創世無双
無双系ゲームにとして発売されカスタム性が異常に高く、操作キャラ、敵キャラ、種族、技、武器、果ては世界観設定やストーリーまでカスタム出来て配布可能なゲームだ。
無双系ゲームを主体にしておきながら、PvPに拘る事も自身の所有する空間、幽世で内政したり牧場経営したりが可能となっている。
またMODを沢山作ってほしいと公式が明言する程拡張大好きで何ならレーティングとか色々な問題で入れられなかったR18MODを公式が自作して配布していたりする。
一例で言うと催眠おじさんがJKを対象に無双する事ができたり、ロボットに乗り込み宇宙空間で戦闘したり、魔法少女になって怪人と戦ったり、ステルス風に隠れて戦ったり、幽世で可愛いペット達に囲まれて過ごしたり、幽世で働く人達を管理してより良い生活を目指したりと本当に好きな遊びが出来る。
その中でも俺はどちらかというとオーソドックスな方で、好きな設定を好き勝手に入れて好みの女性に好みの服装を着せて無双させて時にカッコよく時にエッチに時に可愛らしくと当たり障りのないプレイをしていた。
唯一変わった事と言えば操作キャラの吸血鬼ルシアちゃんがとても気に入ったせいで世界観の違う世界にも出張してもらっていた事位だろう。
後PvPはゲームが下手なのと煽られたら凹んじゃうからあまり手を付けなかった位だ。
発売されてより12年、殆ど毎日ログインしており学業や仕事時間以外のほぼ全て捧げてきたゲームで愛着がある。
「あれ?こんなステージ持ってたっけ?」
ダウンロードしてあるステージ一覧の中に見た事がないステージ名があった。
それ自体はそこまで珍しい事ではない。ステージ作者が名称変更すれば有り得る話だ。
だが、だからこそステージに対して自身でコメントを残すようにしていたのだがコメントが無い。
「異世界アストラギウスか…まぁやってみれば思い出すでしょ」
そうしてなんとなしにステージ選択をする。
瞬きする間に世界が完全にすり替わっていた。
生温い湿気、土や草の匂いが鼻腔を突く。
「……ここは…どこ?」
かなり驚いたはずなのに出た言葉はとても短かった。
そしてとても鈴の音のような美しい女性の声となっていた。
「…この手、髪…ルシア?」
先ほどまで見ていたから赤黒のゴスロリ風ゴシックドレスのロリ巨乳、銀髪ロングに真っ白な肌。
自身の作った口下手な美少女吸血鬼の真祖、ルシアちゃんの姿だ。
えっ?ゲームのステージ選択ボタン押しただけなのに異世界転移したの?
もうちょっとそれっぽい雰囲気してないといけなくない!?トラップじゃん!?
「…不満」
…この口はそれだけで言うとプクぅっと頬を膨らます。
わぁ〜ルシアちゃんっぽい反応で可愛い〜。
取り敢えずルシアちゃんなら能力も使えるのか調べようと思いブラッドサイスを使おうとすると、暗闇が出現し血が手元に流れてくる。
「…ん。問題なく使える」
試しに振るってみるがモーション通りかなり上手に扱える。
少し安心して森を出ようと歩き始める。
数十分歩いていると狼とゴブリンの群れが現れる。
「……ファンタジー?」
そう言えばボタンクリック前に見たステージ名も異世界アストラギウスって名前だったしファンタジー系なのかな?と喋ったつもりだったのだがめちゃくちゃ短縮された。
それにしても狼8体とゴブリン15体って、少なすぎでしょ。これならブラッドサイスだけで問題ないか。
取り敢えず固まっているゴブリン5体程を巻き込んでサイスで横に一薙ぎしてコンボに巻き込もうとする。
無双系特有の広範囲斬撃をすると当てたゴブリン5体とも首や胴体が切り離される。
その後も通常コンボが1つ終わる頃には全員が死んでいた。いやこれは、
「………雑魚」
こんななら別に出さなくて良かったのではと思ってしまったがよくよく考えるとここがゲームのステージでは無い可能性が高い事に思い至る。
そっか、ステージとかじゃないならそもそも狼8体でも十分脅威だったわ。
完全にゲーム感覚だったわ。
そんな事を考えていると狼とゴブリンの死体から血が溢れ出してこちらへ流れてくる。
そしてルシアちゃんの影の中に吸い込まれていく。
結構頑張って作った吸血鬼の吸血モーションだ。
それにしてもゴブリンってやっぱり緑の血なんだねぇ~。
何となく美味しそうに見えてしまったので少しだけ舐めてみる。
「……味見……美味しい」
身体も吸血鬼になっているようで美味しく感じた。
それにしても、俺が1人だとぺちゃくちゃ独り言喋る癖があるせいでルシアちゃんがめちゃ喋る。
無口っ娘設定だが、声が可愛いからこれはこれで良い。
その後も歩いては戦闘して食事(吸血のみ)を数度繰り返していると日が昇り始める。
えっ?夜だったの?めちゃ鮮明に周りが見えるから昼とかだと思ってたけど確かに太陽は無かった。
「……太陽、嫌い」
ルシアちゃんが俺とは関係無しに呟いた!?
そういう事もあるのか。
いやまぁ嫌いでしょうね!克服してあるとは言ってもね!俺もゴーヤ食べられるようになっても進んで食べる程じゃないから分かるよ!
なんか嬉しい、ルシアちゃんが喋ったよ!
「…………」
何か照れてそう。可愛い、流石はルシアちゃん。
それにしても数時間以上歩き続けて、戦闘もしてるのに疲労感が全くと言っていいほどない。
その為、また歩き始める。
疲れはないけどそろそろ狼やゴブリン以外の敵とか人の街とか見つけたい。
飽きてきた。
そんな折に、ドガァンッ!という衝撃音が聞こえた。
結構遠くからだったが耳もだいぶ強化されているようだ。
今度こそ骨のある奴いるかな?
ちょっとだけ期待をして急ぐ為にコウモリの羽を背中から出して急ぎ飛んでいく。
そこには、ゴブリンやオーク、オーガ、狼、デカい蜘蛛や蛇等多種多様なモンスターがざっと数百体程おり、女性数人を追いかけていた。
「皆!もっと早く走って!」
「はぁはぁ。ぼ、ボクもぅ無理ぃ足がぁ」
「無理じゃねえ!走れ!こちとら負傷者抱えてんだよ!」
第1村人発見!
まず助けよっか。吸血鬼ってバレないように羽をしまって女性達とモンスターの間に自然落下で降りる。
スタッと華麗に着地して、ブラッドサイスを構える。
「なっ!?貴方、危険です!逃げて!」
そうこちらに気づいて振り向いた女騎士っぽい娘に声を掛けられるが無視する。
取り敢えず後ろに人が居るから逃さないように注意してサイスを振り回す。
相変わらず一撃で終わるヌルゲーとなっており、1コンボ毎に50体位は倒れていく。
「…凄ぇ。Sランクとかか?知ってるか?リーダー」
「い、いえ。あんな綺麗な少女のSランク冒険者であればもっと話題になっているでしょう」
半数は切り刻んだ辺りで、奥の方から一際大きなオークが出てくる。正直もうあんまり期待して居ないので通常攻撃を流れで放つと、手に嵌めているガントレットで防がれた。
おぉ!やっとまともなのが出てきた!
ゴォォォォッーと雄叫びを上げる大きく赤いオークさん。
「…嘘だろッ!ジェネラル・オークロード。しかも武器持ち」
「ま、不味いです!」「嘘でしょっ」
取り敢えず上段ガードの構えなので足方向に一薙するが防がれる。だが、そのままの流れで身体を捻り上段に切り替えるコンボで頭から縦一直線に一閃。
まあ流石にこの程度は防げるだろうと油断したせいで一瞬で真っ二つにしてしまう。
「………弱すぎ」
歯ごたえが無さすぎる。ボタン連打で勝ててしまうのはいくら無双系好きとしてもちょっと。
はぁ、もぅ良いや。最初から期待してなかったのに途中期待させておいてこれは萎える。
「…はぁ、飽きた」
サイスを大きく横に構え、貯めてから横薙ぎに一閃する。すると赤色のエフェクトで飛ぶ斬撃が残りのモンスターを一掃する。
「……凄ぇ」
「……は!?あ、あの、助けて下さりありがとうございました」
助けた女性達が暫く唖然とした後、女騎士の人が話しかけてくる。何というか金髪碧眼の優しそうなお姉さんという雰囲気の女性だ。大変結構。
「私はロッテンブルクのラインフェルト家、エリーゼ・ラインフェルトと言います。助けて頂き誠に感謝します」
そう言い胸に手を当てお辞儀をする。
これで助けた女性達の紹介とかで町に入ったりする事は出来そうかな?取り敢えず向こうが名乗ったから俺も名乗らねば。
後森に迷わずに済む。
「……私、ルシア。迷子」
えぇ、それじゃただの迷子の女の子じゃん。
可愛いから良いけど。
「えっ?…あっ!道に迷われたという事でしょうか。どちらへ向かわれているのでしょうか、宜しければ案内しますよ!」
「…街。村でもいい」
「……えっと?街や村であればどこでも良いという事でしょうか」
コクリと頷く。なんて完璧なコミュニケーションだ。
ルシアちゃんが人と会話出来ているなんて!
俺が設定でコミュ障にしただけだが。
「では、私達の拠点もあるロッテンブルクに案内させてもらいますね。宜しいですか?」
コクッとまた頷く。
巨乳で長身の筋肉質な褐色男前の大剣持ちお姉さん
ルシアちゃんと同じくらいの低身長のロリ魔法使いさん
まだ気絶している神官の妖艶なお姉さん
総勢4人のパーティかな?
私達のやり取りを確認しながら担いがれていた女性に水色ポーションを飲ませていた2人もこちらに来る。
「アタイはグレアっていうもんだ!さっきはありがとうな!お陰で命拾いしたぜ!何か出来ることがあれば気軽に言ってくれ!恩は返すぜ」
「あ、ボクはアルスと言います。気絶してる神官はセシリアです。あ、ありがとうございました。ボクも恩返ししたいです」
そう感謝を告げられた。
正直2重の意味で朝飯前なので気にしないで欲しい。
道案内と多少の身分証明だけしてもらえればいい。
「…ん。ルシア、道案内。お願い」
「あ!すいません。ルシアさん、ちょっと待って貰えますか?ギルドにこの事態を知らせる為に討伐部位だけ回収してきます」
エリーゼさんがそういうと3人で数百体の死体の右耳のみ回収していく。
待ってろと言われたので寝てる神官さんことセシリアさんの側に腰を下ろす。
しかし美人、美少女しかいないパーティだなぁ。
そう思いながらセシリアさんを見ていると
「うぅん。…えっ?女神様」
「……違う。ルシア」
「綺麗で可愛い。……ルシアちゃんですね!どうしてここに?」
「…待ってる」
「そうなんですかぁ。抱っこしても良いですか?」
「…良い」
セシリアさんに後ろから抱えられて膝の上に座らされる。後頭部とても柔らかい物が当たったかと思うと挟まれる。
俺もうここでずっといる。
そのままほっぺをムニムニされたり、頭撫でられたりする。
「可愛い服ですね。とても似合っていますよ?」
「…お気に入り」
「あらぁ、そうなんですねぇ。…ん?そう言えば確か魔物に……。ルシアちゃんこの辺に大量の魔物居なかった?」
「…いない」
あんまり多くなかったけど居ましたよはいないですか。
ルシアちゃん……
「そうですか。じゃあ夢だったんですかね?…ルシアちゃん。私の他にお姉さん居なかった?」
「…居た、あっち。…待ってる」
「あぁ待ってるってそういう事なのね。じゃあ一緒に待とうか?…そもそもルシアちゃんは何で森の中に?」
「…迷子」
「そっか、じゃあ皆が戻ってきたら一緒に帰りましょうか」
コクリと頷くとまたほっぺを弄び始めるセシリアさん。
その後も暫く膝の上に抱えられたまま弄ばれていると3人が帰ってくる。
「あ!セシリア!起きて大丈夫!?棍棒で頭がっつり打たれてたけど」
「えっ?」
「指何本に見える?」
「えっ?えっ?あっ、3本です」
セシリアさんが意識確認されてる間、セシリアさんは頭に?マークが浮かんでいるような顔をしていた。
「ええっ!?この娘があの大量の魔獣を倒したの!?」
「ジェネラル・オークロードもなんて……」
頭を撫でてくれてた手が離れていく。
その手を掴んでもう一度頭の上に戻す。
「……本当にこの娘が?ただの可愛い女の子ですよ?」
「ちょっと自信が無くなってくるけど本当よ、ほらッ!」
そう言って担いでいた袋をセシリアさんに見せるエリーゼさん。
「凄い量ね。確かに私達では無理ね。ルシアちゃん?この魔物倒したの?」
「…ん。倒した」
「さっき魔物居なかったって言ってなかった?」
ちょっと咎めるようなニュアンスを感じて焦る。いや、そんなに多くなかったって言おうとしたら、いないだけになったんです。許して下さい。
「……多くない。……怒ってる?」
「えっ?いえ、怒ってませんよ?ビックリしただけよ」
「ルシアさん。差し支えなければ年齢をお聞きしても良いですか?」
年齢か、創世無双が発売してから12年で発売から半年位でルシアちゃん作ったから〜
「…11歳」
「ボクより4つも年下……身長は同じくらいで胸」
アルスさんが大層ショックを受けてらっしゃる。
大丈夫!希少価値だよ!
「セシリア?そろそろ歩けそうですか?申し訳ないですが、魔物が大量発生した場所に長居していられません」
「えぇ大丈夫よ。ルシアちゃんも行きましょうね」
コクリと頷き立ち上がる。
吸血せずに離れるのはもったいないが仕方ない。
吸血鬼とバレる訳にはいかないのだ。
後ろ髪引かれながらもセシリアさんが手を繋いでくれるから、トータルプラスだ。
森を歩きながら大体の話を聞いた感じでは、彼女達は森の様子がおかしくてギルドの依頼で調べに来た冒険者のようだった。
森に着いて1日目はあまり対した変化もなく次の日を迎えようとしていた所を襲われたようだ。
不寝番をしていたアルスさんとセシリアさんが気づいて食事等の荷物も回収出来ずに置いてきてしまったらしい。
途中アルスさんが切り札の爆撃魔法のフレアを使ったが付け焼き刃だったらしい。
「……爆発音、聞こえた」
「えっ?あ、はい。多分それです」
「………」
「…な、何でしょう」
伝わらなかった。まぁ本当は爆発音が聞こえて来たからMVPだよって言いたかったんだけど。
まぁいいや。
暫く歩いているとちょうど太陽が真上に登った辺りで、森を抜けて平原に出る。
「あっちに道が見えるだろ?あの道を辿った先がロッテンブルクだ」
そうグレアさんが教えてくれる。
ぐぅ~とお腹の音でアルスさんも空腹を教えてくれる。
「うっ。す、すいません」
「仕方ないわ。朝からとんでもない目に遭って何も食べれてないんだもの」
アイテム出せるなら食べ物あるけどどうかな?
そう思ったタイミングで虚空に歪みが出来る。
あっ取れるわ。アルスちゃんに餌付けしよ!
「……ご飯持ってる」
あげるとかは言わないのがルシアちゃんクオリティ。
先にピクニックセット(屋外での食事効果を増大する)を出す。
可愛いデフォルメされたコウモリのレジャーシートと低めのテーブル、広めのパラソル、折り畳み椅子のセットだ。
準備が出来たところでサンドイッチやおかずの入ったバスケットを出す。
そして、セシリアさんの靴を脱がせレジャーシートへ座らせてその上に座る。
ここまで一連の動作中皆一言も喋らなかった。
「……食べないの?」
アルスさん含め呆然としている4人に問いかける。
「…どこから出しました?…いや違う。貰っても良いのですか?」
エリーゼさんの問いにコクリと頷くと、
「重ね重ね感謝します。正直ここからさらに歩かないと行けなかったので助かります」
「…ん」
エリーゼさんの感謝を受け入れた後、アルスさんにちょいちょいと手招きする。
「えっ?ボク?」
自分を指さしながら恐る恐る近づいてくる。
サンドイッチを掴み食べさせようとする。
「あ、ありがとうございま…ん?」
手で掴もうとするので阻止すると首を傾げられる。
そのまま口に持っていくと理解したようで、
「えっ?あっ、そのまま…あ、あ~ん」
美少女が恥ずかしがりながらあ~んするの最高だ。
美少女になって良かった。
「ほほえま〜。じゃあルシアちゃんもあ~ん」
そう言ってセシリアさんも食べさせてこようとしてくる。牙を見せないように小さく食べる。
「あ、あの。これ美味しすぎませんか?ボクこんな柔らかいパン初めて食べました」
「そうなのか?ルシア、アタイも貰っていいか?」
口の中に物が入っているので、ウンウンと頷くとグレアさんも食べ始める。
「…これは本当に美味しいですね。私もこんなに柔らかいパンは初めてです。中身の肉…ですかね?それも変わった食感ですね」
「冒険中に食う飯じゃねぇな」
「えぇ。少なくともロッテンブルクの料理店では勝てないでしょうね」
向こうでサンドイッチの講評が始まっていた。
セシリアさんにも餌付けしないとと思いアルスさんにサンドイッチを手渡す。
「あ、良かった。流石にずっとだと恥ずかしかった…え?」
何故か食べようとしたので阻止した。
手首を掴んでセシリアさんの方に伸ばす。
「あらぁ、アルスちゃんが食べさせてくれるの〜?」
「は、はい。……どうぞ」
こうして完璧なトライアングルが完成した。
これが小学生の時に推奨されていたかの有名な三角食べである。
素晴らしい、マーベラス!
こうしてお昼ご飯を食べた後再出発する。
正直言うと眠い。もうお昼過ぎなのだ。
吸血鬼にとっての深夜帯、深夜3時みたいな物だ。
吸血鬼の真祖だから飲まず食わずで寝ずに動ける事は動けるが空腹や眠気は感じるようだ。
うつらうつらとしながら道沿いに歩くと街が見えてきた。やっと街だ〜。