最悪の英雄   作:山川たかし

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5話です。
()は相手が考えていることです。


大人気アイドルでもするらしい

「アイドルってうんこすんの?」

 

「・・・・・・・

は????????????」

 

俺の問いかけに、アイドルはさっきまでの汚ねえ薄笑いが消え失せていた。

代わりに浮かんだのは、唖然と言うのか、ポカーンと情けない顔だった。

 

「いや~昔の俺の友達にアイドルが大好きな奴がいたんだけど、そいつがアイドルはしないって言ってたからちょっと気になって」

 

懐かしいな。

アイドルでいくら顔が可愛くてもうんこするやんってそいつに言ったら首絞められて殺されそうになったからな~。

あいつ元気かな~。

 

「・・・あんた頭おかしんじゃない?有り得ないんだけど。

キモい。死ねよ。

アイドル以前に女の子にそういうこと普通聞く?」

 

アイドルから唖然とした表情は消え、その顔には明らかに怒りをにじませていた。

ゴミを見るような目で俺を見ている。

 

「ひどいいいようだな~。傷ついちゃった」

 

「黙れゴミ。チビガキ。死ね」

 

「ガキって・・これでも17歳なんだけど」

 

「・・嘘でしょ?その身長で?

ぷっ、可哀想。

もう絶対伸びないじゃん」

 

今度は一転して、アイドルは嘲るような笑みを浮かべる。

俺の身長がアイドルにとっては、最高のスパイスだったみたいだ。

俺的には質問の方を笑って欲しかったんだけど。

まあいいか。

 

「はいはい俺の身長はいいから。

それでどうなの?

すんのうんこ?」

 

「・・・・・」

 

アイドルは何も答えてくれない。

恥ずかしがり屋め。

 

「否定しないってことはするってことでいいのか?

ブリブリってするってことだよな?」

 

俺はニヤニヤしながら畳みかける。

 

「まあ気にすんなって!俺もするからさ。

どんな感じでするんだ?

ちなみに俺は限界までがまn」

 

俺が言いきるよりも早く。

 

「死ね」

 

凍てついた声と共に鋭い一閃、俺の頭部を狙った強烈な蹴りが飛んできた。

 

「あぶねっ」

 

俺は油断していたが、何とか体を後方に反らし回避する。

魔力のない人間は勿論のこと、魔力を持つ奴でもちゃんと鍛えてないとワンパンで逝く程の威力の蹴り。

 

「へぇ~」

 

思わず感嘆が漏れた。

 

アイドルのくせに結構いい蹴りができる。

人が話を遮るのはマイナス点だけどな。

 

続けてアイドルは休む間もなく、目にも留まらぬ速さで蹴りの連撃を繰り出してくる。

放たれるたびに速度が増す、苛烈な攻撃。

 

だが、そのすべては虚しく空を切る。

俺には当たらない。

 

しかしだ。

こいつかなりやるな。

 

まともに戦えないと思ってたけど、つまんないと思ってたけど

くくくっ

面白そうだ。

 

「蹴るのが好きみたいだけど、蹴りはこうやるんだよっ!」

 

何度俺に躱されようと蹴りを繰り出してくる。

その止まらない連撃の合間を縫い、俺は言葉を投げかけた。

 

そして

流れるような動作から右足を跳ね上げ、アイドルの腹へ最短距離の蹴りを叩き込む。

 

「ぐえぇっ!」

 

アイドルは綺麗なくの字を描いて宙を舞う。

 

痛そうで可哀想だ。

 

ドン!

 

そしてそのまま後方の壁に激突し、崩れ落ちる。

 

「ははっ、いいの入ったな!

大丈夫か?大丈夫だよな?

もっと来いよ!」

 

「うっっ

このはげ!調子乗ってんじゃねえぇよ!」

 

腹を押さえながら、怒りを糧に立ち上がるアイドル。

 

「口調こわ。ホントにアイドルですか~?

頑張れ!うんこマン!」

 

「はぁはぁはぁ、絶対に殺す。

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

殺す!!!!!!」

 

血走った眼。

殺意が臨界点に達したのか、アイドルの姿が魔法のように消えた。

並みの魔力使いじゃ視認すらできない高速移動。

 

結構速いじゃん

 

「死ね!!!!」

 

そして懐から抜いた刃物で俺に切りかかってくる。

 

「当たらないよ~、うんこマン。

ハハハハハ」

 

最初の蹴りで実力差は分かっただろう。

どれほど鋭い刃を突き立てようと、俺の肌を掠めることさえかなわないだろう。

アイドルの刃物は空を舞った。

 

「はぁはぁはぁはぁ

なんで・・なんで当たらないの!?なんで!?」

 

30回くらい攻撃を躱した時、アイドルは動きを止めた。

口から大きな息を漏らし、肩を激しく上下し始める。

 

「なんでかな~~」

 

「くっ、私の方が魔力量は多いはずなのに」

 

確かにアイドルの魔力量は俺より多い。

だが前にも言ったけど、魔力量だけで強さは決まらない。

実際俺の方が強いしな。

どちらかと言えば他の要素の方が大事だ。

 

「・・まさか魔力濃度がこの私よりも高いってこと?」

 

ご名答。

強さに必要な要素は主に3つある。

魔力量

魔力濃度

魔力の使い方だ。

 

・魔力量  

これは生まれた時点で決まっている要素で、固有能力や体を強化する時に使うもの。後から増えたり減ることはない。量が多ければ体に纏える量が増えるから、攻撃力、防御力、スピードは実質アップする。後、量が多いと魔力切れが起きにくい。

・魔力濃度

これは読んだまま魔力の濃度という意味。

簡単に説明すると魔力は腹にあり、そこから体全体に流すもの。腹にある魔力は魔力濃度は100%だが、体に流す際に濃度は激減する。つまり体に魔力を流す際にどれほど損失を抑えられるかが肝となる。     

濃度が高ければ高いほど攻撃力、防御力、スピードは上がる。

・魔力の使い方

これは魔力を無駄に消費しない。魔力を高速かつ狙った箇所に正確に流せるかどうか等がある。

 

俺的にこの中での重要度は魔力濃度>魔力量≧魔力の使い方だ。

俺は修行で後からでも変えることができる魔力濃度と魔力の使い方を鍛えまくった。

特に魔力濃度は早くから重要って気づいたから、マジで損失少なくしたよ。

まあその結果がこれだ。

格闘技とかの技術の差もあるけど、アイドルと俺の魔力濃度の差が、実力差に顕著に出たな。

 

「多分そうじゃないか?まあでもアイドルのくせに結構やるじゃん。想像以上だったぞ。修行頑張ったんだな。偉いぞ」

 

「はあはあ

は?修行?何言ってんの?そんなのしてるわけないでしょ」

 

「・・え?」

 

俺はその言葉に思わず目を丸くした。

 

「はっはっはっ、それは流石に嘘が下手だぞ。うんこマン」

 

「嘘なんてつくわけないでしょ。私は天才なの。何をやってもね。戦いもそう。鍛錬なんてするわけないでしょこの私が」

 

「・・マジで?」

 

嘘をついているようには見えない。

言われてみれば確かに、さっきの蹴りやら足運びが才能だけでやってる感じがしたような。

もし本当なら、正直今日1の驚きだ。

このアイドルの強さは相当なもんだ。

札幌に来る途中でチンピラみたいな奴らと結構戦って、またついでに日本での平均の強さみたいのを聞いてたけど、それとは比べ物にならない程だ。

こいつはその領域に努力なし、才能だけで入ったことになる。

規格外だ。

それにだ。

よく考えてみたら魔力量だって相当多い。

 

「才能はピカイチか・・・

よし!じゃあ決めた!」

 

俺はその光輝く才能を見込んでやりたいことを決めた。

アイドルの修行してない話はホントの可能性がある。

性格的に。

賭けてみる価値はある。

だけどその前にいくつか質問しないとな。

 

「お前ってアイドル活動が生き甲斐なのか?」

 

「は?なに突然?そうだけど」

 

「なんでアイドルなんかやってんだ?あんな暴言とか暴力とか振るっといて」

 

「顔が可愛いから、チヤホヤされたいからに決まってるでしょ。

何なの急に?」

 

「ふ~ん。じゃあやっぱ顔が1番大事って感じか?」

 

アイドル(ちっ聞けよ、チビガキがムカつく。

でもこの間に体力を回復できるから話に乗っておこう)

 

「当たり前でしょ。この地球上に私より顔が可愛い人間なんていないからね」

 

「確かに誇張なしでそれくらい可愛いか。

でも中身がマイナス1000点だから実質マイナス100くらいだろ」

 

「顔1億点だからプラスね」

 

中身は否定しないんかい。

 

「あーそう?まあいいやそれで。

じゃあさっさとやるか!やることも決まったし」

 

「やること?私に大人しく殺されてくれるとか?」

 

「はっはっ違う違う。それは天地がひっくり返っても無理」

 

今回の質問はうんこと違ってちゃんと意図がある。

そして

顔が一番大事っていう返事で俺のやりたいことを実行することが決定した。

 

「じゃあ何をやr

!」

 

アイドルが何かを言い終わる前に俺は駆け出した。

踏み込みで地面が削れるほどの速度。

瞬時にアイドルの目の前に移動する。

 

アイドルの実力は分かった。

この速さにアイドルは反応できない。

 

そして

 

「やー」

 

アイドルの顔面に拳をねじ込んだ。

 

「がっ」

 

そのまま呻き声を上げるアイドルを地面に叩きつける。

 

ズドン!

 

そして仰向けに倒れたアイドルの上に乗り、

 

ボゴッ!ドゴッ!ズカッ!

 

何度も何度も顔を殴った。

一度、二度、十度。

アイドルが最も大切だと言い切った、その美貌を破壊していく。

鈍い打撃音が静寂な夜の街に響き渡った。

 

やがて、呻き声も上げなくなり、ぐったりと力なく横たわるアイドルに、俺は赤く染まった手を止め

 

「流石に気絶したか」

 

ぐちゃぐちゃになった顔にそっと手の平を置き、顔面に固有能力の爆弾を設置する。

 

「最後に一発!」

 

ドーン!!!!

 

そして遠慮なく爆破した。

 

「いやー流石に悪人でも罪悪感が残るなこれは。

お顔がぐちゃぐちゃだ」

 

無残に崩れたアイドルの顔を見て、俺は少し申し訳なくなった。

でもこれでいいだろう。

やりたいことはできた。

 

救急車だけ呼んどくか。

このままくたばられたら俺の計画が台無しだからな。

 

そうして俺は救急車を呼んで、その場を去るのだった。

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