ペルソナX訂正版   作:keimei

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第14話消えた生徒会長候補(前編)

境界から戻った知たちは、生徒会室前の龍の鏡を後にし、校舎を出た。

 空は夕焼けに染まり、遷都学園のグラウンドからは部活動に励む生徒たちの声が聞こえてくる。

 しかし、知たちの表情は明るくなかった。

 境界で感じた"番人"の圧倒的な存在感が、頭から離れない。

 

「今日は完全に力不足だったな。」

 

 善吉が静かに口を開く。

 知は申し訳なさそうに俯いた。

 

「すみません……。」

「僕がもっと強ければ……。」

 

 善吉は苦笑しながら知の肩を軽く叩く。

 

「違う。」

「反省はしても、自分を責めるな。」

「お前はまだペルソナに目覚めたばかりだ。」

「それでも仲間と連携して戦えた。」

「まずはそこを評価しろ。」

 

 真も頷く。

 

「知君は敵をよく観察できていました。」

「以前より落ち着いて戦えています。」

「これから経験を積めば、必ず強くなります。」

 

 知は二人の言葉を胸に刻むように頷いた。

 一方、雷斗は悔しそうに拳を握っていた。

 

「俺だけ……何もできなかった。」

「蹴りは効いても倒しきれない。」

「結局、知に任せるしかなかった。」

 

 善吉は優しく笑う。

 

「焦るな。」

「誰にでも、自分の力と向き合う時が来る。」

 

 雷斗は黙ったまま頷いた。

 その様子を見ていたミロクが、腰に手を当てながら口を開く。

 

「今日のアンタたちは六十五点♡」

「連携は良かったけど、まだ周りを見る余裕が足りないわね。」

 

 知が苦笑する。

 

「結構厳しいですね。」

「愛のある採点よ♡」

 

 ミロクは得意げに胸を張った。

 

◇◇◇

 

 その夜。

 割烹『霞』。

 店内には出汁の香りが漂い、知たちは夕食を囲んでいた。

 

「今日はみんな疲れたでしょう。」

 

 霞が料理を運んでくる。

 

「たくさん食べてね。」

「いただきます。」

 

 四人が箸を手にした、その時だった。

 ガラッ。

 店の引き戸がゆっくり開く。

 一頭の小さな子鹿が店へ入ってきた。

 知は思わず立ち上がる。

 

「ミロク!」

 

 子鹿は嬉しそうに鳴いた。

 

「アラ〜♡ お腹空いたわぁ♡」

 

 知たちには、いつものオネエ口調ではっきり聞こえる。

 しかし霞には、

 

「キューン。」

 

 という普通の鳴き声にしか聞こえていなかった。

 

「あら。」

「かわいい鹿。」

「どこから来たのかしら。」

 

 霞は驚きながらも優しく笑う。

 ミロクは知たちを見上げる。

 

「現実世界だとこの姿なのよ♡」

「神々しさが隠れちゃうのが難点ねぇ。」

 

 雷斗が笑いを堪える。

 

「どう見ても普通のバンビだ。」

「失礼ね!」

「神鹿よ♡」

 

 しかし周囲には、

 

「キューン!」

 

 としか聞こえない。

 善吉が苦笑する。

 

「そのギャップは反則だな。」

 

 霞は厨房から人参を一本持ってきて、子鹿の前へそっと置いた。

「お腹空いてたのかな?」

 

 ミロクは目を輝かせる。

 

「いただきまーす♡」

 

 夢中で人参を食べ始める。

 その姿は、誰が見ても可愛らしい子鹿そのものだった。

 知たちは思わず笑顔になる。

 境界での緊張が、少しだけ解けた夜だった。

 

◇◇◇

 

 翌朝。

 遷都学園。

 二年A組。

 朝のホームルーム。

 担任の和宮先生が教室へ入ってくる。

 しかし、その表情はいつもより険しい。

 教室全体が静まり返る。

 

「みんな、おはよう。」

「今日は先に連絡事項があります。」

 

 知は嫌な予感がした。

 先生は静かに言葉を続ける。

 

「昨夜から、二年生で次期生徒会長候補の小田上さんと連絡が取れなくなっています。」

 

 教室が一気にざわつく。

 

「えっ?」

「行方不明?」

「何か事件?」

 

 和宮先生は生徒たちを落ち着かせるように手を上げた。

 

「現在、ご家族が警察へ届け出を出し、捜索が行われています。」

「もし昨日以降、小田上さんを見かけた人や、何か心当たりがある人は先生まで知らせてください。」

 

 知は机の下で拳を握る。

 脳裏に浮かぶのは、境界で感じた番人の気配。

 そして、以前境界の入口付近で見かけた小田上の姿。

 

(まさか……。)

 

 その時、教室の窓の外から一頭の子鹿がひょこっと顔を覗かせた。

 

「キューン。」

 

 クラスメイトたちは微笑む。

 

「また鹿だ。」

「奈良らしいね。」

 

 しかし知たち四人には、その鳴き声がはっきりと言葉になって聞こえた。

 

「知。」

「嫌な予感がするわ。」

「急いで調べた方がいいかもしれない。」

 

 知は静かに窓の外のミロクを見つめ、小さく頷いた。

 小田上の失踪。

 それは、境界と現実を繋ぐ新たな事件の幕開けだった――。




14話
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