ペルソナX訂正版   作:keimei

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第6話 深淵との契約

「捕まえろ。」

 

 小田上が静かに手を上げる。

 その一言だけで、役員シャドウたちが一斉に動き出した。

 

「走るぞ!」

 

 雷斗が知の腕を掴み、廊下を駆け出す。

 後ろから無数の足音が響く。

 振り返ると、制服姿だった役員たちは完全に異形へ姿を変えていた。

 黒い霧を纏い、巨大なカボチャのような頭。

 裂けた口から低いうなり声を上げながら迫ってくる。

 

「なんなんだよ、あいつら!」

「わからない。」

 

 知は短く答える。

 二人は角を曲がる。

 しかし、その先にもシャドウ。

 

「前からも!」

 

 左右の教室からも現れる。

 完全に包囲されていた。

 

「くそっ!」

 

 雷斗は拳を構える。

 

「突破する!」

 

 テコンドー仕込みの前蹴りがシャドウの腹へ突き刺さる。

 だが。

 

「……硬っ!」

 

 シャドウは一歩も退かない。

 逆に拳を振り抜く。

 ドゴォッ!

 

「ぐあっ!」

 

 雷斗は壁まで吹き飛ばされた。

 

「雷斗!」

 

 知が駆け寄ろうとした瞬間、横から別のシャドウが殴りかかる。

 避けきれない。

 拳が腹へめり込む。

 

「ぐっ!」

 

 息が止まる。

 膝をついた知の肩を別のシャドウが掴んだ。

 そのまま床へ叩きつけられる。

 

「がっ!」

 

 視界が揺れる。

 体中が痛い。

 それでも立ち上がろうとする。

 

「まだ立つの?」

 

 小田上が笑いながら歩いてきた。

 

「往生際が悪いね。」

 

 雷斗は歯を食いしばる。

 

「……知には手を出すな。」

「へぇ?」

 

 小田上は警棒を肩へ担ぐ。

 

「命令?」

「負け犬のくせに?」

 

 ゴッ!!

 警棒が雷斗の腹へ叩き込まれる。

 

「ぐあぁっ!」

「雷斗!」

「まだ終わらないよ。」

 

 ゴッ。

 ゴッ。

 何度も振り下ろされる警棒。

 雷斗は倒れながらも睨み返す。

 

「その目。」

 

 小田上は鼻で笑う。

 

「嫌いなんだよ。」

 

 さらに警棒を振り上げる。

 

「やめろ!」

 

 知は必死にもがく。

 しかしシャドウに押さえ付けられ、指一本動かせない。

 無力だった。

 何もできない。

 

(助けたい。)

(でも力がない。)

(こんな終わり方は嫌だ。)

 

 その瞬間。

 世界から音が消えた。

 真っ暗な空間。

 底の見えない深淵。

 そこから低い声が響く。

 

【――力を望むか。】

「……望む。」

【汝は何を差し出す。】

「何でも。」

【神器すら捧げられるか。】

 

 知の脳裏に、駅前で出会った銀髪の少女が浮かぶ。

 黒い腕時計。

 あれが神器。

 理由は分からない。

 だが迷いはなかった。

 

「構わない。」

【契約成立。】

【我は汝。】

【汝は我。】

【深淵より現れし無限の器。】

【我が名は――】

「アビス!」

 

 右腕の腕時計が眩く輝く。

 黒い装甲が腕を包み込み、青紫のラインが走る。

 腕時計は一つの籠手へと姿を変えた。

 

『神器適合を確認。』

『ペルソナ《アビス》を確認。』

『アビスギア起動。』

 

 知は右腕を見る。

 

「これが……。」

 

 自然と体が動く。

 右腕をシャドウへ向けた。

 

「エイ!」

 

 紫黒い呪怨の弾丸が放たれる。

 ドォン!

 シャドウの胸へ命中。

 断末魔とともに黒い身体が砕け散った。

 

「倒した……。」

 

 すると。

 砕けたシャドウは霧となって消えず、一枚の鏡のような黒い円盤へ姿を変える。

 円盤には、先ほどのシャドウの姿が映っていた。

 

『対象の鏡化を確認。』

『ペルソナメダル生成。』

『初回登録を開始します。』

 

 メダルが宙を舞う。

 そのままアビスギアのスロットへ吸い込まれた。

 ガシャン。

 ギアの青紫のラインが一瞬だけ灰色へ変化する。

 

『役員シャドウを登録。』

『装備可能ペルソナ数』

『1』

 

 知は息を呑む。

 

「ペルソナ……メダル?」

 

 だが考える暇はなかった。

 残るシャドウたちが一斉に飛び掛かる。

 

「エイ!」

 

 一体。

 

「エイ!」

 

 二体。

 立て続けに呪怨弾を放つ。

 しかし三発目を撃とうとした瞬間。

 体から力が抜けた。

 

「っ……。」

 

 膝をつく。

 息が荒い。

 頭も痛い。

 

『SP残量、低下。』

 

 機械音声が淡々と告げる。

 小田上は満足そうに笑った。

 

「なるほど。」

「初心者か。」

「せっかく目覚めたのに、もう限界なんだね。」

 

 シャドウはまだ十体以上いる。

 知も雷斗も満身創痍だった。

 その時――。

 校舎中に轟音が響いた。

 ガシャァァン!!

 生徒会室の窓ガラスが粉々に砕け散る。

 舞い散るガラス片の中から、二つの影が飛び込んできた。

 一人は黒いロングコートに狼のマスクを纏った男。

 一人は赤いライダースーツに鉄仮面を纏った女性。

 狼の男が警棒を肩に担ぎ、不敵に笑う。

 

「よう、ガキども。」

「ここからは公安……じゃなくて、俺たち怪盗団の仕事だ。」

 

 その背後に青い炎が燃え上がる。

 

「来い――バルジャン!!」

 

 巨大な革命家のペルソナが姿を現した。

 一方、赤き怪盗も拳を構える。

 

「ヨハンナ!」

 

 鋼鉄のバイクを思わせるペルソナが雷光を纏い、静かにエンジン音を響かせた。

 知と雷斗は呆然と、その二人の背中を見つめることしかできなかった




6話!
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