BW素晴らしきイッシュ   作:もののふ教

46 / 46
第47話 交わらない正しさ

噴水のそばまで来ると、緑の髪の青年は立ち止まった。

 

夕方のヒウンシティは、昼の喧騒をまだ引きずっている。人の波は少しだけ薄くなっていたが、空気の中には、さっきの広場で残ったざらつきがまだ混じっていた。

 

青年は、四人の顔より先にポケモンたちへ意識を向けた。

 

ベルの腕の中のムンナ。

 

シンの足元に寄るフシデ。

 

シンの前で胸を張るミジュマル。

 

チェレンの隣で鼻を鳴らすポカブ。

 

トウヤの肩の近くで静かに周囲を見ているツタージャ。

 

しばらくの沈黙のあと、青年は小さく息をついた。

 

「……そうか」

 

静かな声だった。

 

「キミたちの ポケモンの声が 聞こえる」

 

ベルがムンナを抱く腕に、わずかに力を込める。

 

チェレンは警戒を解かないまま、目を細めた。

 

シンは、青年が自分たちではなく、最初からポケモンのほうを見ていたことを覚える。

 

「みんな 警戒している」

 

青年は続けた。

 

「さっきの人たちを 嫌がっているし、まだ落ち着いてもいない」

 

そこで一度、言葉を切る。

 

「でも…… キミたちからは 離れたくないとも いっている」

 

ミジュマルの耳がぴくりと動いた。

 

フシデの触角も、小さく揺れる。

 

「怖いのに、離れないんだ」

 

ベルが小さく呟く。

 

青年は頷いた。

 

「うん。怖いのに そばにいたい。頼りたい。いっしょにいたい。……そういう声だ」

 

トウヤが、少しだけ眉を上げた。

 

「いきなりそこまで分かるんだな」

 

「ボクには そう聞こえる」

 

青年は淡々と言う。

 

「だから、分かる。キミたちは 彼らとは違う」

 

「彼ら?」

 

チェレンが問う。

 

「さっき広場にいた人たちだよ」

 

青年はようやく、四人のほうへ目を向けた。

 

「ボクの名前は N」

 

短い名乗りだった。

 

それだけなのに、妙に耳に残る。

 

「N……」

 

ベルが小さく繰り返す。

 

「あなた、あの人たちのことを知ってるの?」

 

「知っている、というより…… 似た声を 何度も聞いてきた」

 

「似た声?」

 

「ポケモンを思う言葉を口にしながら、ポケモンの声を聞いていない人たちの声」

 

その言い方には責める響きよりも、はっきりした失望があった。

 

「それは違う」

 

Nは静かに言う。

 

「ポケモンのためだと いうのなら、まずポケモンの声を 聞かなければならない」

 

チェレンは腕を組んだまま、Nを見据えた。

 

「君は、何者なんだ」

 

「難しい質問だね……」

 

「ごまかさないでくれ」

 

「ごまかしてはいないよ」

 

Nは少し考えるように目を伏せる。

 

「ボクは、ポケモンの声を聞く。そして、人とポケモンが どうあるべきかを考えている」

 

「答えになってないな」

 

トウヤが言う。

 

けれど、声音は突き放してはいなかった。

 

「そうかもしれない」

 

Nはあっさり認める。

 

「でも、今のボクを 一番正しく言うなら それだ」

 

シンはその返しを聞きながら、少しだけ納得した。

 

上手く説明することより、自分の中の本当を優先する人だ。

 

たぶん、嘘はついていない。

 

分かりやすくもないけれど。

 

「……で」

 

トウヤが肩をすくめる。

 

「そのNってやつが、なんでわざわざ俺たちに声かけたんだ?」

 

Nは広場の向こう、人通りが少しずつ細っていく通りを見た。

 

「彼らは また動く」

 

ベルの肩がこわばる。

 

「今日の夜に」

 

「分かるの?」

 

「さっきの場で 終わる声じゃなかった」

 

Nの言葉は、相変わらず独特だった。

 

けれど、シンには分かる気がした。

 

あの連中は、広場を離れる時に終わった顔をしていなかった。

 

むしろ、次の場所へ移る顔をしていた。

 

「どこだと思う?」

 

シンが訊く。

 

Nの視線が少しだけこちらへ向く。

 

「人気が少なくて、音が紛れる場所」

 

「港か」

 

チェレンが即座に言う。

 

「倉庫街なら、人目も減る」

 

「たぶん そこだ」

 

Nは頷いた。

 

「この街のポケモンたちが、あの方向を 嫌がっている」

 

ベルがムンナを見下ろす。

 

ムンナも、不安そうにその方角を見ていた。

 

怖がっている。

 

でも、目を逸らしてはいない。

 

「行くの?」

 

ベルの声は小さい。

 

それでも、昨日までの不安だけの声じゃなかった。

 

「行く」

 

トウヤが先に答えた。

 

「でも、いきなりぶつからない」

 

「当然だ」

 

チェレンも頷く。

 

「数も狙いも分からない。まずは確認する」

 

Nはそのやり取りを、少しだけ不思議そうに見ていた。

 

「……キミたちは、すぐ飛び出さないんだね」

 

「飛び出したい時もあるけどな」

 

トウヤが笑う。

 

「勝てる形にしないと意味ないだろ」

 

「ポケモンを 無駄に傷つけないため?」

 

「それもある」

 

トウヤは軽く言った。

 

「あと、隣のやつらがうるさいから」

 

「誰がだ」

 

「僕だろうね」

 

チェレンが即答する。

 

ベルが少しだけ吹き出した。

 

Nはその空気を見て、かすかに目を細める。

 

「……なるほど」

 

ひとりごとのように、そう呟いた。

 

夜の倉庫街は、昼のヒウンシティとはまるで別の場所だった。

 

積まれた木箱が長い影を落としている。海のほうから湿った風が吹き、板の隙間を細く鳴らしていく。

 

遠くで波の音がした。

 

人の気配は少ない。

 

そのぶん、小さな物音がよく響いた。

 

シンはミジュマルとフシデを連れて、木箱の影に身を寄せる。

 

ミジュマルはいつものように胸を張っているが、その足は前に出すぎていない。フシデも、無闇に突っ込む気配はなかった。警戒しながら、待っている。

 

昼からの積み重ねだと、シンは思う。

 

ただ熱くなるだけじゃなく、見るべき時に見ることを覚え始めている。

 

「……いる」

 

少し離れたところで、ベルが小さく言った。

 

ムンナが低く鳴く。

 

Nも、目を閉じるようにして気配を探っていた。

 

「怯えてる」

 

Nが言う。

 

「何匹か、奥で」

 

「野生か?」

 

チェレンが問う。

 

「たぶん。……でも、それだけじゃない」

 

Nの声が少しだけ低くなる。

 

「人に慣れた声も混じってる」

 

トレーナーのポケモン。

 

その可能性に、四人の表情が変わった。

 

トウヤが素早く手振りで位置を示す。

 

正面に二人。

 

横の通路に一人。

 

少し離れたところに、見張りが一人。

 

昼と似た配置だ。

 

シンは一度だけ頷き返す。

 

覚えたものが、そのまま使える。

 

いや、使えるようにする。

 

それが自分のやり方だ。

 

倉庫の奥から、低い声がした。

 

「おとなしくしろ」

 

「だから言っただろ、このあたりは使えるって」

 

「トレーナーのやつらは、昼に目を引きつけとけばいい」

 

その声に混じって、小さな鳴き声がする。

 

震えている。

 

嫌がっている。

 

ベルの腕の中のムンナが、きゅっと身を縮めた。

 

怒っていた。

 

怖がっているだけじゃない。

 

あの声を、嫌だと思っている。

 

「……行くよ」

 

ベルが、小さく言う。

 

チェレンがそちらを見た。

 

前なら止めていたかもしれない。

 

けれど今は、違う。

 

「無茶はするな」

 

言葉はそれだけだった。

 

ベルはしっかり頷く。

 

「うん。でも、止まらない」

 

その返事に、チェレンは何も足さなかった。

 

ただ、ポカブの頭を一度だけ撫でる。

 

シンはそのやり取りを見て、少しだけ息を整えた。

 

自分たちは、前よりちゃんと同じ列に並べている。

 

最初に動いたのは、トウヤだった。

 

迷いがない。

 

見張り役が背を向けた瞬間、ツタージャと一緒に影から飛び出す。

 

「そこまで」

 

見張りが振り返るより早く、ツタージャのつるのムチが手首を打った。

 

取り落としたボールが地面を跳ねる。

 

「なっ――」

 

「騒ぐなよ。余計に人来るぞ」

 

軽い口調だった。

 

けれど、立ち位置は完全に逃げ道を切っている。

 

その一拍で、奥にいた二人も気づいた。

 

「誰だ!」

 

「子ども……!?」

 

「ポカブ、ひのこ!」

 

チェレンの声が飛ぶ。

 

散るような火が通路の足元を走り、相手の進路を切った。

 

直接当てるためじゃない。

 

出てこられる角度を狭めるための火だ。

 

その間に、ベルが前へ出る。

 

「ムンナ、ねんりき!」

 

淡い力が木箱の陰にかかった。

 

縄で押さえつけられていた小さなポケモンたちが、一気に解放される。

 

中にはチョロネコも、マメパトもいた。おびえた目で周囲を見回し、けれどベルたちのほうへは逃げない。

 

ムンナが前に出て、ベルの声と一緒にその子たちを守るみたいに浮かぶ。

 

「大丈夫……! もう、こわくないから!」

 

声は震えていた。

 

でも、その足は下がらなかった。

 

ベルの隣でムンナが強く鳴く。

 

その声は、怯えよりも、明確な拒絶だった。

 

嫌だ、と。

 

もうやめろ、と。

 

「なんなんだお前ら!」

 

男のひとりがボールを構える。

 

シンはそれを待っていた。

 

出すなら、右手。

 

昼の連中と同じ癖だ。

 

「フシデ、いとをはく!」

 

白い糸が鋭く飛ぶ。

 

手首と足元、両方を絡めるようにかかった糸に、男の体勢が崩れた。

 

「ミジュマル、みずでっぽう!」

 

間を置かず、水流が胸元を打つ。

 

男は後ろの木箱にぶつかり、息を詰まらせた。

 

ミジュマルは着地してすぐ、次に動ける姿勢を取る。

 

フシデも一歩も引いていない。

 

シンの中で、二匹の位置が自然につながっていく。

 

自分が指示する前から、二匹が次の一手を理解し始めている。

 

ただ並んでいるんじゃない。

 

戦いの中で、少しずつ噛み合ってきている。

 

横から別の男が飛び出した。

 

狙いはベルだ。

 

ムンナを止めれば、解放したポケモンたちをまた押さえ込めると思ったのだろう。

 

「ベル!」

 

シンが声を上げるより早く、チェレンが動いた。

 

「ポカブ!」

 

ひのこが足元へ散る。

 

男が反射的に足を止めた、その瞬間。

 

ベルが前へ出た。

 

「ムンナ、もう一回!」

 

ねんりきが真正面からぶつかる。

 

男の身体が後ろへよろめいた。

 

ベルの呼吸は乱れている。

 

それでも、目だけは逸らしていなかった。

 

怖いまま、前に出ている。

 

その姿を見て、チェレンの目がわずかに見開く。

 

前に立っているのは、守られるだけのベルじゃない。

 

自分の足で、もう同じ列にいる。

 

その時だった。

 

奥の暗がりから、低い鳴き声が重なる。

 

怒りとも、苦しさとも違う。

 

怯えきって、もう声の形すら崩れかけているような音だった。

 

Nの表情が変わる。

 

「……やめるんだ」

 

静かな声だった。

 

怒鳴っていない。

 

それなのに、その場の空気が一瞬止まった。

 

Nは、暗がりの奥へ一歩進む。

 

「その子たちは 望んでいない」

 

縛られていたポケモンたちが、一斉にNのほうを見る。

 

チョロネコも、マメパトも、木箱の奥で震えていたヨーテリーも。

 

「キミたちのいう 解放は、この子たちの声とは違う」

 

男のひとりが、顔をしかめた。

 

「わかったようなことを――」

 

「わかるよ」

 

Nは言う。

 

「ボクには 聞こえる」

 

その声だけが、不思議なくらいまっすぐ通った。

 

「怖い。苦しい。逃げたい。そういっている」

 

「そんなもの、お前の思い込みだ!」

 

「違う」

 

Nは首を振る。

 

「思い込みなのは、キミたちのほうだ」

 

男がボールを握り直す。

 

その瞬間、トウヤが前へ詰めた。

 

「話すだけで止まらないなら、もう十分だろ」

 

ツタージャが低く構える。

 

シンのミジュマルも、フシデも前へ出る。

 

ポカブは火をこぼすように息を吐き、ムンナはベルの前で静かに浮いた。

 

四人と五匹が、一列に並ぶ。

 

Nはそれを見て、ほんの少しだけ目を見開いた。

 

たぶん、驚いたんだとシンは思う。

 

人が前に出て、ポケモンがその後ろにいる形じゃない。

 

ポケモンだけが戦わされる形でもない。

 

同じ方向を見て、同じ距離で立っている。

 

「……なるほど」

 

Nが、小さく呟く。

 

その一瞬の隙に、見張り役が逃げようとした。

 

「逃がすか!」

 

チェレンが踏み出す。

 

けれどその前に、フシデの糸が飛んだ。

 

足元を取られた見張りが転ぶ。

 

「ミジュマル!」

 

水流がその先の通路を打ち、完全に退路を塞いだ。

 

男たちは舌打ちし、散るように逃げ出した。

 

全員は捕まえられない。

 

けれど、抱えていた袋も、縛っていた縄も、その場に残していく。

 

もう十分だった。

 

守るべきものは、取り返した。

 

逃げた足音が完全に遠ざかってから、ベルはようやく大きく息を吐いた。

 

膝が少しだけ震えている。

 

ムンナが戻ってきて、ベルの胸元に額を押しつけた。

 

「……ありがと」

 

ベルがささやく。

 

ムンナは小さく鳴いた。

 

さっきまでの震えとは違う。

 

自分で前に出たあとの、少しだけ強い声だった。

 

シンはしゃがみ込み、チョロネコのほうへ手を伸ばしかけて止めた。

 

逃げたい相手に、善意だけで近づいていいとは限らない。

 

代わりにミジュマルが少し下がり、フシデも触角を低くする。

 

敵じゃないと分かる距離をつくる。

 

チョロネコは何度か迷うように尾を揺らしてから、やがて自分の足で暗がりの奥へ走っていった。

 

マメパトも、そのあとに続く。

 

「……よかった」

 

ベルがほっとした声を漏らす。

 

「全部助けられたわけじゃない」

 

チェレンは厳しく言いかけて、そこで止まった。

 

ベルが下を向いていないのが分かったからだ。

 

悔しさはある。

 

でも、それだけじゃない。

 

やれるだけやった顔をしていた。

 

「いや」

 

チェレンは言い直す。

 

「十分だ。今日は」

 

ベルが目を瞬く。

 

それから少しだけ、照れたように笑った。

 

「うん」

 

トウヤが木箱にもたれながら、息を吐く。

 

「やっぱ、広い街ってめんどくさいな」

 

「雑すぎる感想だね」

 

シンが言うと、トウヤは肩をすくめた。

 

「でも合ってるだろ。見えにくいし、人は多いし、ああいうのが紛れやすい」

 

「……たしかに」

 

シンは頷く。

 

今日見たものは多い。

 

人の流れの使い方。

 

視線の置き方。

 

逃げ方。

 

それを全部、頭の中に置いていく。

 

次に同じことがあった時、もっと早く動けるように。

 

もっと正確に止められるように。

 

ミジュマルがシンの足に軽くぶつかった。

 

フシデも、小さく前脚を鳴らす。

 

自分たちも覚えている、とでも言うみたいに。

 

Nは、解かれた縄の残りを見つめていた。

 

しばらく黙っていたあと、ようやく四人を見る。

 

「キミたちの ポケモンたちは……」

 

言葉を探すように、少しだけ間を置く。

 

「キミたちを 信じているんだね」

 

ベルがムンナを抱いたまま、そっと頷く。

 

チェレンは何も言わない。

 

トウヤも、軽口を挟まなかった。

 

シンは、Nの目がさっきより少しだけ変わったことに気づく。

 

警戒が消えたわけじゃない。

 

でも、測る目から、確かめ終えた目に近づいている。

 

「怖がっていても、離れない」

 

Nが続ける。

 

「怒っていても、キミたちの声を待っている」

 

「……そういうものだろ」

 

トウヤが言う。

 

「こっちもあいつらのこと信じてるし」

 

Nはその言葉を、すぐには返さなかった。

 

たぶん、そのまま自分の中へ置いたのだ。

 

「……そうか」

 

小さく、けれど深く。

 

「信じる、か」

 

ムンナがベルの腕の中で、少しだけ身じろぎする。

 

ミジュマルは胸を張り直し、フシデは触角を上げた。

 

ポカブが短く鳴き、ツタージャは静かに目を細める。

 

Nはその全部を聞いているみたいだった。

 

「キミたちは 不思議だね」

 

静かな声音のまま、Nは言う。

 

「人とポケモンが いっしょにいることを、言葉じゃなくて 形にしている」

 

「褒めてるのか?」

 

トウヤが訊く。

 

「うん」

 

Nは迷わず頷いた。

 

「褒めているよ」

 

その返事は、驚くほどまっすぐだった。

 

帰り道、夜のヒウンシティは少しだけ違って見えた。

 

灯りは同じだ。

 

人の数も、街の速さも、大きくは変わらない。

 

でも、見え方が違う。

 

この街には、楽しいものも、きらびやかなものもある。

 

その裏で、見えにくい場所を選んで動くものもある。

 

同じ街の中で、まるで違う温度が流れている。

 

「明日」

 

チェレンが前を向いたまま言う。

 

「ジムに行く前に、一度整理しよう」

 

「バトルのこと?」

 

ベルが訊く。

 

「それもある」

 

チェレンは頷いた。

 

「でも、それだけじゃない。今日見たことも含めてだ」

 

トウヤが笑う。

 

「急にまとめ役っぽいな」

 

「うるさい」

 

けれど、チェレンの声は少しだけ柔らかかった。

 

ベルがくすっと笑い、ムンナを抱き直す。

 

シンはミジュマルとフシデの気配を足元に感じながら歩いた。

 

今日のことも、ちゃんと積み上がっている。

 

バトルの技術だけじゃない。

 

見抜くことも、信じることも、並んで立つことも。

 

それぞれ違うまま、少しずつ同じ方向を向けるようになってきている。

 

ポケモンセンターの灯りが見えたところで、Nが足を止めた。

 

「ボクは ここまででいい」

 

「行っちゃうの?」

 

ベルが少しだけ名残惜しそうに言う。

 

Nは頷く。

 

「また会うよ」

 

そして、四人ではなく、その隣のポケモンたちを見る。

 

「キミたちの声は、覚えたから」

 

ミジュマルが小さく鳴いた。

 

ムンナの耳が揺れ、フシデが前脚を鳴らす。

 

Nはそれを聞いて、ほんの少しだけ笑った。

 

「……うん。そうだね」

 

それだけ言って、夜の街へ歩いていく。

 

緑の背中はすぐに人の流れへ紛れた。

 

けれど、不思議と見失った感じはしなかった。

 

また会う。

 

たぶん、本当にそうなのだろう。

 

シンはしばらくその背を見てから、ポケモンセンターの灯りへ向き直る。

 

明日は、ヒウンジムだ。

 

今日見たものを、明日の戦いにどう繋げるか。

 

考えることは多い。

 

でも、不思議と足は重くなかった。

 

隣でミジュマルが胸を張り、フシデが静かについてくる。

 

その気配を感じながら、シンは一歩ずつ前へ進んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

百式観音を背負いて。(作者:ルール)(原作:NARUTO)

▼ 憧れた姿を追い求め、▼ ただひたすら繰り返し、▼ オッサンはついにソレに辿り着く。▼ そんな狂気のオッサンが混じった忍者活劇。


総合評価:33105/評価:8.18/連載:94話/更新日時:2026年06月15日(月) 06:04 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>