黄金の雷撃が境界を駆け抜ける。
シャドウは雷を腕で受け止めながら舌打ちした。
「チッ……! 雷程度で俺を止められると思ったかァ!」
黒い瘴気が爆発する。
衝撃で雷斗と知は後方へ吹き飛ばされた。
「ぐっ……!」
「くそっ……!」
二人は地面を転がりながらも、すぐに立ち上がる。
雷斗は肩で息をしながらタケミナカタを見上げた。
初めて呼び出したペルソナ。
身体中から力が抜けていく。
「まだ……思うように動かせねぇ……。」
タケミナカタは静かに雷斗の横へ立つ。
その姿は揺らぎ、霧のように薄くなっていた。
まだ契約したばかり。
長時間の顕現はできない。
知は雷斗の様子を見ると、小さく笑った。
「無理するな。と言いたいがまだ踏ん張れるだろ」
「当たり前だ。」
雷斗も笑い返す。
「小田上を助けるんだろ。」
「ああ。」
二人は同時に駆け出した。
シャドウは狂ったように笑い始める。
「アハハハハハハハッ!! いいねぇ! 最高だ! 傷だらけなのに立ち上がる! 本当に滑稽だァ!!」
黒い瘴気が拳へ集まる。
「まとめて潰してやるよォ!!」
瘴気を纏った巨大な拳が振り下ろされる。
「雷斗!」
「ああ!」
知はアビスギアを構える。
「メダルチェンジ!【アラミタマ】」
カチッ。
メダルが回転し、新たな力が装填される。
知は真正面から拳を受け止めた。
「ぐぅっ……!」
腕が軋む。
今にも折れそうだ。
それでも退かない。
「雷斗!」
「任せろ!」
雷斗がタケミナカタと共に跳ぶ。
「ジオ!!」
黄金の雷がシャドウの腕を撃ち抜く。
「ぐぁっ!?」
一瞬だけ体勢が崩れた。
その隙を知は見逃さない。
「今だ!」
アビスギアが蒼い輝きを放つ。
「来い!【エンジェル】コウガ!」
光がシャドウの身体を包み込んだ。
「なっ……!?」
シャドウが目を見開く。
身体から黒い霧が引き剥がされ始めていた。
「やめろォォォォ!!」
瘴気が暴れ狂う。
知は歯を食いしばる。
「雷斗!」
「分かってる!」
雷斗は小田上へ向かって叫んだ。
「小田上ぁぁぁ!! 聞こえるんだろ!!」
黒い瘴気の奥で、小田上の瞳が微かに揺れる。
「……らい、と。」
「帰って来い!」
雷斗の叫びが境界へ響く。
「お前は一人じゃねぇ!!」
知も続ける。
「みんな待ってる! だから戻って来い!」
その瞬間。
アビスギアが一際強く輝いた。
バァァァァァン!!
黒い霧が弾け飛ぶ。
「ガァァァァァァァァッ!!」
シャドウの絶叫。
そして、小田上の身体が前へ倒れ込む。
「小田上!」
雷斗が受け止める。
息はある。
しかし身体は震え続けていた。
ゆっくりと目を開ける小田上。
その視線の先には、自分と全く同じ姿をしたシャドウが立っていた。
だが、その身体は崩れ始めている。
「アハ……アハハハハハ……!」
シャドウは腹を抱えて笑った。
「何だよ、その顔! 助かったと思ってるのかァ!? まだ終わってねぇんだよ!!」
黒い瘴気が噴き上がる。
身体が膨れ上がる。
人の姿を保てなくなるほどの瘴気が境界を埋め尽くした。
その瞬間。
結界の一部へ大きな亀裂が走る。
バキィィィン!!
光が差し込む。
「ようやく開いたわねぇ!」
聞き慣れた声。
亀裂から飛び込んできたのはミロクだった。
大鎌を肩へ担ぎ、不敵に笑う。
「まったく、アンタたちって本当に手が掛かるんだから。」
善吉が振り返る。
「ミロク!ずりぃぞ!」
「アタシも混ぜなさいよ。結界でフラストレーションが満タンだから」
ミロクはシャドウを見据え、表情を引き締めた。
「でも安心するのはまだ早いわ。この気配……普通じゃない。」
黒い瘴気はなおも膨れ上がる。
シャドウは狂気に満ちた笑みを浮かべる。
「アハハハハハハハハッ!! そうだ! これでいい! 全部壊してやる! 全部だァァァ!!」
境界そのものが激しく揺れ始めた――。