ペルソナX訂正版   作:keimei

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第17話 開戦

小田上だった"何か"は、ゆっくりと首を鳴らした。

 

 ゴキッ、ゴキッ――。

 

 その音だけで空気が凍り付く。

 

 赤黒く染まった瞳は知たちを見渡し、不気味な笑みを浮かべる。

 

「いい身体だ……。知識も体力も申し分ない。よくここまで磨き上げてくれたな、小田上。」

 

 知はアビスギアを構え、一歩前へ踏み出した。

 

「小田上さんを返してください!」

 

 シャドウは肩をすくめる。

 

「返す? 勘違いするな。俺は小田上のシャドウ。つまり、小田上本人でもある。あいつが心の奥底へ押し込め、誰にも見せようとしなかった本音そのものだ。」

 

 雷斗は拳を握り締める。

 

「そんなもんが小田上なわけあるか!」

 

 シャドウは雷斗を見るなり、愉快そうに笑った。

 

「あるさ。お前に信じてもらえなかった苦しみも、お前に疑われた絶望も、全部俺が知っている。だからこそ、俺はここにいる。」

 

 その言葉に雷斗の身体が僅かに震えた。

 

 知は雷斗の前へ立つ。

 

「惑わされちゃ駄目だ! あれは小田上さんじゃない!」

 

「そうか?」

 

 シャドウが右手を軽く掲げる。

 

 その瞬間、地面から黒い結晶が次々と突き出した。

 

 轟音と共に巨大な結界が形成され、善吉、真、そしてミロクを包み込む。

 

「しまった!」

 

 善吉はすぐにバルジャンを召喚し、大斧を叩き付ける。

 

 凄まじい衝撃が響くが、結界には傷一つ付かない。

 

「くそっ!」

 

 真もヨハンナを召喚し、核熱属性の攻撃を放つ。

 

 爆炎が結界を包み込む。

 

 しかし黒い壁は何事もなかったように爆煙を飲み込んだ。

 

 ミロクもロクメイを呼び出す。

 

「ロクメイ! お願い!」

 

 神々しい光が結界を照らす。

 

 それでも浄化の力は黒い闇へ吸い込まれ、静かに消えていった。

 

 シャドウは鼻で笑う。

 

「無駄だ。この空間は番人の力に支配されている。境界由来ではないペルソナは、本来の半分も力を発揮できない。ましてや半覚醒の獣ごときではな」

 

 善吉は悔しそうに拳を壁へ叩き付けミロクは悔しそうに壁を叩く。

 

「知! 雷斗! 俺たちは必ずこの結界を壊す! それまで時間を稼げ!」

 

「はい!」

 

 知は短く返事をすると、雷斗へ視線を向けた。

 

「雷斗、二人で行こう!」

 

「ああ、絶対に小田上を助ける!」

 

 二人は同時に駆け出した。

 

 知は左腕のアビスギアへ赤いペルソナメダルを装填する。

 

 カチッ。

 

 赤い光がアビスギア全体へ走った。

 

「アギ!」

 

 放たれた炎弾が一直線にシャドウへ飛ぶ。

 

 だがシャドウは避けることすらせず、片手で炎を握り潰した。

 

「初歩魔法か。」

 

 知は止まらない。

 

 赤いメダルを抜き取り、青いメダルへ交換する。

 

「ブフ!」

 

 足元を凍らせる冷気が広がる。

 

 シャドウの動きがほんの一瞬だけ止まった。

 

「今だ!」

 

 雷斗が地面を蹴る。

 

 元テコンドー学生チャンピオンの鋭い飛び蹴りがシャドウの側頭部へ迫る。

 

 しかし。

 

 ガシッ。

 

 シャドウはその蹴りを片腕だけで受け止めた。

 

「悪くない蹴りだ。」

 

 そう呟くと、雷斗の足を掴んだまま地面へ叩き付ける。

 

 轟音が響き、石畳が砕け散る。

 

「ぐあっ!」

 

「雷斗!」

 

 知はすぐに緑のメダルを装填した。

 

「ガル!」

 

 突風が吹き荒れ、シャドウの身体を押し返す。

 

 その隙へ知は飛び込み、アビスギアを握った拳を振り抜いた。

 

 鈍い音が響く。

 

 シャドウは半歩だけ後ろへ下がった。

 

「効いた!」

 

 知の表情が明るくなる。

 

 しかしシャドウは笑っていた。

 

「属性を切り替えながら戦う……なるほど、それがお前の戦い方か。面白い。」

 

 知は黄色のメダルへ交換する。

 

「ジオ!」

 

 雷撃がシャドウへ走る。

 

 だが黒い瘴気が雷を飲み込み、そのまま霧散させた。

 

「だが、軽い。」

 

 その一言と同時にシャドウの姿が消える。

 

「えっ……!?」

 

 知が反応するより早く、目の前へ現れたシャドウの拳が腹部へ突き刺さった。

 

「がはっ!!」

 

 知の身体が吹き飛び、石柱へ激突する。

 

 アビスギアから装填されていたメダルが一枚、地面へ転がった。

 

 雷斗は歯を食いしばり、立ち上がる。

 

「知……!」

 

 知は苦しそうに咳き込みながらも、震える手で落ちたメダルを拾い上げ、再びアビスギアへ装填した。

 

「まだ……終われない。」

 

 その姿を見たシャドウは静かに笑う。

 

「器用だ。状況に応じて属性を変える判断も悪くない。だが、お前はまだペルソナを手にして日が浅い。合体も知らず、力の引き出し方も知らない。」

 

 シャドウは知を真っ直ぐ見据える。

 

「ワイルドを持つだけで勝てるほど、ペルソナは甘くない。」

 

 知は息を整え、再び構えを取る。

 

「それでも……俺は負けない!」

 

 雷斗も知の隣へ並び、拳を握り締めた。

 

「一人じゃない。今度は俺も一緒だ。」

 

 二人は視線を交わし、小さく頷く。

 

 そして再び、シャドウ小田上へ向かって駆け出した――。

 

――中編②「覚悟」へ続く。

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