コミュ障な吸血鬼の真祖として異世界生活   作:隷属

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吸血鬼、冒険者になる

街まで戻ってくる途中、ルシアさんは何度も目を擦り眠そうにしていたが、遂に寝てしまいセシリアにおんぶされている。

11歳と言っていましたから当然とは思いますが、あの信じられない戦闘の後ではこの少女らしさに違和感がありますね。

それに容姿だけでも透き通る程白い肌、艷やかな銀髪、吸い込まれそうな鮮やかな紅眼。どれを取っても常人離れしています。

「ルシアさんはどのような出自の娘なのでしょうか。異常な強さ、見たことの無い強力で有用な魔法、貴族子女の私でも食べたことの無い美味しい食事、そしてこの容姿に綺麗な衣装。王国広しといえどこんな話題性の塊のような少女が噂にならないなどあり得ません」

「そうだな。帝国とかからの流れ者って雰囲気でもないしな。地理的にここに来るには別の街を経由するだろ?本人も街を探してたんだから。そうなるとこの辺の奴のはずなんだけどな」

どう考えてもこの辺に居た娘ではない。

だが、何処から来たのか全く推測もできない。

本人談では迷子だそうですが。

 

「まぁまぁ良いじゃないですか。絶対悪い娘じゃないですよ?この娘は」

「ボクもそう思います。…悪戯っ子ではあるかもですが」

セシリアとアルスが会話に入ってきた。

「私もそこは疑っていませんよ」

「まぁそもそもルシアが本気で敵対したら王国は滅びるだろ。出自がどうとか細かいこと考えて変に探りを入れようとして不快に思われる方が駄目じゃないか?」

うッ。確かにそうかも知れません。

自重しなければ。

 

「そんなにですか?ルシアちゃん1人で国家を相手出来るほどなんですか?」

唯一戦闘を見ていなかったセシリアだけは疑問に思っているようです。

「いや、国家を相手に出来るんじゃねぇな。簡単に国家を滅ぼせる。そのくらい力量差はあるだろうぜ」

そう言われて流石のセシリアも目を見開く。

「…元騎士団長の娘から見てもそうなのですか」

「あぁ、無理だ。そもそも騎士団長だとしてもジェネラル・オークロードは1人で倒せない、ましてや3撃で倒すなんて芸当出来ない。数百体いる魔物を倒すのは騎士団だけでやるなら城壁は必須だ。1人で一瞬で薙ぎ払う数じゃない」

…改めて言われるととんでもないですわね。

「そ、それと追加するなら彼女の武器は魔法武器でした。魔法付与した武器ではなくです。それであの綺麗な断面。その魔法練度で普通の武器を使ったとしたらとんでもない事になるかと」

「そして敵対している相手に雑魚、飽きたと吐き捨てている所を見るにまだ本気を出していない可能性すらありますね」

矢継ぎ早に私達がルシアさんの戦闘の講評をあげると、セシリアは少しだけ顔を引きつらせるが直ぐに戻し、

「でも、私と話している時はただの可愛い人懐っこい甘えん坊な女の子でしたからね」

「確かにセシリアにはめちゃくちゃ懐いてたな」

「えぇ本当に。ふふっ、ご飯の用意した後まるで自分の所有物のようにセシリアさんを回収しましたね」

 

そんな風に今日起きた様々な事について話しながら歩いていると街の検問の前にたどり着く。

「これは戦乙女(ヴァルキリー)の皆さん調査依頼お疲れ様です…そちらの少女は?」

検問官の2人はセシリアの背負っている少女に目を向ける。

「ルシアという名前らしいです。調査依頼の途中で助けられました。詳細はギルドの方を通して説明が行くと思います。この場で話すと諸々問題が出るかと」

戦乙女(ヴァルキリー)の皆さんが助ける事が出来る少女ですか。承知しました、後日ギルドへ使いを回します」

本来はここまですんなり行かない。

ギルドを通さなければ行けないならこの場にギルドの者を呼んでここで話をして説明をしなければいけない。

私がラインフェルト家でこのロッテンブルクを治める貴族の子女である為信頼されている。

普段なら通常通りの対応で問題ないと言う所だが、今回はあまりにもルシアさんが強大な力を有している為、下手に刺激せずに対応出来て良かった。

 

ギルドに着き、受付からギルド長を呼ぶ。

私達が調査依頼をしていた事を知っているので直ぐに奥の応接室へ連れていって貰いギルド長を少し待つと、

「調査依頼お疲れ様。女の子連れて帰ってくるなんて、一体なにがあったの?」

そう尋ねてくるのは、ギルド長として長年ロッテンブルクを支えてきてくれたエルフ族のシルフィさんだ。

調査依頼で起こった事を説明すると、険しい表情になるシルフィさん。

「ジェネラル・オークロード率いる数百体の魔物。それを軽々討伐した謎の少女。…一体何が起こっているのでしょうか」

ギルド報告用の討伐部位を見て眉間を抑えるシルフィさん。実際ジェネラル・オークロードが出たというのは本当に厄介な話だ。

魔物は進化しより強力な個体になる。だが、だからと言って漫然と生きていたらどんどん強くなる訳では無い。

自身の死に近い環境で戦いながら成長するのだ。

この付近の森程度では本来は中位種の魔物すら出てこない。

何故か中位種の魔物が見つかった為調査となったのだが、その中で現れた上位種の魔物。

何か作為的な物を感じずにはいられない。

 

その上で上位種の魔物を容易に始末し、数百体の魔物を一撃で仕留めた謎の少女。

貴族令嬢の私も食べたことの無い美味しい食べ物を何も無い空間から取り出してみせた。

何もかもが規格外。

…そんな少女はセシリアの膝枕で就寝中だ。

「あぁ、違う。最初に言わなければいけなかったわ。そんな危険な所へ派遣してしまい申し訳ない」

シルフィさんは頭を下げる。

「いえ、調査依頼とはそういう物ですから。危険かどうか分からないからやる事です。仕方ないでしょう」

シルフィさんに落ち度がある話でもない。

それでも頭を下げてくれる。

「本当に無事で良かったです。…その子はどんな性格ですか?」

「とても優しい娘ですよ!アルスさんがお腹を空かしていると分かると直ぐに食べ物を出してあげたんですよ!それに………」

セシリアが急に話に入ってくる。

まぁ1番多くルシアさんとコミュニケーションを取っていたのはセシリアだ。彼女に任せてよいだろう。

「わ、分かった。ありがとうねセシリア。性格は問題なしですか。となると単純に強い人が居てくれるのは助かるね。謎の強力な魔物の出現、戦力は多いに越したことはないわ」

 

 

ふぁあ、寝ちゃってた。

割とまだ眠いけど異世界の街突入イベント。

見逃せない。やっぱりギルドに入るべきかなぁ。

定番だしね、それで大柄な男に絡まれる。

そして実力の差を見せ付ける。

うんうん、王道だね!

「あらっ?ルシアちゃん起きた?」

起きた〜わぁ〜膝枕されてる〜最高だ〜。

セシリアさんのお腹に顔を埋める。

「あらあらぁ」

セシリアさんは頭を撫でてくれる。

「あの、少し宜しいですか?」

そう話しかけられて自分の状況を改めて確認すると、どうも既に屋内に入っているようだった。

更に言うと俺とセシリアさんだけ別の奥にあるソファに座っており、中心では3人と知らない美人さんが話していたようだ。

そこから美人さんがこちらへきて話しかけてきた。

なので渋々膝枕を止めてセシリアさんの上に座る。相変わらずちょうど良い位置に柔らかいものがあって挟まれる。

「ルシアさんで良いですか?」

コクリと頷く。

「ルシアさん。冒険者になるつもりはないですか?」

首を傾げる。

「あぁすいません、突然でしたね。実はですね戦乙女(ヴァルキリー)の皆さんからルシアさんの事を聞きまして、是非ギルドに参加してもらいたいと考えています。というのも……」

そこから貴方の力は凄い、冒険者に入ればこんな良いことがある等、怒涛の営業される。

宗教の勧誘や保険屋の営業を思い出す押しの強さ。

気圧されているとセシリアさんが、

「シルフィさん。多分怖がってますよ、一旦落ち着いて下さい」

「えっ?あ、すいません」

その後、あちら側の事情を説明される。

先の魔物の大量発生とそれに対処した実力を見込んでなにか起きた時の保険としたいとの事だった。

今回の事案への協力を了承してもらえれば様々な便宜を図るという流れで本来Gランクから開始だがBランクから開始になり、その後直ぐにラインフェルト家とこのギルドから本部へ掛け合ってもらいAランク申請をするらしい。

Aランクは騎士爵と同等の扱いを受ける事が出来る。

つまり、一番下の貴族の権限を有するらしい。

また、それとは別に前金と達成報酬も大量にあるとなんとも至れり尽くせりな待遇だった。

 

こういうのってもっと最初は向こうが偉そうな感じからスタートするものではないのか。

セオリー通りに行くと簡単な依頼を受けて規格外の結果を出して、あれ?何かやっちゃいました?する所では無いんですか。

B,Aランク冒険者だからといって何か強制依頼が発生したりする事も無いらしい。

今回の功績でギルド所属となればBランク。

今回の依頼を受けてくれればAランクは保証するという事らしい。

ちなみに戦乙女(ヴァルキリー)はBランクらしい。

「……冒険者やる」

「ありがとうございます!」

書類上の手続きをする。

どうでも良いけど文字も読めるんだ。どうなってんだ。

出来る事という欄がある。

戦闘、諜報、鑑定、教導、鍛冶、料理とスキルを持つ物で冒険者っぽい奴を書いた。

関係無いがルシアちゃんは色んな世界に出張してもらったからロボット操縦とかも出来る。流石に書かないけど。

ステージによっては世界観に合わない能力やヌルゲー防止の為の禁止等はあったがステージ参加やクリアで貰える能力も多くあり、得た技や経験値自体は持ち越せる。

その為、吸血鬼としてそぐわない能力も結構ある。

だが、ロールプレイ用に吸血鬼感のある能力が多い。

 

「戦闘はお聞きしたので問題ないと思いますが、諜報に鑑定、教導、鍛冶、料理。…すいません、腕前を見せてもらっても良いですか?あっ!いや遅いですし明日以降で結構ですよ!鍛冶の方も何か手持ちにあるものを見せてもらえれば」

ギルド長にすぐに見せられる諜報用にもなるお気に入りの自作技を見せてあげる。

ふぁさぁっと赤い霧状になって霧散する。

「えっ?消えた?」

「嘘っ抱き締めてたはずなのに」

血の霧

本来完全に霧散する使い方はせずに形を保ちながらも真っ赤なエフェクトでキラキラする感じになる。

霧状になる事で相手の攻撃力を低減し、こちらの移動能力を急激に上げる技であり要はトラ◯ザムだ。

使うなと言われても使っちゃう。

ステルスプレイでも使える様に完全霧散して移動する技としても使えるようにした。

その分終わった後暫く弱体化するけどね。

公開したら意外とウケたのでお気に入りだ。

 

「あのもう結構ですので出てきてもらえますか!」

ギルド長からストップが出る。

残念。後数分はこの状態をキープ出来るからもう少し探してて欲しかったのに。

じゃあ最後に、

「……ばぁ」

ギルド長さんの目の前に現れる。

「ひょわぁぁぁぁぁぁ!」

思った以上に驚かれてこっちも驚いた。

「…や、やっぱり悪戯っ子です」

そうアルスさんが呟いた。

えっ?そんなに悪戯したかな?

ご、ごめん。

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