ペルソナX訂正版   作:keimei

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第24話 蒼き十字架

世界から音が消えた。

 

 暴走シャドウの咆哮も、雷斗たちの叫びも、舞い上がる瓦礫さえ空中で静止する。

 

 色を失った世界で、動けるのは小田上だけだった。

 

「……ここは。」

 

 白い霧がどこまでも広がる静寂の世界。

 

 風も音もない。

 

 それでも、不思議と恐怖は感じなかった。

 

 霧の向こうから、一人の青年が静かに歩み寄る。

 

 純白の法衣。

 

 胸元には十字架。

 

 穏やかな笑みを浮かべながらも、その瞳には揺るぎない信念が宿っていた。

 

 青年は小田上の前で足を止め、静かに問い掛ける。

 

「……汝、何を望む。」

 

 その一言が、小田上の胸を深く揺さぶった。

 

「俺は……。」

 

 言葉が続かない。

 

 すると白い世界へ波紋が広がり、幼い頃の記憶が映し出される。

 

 泣いていた自分。

 

 その前へ迷いなく立ち、手を差し伸べてくれた雷斗。

 

『行こう、小田上。』

 

 景色は変わる。

 

 

 

 事件を追い続けた日々。

 

 そして雷斗から向けられた疑いの眼差し。

 

『もう信用できない。』

 

 胸が締め付けられる。

 

「違う……。」

 

「違わない。あれもまた、お前が歩んだ道。信じてもらえなかった苦しみも、友に疑われた悲しみも、その全てがお前自身だ。」

 

 小田上は唇を噛み締める。

 

 さらに景色が変わる。

 

 雷斗が傷だらけになりながら立ち上がる。

 

 知が血を流しながら戦い続ける。

 

 ミロクが笑みを浮かべ、大鎌を振るう。

 

 皆、自分を守るために戦っている。

 

 それなのに。

 

 自分だけが恐怖で動けなかった。

 

「俺だけ……何もできなかった。怖かった……逃げたかった……また守られて終わるところだった……。」

 

 青年は静かに頷く。

 

「恐怖を知ることは弱さではない。恐怖から目を逸らし続けることこそ、本当の弱さだ。」

 

 小田上はゆっくり顔を上げた。

 

「俺は弱い。恐怖もある。自分が許せない。でも、それでも俺は前へ進む。もう誰かに守られるだけじゃ終わらない。俺を信じてくれた友達を、俺を助けてくれた幼馴染を、今度は俺が守る!」

 

 青年の口元に穏やかな笑みが浮かぶ。

 

「その答えを待っていた。我が名は――天草四郎。その信念、共に貫こう。」

 

「ああ……力を貸してくれ!」

 

 小田上は迷いなく右手を伸ばし、天草四郎の手を強く握った。

 

 眩い蒼白い光が二人を包み込む。

 

 胸の奥が熱い。

 

 鼓動が高鳴る。

 

 小田上は自らの胸へ手を差し入れ、一つの蒼い勾玉を取り出した。

 

 脈打つように輝く、自らの心。

 

「これが……俺の力。」

 

 強く握り締める。

 

「もう逃げない。俺は俺自身を受け入れる!」

 

 叫びと共に力を込めた。

 

「来いッ!! ペルソナァァァァッ!!」

 

 バキィィィィンッ!!

 

 蒼い勾玉が砕け散る。

 

 無数の光が渦を巻き、一人の青年が静かに舞い降りた。

 

 純白の法衣。

 

 背に浮かぶ十字架。

 

 静かな笑みを浮かべたその姿は、小田上の隣へ降り立つ。

 

「某は天草四郎。革命の狼煙は上げられた、汝と共に歩み、その信念を貫こう。」

 

「ああ……行こう。」

 

 白い世界が崩れ始める。

 

 視界が光に包まれた次の瞬間、小田上は現実へ帰還した。

 

 暴走シャドウの拳が雷斗たちへ振り下ろされる、その寸前。

 

「遅れたな。」

 

 静かな声と共に、純白の十字架を背負った天草四郎が戦場へ舞い降りた。

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