ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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どんどん投稿しますよー
また30分のインターバルを挟んで次話いきますよー

今回のサブタイはスーパーロボット大戦Aより。
かなりいいセンスの言い回しだと思うんです。
……でも森住氏は独語使いすぎだと思うんです。
寺田Pじゃないけど和独辞典引くのめんどくさいとです。
でも響きは日本人的にはいいんですよねえ。

アインストを皮切りにスパロボ設定がどんどん出てきてます。
けれどこの作品はハイスクールD×Dの二次創作作品です

……たぶん。


Soul53. 極めて近く、限りなく遠い場所

 

 

 

――っざけるな……

 

 

 

 

 

 

 

……ふざけるな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ふざけるな!!

 

まだ、まだ俺は終わっちゃいない!!

 

たとえこの魂がひとかけらだけになったとしてもだ!!

 

どんな形でも俺は生き延びてやる!!

 

そう、ドライグが俺を利用したのなら――

 

 

 

 

 

 

――俺が、ドライグを利用する!!

 

 

 

 

――――

 

 

俺の意識は、既に飛んである程度の時間が経っていた。

感覚がまだ生きているのは、皮肉なことにドライグの支配下に置かれた右手部分だけだ。

白龍皇とぶつかり合っている感触は、なんとなくだが分かる。

やはり、そういうことになっていたか。よくもまあ何も生み出さない戦いに躍起になれるよ。

こんな、こんな下らない戦いのために……

 

……一体どれだけの涙が、悲しみが生まれたと思っているんだ!

 

こんな奴らのために、これ以上誰かが苦しむのは見たくない!

 

――とは、子供の頃に見たある番組の台詞だったか。

大概の大人は子供騙しと一笑に付すこういう台詞だけど。

それでも、当の子供の心にはかけがえのないものを刻み込んでいるわけで。

だからこそ、今も昔もそういう番組は、英雄譚は無くならないわけで。

 

……ふと、外から声が聞こえた気がした。

 

――楽しいなあ、白いの!

 

――まだまだ不足気味だが、まあまあってところだな、赤いの!

 

――どうした赤龍帝。もっと俺を笑顔にしてくれよ?

 

イッセーは……苦戦しているか。だがそれよりも、やはり俺には

こいつらを認めることは出来なかった。

笑顔だと? ふざけるな。どれだけの大地を血に染めて、どれだけの悲しみを啜っておきながら

笑顔なんてよく同じ声で、同じ口で言えたものだな!

こいつは……あいつと同じだ! 生かしておくわけにはいかない!!

 

だから……動け! もう一度だけでいい……俺の思うがままに動いてくれ!

 

 

俺の――右手!!

 

 

ただ、それだけを念じた。

次の瞬間、生暖かい感触が右手に伝わる。

 

――へ、へへっ……俺だってセージの力を使えばこれ位! 取ったぜ、ヴァーリ!

 

――白龍皇(ディバイン・ディバイディング)()(スケイルメイル)をも溶かすとは……ぐほっ!?

 

決定打が刺さったのか。やるじゃないかイッセー。

だとするとこの生暖かい感触は奴の血、か?

赤いかそうでないかはこの際、置いておく。

 

ふと、右手に今度は何か凄い力が触れる。

この感触は……あまり思い出したくは無いが……

以前レイナーレをぶち抜いた時に、神器(セイクリッド・ギア)を強引に摘出しようとしたときの感触に近い。

もしかして……これは……!

 

俺は意を決し、そこにある力を手に入れようとする。

勿論、反発たるやとんでもない。既に溶けてなくなろうとしている俺が

イッセーから、ドライグから引き剥がされそうなくらいだ。

だが、たとえ引き剥がされるにしてもこの白龍皇の力だけはいただいていく!

 

こんなテロリストに、強大な力を与えるわけにはいかない!

こんなものは、未来永劫眠りについているべきなんだ!

だから今、こいつから取り上げる!!

 

白龍皇の力を引き抜こうとしたその時。

何かは分からないが途轍もない力の奔流に、俺自身が飲み込まれる感覚を覚える。

右手は赤い鎖で繋がれた龍帝の義肢(イミテーション・ギア)、その手の内には白龍皇の力。

その中心核を成しているのは俺の魂。

鎖で繋がれているにもかかわらず、俺の魂はどこかに飛ばされようとしている。

 

――な、に、を……するつもりだぁぁぁぁぁぁ!?

 

――お、俺が知るかよ! 俺の右手が、勝手に……ま、まさか!!

  セージだ! セージの奴、ついにキレて……

 

――ば、バカな!? 相棒、そんなバカな話があるものか!!

  霊魂のは、もう既に俺達に溶け込んだはずだぞ! お前も感じただろう、今までに無い力を!

 

――赤いの! すぐに力を抑えるんだ! このままじゃ、この次元の狭間に穴が開くぞ!!

 

いやあ、悪かったなドライグ。往生際が悪くて。

イッセー。また悪いことをしたかも知れんが、俺も今回は他に方法が思い浮かばん。

じゃ、そういうわけでお前らの力は貰っていく……ぜ!

 

最後に、龍帝の義肢を付けた俺の右手が白い光と共に黒い渦に飲まれていく光景が見えた。

……それだけじゃない。いや、そうじゃない。

龍帝の義肢からは、赤い鎖が千切れていた。それが意味するところは……

 

その結論を出す前に、俺は渦に飲まれる形になった。

 

――――

 

次に目を覚ましたとき、俺は闇の中にいた。

いや、闇の中というべきか? 分からない。宇宙とも言えるかもしれないし

無、とも言えるかもしれない。表現の仕様がないのだ。

俺の知り得ない世界である事に違いは無いのだが。

 

ふと、周囲をまばゆい光が照らす。闇の中にいる以上、目を開けているのか

いないのかが分からないが思わず目を瞑る。

それでも、光は俺に降り注ぐかのように周囲を包む。

 

今度は、まるであたり一面が光の世界になったかのように眩い。

少しずつ眼を開けると、さっきまで真っ黒だった周囲は今度は真っ白になっている。

異次元。それが、俺の出した結論だった。

 

……そうか。異次元への追放。白龍皇の力を奪って、その先がこれか。

結局、俺の生涯とはなんだったのか。

せめて、きちんとした形で母さんやうちの猫、それから姉さんに別れを言いたかった。

これでは……死んでも死に切れんよ……

 

そんな俺の目の前に、白金色の巨大な龍が現れる。

鱗にあたる部分は全て白金色、異様に長い三対の翼の膜は碧色をしている。

その巨大な全身からは眩いオーラを出しており、その姿を視認できるのが奇跡みたいなものだ。

と言うか、目を開けてられない。

もしかして、さっきの光の正体って……

 

――この姿では、目を開けていられないか?

 

……ああ、できれば違う姿が望みだ。

そもそも、ドラゴンって生き物自体にいい思い出が無い。後悪魔と堕天使も。

そこまでは贅沢か、と思っていると光は収まり、目の前には俺よりも少し上くらいの

人間のような姿かたちの存在がいた。

 

人間のような、と言うのは明らかに人間ではないと感じられたからだ。

薄緑色の髪に蒼色の眼、そしてやや尖り気味の耳。

どう見ても、普通の人間じゃない。着ている服も、俺たちの知るものとも全く違う。

ファンタジーな意匠をちりばめた軍服に近いものだ。

かと言って、冥界の住人に近いかと言うとそんなことは無い。

感じられるオーラが、悪魔のそれとは全く違う。

 

「この次元の狭間に漂う魂の欠片を集めたら、悪魔とも人間とも龍ともつかぬものが出来た。

 勝手なことをしたとは思うが、できれば聞かせて欲しい。

 お前は何者だ? 何故、次元の狭間を漂っていた?」

 

……え? 俺、バラバラになっていたのか!?

ま、まああの状態ではバラバラになっていてもおかしくは無いが……

 

「俺は歩藤……いや宮本成二と言います。悪魔とか、龍とかと因縁はありますが

 俺自身の心は人間であるつもりです。ここは、次元の狭間と言うのですか?」

 

「成二……セージか。お前が名乗ったのなら俺も名乗るべきなのだろうが

 生憎と、俺は名乗るべき名を失ってしまってな。最後に俺を観測した者は

 『白金龍(プラチナム・ドラゴン)』と俺を名づけたらしいが。だから、白金龍でいい」

 

名乗る名を失った? 忘れた、なら分かるが失ったって?

あと、最後に俺を観測したって一体全体何を言ってるんだ?

 

「……すまない。話が飛びすぎていたな。

 お前がそうなのかまでは知らないが、俺は次元の迷子みたいなものだ。

 あるべき世界を失い、役割も知らぬ。それでいて死んでいないのだから

 まこと理不尽なものよな。いや、或いは俺が知らないだけで既に死んでいるのかもな」

 

……確かに俺は幽霊と対話した事はあるが、目の前の白金龍を名乗る存在は

決して幽霊のそれとは性質が同じではない。寧ろ、生きているものの性質に近い。

 

「次元の迷子……?」

 

「戻るべき世界を無くし、数多の次元世界を渡り歩いている者達を指している。

 これを一から説明すると長くなるので省くが、世界は無数にある。

 その中には俺みたいに自分の世界に戻りたくても戻れない奴もいる。

 理由はどうあれ、そうなってしまった者を次元の迷子と呼んでいる」

 

白金龍の説明はさらに続いた。

次元の迷子を生み出す経緯は多数にある。

自分のように自分の属する世界を失って迷子になった者。

次元の、世界の境界線を幾度と無く越えた者。

ただし後者は、自らの意思で越えられる者は次元の迷子、ではなく

「次元の旅人」と呼ぶこともあるらしい、と。

 

……うん、はっきり言って話が飛んでいるどころの騒ぎじゃない。

夢じゃないか、って思うくらいだ。

 

「お前がいた世界は……『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドのいる世界か。

 俺が言うのもなんだが……難儀な世界の出身だな。

 案外、『夢幻』を司ると言うらしい奴の見ている夢かもしれないな。俺もお前も」

 

……本当に難儀です。いきなり人間やめなきゃならない程度には難儀です。

その結果がこれです。もう俺ゴールしていいですか?

おまけにさっきから話が全然分かりません。

俺は誰かの見ている夢? 確か荘子だかにそういう話があったとか無かったとか。

 

「……で、だ。お前が何者なのかは大体分かった……っと、いかん。

 前にここに来た通りすがりの口癖が移ってしまったようだ。

 ともかくだ。お前はこれからどうするんだ?

 元いた世界に戻るもよし、これを機に別の世界に行くもよし。

 ……俺は、戻ることを奨めるがな」

 

白金龍はさらに続ける。意外とおしゃべりなのかな?

ここ、人の気配が無いからついおしゃべりになるだけかもしれないが。

 

……それはともかく、白金龍が俺に帰ることを奨めたのはこうだ。

一度別の世界に行けば、最悪自分が自分で無くなる。

よくて記憶の抹消。それくらいのペナルティを課せられる事になる。

そもそも、俺には世界を超える力は無いらしい。

だから白金龍も不思議に思い俺の魂を集めたらしいが。

そういえば、レーティングゲームの会場は次元の狭間的な空間だと

前に聞いたような、聞かなかったような。

だから近いここに飛ばされたのか。

 

……そして、一度そうやって世界を超えると「呪われし放浪者」として

永遠に消えないであろう烙印を押されるらしい。

そのペナルティがどういうものなのか、は白金龍も詳しくは知らないらしいが……

 

「死ねなくなる」、のは確実らしい。それは寿命的な意味だそうだ。

むぅ、それは状況次第では遠慮願いたいな……

 

「……ん? ちょっと待て! おい、いつからお前の世界には『ゲート』が開いたんだ!?

 ……あ、ああ。『ゲート』ってのは……」

 

こういうとき、認識にずれがあるのは不便だ。

それは多分お互いに思っているかもしれない。

とにかく、白金龍はゲートについてこう語っていた。

 

異なる世界と世界を繋ぐ門のようなもの。

それが繋ぐのは異なる世界、時間、空間、次元。

そしてそれは須らく可能性と災いをもたらす。そうして付けられた名が「ゲート」。

 

その説明に、俺は心当たりがあった。

悪魔も、天使も、堕天使もそうなのだが……

禍の団(カオス・ブリゲート)、とりわけアインスト。

それらは、ゲートをくぐってやってくるに相応しい存在ではないのか、と。

 

「……ゲートが開いているのにグレートレッドは関与せず、か。

 本当に俗世には興味を持たぬ奴なのだな……」

 

「ゲートを閉じる方法とかは無いのですか?」

 

「……ゲートを閉じる方法はあるが、それを聞いてどうするんだ?」

 

俺は思わず白金龍に問い質した。当然だ、そんな危険なものをそのままには出来ない!

あれからアインストが出てくると言う仮定が本当だとしたら

カテレアどころか禍の団を倒したところでアインストは止まらない事になる!

あんなのが蔓延る世界なんて、いいものであるはずが無い!

 

「……アインスト。今俺の世界にはそう呼ばれる怪物がいます。

 そして、魔王の一人がアインストの力を使い、世界を滅ぼそうとしています。

 俺はそれを止めたい。それは俺の役目ではないかもしれませんが

 知ったからには、どうにかして止めたいと思っています」

 

アインスト。その単語を聞いた途端白金龍の目の色が変わった。

曰く、アインストはかつてある世界を抹消しようとした存在。

また別なる世界でも似たような事をしようとしたらしい。

その活動範囲は多世界、多次元に渡るためこの次元の狭間でもどうしても観測できるとの事だ。

 

「実際に俺が戦った事はない……はずだが危険性は聞いたことがある。

 アインストか……放置すれば、お前の世界は遠からぬうちにアインストに支配されるだろう。

 大方、どこかの世界にいる『大元』がグレートレッドの属する世界への

 ゲートを開けてしまったのだろう。

 ああ、大本への干渉はやめておけ。それこそ『呪われし放浪者』になるぞ」

 

「なんだって!? それじゃ、最低でもゲートをどうにかしないと

 アインストは無限に沸く……!?

 く……こうしちゃいられない! すぐに戻らないと……」

 

やはりそういうことか! 魔術師連中とは毛色が違いすぎると思った!

禍の団め、アインストを強いバケモノ程度にしか考えていないのか!?

こうなったら、この事を天照様や大日如来様、あと薮田先生辺りに伝えないと……

俺一人じゃ、いやオカ研でさえも如何にか出来るレベルを超えている!

 

「……待て。その腕でどうするつもりだ。

 まさかとは思うが、アインストと戦うつもりじゃないだろうな。

 ならばやめておけ。そもそも、アインストはお前たちの世界のものじゃない。

 不用意に関与するのは、望ましいことではないぞ」

 

「だとしても! 自分達の世界がアインストに侵食されるのを黙ってみているわけには!

 そうだ! 最低でも、今聞いた話だけでも持ち帰りたい!

 俺に力が無くとも、俺の聞いた情報は別の力を動かす切欠になってくれる……!」

 

白金龍に言われて、俺は自分の状態を思い出す。

右腕を失い、満足に力を揮えない状態だった。

そんな状態で、俺はどうやって戦おうと言うのだろう。

一番弱いとされるアインストさえ、倒せなかったというのに。

 

だから、俺は今得た情報を持ち帰りたい。そして伝えなければならない。

話して分かってくれそうなのは、希望的観測だが天照様と大日如来様か。あと薮田先生。

あの方々ならば、俺の話を聞いてくれそうだ。

それから……あんまり言いたくないと言うか関わりたくないが、三大勢力。

嬉々としてアインスト討伐に乗り出して、手柄を自分のものにしそうな嫌な予感もするけど。

……するけど、相手がヤバイのならば、力は多いほうがいい。アインストを止める間だけでも、だ。

 

まあ規模が規模だけに、グレモリー部長やシトリー会長の出る幕ではないだろう。

それこそ、イェッツト・トイフェルの出番になるだろう。

……冥界にアインストが出れば、どのみちあいつらも動くことになるだろうけど。

 

「……理由」

 

「え?」

 

「理由だよ。理由。お前がアインストと戦おうとする理由。

 お前は別に世界を守る義務とか持っていないだろう?

 一般市民を守る軍隊や警備組織の所属でも無さそうだし

 かといって世界を救う伝説の勇者とか言う胡散臭い代物でもない。

 と言うか、そんな風には全く見えない」

 

……白金龍は意外と俺のことを確り観察していたようだ。

確かに俺は軍属でも公僕でもなければ、伝説の勇者とか

そういうフィクションめいた役職の存在でもない。悪魔にされはしたが。

 

つまり、白金龍はこう言いたいのか。

「戦う理由の無いお前が、力も無いくせに出しゃばった真似をするもんじゃない」と。

 

……正直、言い返せない。大半はその通りだからだ。

ただ、一つだけ戦う理由があるとするならば。

アインストが手を貸しているのはテロリスト。

彼らはこれから平和に生きている人々を脅かすだろう。

それだけは、どうしても俺には許せない。

 

……まあ、それを成すのが禍の団でもアインストでも三大勢力でも

成した時点で俺からすれば即ち敵、なんだけどな。

 

「……はぁ。お前、戦いに足突っ込んだな。その目は、戦いってのを知ってる目だ。

 何故……かは聞かないでおくが、一度それを知ると後戻りが出来ないぞ。

 お前は……永遠に戦い続けるのと、争いの無い安らかな平和のどちらを望む?」

 

後者。断然後者だ。争いの無い世界以上に幸せな世界なんてありはしない――

とは、誰の言葉だったか。とにかく、俺は如何なる理由であれ人間の、地球の、生命の営みを

捻じ曲げる行為は好きになれない。

それを成そうとするものがあれば、俺に出来るならば止めたい。

 

「……そうか。まあ、俺も多分同じことを考えている。

 昔の俺ならばこうしただろうと言う行いを、な。

 さて。だったら右腕を出すんだ」

 

「え? いや、俺の右腕は……」

 

「いいから出せ。お前の右腕が無いのは見れば分かる。

 この間来た通りすがりの置き土産、お前が持つに相応しいかもしれない。

 お前の魂を見させてもらったが、その通りすがりの持つ力と

 お前の持つ力には、奇妙な親和性が見られたんだ。

 異なる世界同士、たまにはこういうこともあるものさ……ん?

 これは……あの世界のドラゴンの力か。丁度いい、これも混ぜておこう。

 

 ……結論から言うぞ。お前の右腕を元に戻してやる。熨斗をつけてな」

 

……え? それって一体どういう……?

俺が疑問に思う間もなく、白金龍は俺の右腕のあるであろう場所を掴み何かを流し込んでくる。

物凄い衝撃が走るが、嫌悪感と言うものではない。

むしろ、整体マッサージを受けているものに近い。

 

……実は受けたことがあるんだけどね。整体マッサージ。

無茶苦茶痛かったが、効果は覿面だった。腕に受けたわけじゃないけど。

そして衝撃と同時に、物凄い光が周囲を包む。再び目を瞑るも、それでも光はかわせない。

けれどその光は、嫌悪感のあるものではなかった。

白金龍の光は、天使とかの光とはまた違うのだろうか?

 

「ここは時間と言うものが概念を成さない世界ではあるがな。

 お前の魂は随分と消失しかけていたみたいだから少し急ピッチで作業させてもらった。

 ……お前に何があったのか、それを俺は知らない。お前の記憶までは見ていないからな。

 

 ああ……言え、って言っている訳じゃない。

 だが、今までがそうならば……これからはもっと途轍もない事になるぞ。

 『ゲート』、そして『極めて近く、限りなく遠い世界』の存在を知り

 『呪われし放浪者』に片足を突っ込みかけているのだからな、お前は。

 その旅路には少し心許無い餞別だが……許せ。今の俺もこれ以上は用意できない」

 

白金龍は右手を目やっている。俺がつられて右手を見ると

そこには、確かな俺の右手が戻っていた。

拳を握り、開く。その感触は、紛うことなく俺のものだ。

それだけで、俺の胸にはこみ上げてくるものがあった。

 

……そして、龍帝の義肢に似た装飾が俺の右手についている。

赤と白の色合いの籠手に、翠と碧の勾玉が太極を描くように埋め込まれている。

これって、もしかして……

 

赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)白龍皇(バニシング・ドラゴン)……だったか。この二つの力も使えるようにしてある。

 だが、元々が小さかったからか……最低限しか再現できなかった。

 どの程度のものかは……実際に使ってみてくれ。ぶっつけ本番で悪いが、な。

 

 ……それと左手の鍵だが、はずしておいたぞ。

 と言うか、お前の意思で開けられるようにしてある。

 アインストと戦うにはそれくらいの準備は必要と言う事だ」

 

「……ありがとうございます、白金龍」

 

力のこともだが、俺の右手が戻り、記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)の封印が解けたことが嬉しい。

記録再生大図鑑は、開錠にドライグの力を要したが元来俺の力だ。

それが俺の意思で使えるというのは地味にありがたい。

今までは、己の力も己の意思で扱えないと言う状態だったのだから。

 

「そして、お前の力になるであろう龍……紫紅帝龍(ジェノシス・ドラゴン)だ。

 これこそ、さっき話した通りすがりの置き土産だ。

 その右手の物だが、それはあくまでドラゴンの力を模した器に過ぎない。

 そこに、魂――ドラゴンを入れる。そうすることで、その右手の物は完成する。

 右手――あの世界に倣ってこう呼ぼうか。

 

 『紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)』がな」

 

白金龍の背後に、ピンク――いやマゼンタ色か? のドラゴンが姿を現す。

黒い角や鰭が、まるでバーコードのようにも見えるが……

そんな、独特なデザインのドラゴン。一体どこの通りすがりがこんなものを?

 

「大体分かった。俺はこいつに力を貸せばいいんだな」

 

「ああ。その後のことはお前が決めてくれ」

 

紫紅帝龍はそのまま太極の宝玉に吸い込まれ、器に宿ったようだ。

それはまるで、神器。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に近いものを感じる。

紫紅帝の龍魂。宝玉をはさんだ赤と白の対象のラインに加え、マゼンタも入っている。

少し、派手目なデザインなのが気になるが……

それだけに新たに加わった黒が全体を締めている形だ。

 

『そこの白金龍は名無しでいいって言ってたが、俺は呼びにくいだろう。

 俺は……そうだな。「フリッケン」とでも名乗ろうか。

 ああ、基本俺は通りすがりだ。覚えなくていい』

 

「『フリッケン』……か。俺はセージ。宮本成二。悪魔は俺を歩藤誠二と呼ぶ。

 何時までになるか分からないが……よろしく頼む」

 

俺の中に、また別の力がわきあがるのを感じる。

今まで力が無かった分を差し引いても、このわきあがる力は凄まじいものだ。

これならば、少なくともイッセーに遅れは取るまい。

今なら、元の世界に戻っても足は引っ張らない自信がある。

フリッケンの力、紫紅帝の龍魂の力、記録再生大図鑑の力、そして俺自身の魂。

 

「……決意を固めたところ悪いが、お前の世界に直接飛ばすことは出来ない。

 お前の魂を拾った場所の近く……そこにちょっとした空間がある。

 そこに一度立ち寄ってから、俺が改めてお前の世界までの入り口を作る。

 ……心配せずとも、そこは次元の狭間だから『呪われし放浪者』には抵触しないさ」

 

……ん? そこってもしかして……

イッセーと白龍皇が戦っている場所か?

そういえば、あの戦いはどうなったんだ?

それが気になった俺は、すぐさま白金龍にその場に飛ばしてもらうように頼んだ。

 

……まずはイッセーか。まだ戦っているようならイッセーは連れ出そう。

白龍皇は……どうしたもんか。まあ、なるようにするか。

とにかく、光は掴んだ。後は……もう一度立ち上がる!

 

「……俺はもう、自分の世界もなければ守るべきものも成すべきこともないからな。

 せめて、こうして巡り合えた迷子が俺と同じ目に遭わないことを祈る。

 お前は、俺のように属する世界を無くしてくれるなよ?

 

 ……さて。準備はいいか? 今からお前がさっきまでいた場所まで飛ばすぞ」

 

そういう白金龍の右手には、黄金に輝く十字剣が握られている。

あ、そうだ。試しに記録再生大図鑑を……

 

ERROR!!

 

……あ、あれ? 読み取れないぞ? まさか、薮田先生の時と同じで……

ま、まあ最近色々と規格外のものに遭遇してるから俺も感覚鈍ってきたか……?

 

「読めない……これじゃちゃんと動作するのかどうか分からないな」

 

「ん……ああ、これを読み取ろうとしたのか。多分無理だぞ。

 そもそも俺自身が、既に記録に存在しない存在だ。

 でなければ、俺は自分の名前を失ったりしていない。

 そのくせ、これの使い方とかだけは確りと覚えている。一体俺は……

 ……いや、今はよそう。今から俺の力で擬似的なゲートを作る……行くぞ」

 

白金龍が黄金の十字剣で空間を×字に切り裂くと、空間に亀裂が走った。

その向こう側では、イッセーと……白龍皇か! まだ戦っていたのかよ!

……って、これが向こうの景色ならばこうしちゃいられない!

 

「重ね重ねありがとうございます、白金龍!」

 

「……この先もまだ次元の狭間だ。そこまでは俺も行こう」

 

俺と白金龍は、亀裂の中に飛び込んでいく。

確かに俺は白龍皇の力の全てを奪ったわけではない。

だが、それでも戦いをやめないあの二頭には呆れるばかりだ。

イッセーの声は聞こえなかったが、あまりいい感情は抱いていないだろう。

この点に関しては、イッセーとは意見は同一である。

 

……あの二頭がイッセーを変に煽ったりしない限りは、だが。




セージ異次元へ行く。

>極めて近く、限りなく遠い世界
平たく言えば「パラレルワールド」、つまり「もしもの世界」です。
よく知った性質を持ちながらも、決して生半可では干渉できない。
いや、そもそも干渉すること自体がおかしな存在。だから極めて近く、限りなく遠い。
セージにとってはハイスクールD×D原作こそが「極めて近く、限りなく遠い世界」でしょう。
当然のことながら、セージはその世界にいませんので。

……そしてわざわざこんな単語が出たということは、いずれ原作イッセーが……?

>ゲート
元ネタはスーパーロボット大戦シリーズの「クロスゲート」。
元ネタというか、それそのものと言ってもいいでしょう。

クロスオーバー作品のパイオニアだけあって
こういう設定の秀逸さには頭が下がる思いです。
力技、という言い方もそりゃあ出来るでしょうけど。

……仮面ライダー鎧武の「クラック」も近い性質があるかもしれません。
仮面ライダーディケイドの「灰色のオーロラ」とか八雲紫の「スキマ」とか。

>呪われし放浪者
こちらはスーパーロボット大戦Zシリーズより。
まだOGに出てない単語ですがフライングで。出るのほぼ確定みたいな設定ですし。

>白金龍
どこか遠い世界の、真なる赤龍神帝と同等の格を持った存在。
けれどそれがどこの世界か、彼はいったいどうして次元のはざまにいるのか。
それを知る術は、もはやどこにも残されていない。彼自身の記憶にさえも。

……一応キャラクターデザインは、作者が学生時代に考えたオリキャラ。
背景が存在しないというのは、作者が封印した(したがっている)黒歴史という
メタファー。

>白金龍の語った通りすがり
おのれディケイド!
彼のみならず、次元移動ができる人は軒並みここを通れるという裏設定。
某光の巨人とか、隙間妖怪とか、その辺いろいろ。

>紫紅帝龍
赤+白=ピンク

ピンクじゃない、マゼンタだ! という電波受信

マゼンタ=紅紫色

アナグラム+始皇帝(赤龍「帝」+白龍「皇」)。三犬? 知らない子ですね。

 完 成

デザインモチーフや人格は言うまでもなく仮面ライダーディケイド。
門矢士はあくまでも通りすがりの仮面ライダーなので、置き土産として
紫紅帝龍が残され、セージに託された形になります。
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