ペルソナX訂正版   作:keimei

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第13話 境界の案内人(後編)

ミロクの案内で、一行は境界の奥へと進んでいた。

 砕けた石畳。

 宙に浮かぶ無数の鏡。

 どこまでも続く紫色の空。

 現実とは似ても似つかない静寂が辺りを包んでいる。

 ミロクは歩きながら、ふいに足を止めた。

 

「……来るわ。」

 

 先ほどまでの柔らかな笑顔は消え、鋭い眼差しが前方を見据える。

 ゴォッ――。

 黒い霧が渦を巻き、三体のシャドウが姿を現した。

 獣のようなシャドウ。

 仮面を付けた人型のシャドウ。

 巨大な腕を持つ異形のシャドウ。

 知はアビスギアを構える。

 

「みんな!」

 

 雷斗も拳を握り締めた。

 

「来るぞ!」

 

 その瞬間、善吉が一歩踏み出す。

 

「バルジャン!」

 

 青い炎が燃え上がり、義賊バルジャンが姿を現そうとする。

 しかし――

 バチィッ!!

 激しい火花が散った。

 

「ぐっ!」

 

 善吉が顔をしかめる。

 現れたバルジャンの姿は半透明に揺らぎ、本来の力を維持できていない。

 

「なんだ……これは!」

 

 真もすぐに仮面へ手を掛ける。

 

「ペルソナ!」

 

 青い炎が舞い、ヨハンナが姿を現す。

 だが、鋼鉄の車体には細かなひびのような光が走り、エンジン音も弱々しい。

 

「やはり……。」

 

 真は険しい表情になる。

 

「出力が大きく低下しています。」

 

 知が驚いて振り返る。

 

「先生!」

 

 ミロクは静かに頷いた。

 

「やっぱりね。」

「番人が目覚め始めてる。」

「番人?」

 

 善吉が尋ねる。

 ミロクは境界の奥へ視線を向けた。

 

「神器の欠片を守る存在。」

 

「番人が目覚めると、この周囲は境界そのものの力が強くなるの。」

「境界で生まれた力は受け入れる。」

「でも、現実世界で覚醒したペルソナは拒絶されるのよ。」

 

 真はヨハンナを見つめながら静かに頷く。

 

「だから維持するだけで消耗しているんですね。」

「長時間の戦闘は危険です。」

 

 善吉は苦笑した。

 

「まいったな。」

「歳は取りたくねぇ。」

 

 ミロクは首を横に振る。

 

「歳じゃないわ♡」

「世界の相性よ。」

 

 そして知へ向き直る。

 

「知。」

「この境界で一番戦えるのはアンタ。」

「アビスギアはこの世界の力。」

「だから拒絶されない。」

 

 知は静かに頷く。

 

「……分かった。」

 

 その時だった。

 

「ギシャアアアッ!!」

 

 三体のシャドウが一斉に襲い掛かる。

 知は前へ飛び出した。

 右腕のアビスギアで爪を受け止める。

 重い衝撃が腕へ伝わる。

 

「くっ!」

 

 横から獣型シャドウが飛び掛かる。

 その前へ雷斗が滑り込んだ。

 

「させるか!」

 

 鋭い前蹴り。

 続けて後ろ回し蹴り。

 さらに飛び後ろ蹴り。

 学生チャンピオンとして鍛え上げた蹴り技が、獣型シャドウを押し返す。

 だが、決定打にはならない。

 

「くそっ!」

「やっぱり倒し切れねぇ!」

 

 知は右腕を構える。

 

「エイハ!」

 

 紫黒い呪怨が放たれ、仮面のシャドウへ命中する。

 しかし、一体を怯ませるだけだった。

 

「まだ……!」

 

 知が息を呑む。

 その時、ミロクがゆっくり前へ出た。

 

「戦いは焦ったら負けよ。」

 

 知が振り返る。

 ミロクは静かに微笑んだ。

 

「よく見てなさい。」

 

 白い勾玉が現れ、ミロクは迷いなく掴む。

「ペルソナ。」

 勾玉が砕け散る。

 眩い黄金の光が境界を照らした。

 

「現れなさい――ロクメイ。」

 

 光の中から姿を現したのは、巨大な神鹿。

 六本の黄金の角。

 神々しい白銀の身体。

 その瞳は慈愛に満ちていた。

 知は思わず見惚れる。

 

「これが……ミロクのペルソナ。」

 

 ロクメイが静かに角を掲げる。

 

「ラクカジャ。」

 

 柔らかな光が知と雷斗を包み込む。

 二人の身体が軽くなる。

 続けて、

 

「スクカジャ。」

 

 風のような光が身体を駆け抜けた。

 ミロクは知へ微笑む。

 

「覚えておきなさい。」

「強い人ほど、一人で戦わない。」

「仲間を活かすことも力なの。」

 

 知は大きく頷いた。

 

「はい!」

 

 雷斗がシャドウの攻撃をかわす。

 

「知!」

「今だ!」

 

 その一瞬の隙を知は見逃さない。

 深く息を吸う。

 敵を見る。

 仲間を見る。

 そして右腕を突き出した。

 

「エイハ!」

 

 紫黒い呪怨が一直線に走る。

 仮面のシャドウを貫き、その身体は黒い粒子となって消滅した。

 残る二体も善吉と真が最低限の援護を行い、雷斗の蹴りで体勢を崩した隙を知がエイハで撃破する。

 戦いが終わると、一枚のペルソナメダルが地面へ転がった。

 知は静かに拾い上げる。

 その瞬間。

 ミロクの角が激しく輝いた。

 

「……!」

 

 笑顔が消える。

 ゴゴゴゴゴ……。

 境界全体が震え始めた。

 遥か彼方から、天地を揺るがす咆哮が響き渡る。

 グオオオオオオオオオオッ!!

 善吉が歯を食いしばる。

 

「この威圧感……。」

 

 真もヨハンナを維持できず、ペルソナが光となって消えていく。

 

「限界です……。」

 

 ミロクは険しい表情のまま奥を見据えた。

 

「神器の欠片を守る番人。」

「完全に目覚めるのも時間の問題ね。」

 

 知は拳を握る。

 

「あれと戦うには……。」

 

 ミロクは静かに頷いた。

 

「もっと強くなること。」

「そして神器の欠片を見つけること。」

「今日は退きましょう。」

 

 一行は境界の出口へ向かって歩き始める。

 その背後では、番人の咆哮がいつまでも境界へ響き渡っていた。




13話
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