よくよく考えてみたら久しぶりかも。
会議場の外の話なので会議参加者(とセージ)は出ません。
駒王学園の終業式から遡ること数日。
時は、三大勢力と
駒王学園教師・
――そして、悪意が牙を剥いた日でもある。
その日、駒王警察署
ただならぬ空気が漂っていたのだ。
何せ、超特捜課の協力者であり警視庁の装備開発も兼任している
薮田直人から「この日には気を付けろ」と言う連絡が来たのだ。
実際、ここ数日間は悪魔などの超常的な存在による事件と同じくらいの確率で
人間の反社会的組織――すなわち、暴力団による事件が起きているのだ。
特に目立った動きをしているのが指定暴力団、
この組は、悪魔のバックアップを受けているところまで既に調査のメスが入っている。
勿論グレモリーではない、どこの家かまではわからないが高名な悪魔である。
悪魔には大別して72以上の家系があるが、超特捜課にとってはさほど重要な情報ではない。
悪魔がこの人間世界で犯罪を犯すのならば、それを取り締まる。
確保が困難な場合、悪質な場合であれば排除も行う。人間の犯罪者を取り締まるのと同じだ。
何故ならば、彼らは警察官なのだから。
警察官にとって、悪魔の相手は荷が重いという考えを持つものも少なくないだろう。
だが、超特捜課には
薮田直人によって開発された新装備が、警察官を、ひいては市民を守っている。
そんな装備や、神器と言う超常的な力を用いて警察官としての職務に当たり
悪魔や、人間に害をなす者から人々を守る部署こそ、超常事件特命捜査課――超特捜課である。
この日、三大勢力と神仏同盟、そして聖書の神の影・ヤルダバオトが駒王学園にて
会談を行っている最中。
人間の時間の刻み方ならば、日付が変わった直後。
既に粗方の人々は眠りについたであろう時間。
……事件は、起きた。
時同じくして、駒王学園には禍の団による襲撃が行われ。
各勢力のトップがその対応に追われているころ。
駒王町でもまた、町内各地で暴動が起きたのだ。
夜勤と言うことで静まり返っていた駒王警察署内も、途端に騒がしくなる。
「大変です! 町内各地で指定暴力団によるものと思われる暴動が多数発生!
組織犯罪対策課、および機動捜査隊に出動要請、また、暴徒の中には悪魔と思しき存在も確認!
超特捜課にも出動要請が出ています!」
たちまち、駒王町の町中にはサイレンの音がけたたましく鳴り響く。
とある住民はこう述懐する。
――その日は、やけにサイレンの音や怒号が凄かった。前々から治安の悪い町とは思っていたが
まさかこれほどとは。町長は心配ないの一点張りだが、信用できない。
夏休みにでも田舎に引っ越すよ。これ以上、こんなところに住んでいられないからな。
子供も学校で虐めにあっているらしいし。
この騒動よりも前から、連続猟奇殺人事件や、失踪事件に始まり
駅前での怪しい勧誘、有数の私立学校では性犯罪が絶えないことから
既に日本の中でも住みたくない町のワーストレベルに達しつつある。
とある匿名掲示板では「ここ本当に日本か?」「関西の某地区より酷い」とまで言われる始末だ。
その主な原因の一つであるのは、人ならざる者達。
ある者は言葉巧みに人間社会に入り込み、欲望に付け込んで人間社会をじわじわと侵食していく。
浸食自体は彼らにとっては副次的なものかもしれない。
けれど、そこに住む人間にとってはそれこそが主な作用なのである。
またある者は、直接危害を加える。
拉致、殺傷。超常的な存在であるが故、その方法もおおよそ常識では測れない。
それが、警察の動きを鈍くしている一因でもあったのだ。
そんな怪事件に対抗すべく、学会より薮田直人と名乗る人物が警視庁に接触してきたのは半年ほど前。
博士号を持つ彼の研究成果と、彼の助言による捜査の進展は間違いのないものであり
学校の教師との二足の草鞋で警視庁のVIPとなり、彼の発表した
「天使・悪魔・堕天使と人々、神々の在り方」と言う論文は世間に公表こそされなかったが
この論文こそが、超特捜課発足の一因となったと言ってもいい。
最も、その薮田直人こそが聖書の神の影であることは、警視庁のだれも知らないことであるが。
――――
暴動は駒王町の全域で起きていたが、駒王学園だけは避けるような形で起きていた。
その事に警察は不可解な点を感じながらも、暴動の鎮圧にあたっている。
駒王町ショッピングモール付近。日中ならば住人であふれかえるこの地も
今は何処からかやってきた指定暴力団達の抗争の戦場である。
「警察だ! 速やかに武器を捨てて両手をあげ、その場にとまれ!
繰り返す、速やかに武器を捨てて両手をあげ、その場にとまれ!」
拡声器による呼びかけにも、暴力団員は応じる気配を見せない。
それどころか、まるで何かに操られているかのように争いを続けている。
「まるでこちらの言うことなど聞こえていないかのようだな……。
やむを得ん。威力行為を用いてでも彼らを止めるぞ。但し傷害は最低限にだ、いいな」
「了解っ!!」
隊長の指示に、機動隊員が戦場にガス弾を投入。暴力団員の無力化を図ろうとする
……が。
煙幕の中、特殊ゴーグル越しに見た光景は、今なお戦い続けている暴力団員の姿だった。
「隊長! 催涙弾が効いてません!」
「なんだと!? 相手は普通の人間……ま、まさか!!
超特捜課に応援を要請しろ! その間我々は周囲に被害が出ないように相手の無力化を行う!
対人用の麻酔銃を使っても構わん! 催涙弾の効かない相手だ、注意しろ!」
「了解!!」
暴力団同士の抗争だからと、組織犯罪対策課に頼った構成が仇となった。
暴力団は暴力団でも、その中の曲津組は「悪魔と契約を行った」暴力団なのだ。
反社会的な組織が、非合法な存在と手を組み利益を得ようとするなど、至極当然の事である。
だが、この結果を見る限りでは曲津組も
悪魔に利用されただけであったかもしれない可能性も高いが。
無意味な抗争を続ける曲津組と他の組の暴力団員。
それを食い止めようとする機動隊員。
そんな様子を、後ろからほくそ笑みながら眺めている、黒い翼を生やした存在がいた。
「……くっくくく。ボロい。ボロすぎる!
人間をちょちょいと煽ってやって、騒ぎの一つでも起こしてやれば
あの能無しの魔王どもに一泡吹かせてやれるんだからな!
カビの生えた古臭い自称魔王なんかどうでもいいけど、こんな面白いアソビがあるなんてよ!」
「全くッスよ兄貴。しかもここはあの乳悪魔で有名なリアス・グレモリーの領地じゃないッスか。
ここに俺らの臭いを擦りつけられるって考えただけでもう……うっ!」
チンピラ風の悪魔に、小太りの下卑た悪魔が暴力団員と機動隊員のやり取りを見て嘲笑っている。
盛り上がる小太りの悪魔に、チンピラ風の悪魔は若干引いた様子も見せているが。
「おま……本物相手ならともかくよぉ。本物どころか領地、それもその場所じゃ
人間が小競り合いしてるんだぜ? よくそんな気になるな……」
「ふひひ、ジョーダンッス。でもあの乳悪魔はいつかめちゃくちゃにしてやりたいッスねぇ」
小太りの悪魔と、チンピラ風の悪魔はにやつきながら談笑している。
そんな背後に、制裁を与えるものの存在に気づかないまま。
「……チッ。あんまりしけた欲望をだだ流しにするな。鼻が腐る」
「ああン!? なんだてめぇ!?」
二人の背後に立っていたのは、右手に赤・緑・黄の三色のグラデーションをした
鳥の翼を模した腕輪をつけた、はねた前髪が特徴の金髪の目つきが悪い警察官――
「特にそっちのデブ。お前らが悪魔だってことを抜きにしても臭ぇんだよ。
お前ら、本当に碌な欲望持ってないな。吐き気がするぜ」
「てめぇ! 兄貴、こいつ人間のくせに生意気ッス!」
「待て。お前のその右手、『
つまり、神器持ちってわけか。なぁ、モノは相談なんだが、俺と――」
チンピラ風の悪魔が喋り終えるのを待たずに
安玖巡査の「欲望掴む王の右手」が填められた拳が入る。
既に発動してるのか、その手には炎を纏っていた。
「お前らは悪魔だから一応発動手当は出るんだがな。
これ使うのだってタダじゃねぇんだ……よ!!」
返す手で今度は小太りの悪魔を吹き飛ばす。
きれいに吹っ飛び、街路樹に激突して伸びてしまっている。
神器の性能のお陰か、それとも彼らが大したことなかったのか。
二人の悪魔が沈黙すると同時に、ショッピングモール前でも動きがあった。
――暴力団員がこぞって正気に戻ったのだ。
その後、わけもわからず確保される暴力団員と
機動隊員の間でちょっとしたトラブルは起きたものの
この地域でのトラブルは解消することができたとみていいだろう。
「……チッ。また余計な税金払わされたぜ。確かに手当ては出るけどな。
結局税金で払ってるから何の解決にもなってねぇんだよ。
……こちら安玖。事件関係者と思しき悪魔二名を確保。連行のための応援を求む」
『こちら本部
無線連絡を終えた後、安玖は別の現場へと向かう。
まだ、他の場所でも暴動は起きているのだ。
――――
駒王町・住宅街。
寝静まっているはずのそこは、またしてもただならぬ雰囲気の中
住民は平和の象徴であるはずの家屋の中で震え上がっている。
つい先月、巨大な怪物――オルトロスによる襲撃があったばかりだというのに。
その事件そのものは住民の記憶操作のため、覚えているものはごくわずかだが
ネットには謎の怪生物として時折アングラサイトに
オルトロスが暴れた様子の動画が投稿されていたりする。
今回の事件は、そんな怪生物によるものではない、ただの人間の暴動である。
ただありえない点を挙げるとすれば。
こんな真夜中に。
日本を股にかけるような指定暴力団同士の抗争が。
人目も憚らず行われているということである。
そのあまりにも不自然な現象に、暴動鎮圧にあたった超特捜課の巡査
――これは絶対にただの抗争なんかじゃない。
何か人ならぬもの――そう、悪魔か何かが糸を引いているに違いない、と。
事実、他の現場に向かった署員からは軒並みそういった人間業では説明できないような
事象が報告されているのだ。
『こちら本部霧島。氷上巡査、応答願います』
「こちら氷上、霧島さん、どうしました?」
無線の相手は安玖とほぼ同時期に警視庁から超特捜課に配属された
神器を持たないため、今はこうして内勤担当ではあるが
警視庁で完成した試作品と共に超特捜課の応援要員として派遣された人物である。
『安玖巡査より、事件関係者と思しき悪魔を二名確保したとの報告がありました。
他の現場にも悪魔が潜伏している可能性は高いと思われます、お気を付けください』
「氷上了解、引き続き周囲の警邏にあたります……っ!!」
通信を切ろうとした氷上の目に映ったのは、死屍累々の惨状。
通報では、指定暴力団同士の抗争があったはずなのに、ここにあるのは複数の惨殺死体のみ。
いくら暴力団同士の抗争でも、ここまでの事態には早々ならない。
ただならぬ雰囲気に、氷上に緊張が走る。
『氷上巡査、どうしました?』
「霧島さん、こちら学園前住宅街地区。
暴徒と思しき暴力団構成員は……全滅しています。
……繰り返します。学園前住宅街地区、暴力団構成員は全滅している模様」
『ぜん……ほ、本部了解! 氷上巡査は引き続き周辺の捜査を行ってください!』
氷上は通信を切り上げ、駆けつけてきた鑑識課と協力して検視を行い
このただならぬ雰囲気の原因の究明に努めている。
鑑識の見解ではこうだ。
――人為的なものではなく、毒によるもの、また人間には出しえない強い力での圧死。
ならば答えは一つだ。悪魔、それも以前戦ったオルトロスのような怪物。
氷上には未だその正体は掴めていない。だが、それを知るであろう者はそこにいた。
「……そこかぁ!!」
威嚇射撃。電柱の影に隠れていたそれ――悪魔は、あっさりと氷上の前に姿を現す。
しかし、そこに戦意は見られない。まるで、何かから逃げていたかのように。
「駒王警察署超特捜課の氷上だ。これはお前がやったのか?」
「な、ななな何しやがるんだ! にににに日本の警察は
いきなりじゅじゅじゅ銃を撃ってくるのかよよ!?」
そこにいたのは、その黒い翼以外に悪魔としての要素など何一つない、気弱そうな男だった。
氷上もこれには面を喰らい、銃をホルスターにしまい悪魔に質問を投げかける。
「それはすまない。何分非常時だからな。それより、ここに転がっている変死体。
やったのはお前か? 人間業では、こんなことは到底できない」
「お、おおお俺だってしらねぇよ! 俺はただ今日ここでこの人間たちの
望みをかなえてやれば大儲けができるっていうから、それに乗っかっただけだよ!
だ、だだだだから俺は関係ねぇ! 関係ねぇったら!!」
そのあまりにも無責任な言葉に、氷上は静かに拳を握った。
まるで、自らが招いたことの重大さを理解していない。
まるで、人間は悪魔にとってただの餌か無尽蔵の資源としてしか見ていないような物言い。
まるで、ここは彼ら悪魔の遊び場であるかのような。
「……確かにこいつらは人間社会にとってはあまりいいやつじゃなかったかもしれない。
だが、それでも! お前らの勝手な理屈で好き勝手に弄っていい理屈は何処にもないんだ!!」
狼狽える悪魔に、氷上の怒号が飛ぶ。氷上は神器を持たない。
あるのはただ、警視庁で開発された装備だけ。
超常的な力を持たない彼が、超常的な存在である悪魔に怒りを向ける。
平凡なる人間は日々を懸命に生き、非凡なる悪魔は日々を刹那的に生きる。
その思想の相違は、平行線をたどったまま決して埋まることのない溝として確立していたのだ。
「ば、馬鹿じゃねぇのか? に、にに人間ったって、しょうもない理由で俺達の力に縋ったり
しょうもない理由で自分たち同士で争ったり、しょうもない理由で他の生物を滅ぼす。
お、おおお俺達悪魔が導いてやらないと、ほ、ほほ滅びるのは目に見えてるだろうが」
「ああそうさ! だからそういう過ちを正すために俺達警察官がいる!
誤った道を進ませないために学校がある! 知恵を、力を合わせて乗り越えられるのが
俺が思う……人間だ!
そうさ……俺達は……ただの、ただの人間だ!!」
「た、ただの人間が偉そうに言うんじゃねぇよ!!」
向かってくる悪魔に、氷上は右手のプラズマフィストを向ける。
既に充電完了しているそれは、悪魔にとっても決定打となりうる装備だ。
だがそんなことは、悪魔にはあまり知られていないことである。
プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ス・タ・ン・バ・イ
真正面からプラズマフィストに突っ込む形になった悪魔。
当然、今回は確保が目的であるため出力はセーブされているとはいえ
最大では自然の雷――五億ボルトにも匹敵する出力を誇る装備。
そんなものをまともに受ければ、ただでは済まない。
プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ラ・イ・ズ・アッ・プ
プラズマフィストの放電部分が、悪魔に接触。そこから超高圧電流を流される形となり
瞬く間に悪魔は沈黙してしまう。
現時点において、接近戦では超特捜課最強クラスの装備ともいえよう。
「――人間を、なめるな!」
……しかし、それだけでは終わらない。
当然、この後は取り調べも控えているのだ。
ついさっき超高圧電流を受けた悪魔をひっぱたく形で、氷上は事情聴取を試みる。
悪魔にとっては災難だが、自業自得でもある。
「気が付いたか。気が付いたところで質問に答えてもらうぞ。
ここにいる人間の死体。やったのはお前か?」
その答えは、思いのほか早く返ってくることとなる。
しかしそれは、あまり歓迎のされる答えではなかったが。
「……そ、それは本当なのか!?
霧島さん! こちら氷上、霧島さん!」
『こちら霧島。どうしました、氷上さん?』
「直ちに本庁に確認を! 確認の内容は――」
『――っ!? わ、わかりました!!
確認が取れ次第、現場に向かっているすべての署員にも通達します!!』
ただならぬ雰囲気は、駒王学園の敷地内だけでなく
駒王町全域をも覆うとしていたのだった。
――――
駒王駅前。ここには超特捜課の課長、テリー
しかし、ここは他の場所に比べて静かである。
氷上が向かった場所のように、すでに何者かが暴れた跡もない。
だが、確かに破壊の跡はある。
「一体どういう……っ!?」
柳に向けられた殺気。それは、通常あり得ない場所からの殺気だった。
窓。噴水の水面。ブティックの姿見。鏡の中から悪魔が出てくるというケースは
オカルト的な本には無数にある。しかし、これはきっとそんな生易しいものではない。
柳の直感はそう告げていた。
事実、そこから現れたのは――
「紫の大蛇……だと!?」
柳めがけ尾を叩きつけながら、口からは硫酸を吐きかけてくる。
どう見ても交渉に応じられそうもない怪物。直感で測るしかないが
強さはオルトロスと互角以上かもしれない。
「くっ、止むを得んか! 『
タコメーター付きのストップウォッチ――テリー柳の神器「加速への挑戦」が発動する。
これは10秒間だけ己の速さを極限まで高めるものである。
この力を使い、一気に畳みかける。それが柳の作戦だった……のだが。
大蛇の尾の死角に入ったと思った瞬間、今度はまた別の方向から
銀色の二足歩行の犀が突っ込んできたのだ。
速度のお陰で直撃は避けられたが、完全に攻撃のタイミングを失う形になってしまった。
「伏兵!? こいつら、一体どこから……」
二匹の獣に囲まれる形となった柳は、それならばと思い切って空からの攻撃を試みる。
蛇も、犀も空を飛ぶことには長けていない。
そこから頭を狙う。神器の残り時間で考えれば一度きりのチャンスだ。
「まだまだ……振り切るぜ!!」
駅ビルの壁を駆け上がり、二匹の獣の頭上を取った――かに見えた。
しかし、柳の一撃は駅ビルの窓から現れた朱色のエイに阻まれる形になってしまう。
「しまっ……まだいたのか!!」
着地の体制をとるが、神器の持続時間は終わってしまう。
再度使えるようになるにも時間がかかる。このままでは危険である。
ただでさえ三対一。贔屓目に見ても追い詰められているといえよう。
想定外の連携に、追い詰められていく柳。
大蛇に飲まれようとする寸前、その場に笑い声が響く。
「くひゃひゃひゃひゃひゃっ!! ざまぁねぇな、ポリ公!!」
「その声……フリード!?」
朱色のエイの背に乗る形で、フリードが腕組みをして柳を見下していた。
その手には既に聖剣どころか、剣の一本も持っていない。
服装も、彼が刑務所からそのまま出てきたことを物語っている囚人服だ。
「あー。この恰好か? てめぇらのせいだろうが。俺様にこんなダサい恰好させやがって。
ま、こいつら使ってその辺からちょろまかせるんだけどな。
あ、紹介するぜ。こいつら俺の新しい相棒。『
『
どーだ? いかすだろ? やらねぇけどな、きゃははははははっ!!」
既に柳への止めなどどうでもいいという風に、フリードは一人悦に浸っている。
それほどまでにこの三体の怪物が気に入ったのだろうか。
あるいは、娑婆に出られたことでテンションが上がっているのか。
「俺よぉ……すっげえイライラしてたんだよ。
俺は悪い悪魔を潰して、潰して、潰しまくって!
そんな悪魔に餌をやる人間も悪党だから俺がしばいてやったってのに!
それなのにあいつらは俺を犯罪者扱いだ! やってられるか!?
……そんな時だよ。コカビエルが俺に声をかけてくれたのは。くたばっちまったけどな。
それから手に入れたのは……こいつらだ」
フリードの言葉に、柳は言い返そうとにらみ返すが
「菫の猛毒蛇」の尾にたたきつけられてしまう。
それでも目線はフリードから外さない辺りは、彼とて凄腕の警官であることの証左か。
「言っとくがてめぇの綺麗事なんざ聞かねぇぜ。見返してやろうとか
そういうつまらねぇ理由で俺だって戦ってねぇ。
ただな……俺がイライラする奴が許せねぇ、そんだけの話だ。
こいつらはそんな俺に巡ってきたチャンスだ。こいつをよこした奴が何を企んでいるのか。
俺にとっちゃそんなのこそどうだっていい。ただ俺は……
俺の許さねぇ奴を潰す。徹底的につぶす。それだけだ。
それだけのためにこいつらに餌を食わす」
「餌……まさか!!」
目を見開いた柳に、フリードは指を振り否定の意思を示す。
その眼には、少々の呆れも含まれている。
「まぁ人間も食わせるけどよ。効率悪いんだよ、人間。
だから俺は悪魔や天使、それから堕天使も食わせる。
こいつらうまい具合になんでも食うからな。
ま、神やドラゴンはまだ試してねぇけどな。
で、こいつらは食えば食うだけ強くなる。それで俺のイライラする奴を潰すんだよ。
そいつぁきっとスッキリするぜ……
……だからてめぇなんぞに邪魔されたくねぇんだ、わかったか!?」
フリードが一吠えした後、追い打ちをかけるかのように柳の腹に
「菫の猛毒蛇」の尾が叩きつけられる。
そのまま一人と三匹は、どこかへと姿をくらましてしまう。
その場に、フリードの声だけを残して。
――今のてめぇなんか潰したって、イライラは消えねぇからな!
当面は俺にこいつをくれた奴の手助けでもするさ! そのほうがスッキリしそうだからな!!
ひゃははははっ、ひゃーっははははははははははっ!!
結局、フリードを逃がす形になってしまった柳。
ふらふらになりながらも、無線機に手を伸ばそうとするが
その手は応援に駆け付けた氷上に止められる。
「柳さん! 一体何があったっていうんですか!?
ま、まさか……!!」
「氷上か……そのまさかだ。くそっ、超特捜課を名乗っていながらこのざまとは……!!」
七月某日未明。この日、駒王学園で行われた会議においても
禍の団が決起し。
人間社会においても、悪魔の干渉が看過できないレベルで行われ。
人外の脅威に、超特捜課が敗北を喫した夜であった……。
会議の最中、街中ではこんなことになってました。
もう疎開不可避ですね。
今回どうなったかと言いますと
・かねてから欲望を持っていた人間を
・悪魔が契約などで欲望をたきつけて
・その契約に旧魔王派が乗っかって、会議に合わせて暴動が起きるように仕向けた
と、見事に和平派以外からはwin-winの関係になってます。
こういう契約なんて裏があって何ぼだと思うんです。
ここはグレモリーの領地だろ、ってツッコミも
「グレモリーなんか怖くもなんともない、寧ろあいつら嫌いだし」な連中には
全く何にも抑止力になってないんですよね、いくらグレモリー領だからって。
>フリード
以前少し触れた通り脱獄してます。
脱獄囚のまんまの格好なので恰好ついてませんが、何気に悪魔払いとしては
(かなり過激だけど)そこまで間違ったこと言ってないという。
彼もまたイリナとは方向性が違うだけで歪められた存在なのかもしれません。
以前触れた通り、引き連れている魔獣(あえてこう表現)の元ネタは仮面ライダー王蛇。
魔獣、という表現をここで使ったのである人物(神器)との接点も……?
>霧島詩子
ここに来て新キャラ。貴重な婦警枠。
モチーフは艦これの霧島……と思わせて仮面ライダードライブの詩島霧子。
残念ながら追跡撲滅マッハな弟とか生きとし生けるもののために戦う恩人とか
脳細胞トップギアな旦那は現時点ではまだ予定ありませぬ……すみませぬ……
女性でなければどうにもならない(ケア的な意味で)が起きる前触れ……かも。