない存在であることは間違いない。
イッセー含め、オカ研総出で来たということは相手はそれほどの強敵か
或いは俺たちへのレクチャーか。部長の自信たっぷりな態度を見る限りでは、後者だろうが。
だが肝心のイッセーはビビリまくっている。
俺の方は緊張していないといえば嘘になるって程度だ。
確かに悪魔になりたての俺らは戦力外通知を受けてはいるが。
それでもこういうのはビビったら負けだ。
「セージ。いくらあなたが以前はぐれ悪魔と戦ったと言っても
今回のはそれより遥かに強い個体よ。今日は後ろで、イッセーと私達の戦いを見てなさい」
だろうな。さっきから感じる気配は以前廃工場で感じたものよりは強い。
余程今度のやつは力を蓄えたか、以前倒した奴が本当にザコだったか。
だが……ビビる程かと言うと、そうでもない。
緊張しているのは、単に実戦経験の不足によるものだと思う。
最も、こんな経験がそうあってもそれはそれで困る。
一応、
学ぶというなら、これはかなり便利なシロモノだ。
道中、部長は
人間を悪魔に転生させて、自分たちの力を競う駒にする――か。ふむ。何か引っかかるな。
その話が事実なら、イッセーや他のオカ研部員は駒として駆り集められたって事になるな。
……ん? じゃあ俺はどうなる? 俺もその駒の一つなのか?
イッセーはイッセーで、自分の駒の役割を気にしていたようだが、俺の扱いも気になる。
イッセーと二人で一人の悪魔の駒なのか、それぞれ独立した悪魔の駒なのか。
そういえば、さっきからはぐれ悪魔を探しているが、この
レーダー機能みたいなのはないのかな? とか思っているとカードホルダーが動いた気がしたが
俺がカードを引くよりも先に、部長がお目当ての場所を見つけたようだ。
それと同時に、俺の左手から電子音声が流れた。
SPOIL
スポイル……あ、今のカード失効されたのね。残念。使ってみたかったんだが。
その電子音声に続くように、奥から不気味な声が響き渡る。
俺達以外の声の主なんて、答えは一つだ――今回の殲滅対象!
「はぐれ悪魔バイサー。あなたを消滅しに来たわ」
暗闇の奥から出てきたのは、全裸の女性の上半身と、巨大な獣のの下半身。
両手には槍を持ち、尾は独立して動いている。
俺が見た名前の読めない蜘蛛男も大概だったが、こいつもまたテンプレートな怪物だ。
部長のあからさまな挑発に乗っているあたり、程度もしれてしまう。
イッセーはビビっているようだが……いや、俺がおかしいのか?
気を取り直し、俺はカードを一枚引く。相手の情報を調べるカードだ。
今度はフルオープンで、全員に情報が見えるように設定する。
変なところで痒いところに手が届く設計だな、これ。
COMMON-LIBRARY!!
――バイサー。はぐれ悪魔。両手に持った巨大な槍と
その巨体から繰り出されるパワーで相手を蹂躙、人間を喰らい尽くす。
かつてはさる名門悪魔の眷属であったが、悪魔としての力に溺れ、現在に至る。
人間を喰らうことで、力を蓄える――か。
アルジェントさんの時と違って、個人情報ダダ漏れだな。
まあ、こいつに守るべきプライバシーとか無さそうだが。
さて。弱点を分析するか? 一応部長に確認を取るか。
「……部長。奴の弱点を調べましょうか?」
「それには及ばないわ。それよりイッセー、セージ。
さっきの続きをレクチャーするわ。祐斗!」
部長の号令に合わせ、木場が動く。
そういえば、オカ研の面子の悪魔としての顔を見るのは初めてだ。
木場の駒は
そして、木場自身の得物は西洋剣。手に持ったロングソードで
バイサーの体に剣撃を浴びせている。高速の剣撃。
――なるほど、強そう、というか強い。
バイサーの攻撃がかすりもしなかった。俺も目で追うのがやっとだ。
左手の籠手もさっきからカタカタ動いている。
MEMORIZE!!
俺の手札が一枚増えた。しかしまだ左手の籠手は動いている。まだあるのか!?
電子音声と同時に、バイサーが狙いを塔城さんに変更する。
木場は倒せないと見えて、別の獲物から倒す算段か?
狼狽えているイッセーとは裏腹に、部長も、塔城さんも顔色ひとつ変えない。
ただ一人、バイサーだけがしたり顔で塔城さんを踏みつけてい――ない。
踏みつけようとした足は、地面に接していない!
「次は小猫。あの子は『
バカげた力と、屈強なまでの防御力」
MEMORIZE!!
また俺の手札が増えた。それでもまだまだ籠手は動き続けている。
少し不安になってきたぞ。一方の塔城さんは、踏みつけ攻撃をものともせずに
相手を持ち上げ、放り投げたかと思えばストレートをぶち込んでいる。
確かにあれは、単純だが強い力だ。
これでも勝負は決まったようなものだが、これでまだ半分。
向こうに切り札がない限り、これは勝負付いてるな。
いや、初めから決まっていたと見るべきか。
「最後に朱乃ね」
「はい部長。あらあら、どうしようかしら」
MEMORIZE!!
あれ? 姫島先輩何もしてないのに手札が増えたぞ?
恐らく、塔城さんのデータがシンプルで、記録が簡単だったから
ようやく記録の方が追いついた――ってところか。
これで安心して姫島先輩の戦闘データをチェックできる。
姫島先輩は
オカ研ナンバー2は伊達じゃなさそうだ。
姫島先輩が手を翳す度、バイサーに稲妻が落ちる。
それも一発や二発じゃない。何発も。
あれは……わかる。何せ俺には見える。
ここは屋内のはずなのに稲妻が落ちている時点でそうなのだが
これは魔法の稲妻だ。魔力の流れが、今までと全く違う。
部長曰く、姫島先輩の魔法は稲妻だけじゃないらしいが、それよりも何よりも……
背筋が薄ら寒い。バイサーの方は悲鳴をあげているというのに
対峙してる姫島先輩は楽しそうに笑っている。
これは……あまり逆らうと面倒なタイプかもしれない。
今のところ、そんな事情は全くないから問題は……
……ありまくった。今まで散々勝手な判断で行動してた。
イッセーも震えているが、俺も肝が冷えている。
おい生霊。お前肝を冷やす側だろうが。
何か見てはいけない裏側を垣間見た気がしないでもないんだがこれは。
MEMORIZE!!
姫島先輩がご丁寧に何度も何度も稲妻を浴びせてくれたおかげで
いいデータがとれました。
部長や木場は、姫島先輩は味方には優しいと言ってくれているが
この場面で言っても信用できないぞそれ。
何せ、あの醜悪だったバイサーの顔や身体が
見るも無残に黒こげてさらに醜悪になっている。
そんな肉塊寸前のバイサーに、部長が歩み寄る。止めだろうな。
――殺せ
それがはぐれ悪魔、バイサーの辞世の句だった。
部長の魔力を受け、跡形も残らず消滅している。
……これが本物の悪魔の戦いか。あまりの事に、正直まだ事態が飲み込めていない。
判明したのはオカ研は俺とイッセーを除いてとんでもない集まりだって事と
今回ので俺の手札が増えたこと、それと――
MEMORIZE!!
部長のデータは、俺の
そんな俺の考えなどお構いなしに、部長は平常運転に戻っている。
いや、もうこれどっちが平常運転だ?
「あの部長、聞きそびれた俺らの役割なんですけど」
「ああ、イッセーとセージは――」
イッセーの質問に、部長が答えようとした矢先。闇の奥から何かがわらわらと出てくる!
慌てて、俺はさっきスポイルされたカードを探し出す。これって所謂手札事故か!?
たったこれだけの手札で事故るとかどんだけだよ!?
COMMON-LADER!!
レーダー。なるほど、さっき考えてたレーダー機能、きちんとあるんだ。
そして展開したレーダーを見た瞬間、俺はあっという間に状況を理解した。
否、せざるを得なかった。
――囲まれてる。囲んでいる相手は……バイサー!? バカな、さっき部長が消したはずだ!
しかし、身体の大きさや感じられる殺気は小さい。だが数が多い。どれだけいるんだ?
「コロサレタ、コロサレタ。ハハガコロサレタ」
「コロシタ、コロシタ。アカイアクマガコロシタ」
「ハハノカタキ、ハハノカタキ」
怒号を上げながら子バイサーが襲いかかってくる。
木場はスピードで、塔城さんも張り付いたやつを引っペがしたり
姫島先輩や部長は魔法で一網打尽にしている。
だが数の暴力、おそるべし。俺達にも向かってきた!
「イッセー、セージ! とにかく逃げ回りなさい!」
「了解っす! セージ、ここは逃げるぞ!」
思いっきりイッセーに引っ張られる形になってしまう。
数は向こうが圧倒的に優位だし、ここは逃げずに戦ったほうが――
――いや、部長の指示を的確に守っているイッセーの方が正しいのは頭じゃ理解できるんだが。
だが、子バイサーの数の暴力はそもそも俺達に逃げ場を用意してなどくれなかった。
結局、俺達は腹をくくるしか無いということか。いいよ、やってやる!
「ダメだイッセー。ここは腹を決めるぞ。俺たちも戦う。
自分の身くらい守れずに、悪魔は名乗れないしな。部長、そんなわけですので俺は逆らいます。
イッセーは従順かもしれませんが、俺はあなたのためには存在しない。
眷属失格ですが、あなたに従ってばかりじゃ俺の正体は分からずじまいだ!」
「お、おいセージ! くそっ、俺もやるぜ! ハーレム作る前に死んでたまるかってんだ!
い、行くぜ、セイクリッド・ギアッ!!」
ある程度、腹の中に貯めていたものを吐き出した。気合を入れる意味もあるのだが
ここらで言っておかないといつ言うのか、タイミングが俺としては良かったというのもある。
少なくとも、今逆らうことで俺のこの力の正体はある程度、見えるはずだ!
RELOAD!!
右手に実体化させた籠手の拳を、左手の籠手の掌に押し付ける。
左手の籠手、
今は既に起動させていたため、リロード――再読み込みを知らせる電子音声が鳴り響く。
そのまま左手の籠手を展開させ、俺はすぐさまカードを一枚引き、かざす。
SOLID-SWORD!!
BOOST!!
イッセーも左手にはドライグの籠手を装備している。それでも立派な武器だ。
素手で殴るよりかは効果はあると思う。それにあのドライグの言葉が本当なら――
それはとんでもない力を持っているはずだ。行くぜ、イッセー。
そして俺の引いたカードはさっき新たに出来たカード。
木場の使っていた剣が、今度は俺の右手に収まっている。
これは俺の見たものを、再現できる力、か? 木場の方も、思わず自分の手を見ていた。
「僕の剣……だよね、それ?」
「そうらしい。まだよくわからないが、実際に盗んだわけじゃあないと思うぞ。多分」
得物があれば、ある程度はアドバンテージを稼げる!
剣術の心得は多分ないが、多分なんとかなるだろう!
俺の振るった剣が、子バイサーの肉を切り裂く感触を得る。
木場ほどのスピードも、塔城さんほどのパワーも当然ないが
それでもなんとか戦えているのは……考えたくないが、多分相手が弱いからだろう。
子というだけあって、おそらくそれほど力も蓄えていないし、実戦経験も無いのだろう。
「イッセー、そっちに行ったぞ……っとととっ、こっちにも来たか!
だ、ダメだ捌き切れな……うわっ、折れたぁ!?」
「セージ! このっ、ちょこまかしやがって! 木場みたいにはうまくいかないかっ!」
だが、それ以上に俺達の力と実戦経験が足りなさすぎた。
俺は剣を折られ、イッセーも左手の力をうまく使えずに
相手に振り回される形になっている。
息巻いてこれか。全くなんとも情けない話だ、くそったれが。
木場の剣が折れてないところを見るに多分、実体化させたものの強度は
俺自身の力に左右されるってところなんだろうな。
もちろん、俺自身の剣術的な意味合いもあるんだろうけど。
とにかくこれは情けなくて、マズい。
「イッセー! くっ、どきなさい!」
「あらあら。弱いものいじめはよくありませんわよ? セージくんからおどきなさいな」
部長と姫島先輩が俺達の周りにいる子バイサーを蹴散らしている。
あいつら、俺達が弱いことを学習してこっちに狙いを定めてきている!
この場を打開するための手札は……姫島先輩のカードなら、纏めて蹴散らせるが……ッ!!
ERROR!!
ですよねー。表示されているのはコスト不足を示す警告文。この分じゃ部長のもダメだな。
なら、他の手を考えるまでだ! 部長も姫島先輩もダメなら……
頼む、木場や塔城さんのはセーフであってくれ!
カードを引こうとあたふたしている俺めがけて、子バイサーの一体が突っ込んできた。
……しまった。注意が散漫になっていたか。反応、しきれるかッ!?
「セージ! こっちに来い!」
「イッセー!? そうか、よし!」
イッセーのアドバイス、ナイスタイミングだよ本当に。
こうすれば確かに反応云々じゃなく、回避できる!
俺は実体化を解いて、イッセーに憑依する。
転げ込むように精神世界にダイブしたため、少し痛い。
イッセー越しに見えるが、俺めがけて突っ込んでいた子バイサーは
突然獲物が消えたことに戸惑っているようだ。ざまぁ。
『サンキュー、イッセー。時にイッセー。速さと強さ、どっちがいい?』
「早い……よりは強い方かな。けどそれがどうしたんだ?」
おいイッセー。お前今違うこと考えてただろ。まあいいや、今突っ込んでる場合じゃない。
ここなら、安心してカードを選んで使える。来い、今度はハズレ手札であってくれるなよ?
俺の予想が正しければ、今ここで使うカードの効果は――
EFFECT-STRENGTH!!
力。俺が見た塔城小猫の能力。あのシンプルで強い力。それを今宿してるのは――
「おおっ!? 何か力がみなぎってくる!! 例えるならそう、朝の俺の○○○のようにッ!!」
「……先輩、例えが下品すぎます」
おおーい。なにやらみなぎっているようだけど塔城さんの言うとおり
もっと他にいいたとえはないのか。
だが塔城さんのツッコミ含め、あまり皆動揺していない。
姫島先輩や部長、木場は下ネタに耐性ついてるのか?
塔城さんには、あまりついてなさそうだけど。
肝心の威力のほどは、イッセーに狙いを変えた子バイサーの突進をくらっても
イッセーは吹っ飛びもしなかった。
「お? ポフッって当たった程度にしか感じないな。凄いな、これが小猫ちゃんの力か!」
「……歩藤先輩の力だと思います」
『どっちもだよ塔城さん。さて、感心してるところ悪いがイッセー。
この力は時間制限付き、そいつが最後の一体だ。
効果が続いてるうちに思いっきりぶん殴ってやれ!』
気合一閃。イッセーの叫びとともに放たれたドラゴン波……
もとい、左ストレートは綺麗に子バイサーにめり込み、そのまま消し飛ばしてしまった。
我ながら凄いな。いや、塔城さんがすごいのか。
使う機会が無かったが、恐らくもう一枚の方も木場の力を再現できるのだろう。
あれだけいた子バイサーは全て駆逐され、廃屋には静寂が戻っている。
今思い出したが、このあたりはやけに幽霊が多かった。
話を振っても、何も喋らない奴もいたっけか。
今にして思えば、彼らはバイサーの犠牲者だったのかもしれないな……。
ともあれ、名も知らない浮遊霊の皆、仇はとったよ。俺は何もしてないけど。
「予想外の事態が起きたけど、これで討伐は終了よ。
みんな、お疲れ様。帰ってお茶にしましょ」
「あのー部長。それで、俺らの役割は……」
帰還の魔法陣をセットする前、イッセーが部長に俺達の駒を聞くが……
この流れで答えは読めていると思うんだが。
お前、どう考えても
この
だが俺も基本イッセーと二人で一人な存在だと考えると、自ずと答えは出てくる。
「『
セージの方は
ここからでもわかる程度にイッセーが項垂れているのが見える。
まあ、
と言うかお前、これでもかってくらいに
今更何をしょげるんだよ。
俺の方は、別に自分が何だろうと興味がない、と言うか
興味がなかったので、どうでもよかった。
人に仇なすものに対する抑止力が自分にあることがわかっただけでも
儲け物だということにしておく。だが、もう少し練度をあげる必要はありそうだな。
Q:なんでバイサー増えたの?
A:原作でそれなりの数の人間が犠牲になっており、そこから力を蓄えたことは
想像に難くないので……魔力で分身を生み出したか、単為生殖か、あるいは
もっと直接的にR-18的に増やしたか。
とにかく原作よりほんのちょっと強くなりました。>バイサー
オカ研も一人増えましたしね。
……はい、「折れたぁ!?」やりたかっただけです。
あとイッセーの実戦デビューを展開上、少し早めたかったのもあります。
セージが作中レーシングだのテーピングだの言ってますが
当然レーティングゲームの事です。
全くどうでもいい話は聞かない(Soul2.参照)ので、覚える気すらありません。
現時点では。
次回はいよいよみんな大好き(?)クソ神父が出ます。
あとはいよいよセージが……?