ペルソナX訂正版   作:keimei

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第10話 双子と放課後の約束

昼休み。

 一時間目の歴史、三時間目の公民を終えた知は、ようやく教室の雰囲気にも慣れ始めていた。

 窓から見える中庭では、運動部の生徒たちが元気よく昼食をとっている。

 知が弁当を取り出すと、隣の席から雷斗が椅子を引いた。

 

「知、一緒に食おうぜ。」

「いいよ。」

 

 二人は廊下へ出ようとした、その時だった。

 

「おーーーい!雷斗ーーー!!」

 

 校舎中に響くほど大きな声。

 雷斗の表情が一瞬で曇る。

 

「……げっ。」

「来た。」

 

 知が首を傾げる。

 

「知り合い?」

「双子の妹だ。」

「双子?」

 

 その瞬間だった。

 

「雷斗ぉぉぉーーーっ!!」

 

 ドゴォッ!!

 

「ぐはぁぁぁっ!!」

 

 見事な飛び蹴りが雷斗の背中へ炸裂した。

 雷斗は廊下を数メートル滑り、そのまま床へ転がる。

 周囲の生徒たちは誰一人驚かない。

 

「また始まった。」

「今日も飛んだな。」

「朝より飛距離伸びてない?」

 

 どうやら日常らしい。

 飛び蹴りを放った少女は腰へ手を当て、満面の笑みを浮かべていた。

 肩まで伸びた黒髪をポニーテールにまとめ、健康的に日に焼けた肌。

 活発そうな瞳は雷斗によく似ている。

 

「久しぶり!」

 

 雷斗はゆっくり起き上がると額へ青筋を浮かべた。

 

「朝飯一緒に食っただろ!!」

「あっ。」

 

 風子は数秒固まる。

 

「……そうだった!」

「忘れんな!!」

「いやー、昼になったらリセットされちゃって!」

「スマホじゃねぇんだぞ!」

「細かいこと気にしない!」

「細かくねぇ!!」

 

 知は思わず吹き出してしまう。

 

「仲がいいんだね。」

「「どこが!?」」

 

 双子の声がぴったり重なった。

 二人は顔を見合わせる。

 

「「そこまで一緒かよ。」」

 

 今度はまた同時だった。

 知は思わず笑う。

 

(本当に仲がいい。)

 

 風子は知へ近付くとニッと笑い、勢いよく右手を差し出した。

 

「初めまして!」

「あたし、大和風子!」

「二年B組!」

「ソフトボール部!」

「雷斗の双子!」

 

 知も笑顔で握手を返す。

 

「平城知です。」

「よろしく。」

「よーし!」

「今日から友達!」

「決定!」

「早いよ。」

「友達になるのに時間なんかいらないって!」

 

 雷斗がため息をつく。

 

「こいつ昔からこうなんだ。」

「考えるより先に体が動く。」

「失礼だなぁ。」

「ちゃんと考えてるよ?」

「飛び蹴りする前に?」

「もちろん!」

「『どう飛んだら綺麗に当たるかな』って!」

「考える方向がおかしい!」

 

 知は再び笑ってしまう。

 昨日まで京都にいた自分が、こんな風に笑っていることが少し不思議だった。

 

◇◇◇

 

 三人は中庭のベンチへ移動し、昼食を食べ始めた。

 風子は購買で買ったパンを豪快に頬張る。

 

「知って京都なんでしょ?」

「うん。」

「奈良どう?」

「静かで住みやすい。」

「でしょー!」

「ご飯も美味しいし!」

 

 雷斗が驚く。

 

 風子はパンを食べ終えると知を見た。

「放課後暇?」

「特に予定はないけど。」

「じゃあ学校案内してあげよっか!」

 雷斗が首を振る。

「いや、それは俺がやる。」

「えー。」

「いいじゃん。」

「風子が案内したら三時間は寄り道する。」

「バレた。」

「昨日新しいクレープ屋見つけたし。」

「学校案内な!」

 

 風子は頬を膨らませた。

 

「むぅ。じゃあ途中まで!」

「途中までなら。」

「やった!」

 

◇◇◇

 

 その頃。

 二階、生徒会室。

 小田上は一人、窓から中庭を眺めていた。

 

「転校生……平城知。」

 

 昨日まで名前も知らなかった少年。

 それなのに、なぜか妙な違和感だけが胸に残る。

 

「……どこかで会った?」

 

 考えても思い出せない。

 それどころか、昨日の放課後の記憶さえ曖昧だった。

 

「疲れてるのかな。」

 

 小田上は小さく笑い、資料へ目を戻す。

 本人は知らない。

 もう一人の自分が、鏡界で知たちを追い詰めていたことを。

 

◇◇◇

 

 昼休みも終わり、午後の授業が始まる。

 知は窓際の席から校庭を眺めていた。

 右腕のアビスギアが、一瞬だけ微かに震える。

 まるで何かを知らせるように。

 

(放課後……。)

 

 昨日、自分たちが迷い込んだ鏡界。

 そして、善吉と真が潜入捜査を続ける理由。

 この学園には、まだ知らない秘密が数多く眠っている。

 その真実へ近付くため。

 知は放課後、雷斗と共に学園の調査を始めることを決意するのだった。




10話!
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