「ブチ抜け、タケミナカタ!」
雷斗の叫びが白き神域へ響き渡った。
刹那――。
天を覆っていた雷雲が激しく渦を巻き、一筋の黄金の雷が轟音と共に雷斗へ降り注ぐ。
ズガァァァァァンッ!!
「ぐあああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
黄金の雷は雷斗の胸を真正面から撃ち抜いた。
凄まじい衝撃が全身を駆け巡り、膝が砕けるように地へ着く。
焼ける。
熱い。
苦しい。
心臓そのものを素手で握り潰されているような激痛。
骨が軋み、血液の一滴一滴が雷へ変わっていくようだった。
それでも雷斗は叫び続ける。
「まだ……終われねぇ!!」
ドクン。
鼓動が鳴る。
ドクン。
さらに強く。
ドクン。
鼓動は雷鳴と重なり、神域全体へ響き渡っていく。
雷斗の胸元が黄金色に輝き始めた。
制服を突き抜けるほどの光。
まるで心臓そのものが外へ飛び出そうとしていた。
「その痛みは覚悟の証。その鼓動は魂の証。恐れるな。お前自身を掴め。」
武神の低く重い声が響く。
雷斗は震える右手を胸へ当てた。
熱い。
だが、その熱さの奥には、確かに自分自身の鼓動があった。
守れなかった仲間。
信じ切れなかった小田上。
何もできず立ち尽くした過去。
そして、今も命懸けで戦っている知。
全てが胸の奥で脈打っていた。
「これが……俺自身。」
雷斗は歯を食いしばる。
「逃げた過去も、後悔も、弱い俺も……全部俺だ!」
拳を強く握る。
「だったら全部背負ってやる!! 二度と仲間を失わないために!!」
雷斗は胸へ腕を深く沈めた。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」
激しい痛み。
それでも腕を止めない。
そして胸の奥で脈打つ光を掴む。
「これが……俺の魂だぁぁぁぁっ!!」
勢いよく引き抜く。
パァァァァァン!!
無数の黄金の雷光が弾け飛んだ。
雷斗の右手には、一つの黄金の勾玉。
鼓動に合わせ、生き物のように脈打っている。
武神は静かに頷いた。
「契約は成された。我が名は建御名方神。雷を統べ、覚悟を試す武神。汝が再び迷う時も、我はその雷となり道を示そう。」
武神の巨体は黄金の雷へ姿を変え始める。
「往け、契約者よ。その雷で運命を切り開け。」
白き神域が音を立てて崩壊する。
雷斗の身体は光へ包まれ、意識は現実へ引き戻されていった。
◇ ◇ ◇
止まっていた時間が動き出す。
シャドウの拳が知へ振り下ろされる。
あと数センチ。
雷斗は拳の中に握られた黄金の勾玉を見つめた。
鼓動と共鳴するように、勾玉は眩く輝いている。
「もう……誰も失わねぇ。」
雷斗は勾玉を強く握り締めた。
「来い……!」
全身へ力を込める。
「ペルソナァァァァァッ!!」
バキィィィィンッ!!
黄金の勾玉が雷斗の手の中で砕け散る。
砕けた破片は無数の雷光となって宙へ舞い上がり、一筋の巨大な雷柱となって境界世界へ落下した。
ズガァァァァァンッ!!
耳をつんざく轟音。
雷柱はシャドウと知の間へ突き刺さり、大地を砕き、周囲へ凄まじい衝撃波を放つ。
「なっ……!?」
シャドウは咄嗟に飛び退いた。
土煙が舞い上がる。
その中心から、一柱の武神がゆっくり姿を現す。
黄金の鎧。
肩から迸る雷。
鋭く輝く双眸。
全身から放たれる圧倒的な神威。
雷を統べる武神――タケミナカタ。
雷斗はゆっくり立ち上がり、口元の血を親指で拭った。
身体は重い。
初めての覚醒で全身が悲鳴を上げている。
それでも、その瞳から迷いは消えていた。
「ここから反撃だ。」
タケミナカタは静かに右手を前へ掲げる。
雷斗も同じように腕を突き出した。
「ジオッ!!」
バチィィィィィッ!!
黄金の雷撃が一直線にシャドウへ襲い掛かる。
「チィッ!」
シャドウは両腕を交差させ受け止める。
雷が全身を駆け巡り、一瞬だけ動きが止まった。
知は目を見開く。
「雷斗……。」
雷斗は振り返ることなく言う。
「説明は後だ。今は小田上を助けるぞ!」
知は痛む身体を起こし、静かに笑った。
「ああ……もちろんだ!」
その声に呼応するようにアビスギアが低く唸り始める。
雷斗と知。
二人は互いに頷き合う。
その瞬間、小田上を取り戻すための反撃が幕を開けた。