雷斗は目の前に立つ武神を見上げた。
轟く雷鳴。
空を裂く稲妻。
白い霧の世界は、まるで神域そのものだった。
武神の胸に埋め込まれた黄金の勾玉が鼓動を打つたび、空気が震える。
「――汝、何のために力を求める。」
低く響く声。
雷斗は拳を握り締めた。
「仲間を守るためだ。」
武神は微動だにしない。
「偽るな。」
その一言と同時に、雷鳴が轟いた。
景色が一変する。
目の前へ映し出されたのは、幼い頃の自分だった。
泣きながら地面へ座り込む小田上。
その前へ立ち、いじめっ子たちを睨み付ける幼い雷斗。
『もうやめろ!』
幼い自分が叫ぶ。
景色は再び変わる。
テコンドー部。
歓声。
仲間たち。
そして。
『全部、あいつが密告したんだろ!』
『最低だ!』
『もう信用できない!』
雷斗自身が、小田上へ冷たい視線を向けている。
「……違う。」
雷斗は思わず呟いた。
「違う……。」
「違わぬ。それもまた、お前自身。」
武神の声が静かに響く。
さらに景色が変わる。
血だまりの中で倒れる知。
シャドウに支配された小田上。
雷斗は必死に手を伸ばす。
しかし、届かない。
二人の姿は闇へ沈んでいく。
「やめろ……。」
「守れなかった。」
「やめろ!」
「また守れなかった。」
「やめろぉぉぉっ!!」
雷斗は叫びながら拳を振るう。
しかし拳は空を切るだけだった。
武神は静かに雷斗を見下ろした。
「その怒り、その後悔、その無力……それら全てを抱え、お前は何を望む。」
雷斗は肩で息をしながら顔を上げた。
「俺は……。」
拳が震える。
知の笑顔。
善吉のぶっきらぼうな励まし。
真の信頼する眼差し。
ミロクの軽口。
そして。
小田上の苦しそうな笑顔が脳裏を過った。
「俺は……。」
雷斗はゆっくり武神を見据える。
「過去は変えられない。俺が小田上を疑った事実も消えない。信じ切れなかった俺がいたことも……全部、本当だ。」
武神は何も言わず耳を傾ける。
「だけど……だからこそ、もう二度と失いたくない。今度こそ守りたい。仲間を、知を、小田上を……みんなを!」
武神の瞳が僅かに細められる。
「それがお前の答えか。」
「……ああ。」
雷斗は一歩前へ踏み出した。
「俺は誓う。もう逃げない。過去からも、自分自身からも。どんなに傷付いても、俺は仲間を守り抜く!」
雷鳴が天地を揺らす。
武神の胸の黄金の勾玉が、これまで以上に強く輝き始めた。
「……ならば、その覚悟、我が雷に刻み込もう。」
武神はゆっくり右手を掲げる。
黄金の雷光が世界を覆い尽くし自身の心臓に雷が降り注ぐ。
「我が名を発せよ」
「ブチ抜けタケミナカタ!」
20話短めです!