6年前の出来事。
キャロルの拠点、チフォージュ・シャトーにて。
丈「おーい。キャロル。言われた通りの花。持ってきたぞ?」
キャロル「ご苦労だったな。丈。」
俺は、キャロルにひとつ、お使いを頼まれていた。
なんでも、欧州の山間に咲く、あるのかどうかもわからないような花を取ってきてほしいとのことだった。
その花は、昔、錬金術師が、疫病を治すために使った花なんだとか。
俺は、その花を探すため、キャロルからもらった少ない情報と、自身の聖遺物の力で、何とか探し出すことに成功した。
丈「言われたとおりに持ってきたけど、何に使うんだ?」
俺は、花を渡しながら、キャロルに聞いた。
キャロル「そうだな・・・・ちょうどいい、お前も来い。」
丈「来いって・・・どこに?」
キャロル「来ればわかる・・・」
キャロルは、転移の結晶を、自身と俺の間に投げた。
するとそこから、転移の術式が展開されたかと思うと、俺達2人は、一気に山間の森の中へと転移した。
丈「ここは・・・?」
キャロル「オレの思い出の場所だったところだ。こっちだ丈。」
俺は、キャロルに促され、森林のとある一角にたどり着いた。
そこには、一つの墓石が置かれていた。
墓石の前に、キャロルは花を置き、そっとしゃがんで墓石に手を触れた。
キャロル「久しぶりだね・・・パパ・・・」
墓石には、一人の錬金術師の名前が記されていた。
〈イザーク・マールス・ディーンハイム。ここに眠る。〉
丈「キャロルの、お父さん・・・・」
墓石の前で、キャロルは手を合わせ、祈るような様子で、しばらく黙祷していた。
俺もまた、キャロルにならい、彼の墓石の前で、手を合わせた。
しばらくの黙祷が続き、終わった頃に、キャロルが口を開いた。
キャロル「ここにはよく、調薬の材料を、パパと一緒に取りに来ていたんだ。この花も、このあたりにはよく咲いていたのだがな・・・・」
丈「そういうことだったのか・・・・」
キャロルは、過去のことは意に介さないような性格だと、勝手に思っていた。
しかし、彼女は、肉親の思い出を、何よりも大切にしていたのだ。
キャロル「オレは、パパから与えられた〈世界を識る〉命題を、必ず解かなければならない・・・・それが、オレとパパとの約束だからだ。」
キャロルは、墓石をそっと撫でた。
キャロル「もう少し・・・・もう少しだからね、パパ・・・」
キャロルの計画については、このころは、何も知らなかった。
彼女は、ただ理想を追い求める、一人の少女だと思い込んでいた。
一人孤独に、闇を抱え込む運命にあるとは知りもしないで。
丈「俺も、追い求めていいかな・・・キャロル。」
キャロル「何をだ・・・?」
俺は、キャロルに、過去に話したことを踏まえて話をした。
丈「俺には、最愛の妹がいるって前に言ったよね?」
キャロル「ああ・・・だが、お前は逃げたらしいな・・・愛するものを裏切った気分はどうだ・・・?」
丈「最低さ・・・・だからこそ、俺は、君の理想にあてられた一人になった、ということだね・・・」
キャロル「どういう意味だ・・・?」
俺は、立ち上がり、空を見上げた。
丈「愛する者のために、俺は、世界を識るよ。自分に答えを出すまで。君にまた、答えを出すまで。」
大空を飛ぶ鳥は、飛ぼうと思って飛ばない。
だからこそ、俺は、愛する者のための〈翼〉になってみたかった。
この世界の、優しさを見つけるために。
キャロル「勝手な思い上がりだな・・・・だが、お前らしくもある・・・」
丈「俺は、こういう性分だからね・・・・」
キャロルは立ち上がり、俺に向かい合った。
キャロル「なら、約束しろ。俺にも、お前の答えを、いつか聞かせてくれ・・・」
丈「ああ、約束だ・・・」
俺達は、小指を切るように、お互いを見つめ合い、そう約束を誓った。
この約束が、後に、呪いとなることは、このときは知る由もなかった。
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キャロル「オレは、オレなりに答えを探し、この場にいる・・・・・それをお前は翻弄するのかッッ!!丈ッッ!!」
キャロルは、言葉の波を俺にぶつける。
感情の赴くままに、俺に対して、気持ちのすべてをぶつけるように。
キャロル「なぜだ・・・?なぜみんな・・・オレを一人にする・・・?」
キャロルは、涙を流していた。
全てに裏切られたような、悲観の表情で。
丈「・・・・・・忘れるわけないだろ?キャロル。」
キャロル「なに・・・・・?」
俺は、悲観するキャロルに対して、あの日の約束を違えたことはないと語った。
丈「お前は、色々話してくれた。赤の他人の俺に、自分の思い出を隅々まで・・・・お前みたいに、思い出を大事にするやつは、そうはいないよ・・・・・」
俺は、キャロルを、心底そう思っていた。
自分の肉親を、突然失った悲しみは、消えはしない。
だが、彼女の中での、父親との思い出は、何よりも代えがたいものなのだ。
それは、世界を解剖する己自身の、最後のストッパーにも思えた。
丈「俺も、俺なりに、答えを出そうと世界を彷徨ったさ・・・だけど、あの日の答えは、まだ見つかっていない・・・・それでもな、お前との約束は、違えたくないんだ!!絶対にッッ・・・・!!」
キャロル「ッッ・・・・・!!」
俺は、手に、一つの聖遺物を展開させる。
丈「俺は、お前との約束をまだ果たせれていない・・・!!果たせてないから、お前の大事な思い出を守りたい・・・!だから・・・・・」
俺の手に、徐々に、聖遺物が形作られていく。
丈「もう、こんなことは、やめてくれ。キャロル・・・」
俺の手に握られたのは、一つの大太刀。
すべてを、切り裂き、乖離させる、絶対の刃だ。
俺は、それを、上段にかまえ、深く集中する。
キャロル「や・・・やめろ、丈・・・・お前がそれを出せば!世界がお前を!」
丈「わかってるッッ!だけどその運命は、自ら変えてみせる・・・・」
集中した俺の五体からのエネルギーが、大太刀に収束していく。
丈「今のお前に、暫しの休息を、与え給え・・・・・」
エネルギーの収束した大太刀の刃を、その場で一気に振り下ろす。
キャロル「アアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!」
大太刀のエネルギーに、キャロルは当てられ、彼女のファウストローブが、一気に霧散していく。
彼女の体は、大人の姿から、一気に少女の姿へと戻っていく。
彼女の体から、哲学兵装ごと、ファウストローブを乖離させたのだった。
ファウストローブを強制解除された、彼女は、その場に、仰向けに倒れ、空を見上げていた。
キャロルの顔は、何かから解放された、澄んだような表情だった。
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丈が、キャロルを止め、事態は収束の域を辿った。
調「終わったの・・・・?」
切歌「今のって、丈の聖遺物の力デスか・・・?」
シンフォギア装者たちと、エルフナインは、あっという間の出来事に、しばし、状況が飲み込めないようだった。
クリス「アタシらの一撃でも折れなかったファウストローブを、あんなあっさりと・・・・」
マリア「過去の丈でも、あんな力、見たことないわ・・・・」
シンフォギアのエクスドライブも、それと同等の出力誇るキャロルのファウストローブが、あっさりと砕かれた事実に、誰もが驚愕していた。
翼「お兄様が、こんな力を持っているなんて・・・・・」
響「翼さん・・・・・」
兄である丈の力を見た翼は、驚愕と動揺に打たれていた。
彼女自身、突然現れた、過去の亡霊にも似た存在が、埒外の力を振るい、事態を収束させたことに、頭が追いついていない、
エルフナイン「キャロル・・・・!!」
エルフナインは、倒れているキャロルに向かって走り出していた。
エルフナイン「キャロル!!しっかりしてください!!キャロルッッ!!」
彼女はしきりに、キャロルの体を揺する。
すると、キャロルの意識が、それに応え、徐々に覚醒し始めた。
キャロル「っ・・・くっ・・・・」
エルフナイン「ッ!!キャロル!!」
エルフナインは、キャロルに飛びつくように抱きしめた。
キャロル「俺は、一体どうなって・・・・・」
エルフナイン「丈さんが・・・丈さんが守ってくれたんです・・・キャロルの思い出を、パパとの思い出を・・・」
キャロル「そう、なのか・・・・・」
キャロルも、徐々に、状況を捉えだしていた。
エルフナイン「ゴホッゴホッ・・・・!!」
キャロル「エルフナイン・・・!?」
エルフナインは、血を吐いた。
SONG本部での、事故の傷が、深くなっていたのだ。
エルフナインは、その場に倒れ、意識が落ち始めていた。
キャロル「しっかりしろ・・・!エルフナイン・・・!」
キャロルは、エルフナインの傷を手で押さえた。
響「エルフナインちゃん!!」
響もまた、ギアを解除し、エルフナインの元へと駆け寄り、彼女の患部を押さえた。
響に促されるように、他のシンフォギア装者も、ギアを解除し、エルフナインの元へと駆け寄る。
クリス「しっかりしてくれ!!」
調「死んじゃダメだよ!!エルフナイン!!」
切歌「嫌デスよ・・・!こんな結末なんて・・・・」
マリア「目を閉じちゃダメよ!!エルフナイン!!」
翼「なぜだ・・・なぜ、こんなにも、彼女に無情を・・・!」
皆、思い思いのエルフナインへの感情がある。
彼女は、シンフォギア装者やSONGのメンバー、そして、キャロルのために、ここまで頑張ってきた。
そのひとつひとつの思い出が、彼女たちの中で刻まれているのだ。
響「嫌だ・・・・エルフナインちゃん・・・・」
響は、そっとエルフナインちゃんの手を握った。
丈「皆、そのままじっとしてて・・・・」
そこへ、また一人、駆けつける者がいた。
エルフナインと共に駆けつけ、事態を収束させた、丈の姿だった。
翼「お兄様・・・?一体何を・・・?」
丈「翼も、そのままだぞ・・・?」
翼「は、はい・・・!」
翼も、丈に言われるがまま、その場から離れないようにした。
丈「繋げよ・・・グレイプニール。癒せ・・・アゾット。」
丈は、魔法の詠唱にも似た一言を唱えると、丈の体から、銀色の鎖と無数の白い剣のようなものが展開された。
銀色の鎖は、装者や、キャロル、エルフナインの手へと巻き付き、白い剣は、円陣を囲むように地面に突き刺さる。
そこから、鎖と剣は、白い輝きを放ち、彼女たちを包んだ。
白い輝きは、皆につながれた鎖を通し、エルフナインの傷へと流れ込む。
響「ッ!エルフナインちゃんの傷が!」
エルフナインの傷が、徐々に治り始めていた。
彼女の傷は、まるで、時間が巻き戻るかのように、徐々に埋まっていった。
丈「もう少し・・・・!」
丈がそう言うと、エルフナインの傷は、完全に消え、彼女の呼吸も安定していっていた。
丈「これで、よし・・・・」
丈は、エルフナインの傷が、完治するのを見計らうと、そのまま地面へと突っ伏してしまった。
翼「お兄様・・・!?お兄様、しっかりしてください!!」
地面へと倒れた丈を、翼は、抱きとめる。
八年の年月が経っているのを、忘れているかのように、彼女は、丈を介抱した。
クリス「緊急だ!オッサン!早くヘリを回せ!」
クリスの本部への連絡により、丈はその場から救助され、都内の高度医療施設へと運び込まれる流れとなった。
かくして、この一連の事件は、丈とシンフォギア装者の活躍で、事態は収束されていった。
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