なんだか印刷屋に入稿する同人作家の気分を味わっているような気がします。
……さて。
今回はイッセー目線で会議開始の場面からです。
無事に会議は始まるのでしょうか。
正直言って、最近の俺は色々頭がパンクしそうだ。
期末試験もそうなんだが、幽閉されていたって言う見た目女の子の所謂男の娘の後輩――
ギャスパー・ヴラディが新しく(?)俺の後輩になったってのもだし
アザゼルにミカエル、そして部長のお兄さんにして魔王様
サーゼクス・ルシファー様と、三大勢力のトップと立て続けに会ったり。
特にミカエルは、俺に何かを渡すつもりだったらしい。結局貰ってないけど。
アザゼルにしたって、ミカエルにしたって俺は一応冥界の所属なんだけどなぁ。
当然、そんな俺と彼らが出会ったところを週刊誌なんかにすっぱ抜かれた日には……
……実際騒ぎになった。魔王様のお陰で、何とか暴動は起きずに済んだみたいだけど。
さらにさらに、俺のもう一人の相棒とも言うべきセージ――歩藤誠二が
ギャスパーと入れ替わりで幽閉されるじゃないか。
けれどこれは、ある意味じゃ致し方ないと思っている。
何せあいつ、もう俺たちが部長の眷属になって三ヶ月位経とうと言うのに
未だに態度を改めるどころか、ますます不遜になっている気がする。
一体、悪魔の何が気に入らないと言うんだ?
俺は別段、何不自由なく生活できてるんだけどなぁ。
木場にしたって小猫ちゃんにしたって、不自由してる様子はないみたいだし。
ただアーシアだけは、お祈りをする度に頭痛を訴えているので
これは何とか改善して欲しいかな、とは思っていたりするけど。
……そして今日。オカ研の部室は緊張感あふれる空気が漂っていた。
その理由は一つ。三大勢力のトップ陣による会談が、ここ駒王学園で行われるからだ。
……そういえば。その会談もまた、とんでもないことになっていたりするんだけど。
何せ悪魔・天使・堕天使の三大勢力はまだ分かる。
さらにそこに、日本神話の神と仏教で結成された
「
な、なんだってこのタイミングで口を挟むんだよ!?
実家が神社の朱乃さんなんか、この話を聞いた途端に顔が真っ青になってたし。
余程ショックがでかかったのか、まだ顔色が優れてないみたいだ。
「朱乃。今日大事な会議だけど……大丈夫なの?」
「身体的には問題ありませんわ。けれどまさか、日本神話の神が動くなんて……
絶対に動かないと思ってましたのに……」
「その事なら心配は要らないわ。仏教勢力と同盟を結んだとは言っても
所詮辺境のいち神話体系よ。いきなり如何こうするなんてことは
まず無いと見ていいわね」
そんな朱乃さんに対して部長は普段どおりに堂々とされている。
やっぱり部長は流石です! 胸を張っているお陰で、その大きなものがこれでもかってくらいに
主張なさってます! これだけでも俺悪魔になってよかったって思える!
これのよさが分からないセージじゃないはずなんだけどなぁ。
と、俺が部長のおっぱいに圧倒されているとふと部室のドアがノックされる。
外から聞こえてきた声は男の声――この声の主は知ってる。
世界史の
あのコカビエルの一件以来、何かに付けて俺たちにちょっかいを出してくるようになった。
神仏同盟の話を持ってきたのも薮田だし、何よりアイツと話していると
何故だかセージと話している気分になる。
俺たちの、部長のやる事にいちゃもんを付ける事も少なくないからだ。
「失礼しますよ。開口一番言うのもなんですが、今の言葉はいただけませんね。
その土地に本来いる神々を蔑ろにした発言とも普通に取れますし
何より、仮に自分の土地だったとしても自分の土地を田舎呼ばわりするつもりですか?」
「聞こえていたのね。それより『仮に』じゃなくて『正式に』よ。
そこは訂正していただけないかしら、薮田先生」
「ならば尚更辺境などと言う言葉は適切ではありませんね。
まあ、それについては本番で天照様よりご指摘があるでしょうが……
それより、『
まさかとは思いますが、ここに一人で置いておくつもりだったのですか?」
薮田が指し示したのは、ぴりぴりしていた部室の空気に似つかわしくない
某通販サイトの段ボール箱。あの中にはギャスパーが入っている。
結局、極度の人見知りだけはどうにもならなかったので
ここにいる間もずっとあの中に引きこもっているのだ。
「そのつもりだったのだけど……何か問題でもあるのかしら?」
「……制御の出来ない戦略兵器級の
一人で置いておく事に疑問は抱かなかったのですか?」
制御の出来ない戦略兵器って、そんな大げさな……
確かにギャスパーの神器は、誰彼構わず時間を止めてしまう、困った性質だけど。
それを何とかしようと、俺は最近あいつに特訓を施している。
まだ、飛んでくるボールを相手にするくらいしか自発的には出来ないけれど。
……そんな使いにくいものを悪用する奴なんているのか?
悪用しようとしたってそいつだって制御できないじゃんか。
「警護に割く人員もいないし、かといって会議に同席させるわけにも行かないわ。
彼の神器で、会議が混乱でもしたら事ですもの」
「……その危機管理能力の欠如度合いには、呆れてものもいえませんね。
まあ、私が何を言おうと彼を指揮する権限はあなたにあります。
私の個人的見立てでは、一人位は付けておく事をお勧めしますがね」
「ご忠告どうも。けれど心配はいらないわ。
それに、あなたは今日は会場貸し出しと言うスポンサー特権で
今日の会議への参加を許される立場ではなかったのかしら?」
部長の指摘通りだ。そもそもただの世界史の教師のはずの薮田が
何で三大勢力……とプラスアルファの会議に参加するんだよ?
そりゃあ、いきなり二天龍の神器を黙らせたり
コカビエルが薮田を見て驚いてたりはしてた気がするけど。
「……建前上はそうでしたね。それより、いい機会です。
私が何者であるか、彼らの語ることは本当に真実か。
今日会場でお話しましょう。よろしいですね?
ああ、発言権云々の話でしたら無駄な事です。彼らは私の話を聞く……
いえ、聞かざるを得ない事になるでしょうから」
そう語る薮田の目つきは、いつも鋭いのを抜きにしても
とにかく鋭いものだった。な、なんなんだよ……
「先生、そのお話とは一体何かしら?」
「会議が始まってからのお楽しみですよ、姫島君。
さて、呼び止めてしまってすみませんね。既に支取君達は会場入りしています。
皆さんも、会場へ向かったほうがいいでしょう」
なんだろう。この先生にお楽しみとか言われても、全然期待できそうにねぇ。
部長や朱乃さんのお楽しみだったら、俺はいくらでも期待できるんだけどな!
そして、時間になったので俺たちは会場へと向かう事にした。
――――
「おい! 誰かいるなら俺の話を聞いてくれ!
今日テロ組織が動くんだ! 犯行声明も出ている!
特にここ、駒王学園が危険だ! 聞こえないのか、おーい!!」
「うるせぇぞセージ! 今何時だと思ってやがる! 近所迷惑だろうが!」
……道中、珍しくセージが吠えていたが。
この部屋も厳重に封印が施されており、ちょっとやそっとでは出られない仕組みだ。
勿論、内側からなんてもってのほか。
それより、犯行声明が出ているって? 俺は全然聞いてないけど?
「部長、セージの言ってる事って……」
「確認は取れてないわ。セージ、今朝新聞を見たし
今もニュースを確認したけど、テロ組織の犯行声明なんか出てないわよ?
いい加減な事は言わないで頂戴。私もあなたを庇い立て出来なくなるわ」
部長の指摘に、セージも黙り込む。いい傾向だ。
ここ最近の幽閉生活で、ようやくセージも自分の立場ってのが分かってきたのかな。
それと同時に、ちょっと心配になった。
そう幽閉生活は長くないはずだけど、気がふれたんじゃないか、と。
「セージ、お前まさか……」
「……バカにするな。一応まだ正気だ。それよりグレモリー部長の言う事も最もか……
何らかの事情でニュースとかでは出回ってないんだろう。
俺はとあるルートから情報を仕入れたが……それを証明する事ができない。
くそっ、何事も無く終わってくれればいいけどな……」
扉にさえぎられてセージの様子は見えないが、声は少々落ち込んだ様子にも聞こえる。
……そうだ。さっき薮田が言ってた「ギャスパーに護衛を付ける」件
セージに頼んだらどうだ?
「部長、ギャスパーの護衛の件ですけど、セージを使えば……」
「出来るわけないでしょ。セージは幽閉中よ? 解除許可は出てないわ。
逆にギャスパーとセージを同じ部屋に入れるにしたって、またギャスパーを幽閉するなんて
何のために幽閉を解いたのか分からないじゃない」
……そ、そうっすよね。それにセージと同じ部屋なんて
ギャスパー本人も嫌がるだろうし、仕方ないか。
俺たちはセージのいる部屋を後にし、今度こそ会議の会場へと足を運ぶのだった。
……うん? 後ろで木場と小猫ちゃんがセージのいる部屋の前で何かしてるみたいだけど
一体何してるんだ? 早く行かないとまずいだろうに。
「おーい小猫ちゃん、木場! 早く行かないとまずいんじゃないのか?」
「……今行きます。じゃセージ先輩、行ってきますので。祐斗先輩」
「ああ、そうだね……」
そういや、あの二人も最近一緒にいることが多いな。
ま、まさか部活内恋愛とかそういう関係じゃ……!?
だ、だとしたら許せん!
ただでさえ木場は黙ってりゃ女の子の方から寄ってくるようなイケメンなんだ!
これ以上、木場にいい格好させてたまるものか!
「……イッセー、何をいきり立っているの?」
「え? あ、や、何でもないっす」
止めないでください部長。これは、オカルト研究部の風紀を守るために必要な事なんですから!
部活内恋愛は風紀の乱れに繋がる! 木場、そういうのは俺は許さないからな!
と、俺が密かな闘志を燃やしているうちに目的地である会議場へとたどり着いたのだ。
――――
会議場は、深夜の職員会議室。既に中には各陣営のトップがいるって話だ。
その周りには、各勢力の精鋭部隊がいるんだと。ご丁寧に結界まで張られている。
木場が言うには、一触即発の状態との事だ。
「失礼します」
三回ノックをし、会議室に入る部長に続いて、俺達も会議室へと入る。
既に俺は三大陣営のトップとは何らかの形で顔を合わせている。
契約者を装って俺に接触してきたアザゼル。
朱乃さんの神社で俺に接触してきたミカエル。
そして、部長のお兄さんにして俺たちの魔王、サーゼクス様。
まあ、まだ本当に顔を合わせただけって関係なんだけどな。
だが、俺がまだ見たことの無い奴もいる。
一人はテレビで見たような顔だけど……
そのテレビで見たような顔の奴が、俺たちに挨拶をしてくる。
……ここにいるってことは、どの勢力のおえらいさんなんだ?
「この地域を統括していると言うリアス・グレモリーとその眷属か。
お釈迦様は言っていた……俺は天の道から寛く世界を見渡す者……
「天道寛? テレビの俳優が、何故こんな時間にここにいるのかしら?」
イケメンは右手の人差し指を天に掲げ、俺たちに名乗ってくる。聞いてねぇけどな。
それより部長の言葉で思い出した! 色々なドラマに出てるイケメン俳優だ、こいつ!
な、なんでそんな奴がここにいるんだよ! 薮田以上に場違いじゃないか!
「何かいいたそうだな。まぁ言いたいことは分かるがな。
『何故しがない俳優の一人に過ぎない俺が、ここにいるのか』と。
ここにいて、かつ叩き出されていない時点で察せ。
俺は受け入れられてここに来たのだと」
「……俺は認めちゃいねぇがな」
天道寛の言葉に、アザゼルが茶々を入れてくる。
こればかりはアザゼルに同意しておく。何でこんな奴が会議に参加できるんだ!?
「……お釈迦様は言っていた。太陽の尊いところは、塵すらも輝かせる事だ、と。
その光は地を遍く照らす。たとえ地に堕ちたものが相手でもな」
「……てめぇ、俺が塵だって言いたいのかよ」
「やめなさいアザゼル。彼もまたこの地に大きく関わるもの。
蔑ろには出来ないでしょう」
喧嘩腰のアザゼルを諌めるのは大天使長のミカエル。
改めて思うけど、ここってとんでもない状態になってるよな……。
ふと、周囲を見渡すとさらに旧海軍の軍服のコスプレをしたこれまたイケメンに
白と赤で彩られた着物を着て、菊紋の首飾りをつけ
「非理法権天」と書かれた扇子を手にした女の人がいる。
……どうでもいいけど、この人おっぱいに何か詰めてるな。
元浜や桐生じゃないけど、俺だっておっぱいに関してはちょっとしたもんなんだぜ!
けど、そうやってその女の人を見てたのはまずかったようで……
「……彼女を妙な目で見るのはやめていただけますか。
たとえあなたが我が国の民だとしても容赦はしません。
時代が時代ならば、不敬罪であなたの首が飛んでいます。物理的に」
軍服のイケメンが、俺の首に刀を押し付けている。
み、見た目おとなしそうなのにやる事が随分過激なんですけど!?
冷や汗が止まらなかったけど、着物の女の人の声でイケメンは刀を納める。
か、会議が始まる前から会議場を血で染めるとかまずいでしょ!?
……あと、凄くどうでもいいけど女の人の声は小猫ちゃんに結構似ていた。
「やめてあげてください。好奇心によるものでしょう。
私自身、好奇の目で見られるのには慣れています。
それに、会議が始まる前から事を起こすのは私としても不本意です。
……それより、名乗りのご挨拶が遅れてしまいましたね。
私は天照大神。この日本において、主神を勤めさせていただいているものです。
そして先ほどの彼、天道寛はまたの名を大日如来。
マハヴィローシャナとも呼ばれており、仏教勢力の一つ
密教において最高位に値する仏様です」
な、なんだって!?
な、名前だけは聞いたことがある……そんな日本の神や仏が何でここに……
って、そういや朱乃さんが言っていたっけ……
しかし、天道寛がそんな凄い仏だったなんて……
「……お、お久しぶりです……天照様……」
「本当に久しいですね、姫島の娘、朱乃。
悪魔になってからと言うもの、終ぞ私の声は届かなくなりましたから……
こうして声が届くどころか、顔を見るのも本当に久しいです。大きくなりましたね」
そういえば、朱乃さんの実家は神社だったっけ。
特別な神社で、俺達が入ってもなんら害は無い、すっごい神社。
そこで俺はミカエルとも会ったんだけど……
やっぱ、悪魔になると神の加護ってのもなくなるもんなんだな。
アーシアだって、相変わらずお祈りで頭痛が止まらないし
話を聞く限りだと、朱乃さんも昔はこの神と関わっていたのかな。
「……と、私個人としては積もる話もありますが、今日はそのために来たのではありません」
「ええ。ここ最近、この辺りで悪魔や堕天使によってわが国の国民の生活が脅かされている。
そう言う意見が出ましてね。まだ国会では取り上げられていませんが
このままではいずれ国会にも取り上げられるでしょう」
堕天使はまぁ分かるとしても、悪魔ってなんだよ!?
俺たちは人に迷惑なんかかけてないんだぞ!?
俺は思わず、軍服のイケメンに食って掛かってしまった。
「どういう意味だ、そりゃ!? 俺たちは真っ当に悪魔生活を送っているんだ!
他人様に迷惑かけたことなんか、一度だって無いんだぞ!?」
「あなたがたはそうかもしれません。ですが、現に警察は動いているんです。
この間の事件なんて、警察はおろか防衛省が動くほどの事態になったんですよ?」
「コカビエルの野郎……アレほど人間の政治には口を挟むなって言ったんだがな」
「……実際コカビエルが国会にちょっかいをかけてきたわけではないがな。
もしそうだとしたら、こんなところで悠長に会議なんか開いていられない。
だが、菊紋の――彼の言うとおり先の事件が国会を揺らしたのは事実だ」
アザゼルの言うとおり、軍服のイケメンが言っているのはコカビエルの事だろう。
そ、そんな大事になってたんだ、あれ。今ひとつ俺には実感が沸かなかったりする。
天道寛の指摘通り、コカビエルが国会に「戦争を始める!」なんて言ったわけでもないし
もしそう言ってたら、今頃大パニックだ。
そして警察と言う単語に、いち早く部長が反応する。
そりゃそうだ、悪魔の仕業って勘違いされちゃたまったもんじゃねぇ!
俺たちは、何も悪い事なんかしてないんだ!
「警察……それならはぐれ悪魔の仕業ね。私達は彼らからこの町を守って……」
「……お釈迦様は言っていた。地上から見上げる星の区別を付けるのは、人には困難だ……とな。
事情を知らない者からすれば、悪魔の仕業と言うだけで同じ穴の狢と思われるだろう」
「木を見て森を見ず、か。そういう風に考えるのが人間か……」
天道寛の呟きに、サーゼクス様も心底残念そうに呟く。
全くその通りだ! 一部の奴らのせいで、俺達が迷惑する羽目になってるんだ!
俺がひとしきり吼えた辺りで、薮田が遅れて会議場に入ってきた。
ほ、本当に出席するんだ……うん?
サーゼクス様や一緒にいたレヴィアタン様、それにアザゼルが一様に慌てふためいている。
ミカエルに至っては、今にも失神しそうだ。付き添いの天使も相当に焦っている。
「お待たせしました。警備の段取りを立てていたものでしてね。
この会議には、万が一でも起きてはいけませんから。
そう思い、リアス・グレモリー君にも警備強化を打診したんですがね」
「う、嘘……だろ……
コカビエルが言ってやがったことは、事実だったのかよ……」
「ちょ、ちょっとサーゼクスちゃん!? 私聞いてない!
あれが……あいつがいるなんて私聞いてない!
ソーナちゃんだって、私に全然言ってくれなかったし!」
「わ、私も今はじめて知った……さ、さすがといっておくべきか……。
り、リアス。君が気に病むべきことではない、が……」
その取り乱しようは尋常ではない。
あまりの出来事に、部長もソーナ会長も冷静さを失っているように見えた。
な、何が一体どうなってるんだ!?
「魔王様、何をそんなに取り乱しているのです!?
彼は所詮、この学校に勤めるしがないいち教師、それも校長でも理事長でもありません!
本来ならば、この場にいることさえ……」
「……言葉を慎むんだ、リアス。リアスやソーナ君が知らないのも無理は無い。彼は……
いや、あの者こそが……」
サーゼクス様の言葉をさえぎるように、薮田が会議場のテーブルの中央席に着く。
だ、だからなんでお前がそこに座るんだよ!?
「結構。名乗りは私自らが行いますので。
さて……三大勢力の首脳陣、ならびに神仏同盟のお二方は私の事をご存知でしょうが
立会いの方々の中には私の事を知らない方もお見えになるでしょう。
改めて自己紹介させていただきますよ」
咳払いをした後、薮田は目を閉じ呪文を唱え始める。
すると、薮田の周りのオーラが変わるどころか
この場所の空気すら変わったような錯覚を覚えた。
その雰囲気たるや、前にコカビエルと戦ったときに顔を出してきたときとは比べ物にならない!
「アドナイ・エル・エロヒム・エル・シャダイ……
その名を唱えよ。我が名を称えよ。テトラグラマトン……
テトラグラマトン……その名を称えよ……
……我こそは……」
直後、会議場は真っ白い空間に包まれる。
何も見えなくなった時間が永遠に続くように錯覚できた。
だが、光だというのに身体を蝕まれるような感覚は無かった。
そんな摩訶不思議な光景が続いた後、俺の意識は会議場に戻ってきた。
そこには、さっきまでと変わらないメンバーと……
中央席に着く、白と金で彩られたローブに身を包んだ、薮田の姿があった。
「薮田直人。それは私がこの人間の世界で過ごすための名前にして
無数にある我が仮の名の一つに過ぎません。
我が名はヤルダバオト。聖書の神と呼ばれしヤハウェの影を務めし者。
お話しましょう。あの戦争の後、何があったのか。
ヤハウェは、何を残そうとしたのか。そして……
……悪魔よ、天使よ、堕天使よ。あなた方の罪を数えるのです。
知っての通り、この会議場周辺には強固な結界が張られています。
最早己が罪から逃げる事は叶いませんよ」
「罪……だと」
「そ、そんな……ばかな……ありえない……
主は……我らが主は……あの日、確かに……」
「い、今更数え切れるかよ! てめぇの言う罪を一々数えてたら
俺の罪なんざ数え切れるか!」
薮田……いやヤルダバオトの言葉に、三大勢力のトップ陣が軒並みうろたえている。
な、なんだよ……一体何だって言うんだよ!?
「う、嘘でしょ……そんな……そんな大物が私の領地にいたなんて……」
「……大物なんて言葉では片付けられませんよ、リアス……。
私も冷静でいられるかどうか、疑わしいものです……。
私にとっても、まさか顧問が聖書の神……の影だったなんて……」
「支取君、いえソーナ・シトリー君とお呼びすればいいですか?
あなた方は人々の平和を守るための一歩として
この学校の平和を守るべくよくやってくれました。
ただ一点、あなた方が揃いもそろって悪魔であるという事を除けば、ですが」
ソーナ会長や匙達が悪魔である事を知っていたかのように
気に留めることもなくヤルダバオトは話を進めている。
部長も顔が青くなっている。そ、そんなにやばい奴なのか!?
匙なんて卒倒しているし、オカ研のみんなや生徒会の役員も金縛りにあったかのように動かない。
……そ、そうだアーシア! アーシアはどうしたんだ!?
こいつが神だなんて嘯いているけど、アーシアはどうしたんだ!?
「あ……ああ……主よ……生きていらしたのですね……つっ!」
お祈りをささげたのか、アーシアの頭を痛みが襲ったらしい。
そっか。まだアーシアは神を信じていたんだもんな。
こうして嘯いていても目の前に出てくればそういう反応もするか。
だが、次に聴いた言葉に俺は耳を疑った。
「……何の用ですか、魔女アーシア。
あなたがどういう経緯でそうなったのか、私は勿論知っています。
ですが、だからといって私が手を差し伸べる事はありませんよ」
「な……て、てめぇ! 知っててなんでアーシアにそんな酷い仕打ちを!」
部長どころか、魔王様も俺を止めようとするけど
知ってて何もしないって態度を取っているこいつに俺はむかっ腹が立った。
神なら、アーシアへの祈りのダメージを消すぐらいやって見せろってんだ!
「止めないでください部長! あんた、神だって言ったよな!?
だったらなんで、アーシアを救ってやらないんだ!?
アーシアがどんな思いで今まで生きてきたのか、さっきの言い方なら知ってるだろう!?」
「ええ知っていますよ? ですが、それが何だと言うんです。
今ここにこうしているという事は、彼女が自分で選んだ道でしょう?
自分で選んだ道の文句を私に言うのは、全くもって筋違いですよ。
そもそも、あなたに彼女の生涯に口を出す権利があると思っているのですか?」
馬鹿なことを言うんじゃねぇ! 知った風なことばかり言いやがって!
アーシアが、アーシアが今までどんだけつらい思いをして生きてきたと思ってやがるんだ!
「もう一つ言いましょう。私への苦言……まあ暴言とは言わないでおきますが。
それはアーシア・アルジェントの意思ですか?
そうでないとしたら、彼女の意思を無視して勝手にしている
あなたのほうが寧ろどうなのだ、という事になりますがね」
「そうだとしてもだ! アーシアがかわいそうだとは思わないのか!」
俺の叫びに、ヤルダバオトは一瞬黙り込む。
そうだ、アーシアはずっと苦しい思いをしていたんだ!
そんな彼女に手を差し伸べないほうがおかしいんだ!
「かわいそう……ですか。兵藤君。前から思っていましたが……
あなた、何様のつもりですか? 勝手な思い込みで他人をかわいそうと決めつけ
勝手な思い込みで手助けと称して他人に口出しをし、手助けをする。
確かに私は……いえ『
ですが……それは上から下への愛のつもりで言ったわけではありませんがね。
まあこれは、他の方にも言えることですが」
そういうヤルダバオトの目は、明らかに悪魔陣営を見ていた。
な、なんなんだよ! さっきから神だかなんだか知らないけど!
いきなり出てきてテクマクマヤコンだかなんだか唱えたと思ったら
自分は神だって、頭おかしいんじゃないのか!?
いけ好かないとは思ってたけど、まさかこれほどなんて!
「何様はこっちの台詞だよ……今日が大事な会議だっての、知ってるだろ!?
それをいきなり出てきて、こんな風に滅茶苦茶にされたらたまらないんだよ!」
「……あなた、本当に元人間の転生悪魔ですか?
考え方が悪魔よりになりすぎてる気がしますが……ま、それはいいでしょう。
さて。今あなたは『いきなり出てきて滅茶苦茶にされる』と言いましたね?
それはここに住む人間にとって、全くその通りなんですよ。
その件については、私よりお話をするに当たって適任の方がいらっしゃいますからね。
彼らに交代しますよ」
「待て! まだ俺の話は……」
「イッセー、気持ちは分かるけどやめなさい」
「そうだ、今は押さえるんだ。イッセー君」
言いたいことだけ言って、ヤルダバオトは椅子に座ってしまう。
お、俺の怒りはどこにぶつければいいんだ!
部長とサーゼクス様に押さえられ、俺も引っ込まざるを得なくなってしまう。
次に立ち上がったのは天道寛に天照の二人。
今度こそ、ちゃんと会議の空気を壊さない事を話してくれるんだよな……?
「先ほど聖書の神……の代理から話があった、大日如来と天照大神だ。
今回我々も参加させてもらったのは他でもない……お前達――特に悪魔と堕天使。
これらの人間界での行いについてだ。
俺もヤルダバオト神と同じく、人の姿を借りて人の営みを見てきた。
それについて言うべきことはいくつかあるが……今回はそれ以前に、だ。
何故、お前たちはこうまでして人間の生活圏に手を出そうとする?
三大勢力の争いとは、人間の世界で行われる争いなのか?
だとするならば……我々神仏同盟は、この国に古くから根差す者として
然るべき対応をとらざるを得なくなる。
俺は八百万の神という指標を掲げる天照と違って、そこまで寛大にはなれないからな」
「勿論、問題はこの日本だけではない事は重々承知しております。
でも、だからこそ我々は愛する国で営みを続ける人々を守るために
あなた方の行いに異を唱えざるを得ないのです。
現に、この学校に通う生徒が何人も犠牲になっていると聞き及んでいます。
それは悪魔によって命を奪われたものも含まれますし、何より……
不本意で悪魔にさせられ、家族と引き離されたばかりか
人間である事への誇りも一方的に奪われて今尚苦しんでいる者がいると言う時点で
あなた方の行いが、立派な侵略行為であるとも言えるのです。
魔王サーゼクス様。その件について、あなたのご意見を伺いたく思います。
また、神器なるものを原因にこれらの行いが正当化されている現在
それを宿しているからと一方的に命を奪っている堕天使の行いについても
アザゼル総督。あなたの見解を求めます」
天照が言っているのは、多分セージの事だろうか。
そうだとしたら、俺には信じられない。
あいつは本をただせば俺とそう変わらない存在のはずだ。
なのに、何で日本の主神の意見の一例として取り上げられているんだ。
彼らの言葉に怒気は含まれていないが、目は至って真剣そのものだった。
と言うより、ヤルダバオトショックで完全に三大勢力の首脳陣は
出鼻をくじかれたと言っていいかもしれない。
ま、まさかセージが言ってたテロって、これのことか!?
俺たち悪魔にとっての大きな分岐点になるはずだった三大勢力の会議は
最悪の形で幕を開けたのかもしれない。
俺は、そう思えてならなかった……
お 待 た せ
既に一部の方にはバレバレだった薮田先生ですが
やはりと言うかなんと言うか、聖書の神(の影武者≒偽者)でした。
今回ヤルダバオト無双になってますが、神化したヤルダバオトは無双できますから
(ゲームが ちがいます)
名前こそヤルダバオトですが、顕現シーンはネオ・グランゾンをイメージしていたり。
実際執筆時の作業用BGMがダークプリズン(Ver.OGDP)だったりで。
三大勢力軒並み涙目って状態にしたいと言う意地悪な理由もありましたので
それを成せるインパクトといえば、聖書の神顕現位しか思いつかなかったので
ここで晴れてヤルダバオト顕現です。
顕現シーンの台詞回しが某仮面ライダーWになってますが
別にこちらをイメージしてはおりません。
魔王少女がどこぞの所長になっていたり
堕天使総督がゾンビ傭兵部隊長になっていたりしても気のせいです。
……ちょっと大日如来と天照大神が尻馬に乗っかる形になっちゃったのは
その……そう見えてしまったらすみません。
イッセーが天照の声について触れている一文がありますが
これは天照のモチーフキャラの声帯の妖精さんに合わせたただの声ネタです。
そしてそんな大事な場面に出られないセージ(とギャスパー)の影が薄いですが
まだ原作通りに一波乱ありますので……
補足解説。
>天照の衣装
以前感想欄で「某大和型艦娘の格好をイメージ」って触れましたが
『あの』セラフォルーでさえまともな格好をしている場面で
大和型の服ってのも……と思い直し、結局着物になりました。
元のカラーリング、菊紋、非理法権天の文字と徹甲弾胸当ては
それぞれ継承していますけど。
>アーシア絡み
聖書の神(本物じゃないけど)にも喧嘩を売るイッセーマジイッセー。
ここは前章のゼノヴィアからの指摘を引き継いでいる部分もあります。
結局、イッセーにとってアーシアってなんなんだろうな、と。
そして実際痛い目に遭っているけれど、この痛みを消してくれ、って
アーシアがイッセーに直接言ったわけでもなかったような。
それなのにイッセーが勝手にお願いするのは、やはりどうかと思うわけで。
原作では+ゼノヴィアがダメージを受けていたので考え方に拠っちゃ妥当ですけど
拙作ではゼノヴィアは人間のままですし。アーシア一人に特例ってのも、ねぇ。
(原作の二人に特例ってのも十分どうかと思うけど)