最悪の英雄   作:山川たかし

7 / 7
7話です。


誘拐犯は馬鹿ばっか

車に揺られることおよそ30分。到着したのは、森に中に佇むそこそこ立派な家だった。

だが、通されたのは家の薄暗い地下。

そこへ引きずり込まれた俺達は、廊下の最も先にある牢屋に案内された。

鉄格子の向こうには、すでに10人くらいの子供が座っているのが分かる。

 

「あれ?ここがそうなの?」

 

俺はわざとらしく首を傾ける。

 

「ああそうだ」

 

「こんな牢屋みたいな場所に保護してるの?もっとちゃんとした部屋じゃないの?」

 

「「・・・ぷっ、はははははははははっ!」」

 

その瞬間、誘拐犯2人は堪えきれなくったように噴き出し、大笑いし始めた。

俺が騙されている馬鹿な子供だと思っているのだろう。

演技だとも知らず。

 

「バァーーーーーカ!

まだ気づかねぇのか?

俺達は優しい奴らじゃねーんだよ。誘拐犯だ。

お前ら子供を売ってがっぽがっぽ稼ぐ奴らだ。お前らに豪華な部屋なんてある訳ねぇーだろ。

残念だけどもうパパとママには会えないぞぉー」

 

「俺パパとママいないよ」

 

「え?あ、あ、そうなのか?

だがもうお前は家には帰れねぇーからな!立派な商品だ!

分かったらさっさと中に入れ!」

 

俺の答えに誘拐犯は一瞬バツが悪そうな顔をしたが、すぐに表情を戻し、牢屋の鍵を開けた。

そのまま俺達の背中を乱暴に中へと投げ込み、扉を閉ざした。

 

「じゃあな。せいぜいそこでお友達でも作って、余生を楽しむんだな。

はははは!」

 

「ああそうだな。ガキにはお似合いだ。

はははは!」

 

誘拐犯の2人は下卑た笑い声を残して、来た道へと消えていった。

 

「まったく酷い奴らだな~。子供なんだからもっと丁寧に扱えよ。

まあ尾行するよりも面白かったからいいけど。

いや、やっぱ後でボコるか」

 

まあ問題はこれからどうするかだ。

まさかこんなに子供がいるとは思ってなかったからな~。

正直ほとんどの子供は売り飛ばされてると思ってたから。

派手に爆破して強い奴を炙り出そうって考えてたけど、子供達が多すぎてできないしなぁ~。

う~んどうするか?

 

いや考えるのは辞めよう。

俺らしくない。

こういう時こそ適当に戦いまくるか。

派手に爆破ができないのは残念だけど。

 

それはそうと。

あいつ大丈夫か?

 

俺は牢屋にいるボロボロの服を着た10歳くらいか?

1人の黒髪の男の子を見た。

 

牢屋に入った時から目に入った。

何やら凄い汗をかいているし、キョロキョロとして落ち着きがない。

 

「おい、お前大丈夫か?」

 

俺は近づき、声を掛ける。

 

「・・え?ぼ、僕ですか?」

 

「ああ。さっきから落ち着きがないぞ。汗もめっちゃかいているし」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「いや謝らなくてもいいだろ。まあこんなところだからな。不安なのは分かる。

でも安心しろよぉ。

すぐにここ出れるから!」

 

「え?何を言って・・」

 

困惑する男の子の前で、俺は軽く右拳を握った。

どうやら子供が魔力持ちでもここから逃げられないように、牢屋の鉄格子と周りの壁が魔力で強化されている。

だが俺にとっちゃこの程度簡単にぶち壊せる。

実力を見誤ったな。

 

ドン!!

 

俺は鉄格子へ一撃、パンチを直撃させる。

凄まじい音と揺れを狭い地下室に響かせながら、鉄格子をぶち壊した。

いや、ぶち壊したっていうより吹っ飛ばしただな。

 

「な?すぐ出れるだろ?」

 

「えぇ・・」

 

男の子はビックリ。開いた口がふさがらないといった様子で、破壊された鉄格子を見つめていた。

 

「なんだ!?何の音だ!?」

 

だが鉄格子をぶち壊すと、その音を聞きつけすぐに廊下の先から、さっきの誘拐犯2人組を含んだ計3人が慌ててこっちに向かってきていた。

 

「おっ?来たか。まったく子供相手に多すぎだろ。ビビり共が」

 

俺はあいつらを戦うために牢屋から出る。

 

「あっ。さっきの君さ、俺があいつら倒すからその子達外に連れ出しといて」

 

ついでにさっきの黒髪の子にそう頼む。

子供達を全員外に出してくれたら好きにヒャッハーできるから。

 

「え!?全員倒すってそんなの無理ですよ!相手は大人で3人!しかも全員魔力持ちですよ!」

 

男の子は立ち上がりそう叫ぶ。

 

「はっはっはっ

大丈夫大丈夫。心配すんなって。

まあ見てなって。結構面白いと思うから」

 

「なっ!

おい!ガキが1人牢屋から出てるぞ!」

 

そんなことを話していると

誘拐犯共が俺の目の前に到着し、焦った表情で足を止めた。

 

「久しぶり。おじさん達!さっきぶり」

 

俺は手を上げて挨拶を交わす。

すると一番先頭にいる俺を誘拐し、散々馬鹿にしてきた1人の男が口を開いた。

 

「おじさんじゃねーよ!お兄さんだ!

ってそんなことはどうでもいいだよ!

てめぇー、どうやってこの鉄格子壊しやがった?

いや誰が壊しやがった?魔力でちゃんと強化しておいたはずだぞ」

 

あれで強化って。

おっと笑っちゃだめだよな。

 

俺は笑いを堪え

 

「あいつが壊しました」

 

牢屋の中にいるさっきの黒髪に指をさし、犯人に仕立て上げた。

理由はなんか面白そうだったから。

 

「え??????

ええぇーーーーーーーーっ!!!!」

 

男の子の大きな驚いた声が地下に響き渡った。

いい反応だ。

おもろ。

でも流石に無茶振りし過ぎたか?

 

「ほおぉ。てめぇぇ。どうなるか分かってんだろうな?」

 

男は俺から視線を外し、黒髪の子を睨みつけながらボキッボキッと拳の音を鳴らし、男の子に歩み寄る。

どうやら信じてくれたみたいだ。

こんなに簡単に信じてくれるなんて。こんな魔力がない子供に壊せるわけないだろう。

どっちが馬鹿なんだか。

 

「こ、壊したの僕じゃないですよっ!!違います!!僕じゃないです!!」

 

「はっ

誰が信じるかよ。

悪いことした奴は皆そう言うからな。

まあ取り敢えず俺にボコられとけよ

ははは」

 

男は愉快そうに笑いながら、俺の右横を通り抜けようとした。

その瞬間

 

「あ?何勝手に俺の手掴んでやがるガキ?」

 

俺は男の右手首を掴んだ。

そして

 

「ふっ。ふふふふふふふふふふっ

あはははははははははははははははははっ!!

嘘だよばぁ~~~かww

こいつじゃなくて俺が壊したんだよww!

べろべろべろ」

 

相手を馬鹿にするように至近距離で特大の変顔を披露してやった。

俺を馬鹿にしたお返しだ。

嬉しいだろ。

 

「っっっ!!

ガキがっ!!!!!」

 

男はぶち切れ。

顔をトマトのように真っ赤に染め、俺にその太い左腕を振り下ろした。

 

だが、その動きはあまりにも遅かった。

俺は掴んでいた左手首を支点に、自らの体をコマのように回転。

円の動きで力を受け流し、男を強引に宙へと浮かせる。

 

「ふっ」

 

完璧なタイミングの背負い投げ。

男を地面に思い切り叩きつけた。

 

「がっ!」

 

地面には大きなへこみとひび広がり、男はカエルの潰れたような声を漏らし、そのままその場に気絶した。

 

「こいつっ!」

 

「てめぇっ!」

 

間髪入れず、残り2人の男が左右から慌てて俺に攻撃を繰り出してくる。

右からは周り蹴り、左からはナイフによる刺突。

 

だがこいつらは正直弱い。

あまりにも遅すぎる。

そこら辺のチンピラレベルだ。

 

だから

一瞬で勝負は着いた。

 

2人の攻撃が俺に届く直前

その前に瞬時に相手の懐に入り込み、両手の拳をそれぞれ2人の腹に同時にぶち込んだ。

 

「「がはっ」」

 

2人は肺から全ての空気を叩き出されたような声を上げ、白目を剥きその場に倒れ込んだ。

 

「はあぁー。こいつらやっぱり弱かったな」

 

3人は気絶。

俺の勝利。

全然うれしくないけど。

 

「あっ!!待てよ!!

いっけねぇー。強い奴がいるか聞くの忘れちまった。

しょうがねぇー自分で探すか。

はぁ~頼むから強い奴出て来てくれよぉ~」

 

いなかったらこの建物消し飛ばしちゃうからな。

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