シャドウの言葉が雷斗の胸を深く抉る。
「どうした? 図星か? また守れないぞ。そいつも、この体も、お前はまた何も守れない。アハハハハハハッ!」
狂った笑い声が境界へ響き渡る。
雷斗は奥歯を噛み締め、ゆっくり立ち上がった。
「……黙れ。」
「聞こえんなぁ?」
シャドウは知の髪を掴み、無理やり引き起こす。
知は苦しそうに顔を歪めながらも、シャドウを睨み返した。
「離せ……!」
「離せ? 嫌だねぇ!」
ドゴッ!!
容赦ない拳が知の腹へ突き刺さる。
「がはっ……!」
知の口から血が飛び散る。
その姿を見た雷斗は反射的に駆け出した。
「やめろ!!」
鋭い飛び蹴りがシャドウへ迫る。
しかし。
バシッ。
シャドウは片手で受け止め、そのまま雷斗を地面へ叩き付けた。
「ぐああっ!」
「遅い、軽い、甘い! その程度で俺に勝つ? 笑わせるな!」
シャドウは雷斗の腹を容赦なく踏み付ける。
「がっ……!」
「ほら立てよ、学生チャンピオン! 昔みたいに誰かを助けてみろよ!」
何度も踏み付けられる。
それでも雷斗はシャドウの足を掴み、ゆっくり立ち上がる。
「まだ……終わってない。」
「ククッ……しつこい奴だ。」
シャドウは雷斗を殴り飛ばす。
壁へ叩き付けられた雷斗は血を吐きながらも立ち上がった。
知は震える手でアビスギアを構える。
「雷斗……!」
「来るな!」
雷斗は振り返らず叫ぶ。
「お前は……小田上を助けることだけ考えろ!」
「でも……!」
「俺は……絶対に、お前を守る!」
その瞬間だった。
シャドウは腹を抱え、大声で笑い始める。
「アハハハハハハハハッ!! 守る? まだそんな夢を見ているのか! お前はこいつも、この体も、誰一人守れなかった! なのにまた守るだと!? 本当に滑稽だ!」
その言葉に雷斗の身体が止まる。
脳裏へ過去が蘇る。
誰にも信じてもらえなかった日々。
失った仲間。
小田上を疑ってしまった後悔。
胸が締め付けられる。
シャドウは黒い瘴気を拳へ集め、知へ歩き出した。
「さぁ、終わりだ。」
知は立ち上がろうとする。
しかし身体は動かない。
アビスギアを握る力すら残っていなかった。
シャドウはゆっくり拳を振り上げる。
「まずはこいつから殺してやる。」
「やめろぉぉぉぉぉっ!!」
雷斗は叫びながら走る。
足がもつれる。
身体中が悲鳴を上げる。
それでも止まれない。
知だけは。
仲間だけは。
もう失いたくない。
その瞬間――。
世界から音が消えた。
振り下ろされた拳も。
舞い上がる瓦礫も。
すべてが静止する。
雷斗だけが、白く染まった世界へ足を踏み入れていた。
「……ここは?」
遠くで雷鳴が轟く。
そして白い霧の向こうから、一人の巨大な武神が静かに姿を現した。
その胸には、黄金に輝く勾玉が脈打つように光っていた。
武神は雷斗を真っ直ぐ見据え、低く重い声で問いかける。
「――汝、何のために力を求める。」
雷斗は息を呑み、その問いを受け止めた。
19話