ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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毎度の応援、評価ありがとうございます。
大変な励みになっております。

最近の高評価で気をよくした作者が送る
エイプリルフール記念番外作品。
突貫製作なので、本編とは絡んでいたり、絡んでいなかったり。

なので、気楽に(?)御読みくださいませ。


Extra Soul6. セージ・ドリーマーズ・アゲイン

「ふっふっふ。聞け彼女ナシの諸君。ついに俺、兵藤一誠にも彼女ができましたっ!

 じゃーん、この子が俺の彼女、天野夕麻ちゃんでぇーす!!」

 

得意げにスマホの写真を松田と元浜に見せびらかすイッセー。

俺は目線がこいつらより少しばかり高いから後ろにつっ立っているだけで見えてしまう。

元々拝んでやるつもりだったが。この世の終りのような表情を浮かべている

松田と元浜を他所に、俺はふと思ったことがある。

 

……が、こいつらほど親しくないとは言え一応クラスメートだ。

そんな奴の彼女を、あまり悪し様に言うのも気が引ける……ん?

 

……おい、ちょっと待て。

 

これは、何時の話だ? と言うか、俺は一体どうしたんだ?

俺は確か、グレモリー部長に逆らった事が原因――かどうかは分からないが――で

幽閉処分を受けていたはずだ。それなのになんで教室にいるんだ?

 

と言うか、そもそも天野夕麻――レイナーレは、俺が完膚なきまでに叩き潰したはずだ。

もしそうだとしても、イッセーよ。お前はまた同じ手に引っかかっているのか?

 

「イッセー。何馬鹿なことを言っている。その天野夕麻――レイナーレに

 お前はどれだけ酷い目に遭わされたと思ってるんだ。

 言っておくが、同じ轍を踏んでおいて助けたりはしないからな?」

 

俺の発言にイッセーだけでなく、松田も元浜も不思議そうな顔をしているのだ。

あ、しまった。俺は霊体だった。自然に話に参加していたので、うっかり忘れていた。

だが、それ以上に不可解な事がおきた。

 

「なあ宮本。お前、頭打ったか?」

 

「つーかお前、この子知ってるの? いや、俺らもお前の交友範囲が広いのは知ってるけどよ。

 ほんとお前、人付き合い苦手なくせに交友範囲だけは広いよな。やっぱバイトの賜物か?」

 

……え?

ど、どういうことだ? イッセーが俺に反応するのはわかる。

けれど、松田と元浜が俺を認識している?

ど、どういうことだ?

 

「セージ、お前自分が彼女いないからってそういう風に言うのやめろよな。

 夕麻ちゃんが悪い人の訳無いじゃないか。俺のこと前から好きだって言ってくれたんだぜ?」

 

お前、そんなんだから引っかかって……ってあれ?

この話の流れ、覚えがあるんだが。

この後で俺は確か……

 

「イッセー。今朝のニュースじゃ明日は晴れって言ってたが

 明日のデートに雨具とヘルメットは用意しとけよ。

 お前に彼女が出来るなんざ、嵐か災害の前触れだからな。

 後俺を勝手に彼女なしにするな。いるとも言ってないが、いないとも言ってないんだぞ?」

 

そう。俺はこう言った。そしてこの後松田と元浜が俺のイヤミに反応して大笑いする。

 

「ぶはっ……! み、宮本……お前それ言いすぎ……!!」

 

「そうそう、いくらリア充爆発っつったってな……!!」

 

そう、こうして呼吸困難に陥るほど笑い転げるんだった。

……間違いない。俺はこの光景を知って……いや「覚えて」いる。

ただ、何故今それを追体験しているのかはまるで分からないが。

おまけに、身体が戻っているじゃないか。アレだけ苦労したのに、なんでまた?

いや……これは過去か? 過去だから、俺が身体を失う前に……

 

ま、まあいざとなれば記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を……

 

……いや待て。ここが仮に過去だとしたら、それはまだ使えないはずだ。

とにかく、過去だと仮定して考えよう。この後俺とイッセーはデートプランの打ち合わせをする。

そして当日、イッセーは殺され、俺も……

 

そう。これこそが全ての始まりだったんだ。

ならば、これを回避すれば事態は大きく変えられるのではないか?

 

……い、いや。それはそれでどうなんだ?

ええい、こればかりは考えていても仕方ない!

とにかく、イッセーにデートをやめるって進言は意味を成すまい。

あの時以上に、デートに張り付いてやる!

そして、今度と言う今度こそは……

 

――――

 

帰り際、やっぱり松田と元浜からDVD鑑賞会に呼ばれたが、丁重に蹴っ飛ばしてやった。

まだ頭の中のモヤモヤが取れない。確か以前はレイナーレの事に関して疑惑があったからなんだが

今は今で現状に疑惑がある。まあ、レイナーレの疑惑は最悪の形で当たってくれたが……。

 

あの時と同じように、バーガーショップでイッセーにハンバーガーをおごりながら

ショッピングモールを回れ、と提案した後俺達は別れてそれぞれ帰路に着いた。

最も、俺はあの時ショッピングモールに立ち寄って晩飯の惣菜の買出しをしていたんだが。

 

改めてみると……ああ、なるほどな。

やたら教会や神社、それも今は使われてないような建築物が目についていたが

それも悪魔や堕天使の仕業だと考えれば、合点がいく。

イッセーと別れてから試してみたが、やはり俺の本体である以上右手は戻ったが

神器(セイクリッド・ギア)も覚醒前に戻ってしまっている。無論、ドライグの鱗もない。

つまり、今はぐれ悪魔とかに出くわしたらアウトだ。

身体能力も人間のそれなので、逃げるにしてもうまくいくかどうか。

やはり、今は悪魔と必要以上に関わるべきじゃないな。

 

街の広場で配っていた変なオカルトじみたチラシ。

これも今となってはよく知っているものだ。今の俺には関係ないが。

こんなのにホイホイすがるほど人間もバカじゃないと思いたかったが

やはりそうでもなかったと言う事か。なにせ、初めから悪魔が幅を利かせていたんだ。

 

……あの時とは思うことも色々違うが、やらなければならないことはやらねばなるまい。

晩飯の惣菜を物色だ。夕方以降の惣菜や生鮮食品は安い。それが狙いだ。

そう、ここで確か俺は……

 

「あら、あなたうちのイッセーと同じクラスの……えーっと」

 

「……宮本です」

 

イッセーの親御さんと出会ったんだ。むぅ、未来を知っているだけに顔を合わせづらい。

しかし言うべきことは言わねば。勿論、悪魔の事ではなく

今さっきバーガーショップにいたことだ。

 

「そうでしたか、うちのイッセーがわざわざすみません。

 いつも浮かれていてご迷惑をかけるかもしれませんが

 どうかよろしくお願いします」

 

「いえ、こちらこそ。兵藤君にはこっちも世話になってますし。

 それじゃ、そろそろ晩飯買って帰らないといけないので。

 そちらも帰りには気をつけて。最近は妙な事件も多いですし……あ、それと!

 

 ……もし、もしですよ? 兵藤君が人間じゃなくなったとしたら……どうしますか?」

 

おもわず聞いてしまった。俺の記憶どおりなら、あいつは明日悪魔になる。

そうなってしまったら、もう今までの生活にはならなくなる。

そして……俺の知る全ての災厄が始まってしまう。

止められるなら、止めるべきかもしれない。

 

けれど、親御さんの言葉はある意味で俺の予想通りの言葉だった。

 

「何かニュースの見すぎ? 最近不可思議な現象が起きてるらしいけど。

 けどそうねぇ……生きて、元気にやってくれているのなら私としては言う事はないわ。

 そうなったときに、可愛い孫の顔が見られれば言う事ないのだけど」

 

「……そうですか。変な事聞いてすみません。じゃ、重ね重ね気をつけて……」

 

まあ、そうだよな。

俺は親じゃないからわからないけど、子供が生きているだけで御の字だよな。

そう思い直し、俺はイッセーの親御さんを見送り、自分の会計を済ませて帰ることにした。

 

――――

 

自宅。何故だかすごく久々に帰ってきた気がする。思わず胸にこみ上げてくるものがあった。

頭の中が真っ白になり、今の時間も忘れ玄関を勢いよく開け大声で叫んでしまった。

今にして思うと、ちと恥ずかしい……

 

「 た だ い ま ァ ー - ! ! 」

 

……勿論、仕事帰りで疲れて寝ていた母に怒られたのは言うまでもない。

寝ていた原因は、母の布団の上で暖を取っていた猫。

こいつが乗ると眠くなるんだよなぁ。この猫をなでるのも久々なので

無意識のうちに、その猫をなでる回数も増えている。

心なしか、猫がうざかっている風にも見えたがそれに気付くのは少し遅かったらしく

若猫もかくやと言う勢いで噛み付かれてしまう。痛い。

 

「明日なんだけど、ちょいと出かけるけどいいか?」

 

「いいわよ。明日は私も休みだから、寝ながら家事しとくから」

 

「……あの、さ」

 

「ん?」

 

「……いや、なんでもない」

 

明日俺が迎えるであろう運命の事は言い出せなかったが

外出許可はすんなりと降りる。これがいつもの我が家だ。

やはり父親はいないし、当然顔も知らない。

祖父母も既に空の上だ。大体どちらかが家に居り、猫はいつも家に居る。

もう猫がこの家の主でいいんじゃないかな。

仕事の話とか、学校の話を適当に交わした後風呂に入り、布団に潜る。

……と見せかけて、スマホで調べものをしたのがあの時。

今は……久々の自分の布団の感触を味わいつつ、やるべきことをやる。

 

万が一が起きたときのために、可能な限りの身辺整理。

そして、牧村明日香(まきむらあすか)姉さんにメールを送る。

子供の頃から、俺と一緒に遊んでくれた近所のお姉さん。

小学校卒業と同時に引越し、最近また帰ってきたらしいのだ。

 

でも、だからって会った訳じゃない。

今は、育児で忙しいらしいのだ。仕方ないよな。

 

……これだけやればいいよな。

結局、床についたのは相当遅い時間だった。

 

――――

 

翌日。母親と朝飯を食った後、母親は二度寝を始める。

マジで疲れてるのか……猫もこの時間は寝ている。

さっさと出るつもりだったが、簡単に家事を片付けて

昼飯もすぐに食える状態にしておき、今日の本命を果たす。

ここまでは、あの時と同じだ。問題はこれから。

 

――イッセーのデートの邪魔……もとい、レイナーレによる凶行の阻止。

 

正直に言うと、俺がこのまま外に出なければ「俺は」平和で過ごせたのかもしれない。

けれど……今日死ぬって分かってる奴がいる以上、黙って見過ごすのも気が引ける。

後ろ髪を引かれる思いで、俺は家を後にする……。

 

――じゃ、行ってくるよ。さよならじゃなくて……行って来ます。

 

カブを走らせ、給油を済ませた後に向かったのはショッピングモール。

俺が提案したデートスポット。

ブティックに雑貨屋、ファミレスまで入ってる結構本格的なやつだ。

……ゾンビ映画で立てこもったらかなり優秀な拠点になりそうなくらいには。

 

などと二人から少し離れた席でムードもへったくれもないことを考えながら

アイスコーヒーを飲んでいる。ケーキセットにしたかったのだが

すぐに動けるほうがいいと思いコーヒーのみだ。

結果を知っていて見ると、見るに堪えない茶番だ。

空回りしているイッセーが不憫で仕方が無い。

だが、ここで俺が出るわけにはいかない。ここで言い出しても聞く耳は持たないだろうし。

 

「ドッキリ!」とか書かれたプラカードが出て来る方が、どれだけマシだったか。

あるいはどっかロケバスか何かで芸能人が様子を逐一見て笑うほうが、どれだけマシだったか。

一応、連絡先を控えている松田と元浜に明日のプランを考えておいてくれ――

そうメールを打とうとした矢先、二人が席を立つ。このタイミングもあの時どおりだ。

 

……あ、そういえばあの時結局ケーキはちゃんと食えなかったんだっけ。

 

――――

 

二人が向かった先は公園。やはり、これもあの時どおりだ。

疑惑はもう確信に変わっている。神器も、悪魔の身体能力も、赤龍帝も無い。

けれど俺は、やらなきゃならない。目の前で、友人が殺されようとしているのならば。

 

……けれど、心のどこかで迷いがある。

 

――過去を変えるのが、根本的な解決になるのか?

 

そもそも、過去は変えられるのか?

その答えは、今から動かなければ出ないだろう。ならば、動くしかない。

例えそれが、奈落への道だったとしても。

これは多分、イッセーのためと自分に言い聞かせているけど、俺のためだろう。

あいつは悪魔になったことを後悔していない。親御さんもある意味容認している。

けれど俺は……俺の場合は……

 

そう思考を巡らせていると、運命の時はいよいよやって来た。

 

「ねぇ、死んでくれる?」

 

その言葉を聴いた瞬間、俺はカブのエンジンをふかし、フルスロットルでレイナーレにぶつかる。

相手は堕天使だ。これでも決定打にはなるまい。だが!

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

「……え? せ、セージ? お前何しに……」

 

以前もこんな感じで間に割って入った。以前はイッセーを助けるために無我夢中だった。

けれど今は違う。レイナーレを倒す事はできなくとも、ダメージを与え

かつイッセーが殺されるのを防がなければならない。

 

「いいから乗れ! 逃げるぞ! 学校まで吹っ飛ばす! つかまれ!」

 

ここからも無我夢中だ。案の定、レイナーレは追ってくる。

あの時は確か、増援もいたはずだ。そいつに見つかってもアウトだ。

目的地は駒王学園旧校舎、オカルト研究部の部室。

あそこに逃げ込めば、イッセーの身の安全は保障できる。

……その結果、イッセーの悪魔化はあるかもしれないが

その時はその時だ。重要なのは、今ここでイッセーを殺さない事だ。

 

「な、なんでだよ……夕麻ちゃん、なんで……」

 

「黙ってろ! 舌噛みたいのか!」

 

あの時はわけが分からなかったから動転していたが、今は違う。

明確な目的地があり、そこに向かって一直線。

それならば、万に一つでもイッセーは助かるかもしれない!

 

……が、それは慢心。楽観視。俺が作戦を立てる上で最も忌避すべきものとしてきたもの。

焦りが、それを生み出してしまっていたのだ。

 

信号が青になり、前進すると今度は目の前にゴスロリファッションの金髪少女と

ボディコンスーツの女性が車道の真ん中につっ立っている。

この流れ……ま、まさか! こいつらもレイナーレの!!

な、なら一か八かカブで突っ込んで……

 

「特攻とか、今時流行んないっすよぉ」

 

次の瞬間、俺のカブに光の槍が直撃。そうなれば、俺のカブはアワレにも爆発四散。

 

「イッセー! 耳をふさいで伏せるんだ!」

 

「な、なんだ……うわっ!?」

 

サヨナラ、俺のカブ……

だが、爆発が起きたことはチャンスだ。

爆発の中で、イッセーを連れてなんとかこの場を離れようとする。

幸い、この爆発で警察も動いたようだ。サイレンの音が遠くに聞こえる。

警察……そうだ、超特捜課(ちょうとくそうか)

 

……ダメだ! 超特捜課は確かコカビエルの事件の前後で結成されたはず!

この時点じゃ、まだ結成されていないかもしれない!

 

「お、おいセージ、カブ吹っ飛んじまったんじゃ……すまねぇ、俺のせいで……」

 

「もういい、構うな! とにかくここから学校の旧校舎まで全速力でダッシュだ!!」

 

とにかく俺達はひた走る。だが、走れども走れども学校は見えない。

まさか、こいつら結界的なものを張りやがったか!?

くそっ、そうなったら破る術がないぞ!

そうこうしているうちに、レイナーレが追いついてしまう。

 

「ひどいわイッセー君。私のお願いも聞かずに行っちゃうなんて」

 

「ゆ、夕麻ちゃん、俺は……」

 

くそっ、なんて白々しい! 初めから何とも思ってないくせに!

まさかとは思うが……戦って勝つしか、この場を切り抜ける手段は無いのか!

……今更ながらに、グレモリー部長は何でこんなザコどもを放置してたんだよ!

あんたらにとってはザコでも、俺らにとっては命の危機なんだよ!

 

「それから、そっちの人間。よくもこのレイナーレの邪魔をしてくれたな。

 人間の分際で小賢しい、神器を破壊したら次はお前の番よ……いや」

 

だ、ダメだ! この後で……こいつは俺達に光の槍を突き立てる!

くそっ、やはり過去は変えられないのか……!

 

「よくもこの至高の堕天使たるレイナーレに泥を付けてくれたな。

 お前から先に死ねぇ!!」

 

「何っ!?」

 

狙う順番が変わっただけか!

せ、せめてこっちを狙ってる間にイッセーが逃げてくれれば……

 

やはり、悪魔でもない人間の身体では堕天使に勝ち目が無いのか!

おまけに神器も無いと来た。最も俺の神器の場合、あってもまっさらでは勝算薄いが。

こ、こうなったらせめて引き付けて……

だが、そう思っていたのは俺だけだったことをすぐに思い知る事になった。

 

「せ、セー……ジっ……!!」

 

気がつけば、体は勝手に動いていた。俺のではなく、イッセーの。

俺に向け投げられた槍は、イッセーに突き刺さる形になる。

な……何故だ!?

 

「へ、へへ……っ……初めての……デートが……

 まさか……最期の……デート……なん……てな……」

 

「し、しゃべるな!!」

 

「ほんと……は……そう、じゃ……な……い……か……って……さ。

 ここ……まで……とは……おもわ……けど……」

 

まずい、あの時のアーシアさんと同じだ!

このままじゃ、このままじゃイッセーが!

俺は、こんな事をするために過去に来たというのか!?

 

「あー……あの……あか……い……か……み……の……」

 

こ、こいつ! こんな時にまでグレモリー部長かよ!

こんな時からグレモリー部長だったのかよ!?

このバカ野郎が! そいつはな、お前が死んでやっと初めて助けに来るような奴なんだぞ!

 

「お……おいイッセー!? イッセー!!」

 

揺さぶるが、反応は無い。

ま……まさか……そんな……!?

 

これが……過去を変えるって事なのか……!?

なんだよそれ……何も変わってないじゃないか……

ふざけるな……ふざけるなよ……

 

返せ……返せよ……これからどんどん日常が奪われていくんだろ……

何が堕天使だ……何が神器だ……何が赤龍帝だ……

 

「ふざけるなてめぇら!! お前達に何も知らない奴らの

 日常を壊す権利なんかあってたまるかよ!!」

 

「ぷっ……何熱く語っちゃってるんすかぁ? マジうぜぇんすけど」

 

「レイナーレ様、アレも始末しますか」

 

「当然よ。この場に居合わせた上に、私に傷を付けたのよ。生かして返すわけが無いわ」

 

結局、こうなるのか。

今の俺に、堕天使三人を相手に勝てるとは思えない。

だけど、やるしかない。

 

「例え死んでも、お前達を呪い祟ってやる! 生霊……いや怨霊としてな!

 お前達の思うようには、絶対にならない! 絶対にだ!!

 人間の底力、思い知らせてやる!!」

 

俺の声は、やはり届かないのか。

 

俺の声は……

 

声は――

 

 

――――

 

 

「人間の力思い知れ、レイナーレェェェェ!! ……え?」

 

気がつくと、俺は旧校舎の幽閉部屋にいた。

そこは、俺の真新しい記憶となんら変わらない。

右手を見てみる。無い。この一項目で俺は全てを察した。

 

 

……夢、か。

それにしてもリアルな夢だったな。

まるで、本当に過去が変えられたかもしれないみたいに。

 

……ま、そんなこと出来るわけもないか。

過ぎたものは、もう変えようがないんだ。

だから、変えたければこれから修正しなきゃならない。

 

霊体でいたせいか寝汗をかいていないことにある種の利便性を覚えながら

ふと外を見ると、フードを目深に被った集団が通り過ぎるのが見えた。

……はて? あんな連中使い魔にいたっけか?

いや、そもそも今日部室にはギャスパーしかいないはずだが。

 

俺は酷く嫌な予感を感じざるを得なかった。

奴らの狙いはギャスパー、そして現時点でギャスパーを狙うとなると

それが善性のある集団であるとは到底思えなかった。

 

「ギャスパァァァァァッ!! 逃げろぉぉぉぉぉぉっ!! 逃げるんだぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

俺のその叫びは、やはり夢と同じように届かない事を、俺はすぐに思い知る事になった……




元ネタは記念すべき第一話、Life0. のセージ視点です。
ただし勿論セージ視点でそのままLife0. の焼き直しをしても
面白くも何ともないですので夢オチ入れました。

最も、セージにとっては悪夢以外の何者でもありませんでしたが。
つかの間の帰宅、つかの間の実体、つかの間の平和。

もしも、セージがイッセーにデートプランを提案しなかったら。
もしも、あの時セージが家をでなかったら。
もしも、あの時セージが神器に目覚めたら。
そしてもしも――

セージが、実体を失わなかったら。

それがいいことなのかどうなのか。
そこには、悪夢としての貌は間違いなく存在していました。

セージが実体を失わなかったら、のifで一からやろうかとも思いましたが
それただのオリ主ものにしかならなさそうなのでとりあえずこんな形で。

番外編ですが解説

牧村明日香
存在はかなり前から示唆されていたセージ憧れの人。
名前の由来はデビルマンより牧村美樹と飛鳥了。
え? 飛鳥了は男だって? 気にしちゃだめ。
というかデビルマンはともかくバイオレンスジャックでは……

セージにとっては姉ともいえる人物ですが
彼女自身は一児の母でもあり、それがセージの心情をややこしくしている要因。
言うまでも無く普通の人間であり、人外とは無縁の存在。
それが故に、セージが人間を守りたいという原動力になっている部分もあります。
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