ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

65 / 151
お待たせしました。
投稿時間が今後も不安定になりがちですが
こんごともよろしくお願いいたします。


前回に引き続き、超特捜課をはじめ
人間サイドのお話です。
この世界において、何の力も無い、何の変哲も無い人間は生きるに値しないのでしょうか。
異質なものばかりに目を向けていると、ふとそうした彼らの存在が気になります。
人間全てが平等であると甘い考えは持っていませんが
平等であろうとする志まで否定されている、そんな気さえします……(某契約者を見つつ)


Escort request

駒王町。日本国に所在するいち地方都市であるここは

冥界の貴族、リアス・グレモリーの領地としての顔も併せ持つ。

しかし、その事を知る者は決して多くない。

 

それがただの金持ちのお遊戯程度に、生活に支障をきたさぬ程度に

名前だけ、そう言い張っているだけならば田舎貴族の戯言で済んだかもしれない。

ところが、現実とは斯くも厳しいもので。

人間が普通に生活を営んでいるだけならば決して起こり得ないような事件。

昨今、人間の生活圏において実しやかに囁かれている人ならざるものによる事件。

 

そこに起因するものは、人ならざる者達の不仲だったり、それぞれの権威だったり。

いずれにせよ、自分達の都合によるものである。

それはまるで、人間が自分達の歴史の中で葬ってきた自然とその生物達への行いを

そのまま自分達に返されたかのように。

 

立場は変わり、歴史は繰り返される。

人は、生息地を追われる側に。かつて自分達が数多の生き物の生息地を狭めたように。

今度は、自分達が生息地を追われる時が来てしまったのだろうか。

 

……だとしたら、それは否。

人は、己が犯した過ちを受け入れ、歴史として見つめなおし先に進む。

それが、自然の掟に従い野に植え、栄え、散っていく数多の生物との違いである。

神話的に言うならば、神に背いてまで「知恵」と言うものを得た特権にして、義務。

 

義務なき権利は存在しない。いや、存在してはならないのだ。

過ちから学び、変えていく。それが与えられた知恵を振るう権利に対する義務である。

過ちは繰り返される。だが、そこから一歩ずつ進む事こそに

知恵の持つ価値はあるのではなかろうか。そう――

 

――かつて人が犯した過ちを、人より優れていると吹聴する人ならざる者達が

何故、今また犯そうとしているのか――

 

――――

 

駒王町、某所。

広域指定暴力団・曲津組(まがつぐみ)の事務所が入っている雑居ビル。

元々人気の少ない、中途半端に古びたビルであるためか、よからぬ空気も蔓延している。

実際、暴力団の事務所が入っているのだからその表現も適切ではあるのだが

その暴力団は、人ならざる邪悪なものとも取引があるのだ。

 

人ならざるもの、とりわけ悪魔が好みそうな空気。

それは当然太陽の光り輝く光明に満ちた空気ではなく、光の届かない鬱屈した空気。

雑居ビル全体を、そんな空気が包んでいるかのようだ。

 

そんな雑居ビルを、数台のパトカーが取り囲んでいる。

駒王警察署の超常事件特命捜査課(ちょうじょうじけんとくめいそうさか)と、警視庁の組織犯罪対策課の合同調査。

とりわけ、今回は俗に言うガサ入れである。

悪魔との接触により不当な利益を得、また人間社会に害を成す行為が行われている。

その物証を挙げるため、今回の捜索が行われるのだ。

 

「しかし、よく認可が通ったな。もっとこう上から圧力が来ると思ってたがな」

 

「来たぞ? と言っても、署長の方じゃなくて悪魔のほうだがな。

 自分の町で勝手をするな、と言っていたが……全く話にならん」

 

超特捜課の安玖(あんく)巡査のボヤキに対し、超特捜課課長であるテリー(やなぎ)警視は忌々しげに語る。

確かにガサ入れの許可である令状は取れた。しかし、そこで思わぬ場所からの横槍が入ったのだ。

リアス・グレモリー。この駒王町を取り仕切る悪魔……なのだが。

 

リアスが領主として尽力しているかどうかはさておき、実際に犠牲者が出ている。

しかも少年――それもリアスと同じ学校に通う生徒が犠牲になると言う痛ましい事件だ。

今成すべきは体裁を整える事ではない。事件の解決である。

それが警察の、柳の言い分であった。それに対するリアスの返答はと言うと。

 

――ここは私が管轄する町であり、勝手な真似をするものは私が許さない。

また悪魔が動いていると言うのであれば、私が対処する。

事件の報告は感謝するが、でしゃばった真似はしないで貰いたい――

 

「……領主と言っても、アレでは甘ったるい子供だ。

 犯罪対策が満足に出来るとは俺には思えん。そもそも、でしゃばった真似も何も

 超特捜課は所属は駒王警察署だが本をただせば警視庁――

 つまり国の認可を得て活動しているんだがな。

 それすら認めないとなると、公務執行妨害どころか内乱罪が適用されかねんぞ。

 ……あいつを成人として見做せば、だがな」

 

「警視殿はおてんば娘のお守りはお嫌いのようですな。

 ま、俺も同意見だがな。面倒だから結果を出して黙らせたほうがいいと思うが。

 しっかし内乱罪たぁ……随分と大きく出たなぁ?」

 

柳の回想のリアスは、余程の我儘娘だったのか、心底呆れたように思い出している。

その様子を見た安玖も、同情しているかのようなそぶりを見せている。

それほどまでに関係の危うい存在と柳は警視として、超特捜課の課長として対話を行ったのだ。

リアスの側は人間を一応、庇護するべき存在としてみているのだが

如何せん、ものの見方が一方的過ぎる。まるで人間が捨てられたペットを保護するかのように。

 

そんな視線で対処されたのでは、実際たまったものではない。

野生に戻ることの出来ないペットと違い、人間には自衛の能力もあるのだ。

たとえ悪魔の、人ならざる力を持ち出されているとしても、それに対する力もあるのだ。

その事もあってか、超特捜課にしてみればリアスは目の上のたんこぶとまでは言わないにしても

扱いにくい存在として見做している。権力と力だけはある上に

人間と価値観が大きく異なる。警察の治安維持活動が阻害される怖れもあるのだ。

 

「アレが国家転覆を企んでるとも思えんがな。それより、そろそろ時間だ。

 悪魔の目撃情報は今のところ無いが、神器の準備だけはしておけよ」

 

「ああ。素直に吐いてくれるとも思えんけどな。

 氷上(ひかみ)も来た事だし、そろそろ始めるとするか」

 

警らを行っていた足で直接駆けつけてきた氷上巡査も加え。

今まさに、悪の根城に警官隊が乗り込もうとしていた。

 

――――

 

「駒王警察署超常事件特命捜査課のテリー柳だ。

 指定暴力団組織曲津組に対し捜査令状が出ている。

 今からここを調べさせてもらうぞ、質問は一切受け付けん!

 俺に質問をするな!」

 

「おっと、動くんじゃねぇぞ? 少しでも妙な真似しやがったら即逮捕するからな?」

 

警官隊が次々に曲津組の事務所の入っている部屋になだれ込み、部屋の物色を始める。

応対していた胡散臭そうなスーツの男も、飄々とした態度を崩さない。

警察が大群で押し寄せていると言うのに。

 

「おやおや、これはこれはいつもご苦労様です。

 しかし超常事件特命捜査課とは聞きなれぬ……ああ、最近出来たと噂の。

 全く、天下の桜の大紋もとうとうオカルトに手を出すようになりましたか。

 国民の血税をオカルトのような不確かなものに注がれるのは

 私ら善良な市民にしてみたらたまったもんじゃありませんがねぇ」

 

「俺達だってオカルトで全部の事件を解決できるとは思っていない。

 FBIでどうたらって言うのは、テレビのでっち上げだ。

 そもそも、オカルトな事件自体が表に出るものじゃない。

 ……だが、お前のところの連中が、悪魔と言う

 オカルトじみた奴を呼び出したそうじゃないか?」

 

男の嫌味を、柳が真っ向から切り捨てる。

最も、ある意味オカルトの最たるものと言える八百万の神を祀る神棚こそ

こうした事務所にはつきものの設備だったりもするのだが。

 

しかしここ、曲津組は神棚の代わりとして怪しげな魔術書などが存在し

先ほどから帳簿と一緒にぞろぞろと出てくる始末である。

 

「柳さん! 悪魔契約の儀式場と思しき部屋を発見しました!」

 

「よくやった氷上。

 ……さて、これはどういうことなのか。俺達も一応この町には悪魔がいるってのは知っている。

 だがな、その悪魔を利用して犯罪を行っているとなれば、当たり前だが看過は出来ん。

 何を契約して、何をしようとしていたのか……吐いてもらおうか?」

 

柳の問い詰めに、別の柄の悪い男がしどろもどろになる。

動かぬ証拠を突きつけられ、動転しているのだろう。

帳簿も発見され、これについても既に鑑識に回されている。

中身の情報が明るみに出るのも、時間の問題だ。

 

そして、男には懸念材料もあった。

それは、悪魔契約に関する秘密遵守の原則。

こうして警察と言う外的要素からとは言え、秘密が明るみに出た以上

契約違反と称して悪魔がこの男を狙いかねないのだ。

 

「い、言えるか! こちとら悪魔と契約してるんだ!

 契約内容の守秘義務ってもんがある! 黙秘権だ! 黙秘権を行使させてもらうぞ!」

 

「はっ、そんだけ舌が回りゃ黙秘もへったくれもなさそうだがなぁ?

 じゃあ質問を変えてやる。昨日、お前らとつるんでるガキが悪魔に殺された。

 けしかけたのはお前らか? あぁ!?」

 

安玖が凄みを利かせ、男を睨みつける。

警察としても、既に犠牲者が出ている。しかも少年。

その事実もあってか、安玖の凄みは尋常なものではなかった。

 

「し、しらねぇ! 大体、ガキが殺されたってそんなもん俺たちの知ったことじゃ……」

 

「……ふざけるな! その子供を唆したのはお前たちだろう!

 その結果、その子供は死んだんだぞ! 自分の行いが招いた事に、責任を持て!!」

 

安玖、氷上。この二人はその少年が異形の者へと変化するさまを間近で見ている。

そして、それをやむなく撃退したのも他ならぬこの二人だ。

仮にリアスか、駒王学園の平和を守ると言う名目で人間界にいる悪魔――

ソーナ・シトリーが現場にいたら、このように怒ったのかもしれない。

だがそれは、悪魔と言う目線からの怒りだ。

この二人の怒りは、人間と言う同じ立場からこみ上げてくる怒りだ。

それ位、二人は烈火の如く怒っていた。

氷上は男の胸倉を掴んでいるが、そこは柳に制止される形になった。

 

「よせ氷上、それ以上は服務規程違反だ。

 それより、悪魔に殺されると言ったな? 安心しろ、情報提供さえするのであれば

 重要参考人としてこちらで保護する。お前たちはオカルト課と言うが

 悪魔や超常的な害獣との戦いは既に経験済みだ。そもそも、そのための課だ」

 

一人冷静に――努めているだけかもしれないが――男に提案する柳。

重要参考人として、警察の保護を受けるか。その提案が出ると言う事は

悪魔の情報を漏らさない、と言う選択肢は既に失われているも同然だった。

喋れば悪魔に殺されるかもしれないが、警察の保護を受けられる。

黙秘すれば悪魔から狙われる事はないが、警察から執拗に狙われる。

命を失うか、人間社会での居場所を失うか、どちらかだ。

 

そこで、曲津組の男がとった行動は――

 

「……ふ、ふふ、ははははははっ……

 

 ……っざっけんじゃねぇよ! 人間の分際で、あんな奴らに勝てると本気で思ってるのか!

 この町ははじめからあいつらに支配されてたんだ!

 そこで俺たちが生き残るにはこうするしかないんだよ!」

 

そうして男が取り出したのは得体の知れない文字がびっしりと書き込まれた羊皮紙。

悪魔召喚の用紙だろうか。それを頭上に掲げると、文字が光り輝き

部屋の中が黒い霧に覆われる。

 

「野郎! 何しやがった!」

 

「くっ、外のグループに緊急連絡! 近辺道路を至急封鎖しろ!

 悪魔が外に出る怖れがある!」

 

柳の警告どおり、黒い霧の中から現れた悪魔の何人かが外に飛び出す。

混乱に乗じて、曲津組の組員が脱走する。

家宅捜索現場は、一瞬にして混乱の渦に包まれたのだ。

そんな中に、声が響き渡る。

 

――これはほんの余興。本当の混沌は、間もなく幕を開けるのだ。

忌まわしい戦争で失われた悪魔の栄華を、今こそ取り戻すときが来たのだ――

 

と。

 

――――

 

同時刻。人気の少ない公園で、NPO法人・蒼穹会(そうきゅうかい)伊草慧介(いくさけいすけ)

彼の家に下宿する事となったゼノヴィアが訓練を行っていた。

その光景は、何の変哲も無い剣道の訓練を髣髴とさせるものであった。

ただ一つ、決定的な違いを挙げるとするならば。

 

二人とも、聖剣使いであったりかつて教会の戦士であったり、と。

おおよそ、全くのカタギの人間ではない事。

かと言って、転生悪魔などでもない。純粋な人間である。

ただ、悪魔と戦いうる力を持った人間である。

 

「さあ、ゼノヴィア君。今日も訓練を始めるぞ。

 まずは軽く……」

 

「ま、待ってくれ。またアレをやると言うのか!?

 こ、ここでやると言うのは、そのぉ……」

 

ゼノヴィアは俯き、赤面している。

見るものが見れば、不埒な行いに及ぶのではなかろうかと邪推してしまいかねない場面だ。

最も、実際には全くそんなことは無いのだが。

 

「何を言っているんだ。戦士は一日にして成らず。

 それは君もよく知っているはずだ。イクササイズは、基礎体力を向上させるのに

 最適なメニューを満遍なく取り入れた、大変効率のいい運動だ。

 君もやりなさい……ん?」

 

慧介とゼノヴィアのやり取りは、こうした流れによるものが大半を占めている。

突っ込み役である慧介の妻、めぐがこの場にいないこともあって

慧介の暴走を止めるものがいないのだ。

しかし今日は、外的な要因によってこのやり取りに水が差される事となった。

 

「どうしたんだ、慧介?」

 

「向こうに悪魔の気配がする。いや、悪魔の気配自体はこの町では珍しいものでもないんだが……

 ただ、な。向こうの空がやけに黒いのが気にかかる」

 

慧介が指し示した方向は、警察がガサ入れを行った曲津組の事務所がある場所。

そこで新たな悪魔が召喚されたのだが、二人はそれを知らないし、知る由も無い。

 

ふと、その方角に目を向けていたゼノヴィアが人影を発見する。

一瞬の事であったが、それは自分と同い年くらいの少女。

髪型は所謂ツインテール。この条件に合致する人物は、ゼノヴィアには心当たりがあった。

 

「あれは……イリナ!? 慧介すまない、私は用事が出来た!」

 

「あっ、ゼノヴィア君、待ちなさい!!」

 

紫藤イリナ。以前エクスカリバー強奪事件が起きた際

奪還のためにゼノヴィアとたった二人、敵地とも言える駒王町にやって来た少女。

紆余曲折を経て、伊草家に居候する事となったゼノヴィアとは異なり

強奪事件の主犯であるコカビエルとの決戦の最中、混乱に乗じて現れた

カテレア・レヴィアタンにさらわれる形で姿を消していた。

 

そんな彼女が何故、今ここに現れたのか。

いや、果たしてゼノヴィアが見たのは本当に彼女なのか。

イリナらしき人影を追って、ゼノヴィアが駆け出した先は

事もあろうに、黒雲立ち込める曲津組の事務所がある雑居ビルの方角だった……

 

――――

 

ゼノヴィアが駆け出した先には、悪魔の軍勢と魔法使いがいた。

魔法使いは、人間の身でありながら魔力を行使できる存在である。

悪魔に与するもの、と言う意味ではかつてのゼノヴィアの討伐対象足りえたかもしれない存在。

しかし、今のゼノヴィアは悪魔祓いでもなければ、神の戦士でもない。

ただの聖剣使いの少女である。

 

だが、一度染み付いた戦いの臭いはゼノヴィアを日常に置く事を良しとはしなかった。

それが、現在対峙している魔法使いの存在である。

 

「悪魔に魔法使いだと!? な、何故ここにいるんだ!?」

 

「聖剣使いゼノヴィア!? ま、まさか天界は我々の目論見に気付いたのか!?」

 

「いずれにせよ、我々がここにいることを知られたからには、生かしてはおけぬ!」

 

互いに偶然鉢合わせたようなものにも拘らず、臨戦態勢へと突入する。

それは不可抗力。いずれもゼノヴィアにとって遅れを取る相手ではないものの

心の準備が出来ていない。

ゼノヴィアはデュランダルを、魔法使いと悪魔は魔法を、それぞれ構える。

 

火蓋が切って落とされてからは、まさに電光石火であった。

元来ゼノヴィアはパワーに重きを置くスタイルだが

これだけの数を相手に一々切り結んでもいられない。

そこに魔法の集中砲火を受ければ、終わってしまうからだ。

いくらデュランダルが業物と言っても、データを盗み変質させたセージみたいに

デュランダルを盾に使うと言う発想と技術は、まだゼノヴィアには無かった。

力任せにデュランダルを振り回すゼノヴィアの足元に、魔法陣が展開される。

 

「今だ、『捕縛魔法(バインド)』!」

 

「なにっ!?」

 

魔法陣から伸びてきた鎖に、ゼノヴィアは四肢を束縛される。

これでは、デュランダルも振り回しようが無い。

魔力の鎖であるためか、ゼノヴィアが力を込めても千切れる気配が無い。

 

「いかにデュランダルとは言え、一人だけで何が出来るものか!」

 

「お前は何も見なかった。何も見ぬまま死んで行け!」

 

悪魔の一人が鎌を取り出し、ゼノヴィアの首を刎ねようとする。

振りかざされた鎌の光に、思わずゼノヴィアは目を伏せる。

 

――ここまでか……イリナ!!

 

――しかし、鎌の刃がゼノヴィアの首に触れることは無かった。

 

「……思わずやっちゃったけど、これは一体どういうことだい?

 悪魔だけでも部長はおかんむりなのに、その上魔法使いだなんて……」

 

「ゼノヴィア君、無事か!?

 ……おのれ、俺の弟子に不埒な真似を働こうとするとは!

 貴様らのその命、神に返しなさい!」

 

木場祐斗、そして伊草慧介。二人の剣術使いが救援にやって来たのだ。

木場の魔剣と、慧介の神器(セイクリッド・ギア)・「未知への迎撃者(ライズ・イクサリバー)」がゼノヴィアを捕縛していた鎖を斬り捨て

ゼノヴィアに迫っていた鎌を弾き飛ばしたのだ。

最も木場の側は偶然に出くわした形であり、ここでゼノヴィアに会ったのも

悪魔や魔法使いに出くわしたのも、完全に偶然である。

 

「リアス・グレモリーの眷属の騎士(ナイト)か……。

 あの世間知らずも、いよいよ我々に気付いたと言う事か?

 だがもう遅い、後は実行に移すだけだ!

 全ては、我らの望む世界のために!」

 

「くっ、待ちなさい!」

 

捨て台詞を残し、悪魔と魔法使いの集団は姿を消す。

ゼノヴィアが斬り捨てた相手も、姿は無い。

彼らが何者であったのか、聞き出す手がかりは失われていた。

 

「ゼノヴィア君。君が何を見つけたのかは分からない。

 だが、周りを顧みずに突っ走ればこうもなる。今後は気をつけなさい」

 

「すまない……だが、イリナを、紫藤イリナを見つけたんだ。

 私と共にやって来た、もう一人の聖剣使い。彼女を探すために、私は日本に残っていた。

 そのイリナを、今見かけた気がしたんだ……!」

 

「なんだって!? それは本当かい!?」

 

ゼノヴィアの証言に、木場は驚きを隠せない。

紫藤イリナ。彼女は木場の同僚とも言える兵藤一誠の幼馴染でもあるのだ。

行方不明という事になっていた彼女を発見した。それは大きな報せである。

 

「ああ……だが、見失ってしまった。

 追いかけていった先に今の悪魔や魔法使いがいたんだ。

 イリナがいて、彼らがいると言うのも考え方によっては不自然だ。

 だから、もしかすると見間違いだったのかもしれないな……」

 

しかし、見かけた人影がイリナ本人であると言う確証は、残念ながら無かった。

それを確かめようにも、もうどこに行ったのか分からない。

イリナが駆け出した方角にいた、悪魔と魔法使い。

それが何を意味しているのか、情報は全く無かった。

 

「……悪魔もだけど、魔法使いがここにいるってのも大事だね。

 もう少し話を聞きたいところだけど、僕はこの件を部長に報告に戻るよ。

 ……僕が言えた事じゃないけど、あまり思いつめないほうがいいよ?」

 

「……善処しよう」

 

木場祐斗。彼もまた、聖剣計画で命を落としたかつての友のためと自分に言い聞かせ

聖剣の破壊、聖剣を悪用するものの殲滅に躍起になっていた時期がある。

そんな彼にとって、友人とも言うべきイリナに執着する今のゼノヴィアは

かつての自分自身を思わせる部分があるのかもしれない。

ゼノヴィアを気にかけつつも、眷属としての職務を果たすために木場はこの場を後にする。

 

「おや、ゼノヴィア君。丁度よかった、あなたを探していたのですよ」

 

「何者だ?」

 

それを見計らったかのように、一人の男がやって来る。

薮田直人(やぶたなおと)。このリアス・グレモリーの領地においても全くの正体不明。

ただ駒王学園で教鞭を執り、警視庁に技術協力を行う謎の男性。

そんな彼が、ここで一体何をしていると言うのか。

 

「あなたは……蒼穹会の戦士、伊草慧介ですね?

 私は薮田直人。この人の世の行く末を憂う、一人の日本人ですよ」

 

「ただの一人の日本人が、蒼穹会の裏の顔と俺の事を知っているはずが無いだろう。

 本当のことを言いなさい」

 

「失礼、それもそうですね。今日はゼノヴィア君に

 駒王学園への体験入学の案内をしに来たのですよ。

 聞けば、彼女は学校には通っていないそうではありませんか。

 彼女くらいの年ならば、学校に通うのが道理と言うもの。

 そこで、駒王学園に体験入学をしてみてはと思い、今日はやってきたのですよ」

 

今ここにいるのは、駒王学園の教師としての薮田直人なのか。

ゼノヴィアに、しきりに駒王学園への体験入学を勧めている。

正式な入学ではなく、体験入学と言うあたりが彼の良心なのだろうか。

 

「駒王学園に? む……しかし……」

 

「……どうあっても自分の身の上は明かさないか、まあいい。

 しかし、あなたの言うことにも一理ある。

 ゼノヴィア君、確か駒王学園はアーシア君も通っている学校。通う価値はあると思うが」

 

アーシアとゼノヴィアの関係を知っている慧介もまた

ゼノヴィアの体験入学には賛成の立場である。

この場にはいないが、めぐも体験入学には賛成だろう。

ところが、当のゼノヴィア本人は渋っている。

駒王学園――正式にはオカルト研究部でだが――にて騒動を起こした上

一度は敵対し、今尚あまりいい感情を持っていないリアス・グレモリーのお膝元なのだ。

アーシアが通っているとは言え、それだけで体験入学に首を縦には振れなかった。

 

「……まぁ、聖剣使いで元悪魔祓いのあなたが悪魔の学校とも言うべき

 駒王学園に通うのを渋る気持ちは分かります。しかし……そうですね。

 では訂正しましょう。ゼノヴィア君への体験入学の勧めは建前です。本題は別にあります」

 

勿論、学校で勉学に励むのも立派な目的ですが、と前置きした上で

薮田はさらに本題と言う目的を語る。

その内容は驚くべき事。あるいは、忌々しい事。

悪魔に占領されているとは言え人間の世界で、勝手に行われている出来事。

 

「近々、駒王学園にて三大勢力のトップが集い会談を行います。

 そこには、現政権に反対する各勢力の不穏分子も現れるでしょう。

 そうした輩が、学校を巻き込んだ破壊活動を行わないとも限りません。

 そこで、あなた方に学校の警備を依頼したいのです」

 

薮田の提案。それは、ゼノヴィアに会談における警備を行って欲しいと言う依頼であった。

そこには、蒼穹会の会員である慧介も含まれている。

薮田が彼らに依頼するのには、当然ながら理由があった。

 

(超特捜課に頼むのが筋かもしれませんが……

 学校だけでなく、街中において不穏分子が動いた場合

 街中を自由に動ける超特捜課を学校警備に回すのは悪手になりかねません。

 そこで、超特捜課に拠らず、かつ三大勢力と対等に戦える実力を持った存在。

 ……私の知る限りでは、今の駒王町には蒼穹会をおいて他にありません)

 

「相変わらず天界の大天使長は勝手だ。教会を離反したとは言え

 俺のところには一切話が来ていない。もう関係ないとも言えるがな。

 ゼノヴィア君を呼ぶのならば、俺も呼びなさい。今俺は彼女の身元保証人だ」

 

「慧介! ……まあ、いいだろう。三大勢力のトップと言う事は

 ミカエル様もお越しになるのだろう?

 ならば、私は色々とお話したい事、お聞きしたい事がある。

 その話、乗らせてもらおう」

 

かくして、薮田の提案は二人の元教会の戦士に受理される事となった。

三大勢力、特に天界の大天使長ミカエルに対し、ゼノヴィアは質問したい事を山ほど抱えていた。

イリナの事、何故我々二人だけをコカビエルと言う強豪相手にぶつけたのか。

そして……神の不在。エクスカリバー奪還の命を受け日本に来たが

カルチャーショックを含め、様々な衝撃的事実を目の当たりにしてきたのだ。

イリナに至っては、神の不在を知り茫然自失に陥ったくらいだ。

 

そんな大事な事を、何故ミカエルは黙っていたのか。

セージの発破、慧介達との生活を経て、ゼノヴィアには新たな考えが芽生えていた。

 

――神の不在を知ったとて、私の神への信仰は揺らがないと言うのに――

 

それは何時しか、ミカエルへの疑惑と言う新たな一面を覗かせるのだった。

 

三大勢力。日本神話と仏教の神仏同盟。曲津組と彼らに与する悪魔。

そして薮田直人。神の不在、そして一連の駒王町で起きた事件に端を発する三大勢力主催の会議は

様々な人物の様々な思惑を内包しつつ、いよいよ幕が上がろうとしていた。




薮田先生が依頼した護衛の正体は名護さんもとい慧介とゼノヴィアでした。
何気に木場がゼノヴィアに対しフラグらしきものを立てています。

これ言っちゃうとハーレムものの全否定かもですけど
「男あれだけいるのにイッセーだけがもてるのっておかしいよね?」

龍のオーラが無い木場はまだしも、条件同一のはずのヴァーリなんて
もうちょっと女ッ気あってもいいと思うんですが。
そもそも、恋愛なんてわけの分からないもので展開されるんじゃなくて
きちんとした積み重ねがあってこそ映えるものだと思ってます。
何が言いたいのかと言うと……

匙(ソーナ)だけじゃなくて、木場やヴァーリ、サイラオーグあたりにも
ヒロインいたっていいじゃない!
NTRやれとまでは言ってないんだから!

……セージ? アーアー聞こえない聞こえない

あ、だからってゼノヴィアが木場に水着で迫るイベントなんてありませんよ?
その辺は伊草家できちんと教育されてますので。


モノローグでしか出てませんがリアスについて。
私が思うにたとえ領主として真面目にやっていたとしても
老獪な人間一人いれば手玉に取られそうな気がするんです。
何だかんだ言っても、所詮高校生。限界ってもんがあります。
そういう危うさを表現できればいいなとは思うんですが、中々うまくいきませんね。

ぶっちゃけたところで今回の元ネタ解説。
今回1個だけですけど。

>捕縛魔法
元ネタは仮面ライダーウィザードの「バインド」。
エフェクトとしてはかなり説得力あるんですよね、ウィザードの魔法。
っつーかデザインはいいのにどうしてああなった……特にフィギュアーツ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。