ペルソナX訂正版   作:keimei

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第12話境界の案内人(前編)

放課後。

 人気のなくなった校舎を、四つの足音が静かに響く。

 知、雷斗、長谷川善吉、新島真。

 四人は昨日と同じように、生徒会室前までやって来ていた。

 廊下の突き当たり。

 夕日に照らされた大きな姿鏡は、相変わらず龍の彫刻に囲まれ、静かに佇んでいる。

 知は鏡を見つめ、小さく息を吐いた。

 

「またここに来ることになるなんて。」

 

 善吉が肩を回しながら笑う。

 

「昨日よりは心の準備ができてるだろ?」

「はい。」

 

 真は鏡へ近付き、龍の彫刻へ静かに手を添えた。

 

「昨日と同じ手順で入ります。」

「境界へ入ったら、勝手な行動は禁止です。」

「必ず私たちの近くで行動してください。」

「はい。」

「了解。」

 

 真が頷く。

 

「それでは、行きます。」

 

 鏡の表面へ手を触れた瞬間、水面のような波紋が広がる。

 

「来ます!」

 

 四人の身体が眩い光に包まれた。

 

◇◇◇

 次の瞬間。

 知たちは石畳の上へ降り立っていた。

 

「……ここは。」

 

 昨日訪れた校舎とはまるで違う。

 空は薄紫色。

 無数の鏡が宙に浮かび、ゆっくりと回転している。

 建物は崩れ、道は途中でねじ曲がっていた。

 まるで世界そのものが壊れかけているようだった。

 

「昨日とは場所が違うな。」

 

 雷斗が辺りを見回す。

 善吉も腕を組む。

 

「境界は固定された世界じゃない。」

「人の認知によって姿を変える。」

 

 真も頷く。

 

「同じ入口でも、違う区域へ繋がることがあります。」

 

 知は右腕へ目を向ける。

 アビスギアは静かに青白い光を放っていた。

 その時だった。

 

「アラ〜♡」

 

 どこからともなく間延びした声が聞こえた。

 

「また迷い人が来たのねぇ♡」

 

 四人が一斉に振り向く。

 そこに立っていたのは、一頭の白い鹿――ではなかった。

 二本足で立つ、小柄な白鹿。

 金色の角。

 神官のような白と朱色の装束。

 首には勾玉。

 そして腰へ手を当て、呆れたように首を振っている。

 

「まったくもう。」

「最近のお客さんは説明も聞かずに入ってくるんだから♡」

 

 雷斗は数秒固まったあと、一言だけ呟いた。

 

「鹿。」

 

 白鹿は眉をひそめる。

 

「神鹿よ♡」

「鹿。」

「だから神鹿!」

「鹿。」

「アンタ、わざとでしょ!?」

 

 善吉が吹き出した。

 

「ははっ!面白ぇ鹿だな。」

「鹿じゃないわよ!」

「神鹿!」

「格式が違うの!」

 

 知は思わず笑みを浮かべる。

 

「喋るんだ。」

「喋るわよぉ♡」

「アンタ達も喋るでしょ?」

「それと同じよ♡」

 

 真が一歩前へ出る。

 

「あなたは……何者ですか?」

 

 白鹿は胸へ手を当て、優雅に一礼した。

 

「アタシはミロク、この境界を管理している神鹿よ♡迷子になった子たちを案内するのがお仕事なの。」

 

 雷斗が小声で知へ耳打ちする。

 

「神様ってこんな感じなのか?」

「……多分、違う。」

 

 知も小声で返す。

 

「聞こえてるわよ♡」

 

 ミロクはジト目で二人を見る。

 

「最近の若い子は神様への敬意が足りないわぁ。」

 

 善吉が苦笑する。

 

「悪い悪い。」

「信用しろって言われても急には難しくてな。」

「まあ、それもそうねぇ。」

 

 ミロクは角へ軽く触れた。

 すると金色の角が淡く輝き始める。

 

「……来た。」

 

 その表情が少しだけ真剣になる。

 

「神器の欠片の気配がするわ。」

 

 知たちも自然と表情を引き締めた。

 

「神器の欠片?」

 

 知が尋ねる。

 ミロクは頷く。

 

「そう。」

「この境界には、神器の力が砕け散った欠片が眠っているの。」

「それが長い年月をかけて境界へ影響を与えてる。」

「そしてアンタのアビスギアは、その欠片と強く共鳴する。」

 

 知は右腕を見つめた。

 確かにアビスギアも微かに脈打っている。

 

「欠片が近い……。」

 

 ミロクは歩き始める。

 

「付いてらっしゃい♡」

「道案内くらいはしてあげる。」

「ただし――。」

 

 その足が止まる。

 

「ここから先は、安全じゃないわ。」

 

 空気が変わる。

 陽気だったミロクの表情が、神獣らしい鋭いものへ変わる。

 

「シャドウも昨日より強い。」

「油断したら、命はないと思いなさい。」

 

 知たちは静かに頷いた。

 そして五人は、神器の欠片を目指し、さらに境界の奥へと歩き始める。

 その先で待つ新たな試練を、まだ誰も知らなかった――。




12話!
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