純白の光が戦場へ舞い降りる。
暴走シャドウの拳が雷斗へ届く寸前、一面の氷壁が轟音と共に出現し、その一撃を受け止めた。
ドォォォォンッ!!
砕け散る氷片が雪のように舞う。
その奥から、小田上が静かに歩み出る。
右手には蒼く輝く十字剣。
その背後には純白の法衣を纏った天草四郎が寄り添うように立っていた。
雷斗は血を拭いながら笑う。
「……遅ぇよ。」
「悪い。」
短い返事。
その一言だけで十分だった。
知は胸を撫で下ろす。
「小田上さん……!」
ミロクは大鎌を肩へ担ぎ、嬉しそうに笑う。
「ようやく四人揃ったじゃなぁい!」
暴走シャドウは腹を抱え、狂ったように笑い始めた。
「アハハハハハハッ!! 何だその剣はァ!? 少し強くなった程度で勝った気かァ!? 結局、お前は守られてばかりの腰抜けなんだよ!!」
小田上は静かに十字剣を構えた。
「……違う。」
「アァ?」
「俺は弱い。怖かった。逃げたかった。でも、その弱さから逃げるのは今日で終わりだ。」
暴走シャドウが漆黒の拳を振り上げる。
「だったら力づくで思い出させてやるよォ!!」
「天草四郎――ラクカジャ!」
蒼い光が雷斗と知を包み込む。
身体へ守護の力が満ちていく。
その瞬間、天草四郎が静かに十字剣へ手を添えた。
「貴殿が守護する者のために振るうのであれば、この剣技をお貸ししましょう。守護の加護が続く間のみ振るえる守護の剣――十字斬です。」
十字剣へ淡い氷が宿る。
小田上は強く握り締めた。
「ありがとう……天草四郎。」
「雷斗! 突っ込め!」
「ああ!」
雷斗が一気に駆け出す。
「タケミナカタ! スクカジャ!」
黄金の雷が雷斗を包み、身体能力が飛躍的に高まる。
その時、背後のタケミナカタが低く笑った。
「今の貴様になら、我が拳を貸してやろう。加速の加護がある間のみ振るえる雷神の一撃――雷拳だ。」
雷斗の右拳へ稲妻が集束していく。
「これが……雷拳!」
雷斗は暴走シャドウの懐へ潜り込む。
「雷拳ッ!!」
バギィィィィンッ!!
雷を纏った拳が暴走シャドウの腹へ深々と突き刺さる。
「ガァァァァッ!!」
巨体が大きく仰け反った。
「今よォ! 知ちゃん!」
「はい!」
知はアビスギアを握り締め、雷斗が作った隙へ飛び込む。
鋭い拳撃。
流れるような回し蹴り。
暴走シャドウは防戦一方となる。
「まだです!」
知が後方へ飛び退く。
その瞬間、小田上が右手を掲げた。
「ブフ!」
無数の氷柱が地面を突き破り、暴走シャドウの足を一瞬で凍らせた。
「動けェ……ねぇ!?」
「これで終わりだ!」
小田上は地面を蹴る。
ラクカジャの蒼い加護が十字剣へ集まり、刀身が淡く輝いた。
「十字斬―!!」
一閃。
十字を描いた氷の斬撃が暴走シャドウの胸を深く切り裂く。
「グアァァァァァァァァッ!!」
暴走シャドウは吹き飛び、何度も地面を転がる。
雷斗、小田上、知、ミロク。
四人は初めて肩を並べ、同じ敵へ立ち向かっていた。
暴走シャドウは膝をつき、身体から黒い瘴気を噴き出す。
「ハァ……ハァ……。」
知は安堵の息を漏らした。
「やった……。」
しかし。
「アハ……アハハハハハハハハハッ!!」
狂気の笑い声が境界を震わせる。
暴走シャドウはゆっくり立ち上がった。
全身から溢れる瘴気は先程までとは比べものにならない。
「最高だ……最高だァ!! だったら全部まとめて壊してやるよォ!!」
右腕へ瘴気が凝縮される。
雷斗が叫ぶ。
「知! 離れろ!」
しかし、間に合わない。
暴走シャドウは雷斗目掛け一直線に突っ込んだ。
「雷斗ッ!!」
知は迷わず飛び込み、雷斗を突き飛ばす。
「知ッ!!」
ドゴォォォォォンッ!!
凄まじい衝撃。
全身の骨が軋み、視界が赤く染まる。
それでも知は歯を食いしばった。
「まだ……倒れ……ない……!」
「甘いんだよォ!!」
暴走シャドウはさらに瘴気を纏った拳を振り抜く。
知の身体は宙を舞い、崩れた石柱へ激突した。
ドサリ、と力なく倒れ込む。
「「「知!!」」」
三人の叫びが響く。
知の意識はゆっくりと闇へ沈んでいく。
――カチッ。
小さな時計の音。
――カチ、カチ、カチ……
無数の時計が静かに時を刻み始める。
知は重い瞼をゆっくり開いた。
そこには、壁一面を埋め尽くす青い時計。
静寂に包まれた、不思議な部屋が広がっていた――。