35歳社畜、女子高生に吸血鬼だと宣告される〜みなし残業で覚醒能力を使い潰していた俺、現代異能バトルの世界では最強候補らしいです〜   作:パラレル・ゲーマー

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第20話 吸血鬼、野良吸血鬼を締め落とす

「おじさん、自分が交渉する立場にあると思ってるの?」

 

 薄暗い路地裏。

 

 牙を覗かせてせせら笑う女吸血鬼に囲まれながらも、久我陽介は鞄の持ち手をしっかりと握ったまま、三人の動きを静かに観察していた。

 

 表面上は、血に飢えた同族の襲撃に怯え切った『ただの新人吸血鬼』を完璧に演じている。

 

 だが、遮光グラスの奥では、ごく微弱な出力で魔眼を稼働させていた。

 

(……まだだ。ここで『内在時間』までは使わない)

 

 もし彼女たちの目的が、本当に鞄の中の血液パックだけだというなら、かれんからの事前指示どおりに素直に渡すつもりだったからだ。

 

「交渉というか、まず冷静に話をした方がお互いのためだと思いまして。……皆さんが今欲しいのは、この鞄の中にある血液パックだけなんですよね?」

 

 久我が尋ねると、リーダー格らしきパーカー姿の女が鼻で笑った。

 

「そう言ってんじゃん。無駄な抵抗をしない、話が早いおじさんは好きだよ」

 

 その横で、オフィスカジュアル姿の女が、久我の頭の先から足元までを値踏みするように冷たい視線を這わせた。

 

「変なことしなければ、痛いことはしないから。鞄をそこに置いて、三歩下がって」

 

 久我は言葉どおりに大人しく振る舞いながら、脳内で三人の戦力を素早く分析していく。

 

(パーカー姿の女。リーダー格。距離の詰め方が一番自然だ。俺の血液パックの匂いを嗅ぎ分けたのもこいつ。口調は軽いが、視線は俺の首筋と、鞄を持った両手を交互に見ている)

 

(オフィスカジュアル姿の女。三人の中で最も警戒心が強い。俺との会話中も、常に路地の外の音や気配を監視している。おそらく感知系の能力持ちだ)

 

(そして、派手な私服姿の女。俺の退路を完全に塞ぐ位置に立っている、実質的な戦闘担当。足運びは荒いが、重心のブレなさは純粋な身体能力の高さを物語っている。俺が抵抗すれば、最初に飛びかかってくるのはこいつだ)

 

 逃げ道は、すでに完全に塞がれている。

 

(……だが、血液パックを渡すだけで済むなら渡す。再支給はできる。無駄に怪我をしてまで死守するようなものじゃない)

 

 久我のポケットの中では、すでに八咫烏アプリの『無音通報』が完了し、位置情報が送信され続けているはずだ。

 

 久我はゆっくりとしゃがみ込み、鞄を地面へ置いた。

 

「分かりました。渡します」

 

 素直すぎる対応に、三人が少しだけ意外そうな顔をした。

 

「中に、今日の病院で受け取ったばかりの一週間分が入っています。全部持っていって構いません。……その代わり、これで終わりにしてください」

 

「うんうん。自分の立場をわきまえてて偉いじゃん、おじさん」

 

 パーカー女が満足そうに頷く。

 

 久我は鞄の持ち手から完全に手を離し、言われたとおりにゆっくりと三歩、後ろへ下がった。

 

 ここでは変に格好をつける必要はない。

 

 三十五歳の社会人として、ただルールとマニュアルどおりに従うだけだ。

 

       *

 

 オフィスカジュアル姿の女が、警戒を解いて地面の鞄へと近づこうとした。

 

 その瞬間。

 

 久我は反射的に、自分へ近づく相手の挙動を魔眼で『追って』しまった。

 

 ほんの一瞬。

 

 瞬きをするよりも短い時間。

 

 遮光グラスの奥で、久我の瞳に赤黒い光が走った。

 

 ピタリと、オフィスカジュアル女の足が止まった。

 

「……待って」

 

「何?」

 

 パーカー女が怪訝な顔をする。

 

「今、このおじさんの目から……何か出なかった?」

 

 久我の心臓が跳ねた。

 

「目?」

 

「『魔眼』の気配。ほんの一瞬だけど」

 

 その言葉に、残り二人も一斉に久我を睨みつけた。

 

「はあ? こいつ、ただの成り立てなんでしょ?」

 

 派手な女が眉をひそめる。

 

「そのはずなんだけど……一瞬だけ、間違いなく感じたのよ。なんでこんな若い吸血鬼が、もう魔眼を開眼してるのよ」

 

 久我は心臓の鼓動をどうにか平常値に保ちながら、できるだけ無表情を装った。

 

「……気のせいじゃないですか? 最近、会社の残業で寝不足なので、目がひどく充血しているだけかもしれません」

 

「充血で魔力は出ないでしょ」

 

 三人の警戒レベルが、明らかに一段階跳ね上がった。

 

 しかし、オフィスカジュアル女は久我の気配をもう一度探り、不思議そうに首を傾げた。

 

「……でも、すごく弱い」

 

 久我の現在の表面的な能力出力は、ただの新人吸血鬼の範囲内に収まっている。

 

 魔眼の出力も日常的に極限まで抑え込んでいるため、本当の『底』の深さまでは分からないはずだ。

 

 女は納得しきれない様子で久我から視線を外した。

 

「……魔眼を持ってるとしても、まだ開いたばかりの使い物にならないレベルか。珍しいけど、それだけね」

 

 久我は心の中で安堵の息を吐いた。

 

(魔眼を持っていること自体は、吸血鬼の世界でもあり得ない話じゃないらしい。助かった)

 

 だが、その安堵も束の間。

 

 今度は、派手な私服姿の女が久我のすぐ近くを通り、地面の鞄を拾い上げようとした。

 

 久我との距離が、一メートル以内まで縮まる。

 

 その瞬間、女の動きがピタリと止まった。

 

「……何?」

 

「今度は何よ。早く拾いなよ」

 

 パーカー女が急かすが、派手な女は鞄を拾わず、久我の顔をじっと見つめた。

 

 その顔から、先ほどまでの余裕と嘲笑が、一瞬だけ完全に消え去っていた。

 

「……このおじさんから、なんか変な匂いがした」

 

「変な匂い? 血液パックの匂いじゃなくて?」

 

「違う。血じゃない」

 

 女は、犬のように鼻を小さくヒクつかせた。

 

「吸血鬼街の奥の方にいる、高位吸血鬼みたいな……いや、それよりもっと古い、なんだかよく分からない気配の……」

 

 久我の全身から、嫌な汗が噴き出した。

 

『吸血神の残響』。

 

 普段は魂の奥底に深く沈んでいるはずのそれが、先ほど魔眼を一瞬だけ不用意に使ったことで、わずかに表へと漏れ出してしまったのだ。

 

(……まずい。こいつら、思ったより鼻が利くぞ)

 

 しかし、女はすぐにブンブンと首を横に振り、自分の感覚を否定した。

 

「……いや、気のせいか。こんな弱い成り立ての吸血鬼のおっさんが、そんなヤバい気配を持ってるわけないよね」

 

「さっきからあんたたち、気にしすぎだっての。どうでもいいから、早くその鞄持って路地を出ようよ」

 

 パーカー女に急かされ、派手な女はようやく鞄を拾い上げた。

 

 ここでは、久我の致命的な秘密が完全に露見することはなかった。

 

 ただし、久我の中には新しい警戒が強烈に刻み込まれた。

 

(……同族の中には、俺の中の『異常性』を匂いだけで嗅ぎ取れる奴がいる)

 

       *

 

 パーカー女が鞄から保冷バッグを取り出し、ファスナーを乱暴に開けた。

 

 瞬間、路地裏に濃密な医療用血液製剤の匂いが漏れ出す。

 

 三人の女吸血鬼の瞳が、狂気のように輝いた。

 

「うわっ、マジで一週間分ある!」

 

「最高じゃん!」

 

「ねえ、これ今すぐ一本飲もうよ。最近まともな血、全然飲んでなくて限界なんだけど」

 

 三人は一気に警戒を解き、血液パウチに群がった。

 

「見てこれ。ちゃんとした正規品だよ」

 

「検査済み、調整済み、しかも今日届いたばっかりの新しいやつ!」

 

「やった。今夜はアジトで一気飲みしようぜ!」

 

 久我はその光景を見て、少しだけ引いていた。

 

(……盗品を手にして、ここまで無邪気に喜べるのか)

 

 だが同時に、三人が本当に限界まで『飢えている』ことも分かった。

 

 目の下に張り付いた深い隈。

 

 乾き切った唇。

 

 魔眼で見える、異常に速く不安定な心拍。

 

 血液パックを見た瞬間の、獣のような瞳孔の拡大。

 

 彼女たちは、単なる小遣い稼ぎの強盗ではない。

 

 本当に、血に困窮して命の危機に瀕しているのだ。

 

 だからといって、他人の支給品を暴力で奪うことが許される理由にはならない。

 

 久我は、三人が完全に血液パックへ意識を向けた隙を突き、音を立てずに少しずつ距離を取った。

 

(八咫烏が到着するまで、相手をその場に留めるよう指示されている。……でも、俺自身が彼女たちのすぐ近くに残り続ける必要はない)

 

 位置情報はすでにアプリで送信し続けている。

 

 この路地を抜けて大通りへ戻れれば、一般人の多い場所へ逃げ込むことができる。

 

「……それでは。俺はもう、行ってもいいですかね?」

 

 久我の言葉に、パーカー女が血液パックを抱えたまま振り返った。

 

「うん?」

 

「約束どおり、血液パックは渡しました。皆さんの目的は達成したわけですから」

 

「まあ、そうね」

 

 オフィスカジュアル女が答える。

 

「最初から大人しくしてたし、今日は逃がしてあげてもいいんじゃない?」

 

 派手な女が鼻で笑う。

 

「ありがとうございます。それでは」

 

 久我が踵を返して路地の出口へ向かおうとした、その時だった。

 

「あ、待って」

 

 パーカー女の甘ったるい声に、久我の足がピタリと止まった。

 

「あんたさ。……今後も、定期的にうちらに血液パックを提供していく気、ない?」

 

 久我はゆっくりと振り返った。

 

「……今後?」

 

「毎回じゃなくていいわよ。月に一度とかでいいから」

 

 パーカー女は、さも素晴らしい提案をするかのように笑った。

 

「病院からもらった一週間分のうち、二、三日分を私たちに回すだけ。簡単でしょ?」

 

「ほら、困ってる同胞を助けるためのボランティアだと思ってさ」

 

 久我は相手の顔を冷ややかに見つめた。

 

 彼女たちは、これを一度限りの強盗で終わらせるつもりはないのだ。

 

 抵抗しない弱い新人だと判断した久我を、今後も継続的な『血液の供給源《カモ》』として搾取し続けるつもりなのだ。

 

 ここで曖昧な返事をして逃げれば、後日また病院の前で待ち伏せされる。

 

 最悪の場合、澪や他の新人吸血鬼まで標的にされるかもしれない。

 

 久我は、三十五歳の社会人として、極めて穏やかな、しかし決して譲らない口調で断言した。

 

「お断りします」

 

 パーカー女の顔から、笑顔がスッと消えた。

 

「あら。即答?」

 

「皆さんが血に困っているという事情は理解しました。でも、俺に支給された血液を、定期的に皆さんへ上納するような不当な約束はできません」

 

「……自分だけ安全な場所でぬくぬくと血をもらっておいて、そういうこと言うんだ?」

 

「俺に言われても困ります。事情があるなら、俺ではなく、日本吸血鬼協会か八咫烏の窓口へ正式に相談してください」

 

「それができないから、こんなことしてんでしょ!」

 

 オフィスカジュアル女が声を荒らげた。

 

「だからといって、立場の弱い別の新人吸血鬼から、暴力を背景に奪っていい理由にはならないでしょう」

 

 路地裏の空気が、一気に張り詰めた。

 

 久我は魔眼の出力を抑えたまま、三人の重心のブレを観察した。

 

(一人は苛立っている。一人は血液パックを持って早く逃げたがっている。もう一人は、俺をここで口封じすべきか迷っている)

 

 だが、やがてパーカー女が面倒くさそうに肩をすくめた。

 

「まあいいや。今日はちゃんと大人しく渡したし」

 

 久我は少しだけ安堵した。

 

「あんたの家も、通ってる病院のルートも分かったし。また後日、気が変わった頃にゆっくり話そうね、おじさん」

 

「二度と来ないでください」

 

「冷たいなぁ。同じ吸血鬼の同胞なのに」

 

 パーカー女は鼻で笑い、鞄を持って背を向けた。

 

「じゃあ、私たちはこれで――」

 

       *

 

 その瞬間。

 

 路地裏の空気が、見えない糸でピンと張り詰められたように変わった。

 

 三人の女吸血鬼が、同時にピタリと動きを止める。

 

 人間には決して聞こえないほど、微小な金属音。

 

 遠くの闇から近づいてくる、鞘と刀の擦れる音。

 

「……ちっ」

 

 オフィスカジュアル女が、忌々しげに舌打ちした。

 

「カラスが来たわ」

 

「早くない!?」

 

 パーカー女が焦る。

 

「このおじさん……まさか、最初の段階で通報してたの!?」

 

 三人が、殺意を込めて久我を睨みつけた。

 

「防犯指導で、違和感を覚えた段階で通報するようにと厳重に言われていたもので」

 

「それを先に言いなさいよ!」

 

「言ったら通報の意味がないでしょう」

 

 路地の入り口から、足音を忍ばせることなく、一人の少年が歩いてきた。

 

 御影坂高校の制服ではなく、動きやすさを重視した黒い私服姿。

 

 その右手には、すでに鞘から抜かれた訓練刀が握られている。

 

 本来は刃のない刀身だが、その表面には剣持の異能による鋭い斬撃が薄くまとわりつき、鈍い光を放っていた。

 

「よう。間に合ったな、陽介さん」

 

「剣持さん。……はい、無事です。でも、できればもう少し穏便な形で到着してほしかったですが」

 

「三対一で囲まれてカツアゲされてる奴に、穏便も何もないだろ」

 

 剣持は軽い口調で返しながら、三人へ向けて刀の切っ先をピタリと向けた。

 

 その剣先には、一切のブレがない。

 

「はいはい。血液パックをそいつに返して、さっさと路地から出な」

 

「……嫌だって言ったら?」

 

 パーカー女が牙を剥く。

 

「今なら血液製剤強奪と不法滞在だけで済む。余計な抵抗まで重ねたくなきゃ、素直に返して大人しく引け」

 

「えっ、捕まえなくていいんですか?」

 

 久我が驚く。

 

「まずは被害者の安全確保が最優先だ。それに、追跡用の匂いのマーキングはもう済んでる」

 

 これは、本当に逃がすつもりはない。

 

 戦闘による市街地への被害を避け、八咫烏側の増援や追跡班へ繋ぐまでの時間を稼ぐための最後通告だ。

 

 しかし、血に飢えた三人は、その警告を額面どおりには受け取らなかった。

 

「馬鹿じゃないの?」

 

 派手な女が嘲笑う。

 

「こっちは三人よ」

 

 オフィスカジュアル女が牙を剥く。

 

「ガキが刀を持ってるからって調子に乗らないでよね。三対一で勝てるつもり?」

 

 剣持が、ふっと笑った。

 

「……いや?」

 

 刀をわずかに持ち上げ、切っ先の角度を変える。

 

「三対『二』だよ」

 

 三人が一瞬、その言葉の意味を理解できずに動きを止めた。

 

 剣持が叫ぶ。

 

「合わせろ、陽介さん!」

 

「おう!」

 

 剣持の声と完全に同時だった。

 

 久我は、己の魔眼に宿る『内在時間』のスイッチを、短く、鋭く起動した。

 

 ズン、と世界が重く、遅くなる。

 

 狙うのは、自分から最も近い位置に立っている、派手な私服姿の女。

 

 先ほど久我の中の高位吸血鬼の気配を嗅ぎ取りかけた、最も危険な戦闘担当だ。

 

 女の意識は、路地の入り口に現れた剣持に完全に向いていた。

 

 血液パックを大人しく渡した久我のことなど、ただの臆病な素人の新人としか見ていない。

 

 久我は、鳥カゴで斎藤が見せた『最初の踏み込み』を脳内でトレースした。

 

 肩から動かない。

 

 視線で攻撃を予告しない。

 

 足裏でコンクリートの路面を強く掴み、腰の回転から一気に間合いを詰める。

 

 構えは、総合格闘技《MMA》のタックル。

 

 無論、久我は本格的な格闘家ではない。

 

 斎藤との訓練後、自宅のPCで初心者向けのMMA映像やタックルの基礎講座を食い入るように何本も見ていただけの、ただの素人だ。

 

 完全な模倣などできるはずがない。

 

 しかし、魔眼の規格外の情報処理能力が、久我の身体の動きのズレをその場で修正していく。

 

 久我は深く腰を落とす。

 

 吸血鬼の脚力で、女の懐へ一気に、爆発的に踏み込んだ。

 

「なっ――」

 

 女が驚愕に目を見開くよりも早く、久我の肩が女の腹部のど真ん中へ強烈に突き刺さった。

 

 同時に、両腕で女の太腿をがっちりと抱え込む。

 

「ぐっ……!」

 

 そのまま前方へと全体重を乗せて押し込む。

 

 女の背中が、路地のコンクリートの壁へ凄まじい勢いで叩きつけられた。

 

「この、ただの素人が……!」

 

 派手な女が激痛に顔を歪めながら、久我の背中へ向けて、凶悪な爪を立てた肘を振り下ろそうとする。

 

「忘れてましたね」

 

 久我は冷たく告げた。

 

「三対一じゃありません」

 

 久我は女の肘の軌道を魔眼で読み切り、身体をさらに密着させて、振り下ろすための『空間』そのものを潰した。

 

 その間に、入り口側の剣持が、残り二人の女吸血鬼へと猛スピードで斬り込んでいった。

 

       *

 

「離せっ!」

 

 派手な女が久我の肩を掴み、強引に引き剥がそうとする。

 

 純粋な筋力は、デスクワーク上がりの久我よりも、野生で生き抜いてきた相手の女の方が遥かに上だった。

 

 久我の身体が、いとも簡単に宙へ浮きかける。

 

「私がこいつを相手にする! あんたたちは先に、その刀持ちのガキを仕留めな!」

 

「任せた!」

 

「さっさと離しな、おっさん!」

 

 女が久我を掴んだまま、強引に剣持たちから距離を取ろうとする。

 

 久我は逆らわず、むしろ女の力に身を任せて、彼女を路地のさらに奥へと『誘導』した。

 

 剣持と二人で、相手を一人ずつ確実に仕留めるための、意図的な戦場の分断だ。

 

 剣持は、その意図を即座に理解した。

 

「そっちは任せたぞ!」

 

「俺、まだ実戦経験ゼロの新人なんですけど!」

 

「知ってる!」

 

「知ってて任せるんですか!」

 

「一人くらい自力で持たせろ!」

 

 その会話の間にも、二人の女吸血鬼が剣持へ左右から襲いかかる。

 

 剣持は刀を横に構え、二人を同時に引き受けた。

 

 路地の最奥。

 

 久我と派手な女が対峙した。

 

 女は鋭い爪を十本とも完全に伸ばし、唇から長い牙を覗かせていた。

 

「調子に乗るなよ、成り立ての分際で」

 

「血液パックを渡した時点で素直に帰ってくれれば、こうはならなかったんですけどね」

 

「八咫烏に尻尾振ってる飼い犬が、偉そうに」

 

「飼い犬でも、病院で安全な血をもらって、人を襲わずに普通に生活できる方が何倍もましですよ」

 

 女が地面を蹴った。

 

 速い。

 

 一瞬で久我の正面へと到達する。

 

 右の爪が、久我の顔面を真っ直ぐに狙う。

 

 久我は『内在時間』を短く発動させた。

 

 女の肩の筋肉の収縮。

 

 肘の角度。

 

 手首の返し。

 

 爪が空気を裂く軌道。

 

 すべてが分解され、コマ送りのように見える。

 

 久我は最小限の動きで顔を引き、爪を紙一重で避ける。

 

 続く、左手による死角からの掴み。

 

 それも予測して、手首を逸らす。

 

 しかし。

 

 三手目の、下方からの鋭い膝蹴りまでは、素人の身体操作では完全に避けきれなかった。

 

 ドゴォッ!

 

 腹部へ強烈な膝が入り、久我の身体が後方へ吹き飛ぶ。

 

「ぐっ……!」

 

 ゴミ捨て場の壁に肩を強く打ちつける。

 

「ほら。やっぱり、ただの口先だけの弱い素人じゃん」

 

 女が冷酷に笑う。

 

 久我は腹部の激痛に顔をしかめた。

 

 だが、意識は驚くほど冷静だった。

 

(……速い。身体能力は、低出力だった時の斎藤さんよりも確実に上かもしれない)

 

(でも、動きが『荒い』)

 

 鳥カゴの斎藤は、すべての動作に完璧な『次の手』とフェイントを隠していた。

 

 だが、目の前のこの吸血鬼は速く、力強いが、ただ怒りと飢えの勢いに任せて正面から殴りかかってきているだけだ。

 

 フェイントが浅い。

 

 重心移動も無駄に大きい。

 

(斎藤さんの洗練された理不尽さに比べれば、こいつの動きはずっと分かりやすい)

 

 女が再び襲いかかってくる。

 

 久我は、魔眼の出力をもう一段階上げた。

 

 視界の質が完全に変化する。

 

 女の皮膚の下を流れる血液の熱量。

 

 収縮する筋肉の連動。

 

 踏み込み直前に急上昇する心拍。

 

 爪を振るう前に一瞬だけ硬直する前腕。

 

 次の動作へ繋げるための腰の捻り。

 

 すべてが、手に取るように見える。

 

 ただし、その代償として情報量も爆発的に増える。

 

 頭の奥に鈍い痛みが走り、喉が焼けつくように乾いた。

 

 久我は『常時発動』はしない。

 

 相手の攻撃が始まる直前だけ、内在時間をカメラのシャッターのように短く起動する。

 

 カチッ。

 

 右の爪。

 

 半歩だけ外へ逃げる。

 

 カチッ。

 

 左の掴み。

 

 手首を軽く逸らして受け流す。

 

 カチッ。

 

 大振りの膝蹴り。

 

 腰を引いて完全に空振りさせる。

 

 女の渾身の連続攻撃が、次々と空を切る。

 

「……何……?」

 

 女の顔に、初めて焦りの色が浮かんだ。

 

 久我は反撃に転じる。

 

 だが、力任せの拳で殴るのではない。

 

 女の伸び切った腕を掴む。

 

 肘の関節の向きに沿って軽く押し流し、相手自身の突進の勢いを利用して体勢を崩す。

 

「こいつ、なんで……!」

 

 女は力任せに腕を振りほどき、さらに怒りに任せて踏み込んでくる。

 

 久我はもう一度、斎藤の動きを思い出した。

 

(相手の攻撃を完全に止めない。流れを少しだけ変える)

 

 女の猛烈な突進に対し、久我は横へ逃げるのではなく、斜め前へ踏み込んだ。

 

 肩を、女の胸元へ当てる。

 

 そして女の進行方向を、少しだけ横の『壁側』へと逸らした。

 

 ドンッ、と鈍い音がして、女がコンクリートの壁へ激突する。

 

「くそっ!」

 

 女が振り向きざまに、やけくそのように爪を振るう。

 

 久我のスーツの肩口が裂け、皮膚にも浅い傷が入った。

 

 血が滲む。

 

 その血の匂いを嗅いだ瞬間、女の瞳が大きく見開かれた。

 

「……何、この血」

 

 久我の血には、あの『吸血神の残響』がわずかに混じっている。

 

 女は本能のレベルで、それが今まで自分が嗅いできたどの吸血鬼の血とも違う、異質なものであると察知した。

 

「さっきの気配、勘違いじゃない……?」

 

 女の飢餓と欲望が、恐怖を塗り潰して一気に高まる。

 

「お前、一体何者なのよ!」

 

「三十五歳、ただのしがない会社員です」

 

「そういうこと聞いてるんじゃない!」

 

 女が完全に理性を失い、久我の首筋の動脈へと牙を向けて一直線に飛びかかってきた。

 

 女の純粋な速度が、先ほどまでよりもさらに跳ね上がる。

 

 だが、狙いが『首筋への噛みつき』の一つだけになったことで、逆に久我の魔眼には、その軌道がこれ以上なく読みやすくなっていた。

 

 久我は、内在時間を一瞬だけ、限界まで深く入れた。

 

 女の剥き出しの牙。

 

 顎の角度。

 

 首へ伸びる両腕。

 

 踏み込んだ右足。

 

 浮いた左足。

 

 久我の主観時間が極限まで引き延ばされる。

 

(……右足だけで踏ん張っている。ここで軸を崩せば、完全に倒せる)

 

 久我は、正面から下がらなかった。

 

 女の右腕を外側へ払い、身体を横へ滑らせて、一瞬で女の背後へと回る。

 

 そのまま、腰へ腕を回す。

 

「離せ!」

 

 久我は足をかけ、女の重心を後ろへ崩した。

 

 二人まとめて、路地の汚れた地面へと倒れ込む。

 

 女は即座に反転して、久我を振り払おうとする。

 

 純粋な筋力なら、久我の腕力でこの暴れる吸血鬼を押さえ込み続けることは不可能だ。

 

 だから久我は、力比べはしない。

 

 斎藤との訓練後、自宅で何度も見たMMAの解説映像の記憶。

 

 背後から、相手の両足を自分の両足で完全にフックして固定する。

 

 片腕を相手の首へ回し、もう一方の手で自分の上腕を掴む。

 

 相手の背中へ完全に密着する。

 

 完全なバックマウントからの『裸絞め《リアネイキッドチョーク》』に近い形。

 

「こんな素人の絞め技で、吸血鬼を殺せると思ってんの……!」

 

 女が嘲笑う。

 

 だが、久我の魔眼は、女の首の内部を透かして見ていた。

 

 血流。

 

 頸動脈の位置。

 

 そして、脳へと上がる血液の経路。

 

(吸血鬼であっても、意識を維持するためには脳への血流が必要だ。完全に殺す必要はない。血流だけを一時的に遮断する)

 

 久我は腕の位置を、数ミリだけ微調整した。

 

 女の首の気管そのものを力で潰すのではなく、左右の頸動脈だけを正確に圧迫する。

 

 女の顔から、一瞬で余裕が消し飛んだ。

 

「ちょっ……待っ……!」

 

 暴れる女の爪が、久我の腕を深く引っ掻く。

 

 血が流れ出る。

 

 それでも、久我は絶対に腕を離さなかった。

 

 女は吸血鬼の圧倒的な身体能力で、久我ごと強引に立ち上がろうとする。

 

 久我は内在時間を断続的に使い、相手が力を入れる方向へ合わせて、自分の体勢をミリ単位で調整し続けた。

 

 女が右へ倒れようとすれば、右足をより強く固定する。

 

 左へ回転しようとすれば、腰をさらに密着させて回転軸を潰す。

 

 真正面から力で押さえつけるのではなく、相手が動こうとする先をすべて『先読み』して潰していく。

 

「あんた……成り立ての素人でしょ……!?」

 

「そうですよ」

 

「なんで、こんなに……!」

 

「鳥カゴで、斎藤さんに何十回も一方的に一本を取られて、動き方を叩き込まれたので」

 

「誰よ、それ……!」

 

 女の抵抗が、急激に弱くなっていく。

 

 呼吸ができないからではない。

 

 脳へ流れる血液が足りなくなっているのだ。

 

 女の瞳の赤い光が薄れ、やがて白目を剥く。

 

 爪を立てていた手が、だらりと地面へ落ちた。

 

 完全に意識を失った。

 

 久我はすぐに絞めていた腕を緩め、女の呼吸と血流を魔眼で確認した。

 

 生きている。

 

 脳への血流低下による、一時的な失神だ。

 

「……ふう」

 

 久我は荒い息を吐きながら、女の背中から離れて立ち上がった。

 

 裂けたスーツと、血まみれの自分の腕を見る。

 

「……斎藤さんの影響で、毎晩動画サイトでMMAの解説動画を見ておいて、本当によかった」

 

 ただし、久我自身も限界に近かった。

 

 魔眼と内在時間の連続使用で、頭痛がガンガンと鳴り響いている。

 

 喉は焼けつくように乾き、視界の端には赤いノイズがチカチカと明滅していた。

 

 勝利はしたが、決して余裕の圧勝ではない。

 

 泥臭い、ぎりぎりの生存競争だった。

 

       *

 

 久我は、失神した女の両手を、自分の外したネクタイでしっかりと縛り上げた。

 

 そこへ、路地の入り口の方から足音が近づいてきた。

 

 剣持が、血糊のついた訓練刀を肩に担いで、悠然と歩いてくる。

 

「おー。そっちも終わってたか」

 

「何とか。剣持さんの方は?」

 

「仕留めた」

 

 久我は、剣持の背後、路地の向こうを見た。

 

 そこに、オフィスカジュアル姿とパーカー姿の女吸血鬼の胴体が、二つ転がっている。

 

 そして、少し離れた場所に、二つの『首』が転がっていた。

 

 久我の表情が、完全に凍りついた。

 

「……首、落としたんですか?」

 

「ああ。二人同時に厄介な連携で飛びかかってきたからな。手っ取り早く動きを止めた」

 

「仕留めたって、それ殺したんですか!?」

 

「いや、吸血鬼だからこの程度じゃ死なねえよ」

 

「この程度」

 

 剣持は平然とした顔で、訓練刀にまとわせていた斬撃を解除し、刀身についた血を拭った。

 

「頭と胴体を物理的に離せば、しばらくは再生もできずに動けなくなる。吸血鬼を確実に制圧して無力化する時の、一番の基本だろ」

 

「その基本、だいぶ物騒でバイオレンスすぎるんですが」

 

「心臓を潰したくらいじゃすぐに再生してくる奴もいるし、半端に手足を斬り落としても、血を撒き散らしながらしぶとく襲ってくるからな。首を落とすのが一番安全なんだよ」

 

「俺、さっき締め技で血管を圧迫して失神させたんですけど」

 

「マジ? そっちの方がよっぽど器用だな」

 

 剣持は、久我が倒した女の首元を確認した。

 

「ちゃんと生きてる。マジで素手で絞め落としたのか?」

 

「魔眼で首の血流を見ながら。吸血鬼でも、脳への血流を止めれば気絶するみたいですね」

 

「初見の同族戦で、そこまで冷静にやったのか。上出来じゃねえか」

 

 久我は改めて、路地に転がる首のない二つの胴体を見た。

 

「……あの二人、本当に大丈夫なんですよね?」

 

「日光の直射に長時間当てたり、心臓と頭を同時に完全に潰したりしなきゃ、そう簡単には死なねえよ。八咫烏の留置施設に運んで、首を専用の処置で繋いでもらえば、すぐに元へ戻る」

 

「留置所で首を繋ぐというパワーワード、生まれて初めて聞きました」

 

「まあ、今後の余罪の捜査次第だな。最近の配送便襲撃にも関わってたら、しばらくはシャバには出てこられねえだろうな」

 

「……日光浴させれば、死ぬんですか?」

 

「死ぬな」

 

「さらっと怖いこと言わないでください」

 

「今回は『捕獲命令』だ。処分命令じゃないから、ちゃんと生かして連れて帰るさ」

 

 久我は、剣持にとって『首を落とす』という行為が、殺人ではなく単なる『吸血鬼相手の制圧手段』に過ぎないことを理解した。

 

 人間の常識と、人外戦闘の常識の決定的な違い。

 

 この世界では、首が飛んでも『生け捕り』に分類されるのだ。

 

       *

 

 剣持が、地面に落ちていた久我の保冷バッグを拾い上げた。

 

 中を確認する。

 

 パウチはすべて無事だった。

 

「一応、全部あるな。破損もなしだ」

 

「それ、戻してもらっても大丈夫なんですか? 強盗犯が触ってますけど」

 

「外装だけなら、センターで消毒して再検査だな。封が破られていなければ、たぶんそのうち返却される」

 

「そのまま今日、自宅へ持って帰れるわけではないんですね」

 

「事件の証拠品だからな」

 

「ということは、今日の俺の分の血液は?」

 

「病院から、面倒な手続きを踏んで再支給だな」

 

「また書類ですか……」

 

「当然」

 

 十分後、八咫烏の回収班が路地へ到着した。

 

 黒い特殊な搬送ケースと拘束具を持った職員たちが、手際よく作業を進めていく。

 

 二人分の首と胴体は、それぞれ特殊な再生抑制布で包まれ、ケースへ収められた。

 

 久我が倒した女には、吸血鬼用の厳重な魔力拘束具が装着される。

 

 回収班員が、事務的な口調で状況確認を読み上げた。

 

「捕獲対象三名。生存確認。うち二名は『頸部切断状態』、一名は意識消失状態。血液製剤七パックを証拠品として回収します」

 

「……頸部切断状態が、ただの軽い負傷区分みたいに事務的に読み上げられてる……」

 

「吸血鬼案件じゃよくあることだ」

 

「俺は今後、この異常な光景に慣れていかないといけないんですか?」

 

「そのうち慣れるさ」

 

 回収作業が進む中、剣持が久我の裂けたスーツの肩口と、腕の傷を確認した。

 

「噛まれてないな?」

 

「爪で少し切られただけです」

 

「ならいい。血を吸われてたら面倒なことになってた。相手が一時的に強化されて暴走する可能性があるからな」

 

「俺の血なんて、ただの三十五歳のおっさんの血ですよ。強化される要素なんてないでしょう」

 

「……そうか?」

 

 剣持が一瞬、怪訝そうに久我を見た。

 

 先ほど女吸血鬼が感じた『異常な気配』を、剣持の研ぎ澄まされた感覚もわずかに察知したのかもしれない。

 

 だが、剣持はそれ以上深くは追及しなかった。

 

「まあいい。帰ったら念のため、センターで感染症の検査を受けろよ」

 

「はい」

 

 剣持は、搬送車に積み込まれていく女たちを見やりながら尋ねた。

 

「どうだった。初めての同族戦は」

 

「速かったです。純粋な身体能力も、俺より強かった。ただ……」

 

「ただ?」

 

「鳥カゴの斎藤さんよりは、ずっと動きが分かりやすかったです」

 

 剣持が愉快そうに笑った。

 

「そりゃそうだ。斎藤さんは身体能力じゃなく、『技術』と『経験』で人を倒す専門家だからな」

 

「目の前のあの人は速かったけど、動く前に全部、身体のどこかへ兆候が出ていました。肩とか、腰の捻りとか、足裏の踏み込みとか」

 

「鳥カゴでボロ負けした成果が、ちゃんと出たな」

 

「何十回も一方的に一本を取られた意味はあったみたいです」

 

「それで一人、首も手足も落とさず生け捕りか。初戦としては十分すぎる戦果だ」

 

 久我は、失神した女が車へ運ばれていくのを見つめた。

 

 勝ったという実感よりも、まだ手足に微かな震えが残っている。

 

 もし魔眼の読みを一つでも間違えていたら、あの鋭い牙が自分の首へ届いていたかもしれない。

 

 訓練とは違う。

 

 本当に死ぬ可能性があった。

 

 しかし、それでも自分は動けた。

 

 一秒長く相手を見た。

 

 一手先ではなく、その次の展開まで考えた。

 

 そして、最後まで生き残った。

 

「血液パックを受け取りに行っただけだったんですけどね、今日は」

 

「吸血鬼の生活ってのは、たまにこういう面倒なことがあるんだよ」

 

「たまにであってほしいですよ、本当に」

 

「次からは、もっと早くバッグを渡して逃げろよ」

 

「今回は、言われたとおりにすぐ渡しましたよ」

 

「じゃあ、相手が悪かったな」

 

 久我は大きなため息を吐いた。

 

「一度素直に渡した相手に、『今後も定期的に上納しろ』なんて言われるとは思いませんでしたよ」

 

「新人相手のカツアゲじゃ、よくある手口だ。最初に一回大人しく渡すと、『次も脅せば取れるカモ』だと思われるからな」

 

「防犯講習で、そこまで詳しく教えてほしかったですね」

 

「次から、新人向けの講習資料にそのパターンが追加されるかもな」

 

「俺の被害事例が、教材のケーススタディになるんですか……」

 

 久我は傷ついた腕を軽く押さえながら、搬送車を見送った。

 

 彼女たちは強盗を働いた犯罪者だ。

 

 しかし同時に、正規の血液供給ネットワークから弾かれ、飢餓に苦しんでいたことも事実だ。

 

 事情があることと、犯罪が許されることは別。

 

 その処遇の判断は、これから八咫烏と吸血鬼協会が法に則って行う。

 

 久我の役目は、襲われた時に生き残り、相手を止めること。

 

 それだけだ。

 

(……斎藤さんに教えられた『一秒』が、初めて本物の戦いで役に立った)

 

(世界を止めることはできなくても、相手を一人止めて、生き残ることはできた)

 

 こうして久我陽介は、初めての同族戦で野良吸血鬼を一人締め落とし、吸血鬼同士の戦いにおいては『首が落ちても生け捕りに分類される』という、できれば一生知りたくなかった新たな常識を学んだのだった。

 




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