ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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本編に戻ります。
やっとヤルダバオト無双にクールタイムがつきそうです。

え? いらない?
……つけさせてくださいお願いします。


尚今回の作品を書くにあたり特にお払いとかはしてませんが……
行ったほうがいいんでしょうかね、やっぱ


Life48. 会議、わけが分かりません!

「!? か、神が……必要ない!?」

 

ヤルダバオトは、自分が聖書の神の影であるにも関わらず

「神は必要なくなった」

そんな、とんでもないことを言ってのけたのだ。

この発言には、会場にいて意識のある全員が驚いていた。

 

「日本やギリシャのように、現象や技術などに人格を与え

 神格化したものはその限りではありませんがね。

 その点、唯一神である『(ヤハウェ)』は人間の進歩と共にその存在意義を少しずつ失い始めました。

 空を、海を、地の底を……そして現に、宇宙にも。

 人類はその行動範囲を少しずつ広げています。『私』はかつてこう言いました。

 『もう私が、我々が導く時代は終わったのだ』と。

 実際、『私』の手助けなしで人類は様々な力を得ました。

 その善悪は、ここで議論するものでもないので割愛しますが」

 

もう、俺はヤルダバオトの言っていることを理解するのを放棄している。

ただ、ミカエルが衝撃を受け、アザゼルが逆切れしてるのだけは分かる。

 

「ふ、ふざけんな! それらの技術も、元はと言えば俺が人間に齎した……」

 

「ええそうですよ。ですが、そこから発展させていったのは間違いなく人間です。

 最早彼らは我々を崇める存在ではなく、我々と共にあろうとする存在であり

 唯一無二の替えの効かぬ隣人である、そう私は思いますよ。

 そして、そんな存在の彼らを一方的に扱うことは、許されることではないはずです。

 神の役割が終わったからこそ、私は人間として彼らの営みを陰から見守り続けていました。

 そのうちの一つがここ、駒王学園だったと言うわけです。

 ここで私は、色々と衝撃的なものを見させていただきましたがね」

 

「……そ、それで私達の顧問を引き受けてくださっていたのですか……。

 では、私達が悪魔であった事も最初から知っていたと?」

 

ソーナ会長の問いに、ヤルダバオトは頷き返している。

この学校には悪魔やそれに通ずるものが多いってのは知ってたけど

まさか教師にも紛れ込んでいたとは驚いたぜ……しかも聖書の神と来た。

 

「まあ、流石にサーゼクスの目を欺くのには苦労しましたがね。

 おっと、この件に関しては他人のことは言えないはずですよ?

 あなた方だって、悪魔である事をひた隠しにしているではありませんか。

 それと同じ事ですよ」

 

そういえばソーナ会長も部長も、表向きは普通の生徒だった。

悪魔としての顔を知っちゃったから、それをすんなり受け入れているけど。

この分だと俺が知らないだけで、意外な奴が意外な正体を持っていたりするのかな。

 

「人間が隣人……ですか。私が言うのもなんですが、それは理想論では?

 私には、人間は未だ下らぬ争いを続ける未熟な生き物にしか見えませんが」

 

ヤルダバオトの言い方にはちょっと棘があったけど、それ以上にミカエルの物言いにも

ちょっとカチンと来た。俺だって数ヶ月前までは人間だったんだけど。

……そういや、ミカエルは俺のことを終始赤龍帝と呼んでたな。

どっちにしたって、もう人間じゃないんだよなぁ、俺。

別に後悔はしてないけど。

 

「それについては否定しませんよ。ですが、それを悪魔や堕天使と

 未だ下らぬ争いを続けるあなたが言いますか?

 最早戦う理由が無いにも関わらず、ですよ? あなたに人間の事が言えますか?

 私は未熟者としてあなた方を作り出した覚えはありませんよ。

 ……そう、思っていたのですがどうやら思い違いだったようですね。

 ついでに言わせていただきますと、私を戦争の理由にでっち上げるのも御免被りますよ。

 神や魔王がいなくなったから戦争は終わりを告げました。

 実際には私がこの場にいますが、私はヤハウェを襲名するつもりは毛頭ありませんので。

 『私』が消えた理由を考えれば、襲名してまで神を残す事に意味は無いでしょう」

 

「戦う理由が無い、そうあなたは仰いますが

 我々とて領土を守るためにやむなく戦っているのです。

 そこはご理解……」

 

「何度言わせるつもりだ、サーゼクス・ルシファー。

 これ以上ふざけた問答をするつもりは天照はともかくこちらには無い。

 領土と言うものに対する考え方がそちらと我々とで異なる場合、その限りでもないが……

 そうでもないだろう? それに、この温情は天照だからこそだ。

 ここにいるのが将門命……将門公や大自在天だったら

 お前達は話し合いの場にすら立てないぞ」

 

「だ、大日如来様。将門命や大自在天、すなわち天神……道真公はやりすぎではないかと……」

 

ヤルダバオトも、大日如来も三大勢力のトップに対する視線はもう哀れみすら帯びていた。

な、なんかムカつく……

むかっ腹を立てていたのは俺だけじゃなくて、アザゼルもだった。

俺みたいに露骨な態度こそ取ってないけど、明らかに不機嫌そうだ。

まあ、そうだよなぁ。

一方の天照は、大日如来が出した名前に引いていた。俺には聞き覚えの無い名前だけど。

強いて言うなら天神ってどっかで聞いたか?

 

「……だ、大日如来の言う事も最もですわね。

 これが東京だったりしたら、今頃三大勢力は

 将門公の祟りに遭っていてもおかしくありませんわ。

 天神様にしてもそう。学問の神であると同時に、強い力を持った祟り神でもありますし」

 

「朱乃。随分と神仏同盟の肩を持つわね。やはり巫女だからかしら?」

 

「……そうではありませんわ。ただ、日本の神も、この地に根付いた信仰も

 決して弱いものではない。お母様だったらそう言う筈ですわ……」

 

朱乃さんの顔色がやはり悪い。

今大日如来が出した名前の奴って、そんなにとんでもない奴なのか?

そういや俺、悪魔についてはライザーん時の合宿でみっちり叩き込まれたけど

それ以外の天使や神についてはさっぱり何も知らないんだよなぁ。

一応、天使についてはある程度アーシアが教えてくれたけど。

 

「『神がいなくても世界は回る』か。全くよく言ったもんだぜ……クソッタレが。

 じゃあ何か? 俺たちはもうお役御免か? それこそふざけんな、なんだがな」

 

「それはあなた方が決めることですよ。人間に道を示したと言う意味では

 悪魔も、天使も、堕天使もそれぞれ大いに役割を果たしてくれました。

 ですが、それ以降は完全な蛇足です。

 もう一度言います。もうあなた方が人間を好き勝手に使っていい時代ではありません。

 いえ……初めから、人間を道具のように使うこと自体が間違いなのですよ」

 

「いいのか? 俺らで勝手に決めていいってんなら、現状維持が俺の答えだ。

 神器(セイクリッド・ギア)は危険なモノだって認識を改めるつもりはねぇし

 俺には神器が必要なんだ。ま、戦争だけは御免被るがな」

 

「現状維持……それはつまり、殺傷事件を今後も起こすと言う意思表示で構いませんか?」

 

完全にアザゼルとヤルダバオトは険悪な空気になっている。

そんな中、アザゼルの言い放った「現状維持」って言葉に天照や大日如来が反応する。

そこには、俺とゲーセンでゲームに興じたチョイワル親父の姿はどこにも無かった。

 

「それに現状維持で戦争反対と言うのも虫がいいな。

 聞けば三大勢力は未だ一触即発の状態……この席を見ても明白だ。

 大事な事だから何度でも言うが、俺達は自国の民を

 お前達の詰まらん遊戯に巻き込んで欲しくないだけだ」

 

「……確かに。このまま話を続けていても埒があきませんね。

 どうやら、私達は私達だけで問題を解決しようと早急になりすぎていたかもしれません。

 今にして思えば、赤龍帝にアスカロンを渡そうと思ったのも

 和平を急いていたのかもしれませんね。滅びを間近にしているのは

 悪魔も堕天使も同じだと言うのに」

 

今度はミカエルが和平に懐疑的になってしまっている。

え? ええ!? 確かに俺は和平の証としての剣を貰ってないけど

それってアリなのか!? と言うか、どうなっちまうんだよ!?

 

「ミカエル。それは和平は拒否すると言う意思表示でいいのか?」

 

「まさか。ただ、今はまだ早急ではないかと思うだけです。

 信徒の皆さんにも、混乱を与えかねませんし」

 

「ま、それは同意するぜ。昨日まで喧嘩してた奴といきなり

 お手手つないで仲良くしましょうねー、なんて子供でも納得しねぇ。

 ……が、だからって戦争を続けるのが正しいわけじゃねぇ。それはわかるよな?」

 

じゃ、じゃあ一体どうなるんだよ!?

戦争はしない、和平も結ばない、そんなのが通るのか!?

あーもうダメだ! さっきから頭いてぇ!

 

「戦争もダメ、和平も無理。となると……」

 

「相互不干渉、と言う事になるが……」

 

「これはこれで……既に我々は閉塞している部分があるゆえに……」

 

三大勢力のトップは皆、同一の結論に達したようだ。

お、ようやく結論がでるのか?

俺はこの結果が出ないってのがもどかしくて仕方ない。

セージとの問答を思い出す。アイツも肝心な事は話さない事が多いからな。

 

だが次の瞬間、ヤルダバオトの口からとんでもない言葉が飛び出した。

 

「……ならばいっそ、滅んでしまってはどうです?」

 

「それは……俺達に対する宣戦布告かよ?」

 

「……本物の主の言葉ならば従いましょう。ですがあなたは影武者。偽神。

 そんなあなたの言葉に、そこまで従う謂れは我々にはありません」

 

あ、当たり前だ!

面と向かって死ねと言われて素直に死ぬ奴がいるか!

ま、まあ部長に死ねって言われれば……うーん……

俺も部長が助けてくれなかったら死んでるようなもんだしなぁ……

 

「ミカエル、特にあなたは知っているでしょう。

 ノアの方舟、ソドムとゴモラ、バベルの塔……

 ヤハウェは人間に最低限の秩序を守ってもらうべくこうした啓示を物語として

 あるときは書物に、あるときは天使伝いに、人々に伝えました。

 そのいずれも人が滅ぶ、あるいは滅びかねない内容のものですが……

 

 ……何も人間に限った話とは、私もヤハウェも一言も言ってないのですがね。

 もし記されていたとしたら、歴史のどこかで加筆されたのでしょう。

 それはともかく……この言葉の意味が分かりますか?」

 

「な……」

 

その言葉を聞いたミカエルの顔色が変わった。

確かアーシアが言っていた、いずれも旧約聖書に書かれている話だったはずだ。

……中身まではアーシアには悪いけど、忘れちゃったけど。

 

「人間の代わりに、洪水で流されたり、裁きの雷を受けるのが

 天使や堕天使だとでも言いたげね……」

 

「最も、ソドムとゴモラについては、今の冥界がそのまま適用されるかもしれませんがね。

 何故か……は、冥界に対して夢や希望に満ちた未来を抱いている

 彼女達のいるこの場では言わないでおきましょう。

 サーゼクス、セラフォルー。そんな彼女らのためにも

 あなた方はしっかりと考え行動するべきです。

 それが魔王であるあなた方が全ての悪魔に対して負うべき責任ですよ」

 

「……ご忠告痛み入ります、聖書の偽神よ」

 

「私だってちゃんと責任持って魔王少女やってるわよ!

 ヤルダバちゃんに言われるまでもないわ!

 私はいつだってソーナちゃんのために一生懸命なんだから!」

 

……あれ? ヤルダバオトが思いっきり冷めた目でセラフォルー様を見ているぞ?

ソーナ会長も頭を抱えているし。

ま、まああのノリは中々きっついものがあるよなぁ。

ミルたん辺りとは仲良くなれそうな気はするけど。

 

一方、ミカエルは身体をわなわなと震わせている。

どうしたのかは、俺には窺い知る事はできなかった。

だからこそ、次の言葉に度肝を抜いたわけだけど。

 

「……冗談ではない! 我々は主のために尽くしてきたのだ!

 主の寵愛を受けるべきは本来我々のはずなのだ!

 それを横から出てきた人間などに掻っ攫われるだけでも我慢ならんと言うのに

 事ここに至って我々に対し『大洪水』や『塔の裁き』を下すだと!?

 あんまりだ……それはあんまりではありませぬか!!

 

 私の……我々の何が気に入らず、偽者である貴公がそこまでの発言をする!?

 神の名を騙る不届き者として、天の裁きを下されるのは貴公の方ではないのか!?」

 

「み……ミカエル様……!?」

 

「言うねぇミカエル。お前、そいつが偽者でよかったぞ?

 今のは確実に『堕ちる』発言だろうが」

 

アーシアはミカエルの姿にショックを受け、アザゼルは舌を巻いている。

俺も、あのミカエルがここまで激昂するのは見ていて驚いた。

あの、って言っても朱乃さんの神社で会っただけだけど。

 

「何が気に入らないか? その質問に対する答えは簡単です。

 『システム』ですよ。あれは言うなれば限定的とは言えヤハウェを天使の手で再現した

 それこそ『偽者の神』、それも自身の都合のいいように設定できると言う意味で

 殊更たちの悪い『人造神』という類ではありませんか。

 私が偽者であることは否定しません。ですが、偽者の神の恩恵にあやかっている

 あなた方に、神の名を騙る不届き者呼ばわりされたくはありませんね。

 システムの再現度自体は、私も認めてはいますがね。

 

 ……さてミカエル。ここであなたに質問します。

 何故ヤハウェの意向を無視し、システムなどと言うものを作ったのですか?

 そもそもあなたには、初めからヤハウェの声など聞こえていなかったのではないのですか?

 でなければ『人は神から巣立つべき』と言い残した言葉とシステムの、天使の現在の方針は

 矛盾を孕んでいますからね」

 

ヤルダバオトのその言葉に、天界陣営が大きくどよめく。

大天使長ともあろうものが、自分達の主とも言うべき聖書の神の声が聞こえていなかった。

それが大問題であろうことは、俺にも何となくだけどわかった。

 

「ここまで言っておいてなんですが、私にミカエルを裁く権利などありません。

 ですが、そこにいる側近や他の四大天使はまた話が違うのではないのですか?

 システムのあり方、人との接し方などあなた方にも課題は多くあるのですよ。

 これを機に、いちど方針を見つめなおしてはいかがですか?」

 

ミカエルが歯軋りをしているのがよく分かる。

アザゼルは対岸の火事とばかりにニヤニヤしてやがる。こいつ結構性格悪くないか?

そもそも、堕天使ってことは元は天使だったんだよな?

などと俺が思っていると、アーシアが手を上げ重い口を開く。

 

……す、すげえなアーシア。この空気の中で言葉を発しようとするなんて。

俺の場合は口を開いたら罵声がでそうだから黙ってる部分もあるけど。

 

「……ミカエル様、『システム』とはなんですか……?」

 

「アーシア、あなたが知る必要は……」

 

「構いません。物事に対し疑問を抱き解決を試みようとする姿勢は尊ばれるべきです。

 『システム』とはヤハウェが人々に与えた『神器』の管理運営を行うものです。

 最も、今話したとおり実情はミカエル、あるいはミカエル一派の熾天使(セラフ)達が

 自分達の都合のいいように運営していた可能性もありますがね」

 

「で、でしたらミカエル様はきっと無実です!

 主がご存知の通り、私の『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は悪魔も、堕天使も治療できます。

 神の祝福で行使される奇跡で、そうしたことが起こせると言うことは……」

 

「『聖母の微笑』ですか。それでしたら悪魔も治療できるのはそういう仕様ですよ?

 ヤハウェは人にあらゆる可能性の種を蒔きました。聖母の微笑もその一つです。

 悪魔をも治療できる神の奇跡……まあ、現時点では想像を超えた結果は生んでいませんが」

 

ヤルダバオトが言ってるのは、きっとアーシアの過去のことだろう。

……ってちょっと待て! それじゃアーシアがこうなったのは全部ヤルダバオトのせいなのか!?

アーシアが迫害されたり、殺されたりしたのは全部こいつの!

……まあ、命は部長に助けられたわけだけど。

けど、だったらあの件くらいは!

 

「ちょっと待て。『聖母の微笑』が悪魔も治せるのは仕様だって言ったよな?

 じゃあ、何でアーシアがお祈りするたびにダメージ受けてるんだよ?

 悪魔が神にお祈りしちゃいけないのかよ!?」

 

「イッセー! やめなさいと言ったはずよ!」

 

「あなたに発言を許した覚えはありませんがね。それは『赤龍帝』の意見ですか?

 それとも『兵藤一誠』の意見ですか?

 ……まあ、黙っていてもあなたはさらにわめき散らすでしょうし

 ここで赤龍帝に暴れられても困りますからね。特別にお答えしましょう。

 

 ……『ダブルブッキング』はご存知ですか? 約束を二重に取り付けることです。

 ここは薮田直人(やぶたなおと)として兵藤君に聞きます。松田君や元浜君との約束、宮本君との約束。

 全く別の内容が同じ日同じ時間に違う場所でありました。

 これらを二つとも受けてしまうのが、ダブルブッキングです。

 人付き合い、信頼を築く上では避けたいものですね」

 

いきなり世界史の薮田直人として俺に解説してきた。

けれど、今その話とアーシアの頭痛とどういう関係があるんだよ?

俺には、ちょっとわからなかったが他のメンバーにはピンと来たらしく

木場や小猫ちゃんも納得したような顔をしている。

 

「身体は一つしかないから、同時には約束を達成できないね」

 

「……どちらかは絶対にキャンセルしないといけない」

 

二人の解説で、俺もダブルブッキングって言葉の意味は分かった。

けれど、もっと肝心要のことが全く分からない。

 

「そ、それがアーシアとどういう関係があるんだよ?」

 

「まだ分かりませんか? 今のアーシアは、神と悪魔。

 両方を信仰している状態です。正規の方法で『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を植えつけられて

 主に、魔王に忠誠を誓わない悪魔はいませんからね。

 それでも逆らおうとするのはよほど意志が強いか、イレギュラーかどちらかでしょう。

 ともかく、そんなわけでアーシアは魔王に、リアス・グレモリーに対する忠誠と

 ヤハウェに対する忠誠と、両方を持っている状態です。

 

 ここからは薮田直人としてではなく、ヤルダバオトとしての発言に戻りますが……

 アーシア・アルジェント。こればかりは自分の生まれを呪っていただいて結構ですよ?」

 

「……私のところならば、神への信仰と妖怪信仰を並列して行うことは可能ですが

 聖書の陣営でそれは禁忌である、そうエジプトの皆様や

 バビロニアの皆様によく聞かされました」

 

「……確かに、聖書陣営はそういうのに厳しい事で有名だからな。

 今冥界にいる悪魔の中にも、祖は他神話の神、という悪魔がいると言うのは有名な話だ」

 

天照と大日如来が心当たりがあるように口を揃えている。

ゼノヴィアが俺達と手を組みたがらない理由が少しだけわかった気がする。

神を現役で信仰していたら、とてもじゃないが悪魔と手を組みたいなんて思わないか。

その割には、コカビエルとの戦いでは協力してくれたけど。

 

「そこで、私は『システム』を利用しその弊害をなくそうと……」

 

「ミカエル。今の話をきちんと聞いていましたか?

 信仰のダブルブッキングはまだいいでしょう。

 ですが加護のダブルブッキングは避けるべきです。

 加護までも重複するようになれば、無作為に信仰を集める行為が多発しますよ。

 加護をより多く集めたものが勝ち、と言う不毛な宗教戦争を引き起こしたいのですか?」

 

「私のところでは八百万と言う特性上、一つ一つの加護はあまり大きくありませんので。

 だからこそ、私としては信仰する皆さん自身の自助あればこそ、と思っています」

 

「そもそも、俺達のところでは加護を与えるために信仰を集めているわけじゃない。

 人がそこに至るまでの道案内をしているだけだ。太陽は全ての標だからな」

 

ミカエルの提案は、ヤルダバオトにあっさりと蹴られてしまっている。

この話の流れを察するに、アーシアは今後もお祈りをするたびに

頭痛に悩まされなきゃならないのか!?

そ、そんなのって酷すぎるだろ!?

 

「いい機会ですアーシア・アルジェント。私も最近天照様に感銘を受けましてね。

 『来るものは拒まず』、いい言葉だと思いますよ。

 そしてもう一ついい言葉を聞きました……『去るものは追わず』。

 あなたが今後も悪魔として生きるなら、これを機に私――ヤハウェへの信仰は捨てなさい。

 神器は別に、私への信仰がなくても使えますので。

 それは『聖母の微笑』も例外ではありません。

 ですがもし信仰を捨てたくないと言うのであれば……今ある命を捨てる覚悟が必要です。

 覚悟無き者を加護するほど、神は寛大ではありませんよ」

 

ヤルダバオトは、アーシアに信仰を捨てろと言っている。

そ、それってつまりアーシアの否定じゃないか!

じょ、冗談じゃない! そんなの許してたまるかよ!!

 

「アーシア! あんな奴の言う事なんか聞く必要は……」

 

「あなたには聞いていません。さあ、覚悟は決まりましたか?

 神への信仰を捨て、今後さらに悪魔に忠誠を誓うか。

 悪魔に忠誠を誓いつつも、今までどおり神も信仰しその罰を受けるか。

 アーシア・アルジェント。あなたが選ぶべきはこの二つのうちの一つです」

 

まるで脅迫か圧迫面接じゃないか!

神ってのは本当にどうしようもないな!

あの時アーシアを助けなかったくせに、それを正当化するどころか

さらに罰だって!? ふざけるな!!

 

アーシアはそれに負けじと口を開く。

もうこんな奴、信仰しなくったっていいんだぞ!?

 

「私は……

 

 ……やはり、主への信仰を捨てることは出来ません。

 例えそれで、私が苦痛に苛まれたとしても、です」

 

「あなたの言う神は既にいませんよ? 私はあくまでも名を借りただけの影武者。

 ヤハウェとして顕現するつもりは一切ありません。

 それはつまり、あなたを加護することは今後一切無い、と言うことですよ?」

 

「それでも……私は主を信じます。

 私は、加護が受けたくて主を信じているわけではありません」

 

「では何故です?」

 

「加護が受けられなくとも、主はそこにおわします。

 主が先ほど仰ったとおり、人は既に主に頼ってはならないのでしょう。

 だからこそ、遠い遠い昔から私達の祖先を育ててくださった主と共に歩けるよう

 私は主の事を忘れはしません。頼るのではなく、感謝の気持ちを忘れないために

 私はこれからも主を信じ続けます……ぐ……うっ」

 

「アーシア!?」

 

「……覚悟は見させていただきました、いいでしょう。その痛みこそが私とあなたの絆です。

 苦しいかもしれませんが、その困難を乗り越えることを、私は期待することにしましょう。

 神に縋るのではなく、神を忘れぬための信仰……ですか。

 なるほど、面白いものを見させていただきました。

 神にとって、いえ全ての生命にとっても忘却は死より辛いものですからね」

 

痛みで崩れ落ちたアーシアに、俺は思わず駆け寄ったが……

 

お、俺はアーシアのことが分からない……

な、何でこんな奴のためにそこまで出来るんだ?

痛い思い、苦しい思いなんかしないに越したことはないはずなのに!

 

「……ヤルダバオトよ。あまり趣味のいいものではないぞ?

 僧に苦行を強いているうちが言えたことではないがな」

 

「労せずして得たものに価値など無い……そうでしょう? 大日如来様」

 

ヤルダバオトの言葉は大日如来に向けたもののはずなのに

何故か俺が言われている気がした。

な、なんでだよ!? 俺だって悪魔にされたり知らない間にドラゴンがいたり

俺のダチが乗り移ってたり大変だったのに!

 

ま、悪魔になったのは結果オーライだしドラゴンはそれなりにうまくやれてる……はずだし

セージは……心配だけど、俺がどうにかできる問題じゃないし

とにかく! 俺にやましいことなんか一つもない! はずだ!

 

「……なあ。そっちのゴタゴタが片付いたんならちょっと休憩挟みたいんだが」

 

「本来の議題である三大勢力の和平については行き詰まってしまったからな。

 確かに、お茶でも飲んで気分転換を図ってもいい頃合かもしれない……グレイフィア」

 

「畏まりました。では新しいお茶をご用意いたしますので少々お待ちくださいませ」

 

サーゼクス様の指示でグレイフィアさんがお茶の用意に立ったと思ったら

何か違和感を感じた。

 

この感覚には覚えがある。ギャスパーだ。ギャスパーの神器だ。

けど、ここにギャスパーはいないはず……

そう思う間もなく、俺の意識は停止したのだった。




アーシアが何かに覚醒しました。
戦闘力はからきしだけど、意志は強い子、ってのが拙作アーシアのイメージ。
原作アーシアは入れ知恵とは言え変な方向に覚醒しちゃってるし……
誰も彼も痴女になって、逆に個性ってものががががが

アーシアにも艱難辛苦が降りかかりそうですが
艱難汝を玉にす、って言葉もあるくらいですし。

「労せず得たものに価値は無い」は
あらゆる場面に対してのアンチテーゼでもあります……
何の、とはあえて申しません。

以下恒例の解説

>天ど……大日如来が出した神様二人
日本の祟り神といえばこの二柱が有名どころかと。
大自在天はシヴァでもありますが、それ言い出すとぐちゃぐちゃになるので
そこは原作シヴァとは同姓同名ということで。
原作シヴァがでるかどうかはまだ何ともいえませんが。

とりあえず三大勢力は将門公に目付けられなかったのを幸運に思ってください
いやマジで

>ミカエルがヤハウェの声聞こえない疑惑
……某メガテンの影響受けてるかもしれません。
拙作ではヤルダバオト存命、ヤハウェが「お前ら人間に過干渉するな」と
意思表示しているためミカエルの方針と微妙に食い違いが起きてます。
そこからもう疑惑発生。

なお今回激昂してますが多分これ地。
信仰する大天使長のこんな姿を見たアーシアの胸中や如何に。
あとゼノヴィアここにいなくてよかったね。

>お祈り頭痛のわけ
ダブルブッキングのせいにしました。
悪魔になったから、と言うのも確かにあるんですが
つまり悪魔に忠誠誓ってるのに神を信仰するって何か変だな、と。

そして何気に悪魔の駒に洗脳作用も含まれていることが判明してます。
ここからはぐれ悪魔化するメカニズムについてはまた後日。
とりあえず自分の意思で逆らってる黒歌姉さんマジパネェ
セージ? あれはバグですしおすし
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