ペルソナX訂正版   作:keimei

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第16話 心の檻

放課後。

 

 遷都学園、生徒会室。

 

 龍の鏡の前に、知、雷斗、真、善吉、そしてミロクが集まっていた。

 

 善吉は腕を組み、全員を見渡す。

 

「今回の目的は二つ。」

 

「小田上を救出すること。」

 

「そして境界で何が起きているのか確かめることだ。」

 

 真も静かに頷く。

 

「昨日から調べていた件について、お伝えしたいことがあります。」

 

 雷斗が真を見る。

 

「何かわかったのか。」

 

 真は数枚の資料を差し出した。

 

「テコンドー部廃部事件について、改めて調査しました。」

 

「その結果、一つだけ断言できます。」

 

 一呼吸置き、真は静かに告げた。

 

「小田上さんは、あの事件には一切関与していません。」

 

 雷斗は目を見開く。

 

「……本当か。」

 

「はい。」

 

「当時の行動記録、教師への聞き取り、残された資料を照合しました。」

 

「小田上さんが大会運営へ密告したという事実は確認できませんでした。」

 

 善吉が低い声で続ける。

 

「つまり、お前の部を潰した黒幕は別にいるってことだ。」

 

 知が息を呑む。

 

「真犯人は……。」

 

 真は悔しそうに首を横へ振る。

 

「そこまでは辿り着けませんでした。」

 

「ですが。」

 

「事件を裏で操った人物は、今もどこかにいます。」

 

 雷斗は静かに拳を握った。

 

「……必ず見つける。」

 

◇◇◇

 

 龍の鏡へ全員が手を触れる。

 

 光が溢れ、一行は境界へと足を踏み入れた。

 

 灰色の空。

 

 崩れた社。

 

 静まり返った世界。

 

 以前よりも空気は重く、不気味な静寂が辺りを支配していた。

 

 ミロクが耳を動かす。

 

「……こっち。」

 

 一行は神殿跡へ向かう。

 

 その中央。

 

 一人の少年が力なく座り込んでいた。

 

「小田上さん!」

 

 知が駆け寄る。

 

 制服は泥で汚れ、眼鏡も少しずれている。

 

 それでも小田上は知を見ると、小さく笑った。

 

「転校生……。」

 

「来てくれたんだ。」

 

「もちろんです。」

 

「必ず連れて帰ります。」

 

 小田上は静かに首を横へ振る。

 

「……ごめん。」

 

「全部、僕のせいなんだ。」

 

 雷斗が一歩前へ出る。

 

「何言ってんだ。」

 

「お前は被害者だろ。」

 

 小田上は苦しそうに笑う。

 

「違う。」

 

「僕は、自分から真実を追っていた。」

 

 知が首を傾げる。

 

「真実……?」

 

 小田上は雷斗を見る。

 

「君のテコンドー部廃部事件。」

 

「僕はずっと調べていた。」

 

 雷斗は驚きを隠せなかった。

 

「なんでそこまで……。」

 

 小田上は少しだけ微笑む。

 

「覚えてる?」

 

「小学校の頃。」

 

◇◇◇

 

 幼い頃。

 

 放課後の校庭。

 

 小柄な小田上は数人の上級生に囲まれていた。

 

「優等生ぶるな!」

 

 突き飛ばされ、地面へ倒れる。

 

 その時だった。

 

「おい。」

 

 一人の少年が前へ出る。

 

 幼い雷斗だった。

 

「一人相手に何してんだ。」

 

 上級生が睨み付ける。

 

「関係ねぇだろ。」

 

「ある。」

 

 雷斗は小田上の前へ立つ。

 

「そいつを泣かせるなら。」

 

「俺が相手になる。」

 

 その真っ直ぐな眼差しに、上級生たちは舌打ちしながら立ち去った。

 

 帰り道。

 

 小田上が俯いたまま呟く。

 

「ありがとう……。」

 

 雷斗は照れ臭そうに笑った。

 

「困ってる奴を助けるのは当たり前だろ。」

 

◇◇◇

 

 回想が終わる。

 

 小田上は静かに話し始めた。

 

「僕はあの日、決めた。」

 

「雷斗みたいな強さは持てない。」

 

「だから勉強して。」

 

「知識で人を守れる人間になろうって。」

 

「そのために生徒会へ入って。」

 

「次期生徒会長候補になって。」

 

「そして……。」

 

「雷斗の事件も調べ続けた。」

 

 雷斗は黙って聞いていた。

 

「僕は信じてた。」

 

「雷斗があんなことをする人じゃないって。」

 

「だから絶対に真犯人を見つけたかった。」

 

 知が静かに尋ねる。

 

「調査して何かわかったんですか?」

 

 小田上はゆっくり頷く。

 

「でも。」

 

「調べれば調べるほど、おかしなことばかり起きた。」

 

「ある日突然。」

 

「『雷斗を大会運営へ密告したのは小田上だ。』」

 

「そんな噂が学校中へ広まった。」

 

 雷斗は俯き、小さく呟く。

 

「……俺も。」

 

「その噂を信じた。」

 

 小田上は静かに目を閉じる。

 

「うん。」

 

「当然だと思った。」

 

「僕は何も説明しなかった。」

 

「説明する前に、真犯人を見つけられると思ってたから。」

 

 雷斗は拳を握る。

 

「信じたくなかった。」

 

「でも皆がそう言う。」

 

「お前も何も話さない。」

 

「だから……。」

 

「お前が裏切ったんだって、自分に言い聞かせるしかなかった。」

 

 小田上は寂しそうに笑った。

 

「君を責める気はない。」

 

「むしろ僕が悪かった。」

 

「でも。」

 

「真犯人だけは見つけたかった。」

 

 知が息を呑む。

 

「その後は……?」

 

 小田上は苦しそうに続ける。

 

「噂の出所だと言われた人物を突き止めた。」

 

「問い詰めようとした。」

 

「でも、その前日に。」

 

「その人は突然、姿を消した。」

 

 全員の表情が変わる。

 

 善吉が低く呟く。

 

「失踪か……。」

 

「警察は家出扱いだったでも僕には偶然には思えなかった。それから学校では、こんな噂が流れ始めた。」

 

「真実を知ろうとした者は、音もなく消える。」

 

 辺りが静まり返る。

 

 真も険しい表情になる。

 

「その噂は……。」

 

「最近起きている失踪事件と酷似しています。」

 

 小田上は頷く。

 

「僕もそう思った。だから調査を続けたそしてある日黒いロングコートの男に会った。」

 

「『真実を知りたければ来い。』」

 

「そう言われて気付けばここにいた。」

 

 その瞬間。

 

 ゴオオオオオッ!!

 

 黒い霧が辺りを覆う。

 

 ミロクが叫ぶ。

 

「来るわ!」

 

 霧の中から、一人の男が現れる。

 

 黒いロングコート。

 

 顔立ちは小田上と全く同じ。

 

 赤黒い瞳だけが異様な光を放っていた。

 

 男は口元を歪める。

 

「ようやく会えたな。」

 

 知が剣を構える。

 

「誰だ!」

 

 男は静かに笑う。

 

「俺は、小田上、お前自身だ、俺は、お前のシャドウ。」

 

 小田上の表情が凍り付く。

 

「違う……。」

 

 シャドウは笑う。

 

「期待に応え続けた優等生。」

 

「本当は苦しかった、雷斗にも信じてもらえなかった、それでも笑い続けた、全部、無駄だったじゃないか。」

 

「違う!」

 

 小田上が叫ぶ。

 

「違わない、俺は、お前自身なんだから。」

 

 シャドウの身体が黒い霧へ変わる。

 

「さぁ、もう身体を渡せ。」

 

 黒い霧が一気に小田上を包み込む。

 

「ぐああああああっ!!」

 

 知が駆け出す。

 

「小田上さん!」

 

 しかし。

 

 ドォォォン!!

 

 衝撃波が知を吹き飛ばした。

 

 苦しむ小田上。

 

 その瞳がゆっくり赤黒く染まっていく。

 

「アハハハハハ……ようやく自由になれた。」

 

 小田上の身体は、完全にシャドウへ支配されていた。

 

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