でもって少し短いです。
その日――俺、兵藤一誠は悪魔としての仕事先に向かった。
だがそこに待っていたのは、俺を呼んだであろう召喚者の無残な死体と
はぐれ悪魔祓い、フリード・セルゼン。
いの一番で助けに来てくれた、俺に憑いている生霊――歩藤誠二の助けも借りて
無事、アーシア・アルジェントさんと逃げ出すことができたんだけど――
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……こ、ここまで来れば大丈夫だよな」
思わず逃げ込んだ先は以前セージが行ったって言う幽霊屋敷。
何故か空いていたから、ちょっと逃げ込むことにした。
家に逃げれば父さんや母さんを巻き込んじまうから、それはできない。
部室もダメだ。俺が悪魔だってバレる。
それにしてもセージの奴、何で別れ際にあんなことを?
そりゃ確かに、俺はアーシアに自分の正体を明かしてないけど。
――ま、まさか!? あの野郎、自分はアーシアに顔が割れてないからって無茶しやがって!
そのためにあの神父とタイマンやる羽目になったってのかよ!?
俺と大して強さ変わらないくせに!
「イッセーさん、さっきの悪魔の方……」
うっ。アーシアが俺を見つめてくる。その綺麗な目が逆に痛いぜ。
セージは確かに俺の同期で戦友だが、その事を喋れば俺が悪魔だって事がアーシアにバレちまう。
でもシラを切り通すのはセージに悪い。ぐぬぬ。俺はどうすればいいんだ。
「大丈夫、アーシアは何も心配しないでいい」
とにかく、俺はアーシアを落ち着かせることにした。多分、それが一番の選択肢だろう。
となると、ここからどうやって逃げるかだな。
まさか、こんなところで一晩明かすわけにも行かないよなぁ。
それに、あんなイカれた奴がいる教会にアーシアを送り届けるなんて、俺にはもうできないぞ!?
都合よく、リビングにはソファがあった。
セージが来た時に掃除でもしてたのか、幽霊屋敷の割には綺麗だ。
これなら、アーシアを休ませるにはちょうどいいかもしれない。
何たって、あんなことがあった後だもんな。
とりあえず、俺とアーシアはソファに腰掛け、一息つくことにした。
――――
何かが俺の懐で震えている。あ、俺のスマホか。メールみたいだ。
って言うか俺、いつの間にか寝てたんだな。
で、俺が見たメールは部長からだった。
From リアス部長
To イッセー
Sub 今後について
セージから聞いたわ。イッセー、あなたが助けたシスターは、堕天使陣営の子よ。
これ以上関われば、堕天使陣営との戦いは避けられないわ。
あなた一人では、到底敵わない相手よ。
その辺りも踏まえて、今後どうするかはゆっくり考えなさい。
学校と悪魔の仕事は、しばらくお休みでいいわ。
それから、セージはとりあえず無事よ。でも相当霊体にもダメージを負っているみたいで
しばらく動けそうもないわ。
後、そのセージから伝言よ。「虹川さんちは、リビングなら自由に使ってもいいらしい」って。
そっか。俺、相当やばい事に首突っ込んでたんだな。
セージも動けないほどの傷を負わされている。
これ以上動けば、否応なしに部長やオカ研のみんなを巻き込んでしまう。
いや、もう巻き込んでいるのかも。でも、俺はアーシアを助けたい。
あんなクソ神父の下で働くってのは、殺人の片棒を担がせることだ。
そんな事、できるわけがないだろう!? でも、俺は弱い。くそっ、どうすればいいんだ……
――結局、俺はそれから一睡も出来ずに朝を迎えた。
アーシアの方は、あれから一度も起きずに今、目を覚ましたようだ。
とりあえず、俺はまず強くならないとな。いくらなんでも堕天使全部に喧嘩売るのは無謀だけど
アーシア一人位は守れないと、俺の神器にもセージにも、何より部長にも申し訳が立たない。
よし。とりあえずは――
「おはようアーシア。とりあえず、飯食いに行こうぜ?」
決めた。俺は俺に出来ることをやるだけだ。セージの奴だってそうしたんだ。
俺は絶対強くなって、アーシアを守る!
その為には、まず腹ごしらえだ。俺はアーシアを連れて、街へと繰り出していった。
――――
アーシアとはその日、一日中色々なことを話した。
ハンバーガーの食べ方から、一緒に写真を撮ったり、ラッチュー君の人形を取ったり。
それら一つ一つに、アーシアは感動していた。
今まで、そういうのとは無縁の生活を送っていたんだろうか。
俺みたいな奴とは、やっぱ住む世界が違ったのかな。
日が沈みかける頃、俺たちは偶然にもセージ――宮本の方な。セージと水を飲んだ公園にいた。
うっ、ちょっと嫌なこと思い出しちまったぜ……。
「どうしたんですかイッセーさん?」
「あ、いや、何でもないんだ……」
うっ。見つめてくる目が痛い。やっぱ顔に出ていたか。
それに、昨日の今日で色々ありすぎて、疲れも顔に出ていたかもしれない。
「ごめんなさいイッセーさん、私のせいで……」
「何でアーシアが謝るんだよ。悪いのはどう考えてもあのクソ神父じゃねぇか。
やっぱ決めた! 俺、絶対アーシアをあんなところに返したりしない!
だっておかしいだろ! 人殺しを平気でやるような奴のところなんて!」
俺の力説に、アーシアはきょとんとした顔をしていたが、すぐに笑顔を見せてくれた。
「ありがとうございます、イッセーさん。あの……私の話、聞いてくれますか?」
「ん? いいけど、どうしたんだよ急に?」
笑顔を見せていたアーシアは、真剣な面持ちで俺を見つめてくる。
これ、デートだったら告白とかそういうシーンなんだろうけど……ははは、まさかね。
ちょこっとだけ淡い期待もあったが、そんな都合のいい話があるわけがない。
アーシアが話したのは、自分の経緯――
幼い頃に手にしたその力で、多くの人を癒してきた。そして聖女と呼ばれるに至ったが
ある日、悪魔を治療したことでその評価は一変、魔女と蔑まれ
追われるように住んでいた場所を後にしたのだという。
「なんだよそれ……随分勝手な話じゃないか!」
「でも、私はこの力を誇りに思っています。だって、神様がくださった力ですから。
けれど……私は……」
ふと、アーシアの表情が暗く沈む。
「私は、普通の生活がしたかったです。イッセーさん、今日は本当にありがとうございました。
私、今日のこと絶対忘れませんから」
「おい、何言ってるんだよアーシア。そんなもう二度と会えないみたいなこと言うなって!
また明日、明日また遊びに――」
「無理よ」
俺のその言葉は、何者かに遮られた。その声の主は……忘れもしない、あの子だ!
「ゆ、夕麻ちゃん!?」
「久しぶりねイッセーくん。今度はその子と恋人ごっこ? って言うか生きてたんだ」
天野夕麻ちゃん。俺を殺して、俺のダチ宮本成二を半殺しにした。でも俺はまだ信じられない。
何で? 何で夕麻ちゃんがそんなことを? 俺のこと、好きって言ってくれたじゃないか!
ふと、アーシアの方を見ると何かに怯えているように震えて俺の服にしがみついている。
「来なさいアーシア。あなたがここに来た理由、忘れたわけではないでしょう?」
「そ、それは……」
「待てよ夕麻ちゃん! アーシア、嫌がってるじゃないか!」
なんとか夕麻ちゃんを引き下がらせようとするが
夕麻ちゃんは俺の話なんか聞く耳を持ってくれない。
「うるさいわねぇ。そんなに連れて行かれたくないなら、私を殴って止めてみれば?」
「そ、そんなこと……出来るわけないじゃないか! 何言ってるんだよ夕麻ちゃん!」
正直言って、さっきから夕麻ちゃんが何を言っているのかわからない。
なんで、なんでアーシアを連れて行こうとするんだ!?
アーシアが、なんで夕麻ちゃんと関係があるんだ!?
「アーシア。早くしなさい。嫌だというなら、こいつを殺してでも連れて行くわよ」
「……っ! わ、わかりました……」
「ま、待てよアーシア! 教会には、あの神父だっているんだぞ! そんなところに……ぐっ!!」
俺はアーシアを引きとめようとするが、夕麻ちゃんに蹴飛ばされていた。
や、やっぱりあれは本当なのか。悪魔の俺が女の子に蹴られただけでここまで痛むなんて。
夕麻ちゃんの背中の羽……部長の話が本当なら、あれは――堕天使!!
「やめてくれよ夕麻ちゃん……どうしてもって言うんなら、俺、夕麻ちゃんを……」
「え? 何? 殴るの? 彼女の私を? ひどいわイッセーくん、そんなことするなんて」
そういう夕麻ちゃんの口調は、全く悪びれていなかった。
くそっ、何なんだよ! やめてくれよ夕麻ちゃん! 君がアーシアを離してくれれば――!!
BOOST!!
俺は思わず、左手の神器を発動させていた。
できることなら夕麻ちゃんを殴りたくなんてない。でもアーシアは助けたい。
これで向こうがビビってくれれば、きっとなんとかなる!
けれど、事は俺の予想とは正反対だった。
「……なーんだ。前に会った時、イッセーくんに凄い
その程度のちゃちいものだったのね。いいこと教えてあげる。
それは『
でもそれだけ。アーシアの持っている『
レアリティも全くない、ありきたりなしょぼい
「それでも、アーシアを助けるぐらいは!」
もう、無我夢中だった。考えなしに夕麻ちゃんに向かって突っ走った。
もしかしたら、もしかしたらアーシアを助けられる。そう思ってた。
けれど、俺の手は空を掴んだだけだった。
「あははははっ! 本当にとろいわねぇ。そもそもあなた悪魔でしょ?
それなのに、何でシスターのこの子を助けようとするの?」
「えっ……!?」
「そ、それは……」
いつか言おうと思ってた。でも、こんなタイミングで言われるなんて。
すまないセージ。お前の協力、全部無駄になっちまった……
そうだよアーシア。俺は、俺は悪魔なんだ……
「イッセー、さん……?」
「そうだよ。俺はもう悪魔だよ。でも、それでもアーシアは俺の友達だ!
友達を助けようとして、何が悪いんだ!」
「はぁ? 本当に甘っちょろいわねぇイッセーくんは。この様子だとアーシアにも
黙っていたんでしょうね。残念だったわねぇアーシア。
せっかく出来た友達が悪魔だったなんて」
そ、そうだよな……悪魔の友達なんて、シスターのアーシアにとっては嬉しくないよな。
俺、俺やっぱバカだ……くそっ、くそっ! 言いようのないやるせなさがこみ上げてきやがる!
「わ、私……嬉しかったです! イッセーさんが悪魔でも、関係ありません!
私と、私と友達になってくれたこと……嬉しかったです!」
「あ、アーシア……!」
俺はその言葉に涙ぐみながら手を伸ばそうとするが
目の前に飛んできた光の槍に遮られてしまう。
な、何で! 何で目の前にいるのに手が届かないんだ!!
「はい時間切れ。おしゃべりの時間は終わりよ。
じゃあねイッセーくん。しつこい男は嫌われるわよ。この子のことは忘れなさいな。
その程度の神器なら、わざわざ殺す価値もなさそうだし、見逃してあげるわ。
せっかく取り戻した命、大事にしなさい」
「ま、待ってくれ! アーシア! 夕麻ちゃん!」
そのまま、夕麻ちゃんはアーシアを抱えて夕暮れの空へと消えていった……
本作のレイナーレは、原作よりも意図的に外道度を上げているつもりです。
偶々見たアニメ版のレイナーレのインパクトが(色々な意味で)
強烈だったもので……。
こんなのレイナーレじゃない! って方は恐れ入りますが
後数話お待ちくださいませ。改善はできかねますが。