ペルソナX訂正版   作:keimei

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11話放課後の学園調査

キーンコーンカーンコーン――。

 終礼を告げるチャイムが校舎に響く。

 和宮先生が出席簿を閉じる。

 

「それじゃあ今日のホームルームは終わりです。気を付けて帰ってくださいね。」

「ありがとうございました!」

 

 クラスメイトたちが一斉に立ち上がる。

 部活動へ向かう者、友人と帰る約束をする者、それぞれが放課後を楽しみ始める。

 知も鞄へ教科書をしまっていると、雷斗が机へ肘をついた。

 

「行くか。」

「うん。」

 

 二人は教室を出ようとした。

 

「ちょっと待った!」

 

 元気な声が廊下から聞こえる。

 二人が振り返ると、そこには制服姿の風子が立っていた。

 

「約束通り途中まで案内するよ!」

「ちゃんと来たんだ。」

「約束は守るタイプ!」

「飛び蹴りは?」

「え、、身内にドMの変態がいるんですけど」

「奇遇だな俺も身内に見かけたら飛び蹴りをしてくるド変態のドSがいるよ」

「やるの?」

「やるか?」

「もういいから早く学校案内してよ、、、、」

 

◇◇◇

 

「ここが図書館!」

 

 風子が大きな扉を指差す。

 

「蔵書は結構多いよ!」

「テスト前になると席の取り合い!」

「次は体育館!」

「ソフト部はあっち!」

「テニスコート!」

「武道場!」

 

 知は風子の案内を聞きながら校舎を見て回る。

 遷都学園は本当に広い。

 普通科だけではなく、商業科、工業科、国際科など様々な学科があるため、一つの町のようだった。

 

「覚えられるかな。」

 

 知が呟く。

 風子は笑う。

 

「一週間もすれば慣れるよ!」

 

 雷斗も頷く。

 

「俺なんか一年経っても迷ったけどな。」

「威張ることじゃないよ。」

 

 三人は笑った。

 

◇◇◇

 

 中庭へ差しかかった時だった。

 

「あっ。」

 

 風子が声を上げる。

 

「どうした?」

「部活!」

「今日ミーティングあるんだった!」

 

 腕時計を見る。

 

「あと五分!」

「やばっ!」

 

 風子は慌てて鞄を背負い直す。

 

「ごめん!」

「ここから先は雷斗お願い!」

「おう。」

「じゃあ知!」

「また明日!」

 

 風子は校舎を勢いよく駆け出していく。

 

「遅刻するーーー!」

 

 その元気な姿が見えなくなるまで、知は見送っていた。

 

「本当に元気だね。」

「昔からあんな感じ。」

「疲れないのかな。」

「たぶん疲れるって言葉知らない。」

 

 二人は苦笑した。

 

◇◇◇

 

「さて。」

 

 雷斗の表情が少しだけ真剣になる。

 

「ここからは昨日の話だ。」

「うん。」

 

 二人は人気の少ない渡り廊下へ向かった。

 

「知。」

「小田上のこと、どう思う?」

「記憶はないように見えた。」

「俺も。」

「演技には見えなかった。」

 

 雷斗は腕を組む。

 

「でも昨日のあいつは本物だった。」

「間違いない。」

 

 知も頷く。

 

「あのシャドウたちも。」

「夢じゃない。」

 

 その時だった。

 

「二人とも。」

 

 後ろから落ち着いた女性の声が聞こえた。

 二人が振り返る。

 そこには公民教師・新島真が立っていた。

 

「新島先生。」

 

 真は周囲を確認してから小さく頷く。

 

「長谷川先生がお呼びです。」

「職員室では話せません。」

「資料室へ来てください。」

 

 二人は顔を見合わせる。

 

「……はい。」

 

◇◇◇

 

 旧校舎資料室。

 普段使われていない小さな部屋だった。

 中へ入ると長谷川善吉が腕を組んで待っていた。

 

「来たか。」

 

 扉が閉まる。

 真が鍵を掛ける。

 善吉は小さく息を吐いた。

 

「まず確認だ。」

「昨日、小田上に何か言われたか?」

 

 雷斗は首を振る。

 

「昨日のことを覚えてる様子はありませんでした。」

 

 知も続ける。

 

「初対面みたいな反応でした。」

 

 善吉は頷く。

 

「やっぱりな。」

 

 真が説明を続ける。

 

「私たちも今日一日、小田上君を観察しました。」

「授業。」

「休み時間。」

「生徒会活動。」

「どれを見ても普通の高校生です。」

「少なくとも鏡界での記憶を持っている様子はありません。」

 

 雷斗が首を傾げる。

 

「じゃあ昨日のあいつは何だったんですか?」

 

 善吉は静かに答える。

 

「まだ仮説だ。」

「だが俺たちは、鏡界に存在する小田上は本人じゃなく『認知体』だと考えている。」

「認知体?」

 

 知が尋ねる。

 真が頷いた。

 

「本人の歪んだ認知や欲望が、鏡界で別の存在として形になっている可能性があります。」

 

「つまり本人と認知体は、別人格ということです。」

 

 知は昨日の狂気に満ちた小田上を思い出す。

 

(だから現実では普通だったのか。)

 

 善吉は知の右腕を見る。

 

「それより気になるのは、お前の力だ。」

「アビスギア。」

「昨日回収したメダルはどうした?」

 

 知は制服のポケットから一枚の黒いメダルを取り出した。

 中央には一角獣が刻まれている。

 

『ペルソナメダル バイコーン』

 

 真は興味深そうに見つめる。

 

「これがシャドウの鏡化……。」

 

 善吉は腕を組んだまま笑う。

 

「面白ぇ力だ。」

「次はそれを試してみる必要があるな。」

 

 知はメダルを見つめた。

 

「どうやって?」

 

 善吉はニヤリと笑う。

 

「決まってる。」

「もう一度、鏡界へ行く。」

 

 その一言で部屋の空気が張り詰める。

 知は無意識に右腕を握った。

 アビスギア。

 鏡界。

 ペルソナメダル。

 まだ何も分からない。

 だが、自分の力を知るためには進むしかない。

 知は静かに頷いた。

 

「行きます。」

 

 善吉も真も、その覚悟を見届けるように小さく頷いた。

 こうして四人は、再び鏡界へ足を踏み入れる準備を始めるのだった。

 

知たちが資料室を後にして数分後。

 放課後の校舎は部活動へ向かう生徒たちの声で賑わっていた。

 その中、一人の男子生徒が静かに廊下を歩いている。

 小田上だった。

 生徒会室へ向かう途中、ふと足を止める。

 

「……?」

 

 視線の先には旧校舎へ続く渡り廊下。

 誰もいない。

 それなのに、胸の奥が妙にざわつく。

 

「なんだろう……。」

 

 理由は分からない。

 昨日からずっと続く、この違和感。

 まるで何かを忘れているような感覚。

 頭を押さえて考えてみるが、何も思い出せない。

 

「疲れてるのかな。」

 

 小さく笑い、自分に言い聞かせる。

 そのまま生徒会室へ歩き出そうとした――その時。

 カラン。

 足元で何かが転がる音がした。

 

「……ん?」

 

 拾い上げる。

 それは割れた鏡の破片だった。

 ほんの一瞬。

 鏡に映る自分が、ニヤリと笑ったように見えた。

 

「……気のせいか。」

 

 瞬きをすると、そこにはいつもの自分しか映っていない。

 小田上は首を傾げながら鏡の欠片を近くのゴミ箱へ捨て、その場を後にした。

 誰もいなくなった廊下。

 ゴミ箱の中の鏡の破片だけが、不気味な青黒い光を一瞬だけ放つ。

 まるで"誰か"が、知たちの動きを静かに見つめているかのように――。




11話!
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