戦姫絶唱シンフォギア Rising   作:川井 アザト

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3話

 

8年後、日本、東京にて。

 

俺は、あの日、FISから解放されて、そこら中を転々とする毎日を送っていた。

 

その日々の中で、色々なしがらみができたりもしたが、それらを辞し、妹の場所を目指してさまよい続けた。

 

そして、8年後、ようやく妹のいると言われている東京のある場所に、俺はやってきた。

 

二人組のシンガーユニット、ツヴァイウィングのライブ会場だ。

 

ツヴァイウィングは、結成当時から、またたく間に世間を圧巻し、今や日本一と過言ではないほどのユニットへと姿を変えたらしい。

 

そのツヴァイウィングの片翼に、俺の妹、風鳴翼がいるのだ。

 

ようやくここまでたどり着いた俺だが、あいにく、ライブチケットを買い忘れていたことに、はたと気づいてしまった。

 

チケットが無ければ、妹の勇姿を見ることは叶わない。

 

俺は、自分の間抜けさに呆れつつも、外のベンチにて、ライブの様子を見守ることにした。

 

そこからしばらくすること数十分、ライブ会場から、歓声が上がった。

 

いよいよライブが始まったのだ。

 

ライブ開始と同時に、曲のイントロが流れ始める。

 

イントロが終わると、そこから、ツヴァイウィングの天羽奏、そして、妹の風鳴翼の歌声が聞こえてきた。

 

なんとも、心地の良い歌声だった。

 

まるで曇った空が、一気に晴れ渡るような、唯一無二の二人の歌声。

 

その歌声に、俺は、終始惹かれ、聞き入っていた。

 

一曲目の「逆光のフリューゲル」が終わると、天羽奏の掛け声と共に、2曲目が始まろうとしていた。

 

だが、そんな矢先だった。

 

会場の歓声が、一気に悲鳴へと変わったのだ。

 

何事かと思い、俺はベンチから立ち上がる。

 

ライブ会場から煙が上がる、ただごとではない。

 

丈「翼・・・!!」

 

俺は妹のことを、いの一番に考えた。

 

翼になにかあれば、ただではおけない。

 

俺は、自身の聖遺物を展開し、ライブ会場へと、向かった。

 

 

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風鳴翼と天羽奏が見た光景は、一瞬の刹那の内に現れた一人の男によって作られた静寂の光景だった。

 

ライブ会場にノイズが溢れ、次々と人を炭化させていく阿鼻叫喚の渦。

 

その中を、2人は戦っていた。

 

その戦いのさなか、一人の存在が、二人とノイズの戦いに割って入った。

 

その男は、体に二人と同じような、シンフォギアのプロテクターのギアのようなものを纏って現れた。

 

男は、一瞬消えたかと思うと、二人の目の前に広がっていたノイズの集団は、跡形もなく姿を消してしまった。

 

その男が再び現れたのは、そのあとだった。

 

「大丈夫か?」

 

男が、2人に声をかける。

 

奏「アンタは、一体・・・!」

 

翼「貴様!何者だッ!」

 

一瞬のことに、頭の整理が追いついていない奏と、非常時に現れた正体不明の男に、警戒の刃を向ける翼。

 

双方、この場にて、立ち会うような形で向き合うこの状況に、男は、あることを切り出した。

 

「天羽奏。あの少女を見てやれ。まだ助かるはずだ。」

 

奏「ッ・・・!」

 

天羽奏は、はたと気づいたように、ライブ会場の端に横たわり、胸から血を流した少女の元へと向かう。

 

奏「おい!しっかりしろ!目を開けてくれッ!生きるのを諦めるなッッ!!」

 

天羽奏は、必死で少女に呼びかけている。

 

天羽奏が、戦いの間際、少女庇った時に飛び散ったシンフォギアの破片が、少女の胸へと突き刺さっていたのだ。

 

少女は、天羽奏の呼びかけに対し、少しだけ反応した。

 

どうやら、致命傷は免れたらしい。

 

「・・・・・・さて、俺はそろそろお暇させて・・・」

 

翼「待ちなさいッッ!!」

 

まだ、警戒の刃を男に向け続ける風鳴翼は、男を引き止めた。

 

男を引き止めた翼は、静かに刀を下ろしてこう言った。

 

翼「・・・・・・あなた、どこかで会ったことはある?」

 

「ッッ・・・・・・!」

 

男は、少し動揺した仕草を見せた。

 

翼「あなたの戦い方。どこかで見覚えがあるの・・・・・」

 

翼は、男に対して疑問を投げかける。

 

自身に、心当たりのある事を投げかけながら。

 

「・・・・・・・・すまない。それには答えられない。さらばだ・・・」

 

男は、それだけを言い残し、ライブ会場を後にしてしまった。

 

ライブ会場には、男に対して疑問を抱きつづけながら立ちすくむ風鳴翼と、少女に必死で語りかける天羽奏。

 

そして、血を流している少女だけがそこにいた。

 

 

 

〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈

 

 

 

 

俺は、ライブ会場から遠い距離の、ビル群のワンブロックに、身を隠していた。

 

丈「はぁ・・・なにが「さらば」だ・・・本当は会いたかったくせに・・・」

 

八年ぶりに、俺は妹の姿を見た。

 

あの翼が、小さくて俺の足元を歩き回っていた小さな少女が、あそこまで成長するとは思ってもみなかった。

 

俺は、立派になった妹の姿を見て、少し足がすくんでしまった。

 

あの日、妹を裏切った俺に、合わせる顔なんてない。

 

そう考えてしまった。

 

丈「見たことのある動き、か・・・・そりゃそうだよな。武を教えたのは俺なんだし・・・・」

 

俺は、風鳴家では、武術や鍛錬を、一通り収めていた身だった。

 

俺はその全てを、妹である翼に教え込んだ。

 

それが、翼の記憶の中に、深く刻まれていたからなのだろう。

 

俺に、あのような質問をしたのは。

 

丈「・・・・・ここでじっとしてても始まらないか。」

 

俺は、地面から立ち上がり、ビルの間のワンブロックから出ようとしていた。

 

だが、その時だった。

 

突然、路地の入り口から、黒服の男たちが、俺の行く手を遮り、その周りへと展開し、俺自身を取り囲んできた。

 

黒服の男たちは、全員拳銃を構え、こちらを睨んでいた。

 

丈「・・・・遅い出迎えだな。」

 

俺は、黒服たちのことを見て、なんとなく察した。

 

この連中は、風鳴機関の連中だ。

 

鎌倉の風鳴本家で見たような顔ぶれが、何人か見える。

 

俺はそれに気づき、そっと手をあげる。

 

丈「抵抗はしない。あんたらは、じいさんの言いつけなんだろ?さっさと連れていけ。」

 

俺がそう言うと、黒服の一人が、拳銃をしまい、拘束具を持って俺に近づき、俺の手にはめた。

 

俺は拘束され、黒いセダンに押し込まれ、その場から連れ去られた。

 

向かう先は、だいたい検討がついている。

 

俺は、行き先のことを案じながら、車の中で、退屈な時間を少しの間過ごしていた。

 

 

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あの路地から連れ去られてから2時間後、俺は、見覚えのある建物へと連れてこられていた。

 

鎌倉の、風鳴本家だ。

 

嫌でもわかる風鳴家の家紋が、入り口に飾られている。

 

俺は拘束具を外され、本家の中へと案内された。

 

広い家の本家の中の広間に通され、広間の中心に座り込み、そこから数十分待った。

 

しばらくして、広間の戸が開いた。

 

そこから出てきたのは、風鳴訃堂。

 

俺をアメリカに売ろうとしていた祖父だった。

 

訃堂「久しいな。丈よ。」

 

丈「久しぶりですね。おじい様。あなたに会うのは八年ぶりです。」

 

訃堂「もうそんなに経つか・・・・ふむ、ひとしお鍛え上げたものと見える・・・・」

 

丈「用向きはなんです?」

 

俺は、祖父の言葉を遮るように、用件を聞いた。

 

訃堂「ふっ・・・まあいい。用件を話そう。」

 

祖父は、周りに人払いをし、俺と2人きりの空間を作った。

 

訃堂「お前には、この国の、護国そのものとなってもらう。」

 

丈「護国、そのもの・・・・?」

 

訃堂「そうだ・・・」

 

祖父が、護国の鬼とまで呼ばれた手腕の持ち主ということは、俺もわかっていた。

 

それを鑑みても、俺を利用しようとしている腹づもりなのは目に見えている。

 

訃堂「お前には、この国の最後の砦、防人たる使命を果たす義務がある。それを用意してやるというのだ。ありがたく思うがいい。」

 

なんとも身勝手な考え方だが、その思考で、日本を陰から支えてきたのは事実だ。

 

今更、祖父自身を変えることなどできはしない。

 

丈「承服いたしかねる・・・・と言いたいところですが、良いでしょう。あなたの口車に乗ってあげますよ。」

 

祖父には、正直、感謝している部分もある。

 

祖父の手中で踊らされ、アメリカへと送られたことで、俺は力を手にすることができた。

 

いずれ、風鳴の家を変えるため、最愛の妹を守るための力を。

 

訃堂「ほざきおるわ・・・だが、話が早くて助かる・・・早速、その話を詰めてゆくが良いな?」

 

丈「ええ、いいですとも・・・・」

 

俺は、祖父の話を、延々と聞いていた。

 

祖父の俺への利用の算段として、まずは俺を、「深淵の竜宮」と呼ばれる聖遺物保管庫へと封印するところから始まるらしい。

 

要するに、必要な時に蓋を開け、用がなくなったら閉じる。

 

そういったところだ。

 

俺は祖父の護国の計画を聞き、腹を括るのと同時に、この状況を打破する思考を同時に巡らせていた。

 

いつまでも、祖父の傀儡とならないためだ。

 

かくして、俺は「深淵の竜宮」へと封印される手はずになり、俺はその話を承諾した。

 

いずれ目覚めるとしよう。

 

この家を、この状況を打破するその時まで。

 

 

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