ペルソナX訂正版   作:keimei

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第15話 消えた生徒会長候補(後編)

朝のホームルームが終わると、二年A組はざわめきに包まれた。

 

「小田上が行方不明なんて……。」

「昨日まで普通にいたよな?」

「事件じゃないのか?」

 

 不安げな声が教室中に広がる。

 知は窓の外を見つめていた。

 校庭の木陰には、一頭の小さな子鹿が座っている。

 周囲の生徒たちは「かわいい鹿だ」と写真を撮ったり、見守ったりしていた。

 だが、知たちには違って見える。

 

「アラ〜♡事件の匂いしかしないわねぇ。」

 

 知は小さく息を吐く。

 

「ミロク……。」

 

 雷斗も窓の外へ視線を向ける。

 

「先生たちには普通の鹿なんだよな。」

「そう、アタシの声が聞こえるのは、境界と繋がったアンタたちだけ♡」

 

 その時、教室の前を善吉が通りかかる。

 歴史の教材を抱えながら、知たちへ一瞬だけ視線を向けた。

 

「放課後旧校舎裏に来い」

 

 それだけを静かに告げ、歩き去っていく。

 続いて真も公民の教材を抱えながら廊下を通る。

 知へ小さく頷き、そのまま教室を後にした。

 知も小さく頷き返す。

 放課後に集まる。

 それだけで十分だった。

 

◇◇◇

 

 昼休み。

 知と雷斗は屋上へ向かう。

 重い扉を開けると、フェンスの前で日向ぼっこをしている子鹿が一頭。

 ミロクだった。

 

「遅いじゃない♡」

 

 雷斗は苦笑する。

 

「相変わらずその姿だと緊張感ないな。」

「失礼ねぇ。」

「現実世界では仕方ないのよ♡」

 

 知は表情を引き締めた。

 

「小田上さんのこと、何か分かった?」

 

 ミロクは首を横へ振る。

 

「まだ居場所までは分からない。」

「でも、境界の奥から嫌な気配はどんどん強くなってる。」

 

 雷斗が腕を組む。

 

「やっぱり番人か。」

「……分からない。」

 

 ミロクは静かに答える。

 

「番人の気配は感じる。」

「でも、それとは別の認知の揺らぎもある。」

「別の……?」

 

 知が聞き返す。

 

「ええ。」

「誰かが境界へ干渉した痕跡。」

「自然に人が迷い込んだ感じじゃない。」

 

 知と雷斗は顔を見合わせた。

 

「つまり……。」

 

 ミロクは真剣な表情になる。

 

「小田上を境界へ連れて行った"誰か"がいる可能性が高い。」

 

 その言葉に、屋上へ冷たい風が吹き抜けた。

 

◇◇◇

 

 放課後。

 旧校舎裏。

 知、雷斗、善吉、真、そしてミロクが集まっていた。

 真は校内地図を広げる。

 

「状況を整理します。」

「小田上さんが最後に確認されたのは昨日の夕方。」

「下校途中で消息を絶っています。」

 

 善吉が腕を組む。

 

「警察は誘拐や事件として捜査を始めた。」

「だが俺たちは、境界との関係も考えなきゃならねぇ。」

 

 知は静かに口を開く。

 

「番人が連れ去ったんでしょうか。」

 

 ミロクはゆっくり首を横へ振る。

 

「断定はできない。」

「番人は神器の欠片を守る存在。」

「自分から現実世界へ出て人間をさらうような存在じゃないの。」

 

 真が考え込む。

 

「つまり……。」

「番人とは別に、境界を利用している人物がいる可能性がありますね。」

 

 善吉の表情が険しくなる。

 

「ああ。」

「もしそうなら、相手は境界の存在を知ってる。」

 

 雷斗は拳を握る。

 

「じゃあ、そいつが小田上を……。」

 

 ミロクは静かに頷いた。

 

「その可能性は十分あるわ。」

 

 知は拳を強く握り締める。

 

「必ず助け出します。」

「そして……。」

「連れ去った犯人も見つけます。」

 

 善吉は小さく笑った。

 

「その意気だ。」

「だが焦るな。」

「今の俺たちじゃ番人にも敵わねぇ。」

 

 真も続ける。

 

「まずは知君の戦闘訓練。」

「そして境界の調査を優先しましょう。」

 

 ミロクは笑顔を取り戻す。

 

「その判断、百点よ♡人間急がば回れ。焦った人から境界に飲み込まれるんだから。」

 

 全員が静かに頷いた。

 新たな目的は決まった。

 小田上を救出すること。

 そして、境界を利用する"何者か"の正体を突き止めること。

 

◇◇◇

 

 一方、その頃――。

 境界最深部。

 冷たい石造りの空間。

 無数の鎖が床を這い、巨大な鏡が静かに佇んでいた。

 

「……ここは。」

 

 一人の少年がゆっくりと目を覚ます。

 小田上だった。

 制服には土埃が付き、額には小さな擦り傷がある。

 周囲を見回しても出口はない。

 

「俺は……どうしてこんな場所に。」

 

 記憶を辿る。

 昨日の放課後。

 下校途中。

 誰かに呼び止められた。

 そこで記憶は途切れていた。

 

「くっ……。」

 

 頭に鋭い痛みが走る。

 

「思い出せない……。」

 

 その時だった。

 ゴゴゴゴゴ……。

 巨大な鏡がゆっくりと揺れ始める。

 鏡の奥から、地の底を震わせるような咆哮が響いた。

 グオオオオオオオオオッ!!

 小田上は思わず身構える。

 

「なんだ……!」

 

 しかし、その咆哮とは別に。

 鏡の表面へ、一人の人影が映る。

 黒いロングコート。

 顔は暗闇に隠れ、表情は見えない。

 

「……。」

 

 小田上は叫ぶ。

 

「お前が俺をここへ連れてきたのか!」

 

 人影は答えない。

 ただ、小さく笑ったように肩を揺らすと、黒い霧の中へ溶けるように姿を消した。

 

「待て!」

 

 小田上が駆け出そうとした、その瞬間。

 鏡の奥から巨大な黒い影がゆっくりと姿を現し始める。

 赤く光る二つの瞳。

 空間を震わせるほどの威圧感。

 番人は静かに、小田上を見つめていた。

 そしてその背後では、すべてを操る"真犯人"が、まだ誰にも知られることなく動き始めていた――。

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