提督拉致   作:江田島提督

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着任と書いて拉致と読む


01:提督が鎮守府に着任しました

ーー眩しい......

窓から差し込む、人の睡眠妨害を少しも遠慮しない朝日に顔面を照らされ、目が覚める。

どうやら俺は寝ていたようだ。

ブーンドドドドブーン

おお、鳥の囀りが聞こえる。

ン?

鳥ってこんな声だっけ...まあいいや。

 

頭も冴えてきたことだし、体を起こして周りを見回す。

 

「知らない部屋、だな...」

 

はて...ここはどこであろうか?

はっきりとしない記憶を辿って手がかりを探る。

「え〜と確か昨日の夕方に赤紙が届いて...」

そうだ、あの金剛とかいう女がいきなり玄関の扉をブチ破りやがったのだ。

「そんでそのあとは確か......」

そうだ。背後からいきなり睡眠薬か何かを口に何か押し付けられて......

......意識が飛んだ......

 

 

ウーム......

 

 

もしかしなくてもこれ俺、

 

 拉 致 さ れ て る よ ね 

 

 

ふむ、どうしたものか。脱出する?

いやいやまだ現実味が湧かないな...

そんなことを考えていた時だった。

 

 

ガチャリ

 

 

どうやらこの部屋には、俺の背後にあたる位置に出入り口があるらしい。

ドアが開き、誰かが入ってくる。

 

「ッ!?」

 

あんなことがあった後である。俺は少しオーバーな反応を取ってしまう。

恐る恐る後ろを向くと...

 

 

「て〜いと〜くに〜あっさごっはん♪〜」

鼻歌を歌いながら女の子がひとり入ってきた。

女の子は俺が起きていることにに気づいたようで、

「わっ!」

彼女は頬を紅く染めながら、取り繕うように言葉を発した。

「本当は提督、もうお目覚めでしたか...」

 

彼女は少し内股で、いかにも自信なさげな少女だった。

しかし美人だな(直球)

そういえば昨日の金剛とかいってたアイツもかなり可愛かった気が......

もしや艦娘って皆揃って容姿が優れているのでは?

 

そんなどうでもいい(よくない)ことを考えていると、

 

 

「あの......軽巡洋艦、神通です。どうか、よろしくお願い致します......」

自己紹介の後に少女は、少しオドオドしてから意を決したように続けた。

「あの...」

「き、昨日は......」

 

「姉がどうもすみませんでしたぁッ!!」

 

そう言って彼女は頭を下げる。

 

 

昨日...姉...フム......

「え〜と君はつまり、金剛の妹さんてこと?」

 

 

「いえ...」

彼女は、アレ?という顔をする。

「あの...覚えていらっしゃいませんか?」

「こう、髪型がツインテールというか、ツーサイドアップの、私と同じような橙色の服を着た...」

 

 

「ウーム」俺は唸る。

そんな奴いたかな......

 

ここで俺に電流奔る。「あ〜!」

 

思い出したぞ!

「あの背後からいきなり口押さえつけてきて睡眠薬吸わせてきたヤツね!」

 

 

「スミマセンスミマセンスミマセンスミマセンスミマセンスミマセン...」

 

神通さんがぶつぶつと謝りながら頭を下げる。

心が痛いからやめてほしい。

 

 

アイツの名前は...え〜っとなんて言ってたっけ......

「確か...」

沈みゆく意識の中、確か奴は俺に向かって名乗っていたはずだ。

「せ... せ... 川内か!」

 

 

「はい...左様でございます...」

「どうも姉がご迷惑をおかけしました......」

 

苦労、してるんだろうな...

 

 

そろそろ俺の良心が悲鳴を上げているので、彼女に声をかける。

「えっと、頭を上げてくれないかい?」

 

 

「ハイ...」

彼女は弱々しい声で返事をする。

 

 

にしても彼女には好印象だ。

俺のタイプがこういう幸薄そうな娘だということもあるが、何より彼女はマトモなのだ。

出会っていきなり飛びかかってきたり、人ん家の扉を破壊したりもしない。

ましてや背後から襲って睡眠薬を吸わせたりもしないだろう。

 

 

「いや、本当に気にしないでくれ」

「見ての通り俺は元気ピンピンだ。心配には及ばんし、君が気に負うこともないよ」

 

 

「そう言っていただけると、気が楽ですわ...」

そう言って彼女は、少し元気を取り戻したようだ。

 

 

う〜ん、こういうのでいいんだよこういうので。

 

あ!そうだ、俺は色々聞きたいことがあるのだ。

 

「神通さん、色々きk...」

 

 

「神通とお呼びください」

 

 

「アッハイ」

艦娘ってみんなこうなのかな。

 

「え〜と神通...よ、色々聞きたいことがあるのだが」

 

 

 

「私の答えられる範囲であれば...何なりとお聞きください」

 

 

よしきた。

「え〜と、全く間抜けな質問で申し訳ないんだけど、ここってどこ?」

「あと家に帰りたいんだけど」

 

 

神通はスっと真顔になる。怖い。

 

「ここ...ですか?」

「ここは貴方様、提督の鎮守府ですよ...?」

 

 

エ?

鎮守府?俺は思わず間抜けな声を出す。

 

 

「あぁ、地理的な意味でしたか...」

 

チガウ、ソウジャナイ

 

「ここはついこの前に新設された前線鎮守府です。場所的には......このあたりかと...」

神通はちょうど壁に貼ってあった日本地図に指を差した。

 

ーーー太平洋のど真ん中を......

 

 

驚きすぎてもはや声が出ない。

ええ...どうやら俺がは、眠ってる間に大移動させられていたようだ。

俺一応内陸住みなんだがな...

しかし、もはやこれだけのスケール感の移動ともなるとそれは関係ないだろう。

 

おいおいこれガチのマジの拉致じゃねえか。

しかも絶海の孤島に連れて来られるとか笑えないぞ。いやマジで...

 

 

「あの...神通さん?俺ちょっとお家に帰りたいんですけど...」

もはやダメ元であるが聞いてみる。

 

 

「?」神通は首を傾げる。

ハテナ、じゃないんだよ。

「お家...ですか?」

「う〜ん...提督のお家、というのは、強いて言うならこの鎮守府でしょうか...」

 

 

 知 っ て た 

前言撤回。艦娘にマトモな奴なんていねぇや。さっきまでのマトモな神通さんを返して...

しかしならばさっき俺に姉の非礼を詫びたのだろうか...?

もはやヤケクソである。聞いてみるか。

 

 

「え〜っとちなみにさっき俺に謝ってくれたけど、それって何に対してだっけ...」

 

 

「はい...」

「姉もまだ未熟な者で、睡眠薬を使うなど、後遺症の心配もある危険な方法で提督を眠らせてしまったこと、本当に申し訳ありませんでした...」

「本当はもっとスマートで安全に提督を“運ぶ方法”もあるのですが...」

彼女は俯いてシュンとしながら言葉を繋ぐ。

 

 

あー、うん。そういうことね(諦

そのシュン、紛らわしいからやめてね。

さっき気を使って損したわ。

てか“運ぶ方法”ってなんだよ。それ人間に使っていいやつ?

そんな意味深に言っちゃって...お兄さん怖いよォ!

 

 

そんなやり取りをしていると

あ、思い出したぞ!と言わんばかりに神通は顔を上げ、そして

「提督、忘れていました。朝食はどうなさいますか?」

「和と洋両方ご用意できますよ?」

「というか自分で食べられますか?」

「その...必要ならば、私が手伝うことも可能ですが...」

頬を赤らめながらチラチラ、とこっちを見てくる。

 

 

「アッ和で...」

 

ウーム...初対面でいきなり飛びかかってきた金剛だったり、川内が背後から睡眠薬を口に押し付けてきたり...

艦娘って人との距離感おかしくないか?

いやまあ、まだ3人しか会ったことないから全体を判断するはまだ早とちりかな...

 

そんなことを考えてる間に神通はもう朝食の用意を済ませたようだ。

 

 

「ハイ、提督...湯豆腐です。」

「あ、あ〜ん...///」

 

 

おい、誰が手伝ってほしいと言った。

 

「あ、ひとりで食べられるから大丈夫。ありがとう」

 

「い、いえっ!姉の不始末の責任を取るのは妹の役目です!ここはひとつ私に任せて...」

 

「いや、大丈夫だから」

 

「いえいえ、遠慮せずに!」

 

「大丈夫だって」

 

「いえいえ」

 

そんなやり取りを続けて十数秒、

「アッ」

俺の後ろに視線を向けた神通が固まる。何かあったのか。

こいつ、目が泳いでいるぞ。

しかも顔がどんどん紅くなって...

 

 

ん?かく言う俺も背後のから何かを感じるぞ。これは...視線?

気になるのでそっと後ろに目を向ける。

 

チラッとな...

 

 

『ジーーー』

 

 

そこには

 

ーーー扉から顔を出しこちらをのぞく数十人の少女がいた。

 

コソコソ

「奴が新しい提督か...」

「提督ですか、流石に気分が高揚します」

「テヤンデイ!」

コソコソ

「フン!みんなあんなのの何がいいのかしら!」

「あ、神通ずる〜い!」

「提督独り占めしてるよ〜」

コソコソ

 

 

皆コソコソと何か話し合っている。

う〜むどうしたものか。

 

チラッチラッ

 

 

 

ーー『あっ』

 

Oh、しまった。奴らと目があってしまったぞ。

 

 

「む」

「あら」

「ガッテンダー」

「...」

「わ、わあどうしよう〜」

「うわ〜」

 

 

気まずい空気が流れる。

おい神通よ、なんとかしておくれ...

 

と思ったらあいつ、「キャハ⭐︎」とか言ってる奴に引きずられてどっか行きやがった。

本格的に困ったな。

 

 

そのとき

「Heyテートク〜!」

聞一度いたことのある、快活な声が響く。

 

おお、金剛ではないか。今回ばかりは助け船、感謝である。

 

「みんなスゴク気になってるみたいだから〜」

「起きてスグに申し訳ナイけど、新しい提督としてみんなに自己紹介してあげてほしいネ〜!」

 

 

やっぱり前言撤回。めんどくさい話を振りやがって。

う〜んやはりここはガツンと「俺は提督になんてなる気はない!」くらい言っといたほうが良いのだろうか?

しかしこんな絶海の孤島に拉致されてるのだ。

奴らの機嫌を損ねると何をされるかわからん。

ここは一時的に凌ぐために要求を飲んだほうが良さげか...?

 

そんなことをグルグル考えていると......

 

 

キラキラ キラキラ

 

小学生くらいであろうか、小さな女の子たちの期待の眼差しが目に入る。

 

 

グッ......

これは流石に耐えられん。

ええいままよ、こうなりゃヤケじゃ! 

 

「え〜と...今日から着任しました、提督...です(?)」

「皆さんヨロシクオネガイシマス......」

 

 

 

ーーこうして場の流れに負けた俺は、提督に着任することになった(やっつけ)

...まだ、お家に帰ること諦めてないんだからね!!

 




あとがきネタバレ注意:まだこの話では触れてませんが、最初から提督に対する艦娘の高い理由をザックリ言うと、提督は艦娘たちの愛玩動物(ルビ:心の癒し)枠だからです。ちなみに1話で金剛が鎮守府の運営には提督の力が必要と言ってましたが、アレ嘘です(唐突)別になくても困りません。提督はいたら便利程度です。ちなみに提督適正持ちは艦娘や妖精さんからなんとなく好かれたり好かれなかったりします。なので、基本的に提督の主な仕事は艦娘たちがあまりやりたがらない書類の処理と艦娘たちの心の拠り所となることです。

この設定については次か次の次くらいの話で触れようと思ってたり思ってなかったりします。

結構超展開ですみません。

今回も投稿初心者の文章を最後まで読んでいただきありがとうございました!
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