コミュ障な吸血鬼の真祖として異世界生活   作:隷属

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吸血鬼、また決闘する

ヴェスタ家

魔王を倒した七英雄の1つにして今なお強い剣士を多数排出する名家。

王国騎士団長ガロント・ヴェスタは愛妻家で夫婦仲は円満そのもの。

その7人目の子どもとして産まれたのがアタイ、グレア・ヴェスタだ。

兄4人姉2人で、物心つく頃には一番上の兄は既に騎士団入りしていて、家には剣が沢山あった。

アタイは当然のように剣にドハマリし、毎日飽きること無く剣を振るっていた。

母は刺繍や裁縫が好きな貴族夫人で余りにも女の子らしい趣味のない私に呆れていたのを覚えている。

兄たちに稽古で勝てた事は無かったが、毎日飽きずに剣を振るっていた。

ヴェスタ家では、騎士団所属しない場合でも護身用に剣の訓練を積む。

だから騎士になるつもりのない次女の姉も嫌々参加していた。

ある時、次女へ勝負を挑んだ。

大した理由があったわけではない。

おやつをどちらが沢山食べるかとかそんな下らない理由。

アタイのほうが毎日鍛錬しているのだから勝てると思っていた。

結果は惨敗だった。

それでも2つ年上だからだと、2年後にはアタイはもっと強くなっているとそう信じて毎日剣を振っていた。

次の年。

騎士団入団試験の参加年齢は15歳から、大人になってからだ。

ただヴェスタ家は12歳で騎士団入団試験が行える。

理由は皆受かる程強いからだ。

当然アタイも受けた。

結果は不合格だった。ショックだった。

欠かすことも無く、毎日剣を振っている。

それなのに、不合格。

来年、来年こそはとより多く剣を振っていたある日、3つ下の妹の鍛錬風景が目に入る。

明らかにアタイより剣が鋭かった。

…もうこの時には余裕が無かったんだと思う。

アタイは3歳下の妹へ戦いを挑んだ。

アタイに勝てたら、妹が欲しがっていた刺繍セットを買ってあげると約束して。

結果、アタイは簡単に負けた。

護身用に週2回少しだけ習う3つ年下の妹にだ。

 

アタイは腐った。今まで毎日続けていた鍛錬を止めた。

日がな一日、木陰で太陽をボーッと眺めるだけだった。

ふと、この家から出ていこうと思った。こんな使えない恥知らずが由緒あるヴェスタ家に居て良いはずが無い。

…それにもう家にこれ以上居たくなかった。

成人前にヴェスタ家をこっそり抜け出した。

すぐに食うに困り、話に聞いていた冒険者になる。

薬草採取やゴブリン討伐を経て徐々に冒険者らしくなってくる。

Cランク冒険者になった辺りで居た街で貴族令嬢なのに冒険者になった変わり者の噂を聞いた。

何となく親近感が湧いた。おしとやかを代表するはずの貴族令嬢が冒険者、剣士や騎士として優秀なはずのヴェスタ家の恥さらし。

話してみれば思いのほか気も合いパーティを組む事となった。…思えば初めての友達だ。

その友達が冒険者となった理由を知った時、がっかりした。

がっかりしてしまった自分に失望した。

何のことはない。

私は弱く、エリーゼは強かっただけだ。

 

それでもパーティを組んでくれたエリーゼの信頼には応えなければいけないと奮い立ち、頑張ってきた。

剣から大剣へと得物を変え、セシリアやアルスという仲間が増え、冒険者ランクもBランクまで上がった。

都市レベル以外では実質ほぼ最高ランクだ。

強くなれた。成長出来ている。そう思っていた。

だが、ある調査依頼でアタイは結局弱かったと思い知らされた。

アタイなんかじゃ戦いにすらならないジェネラル・オークロードをたった3撃で仕留めた少女。

あぁ、やっぱり才能が違うんだ。私達のような凡人では天才には敵わない。

もう諦めた。

そのはずだった。

 

昼に魅せられた決闘。

決闘と呼べるかもわからない程の力量差があった。

11歳であれだけの技量を身に着けるのには努力も当然必要だろう。

だが、才能は必須だ。それは私が証明している。

ふと目についたのは双狼というパーティの顔だ。

一見すると圧倒的な力量差で年下に弄ばれている。

だが、倒れた皆楽しそうに笑っていた。

それが昔の自分のように感じられた。

私はいつから負けた時に努力がどうだとか年齢がどうだとか才能がどうだとか言い訳を考えるようになった?

いつから負けたら次をどうするか、どう攻めるかを考えなくなったのだろうか。

負けたとしても全力を出し切ったら楽しかった、そう感じていた頃は確かにあったのだ。

次の時に成長を感じられたら楽しかった。

いつそれを無くしてしまったのか。

取り戻したい、またあの頃の楽しさを味わいたい。

今はただ、この娘と戦いたい。

 

 

 

 

夜、綺麗な庭園、2人きりで呼び出し、命の恩人の美少女、緊張した美女が真剣な面持ちでこちらを見る。

ここまで説明すれば状況は掴めるだろう。

告白だ。

いやぁ~照れちゃうなぁ〜。

やっぱり美少女に命助けられちゃったら惚れちゃいますよね〜。

「……命を助けてもらった身でこんな事を言うのは烏滸がましいと分かっている。だがすまない、頼みがある」

そうだよね、命の恩人に告白しづらいよね。

「…ん」

「アタイと…戦ってくれ」

………こんなの絶対おかしいよ!

えっ?マジでどういう事?

何がどうなって戦いに発展するの?何で?

「……何で?」

「あぁ、何も言わずに戦ってくれっつうのも虫がいいか。アタイは……」

そうして悩みと期待を打ち明けられた。

まぁ、あるよねそういうの。

好きこそものの上手なれという諺があるけどあれは完全に間違いだ。

他人より上手に出来る事を嫌いになれる人は少ない。

他者に勝てる、称賛される。

これが全く無くても好きで居られるというのは難しいが、逆にそれがあれば嫌いになるのは難しい。

上手こそものの好きなれ、である。

下手でも好きなものはどんなに頑張っても下手なままだよ。

俺もゲーム好きで人生の殆どをゲームしてたけどゲーム上手とは言い難い。

グレアさんはずっと剣が下手でもやめられなかったのだろう。でも、昔のように楽しめなくなったと。

…本来こういうのは安請け合いするべきじゃない。

金銭や何かしらの対価は貰わないと鍛錬の依頼が殺到しかねない。

能力を安売りすれば、近い能力を持っている人まで軽んじられるし、良くない目的で近寄ってくる人が増える。

友達だからでやると、いずれ友人関係は壊れるだろう。

だが、少し共感したからだろうか?

 

「…ん。良いよ」

グレアさんのメンタル復調に付き合いたいと思った。

ここで対価の話をするのは無粋だと思った。

今度はピコハンではなく、真面目な鍛錬用のサイスと大剣を出す。

戦闘相手と自分の両方の経験値ボーナスがあるやつだ。

「…これ使って」

「あぁ、ありがとう」

自分は全く暗さを感じないが、グレアさんは暗いだろうから光輝く聖剣も出してライト代わりにする。

またもや戦闘補助:教導モードに移行する。

今回はメンタル復調がメインなので勝てそうで勝てない、色々な戦い方に自分で気付けて試せる。

そんな鍛錬を行う。

「じゃあ行くぜ!」

「…ん」

大剣をサイスで受ける事のは得策ではないので、当たらないように回避して、横薙ぎに斬りつける。

グレアさんもこのカウンターは予想していたようで上体を反らせて回避を試みる。

だが、ガチャンとサイスの形状が変化して薙刀に変化しグレアさんの首を斬りつける。

「ッ!…あまり痛くないな。面白い武器だ、使いづらい武器のように感じてたがそういう細工があったのか」

コクリと頷く。

「良いねぇ!見たこと無い武器に戦い方だ!」

 

 

 

セシリアやメイド達と共に酔いつぶれたアルスをベッドへ運びルシアさんの元へ戻る。

全くアルスは感謝のパーティーで主催をおいて酔いつぶれる人がありますか。

明日はきつくお説教ですわね。

でも良かったです、私達の準備したパーティーではルシアさんを満足させられないのではと少し不安に思っていましたから楽しんでくれていたようで安心しました。

メイド長のアンネからの子どもなら大きい肉が良い、女の子ならケーキや果実水が良い等の意見、最初は安易過ぎるのではと不安でしたが喜んでくれました。

乾杯から一目散にそちらへ行かれましたものね。

後ろでアンネもガッツポーズをしてましたわ。

シェフには普段作らない物を突然沢山作らせてしまい申し訳なかったですが、大成功でした。

後で労いをしなくては。

 

「今日はルシアちゃんをお風呂に入れて、抱っこして寝るわよ〜」

セシリアはこの後に思いを馳せている。

彼女はルシアさんをかなり気に入っているし、ルシアさんも彼女とのスキンシップを望んでいる。

普段は子どもを構いすぎて避けられ気味だからかいくら構ってもひたすらに懐いてくれるルシアさんと相性が良かったのでしょう。

「…大変可愛い娘でしたね。見た目も中身も」

アンネもそう言う。いや貴方、自分の出した案がルシアさんにヒットしまくったから言ってるでしょ。

可愛い子ではありますが。

大広間に着くと誰も居なかった。

「あら?グレアとルシアさんはどこへ?」

そう思っているとキンッキンッと金属同士がぶつかり合う音が聞こえる。

ま、まさか。…い、いえグレアはそんな恩人に刃を向けるような娘では……。

不安を抱えながらも中庭へ行くと、

グレアがルシアさんのお腹に蹴りを入れていました。

「ははぁ!なるほどなぁ!大剣使うからって攻撃全てが大剣だけである必要はないよな!」

「…ん。重い武器使うなら当てるための格闘が必要」

「だよなッ!」

グ、グ、グレアァァァァーーーー!

何をなされているのよぉぉ!

「ちょっと!グ…」

グレアを止めようとするも、ルシアさんから制止される。

…ん?何故今ルシアさんに制止されたと?

でも制止された。

グレア…何をしてるのよ…ギルド長とも話して絶対に不況を買わないようにという話だったじゃない。

そもそも命の恩人ですよ。

 

「これで!こう!どうだ!?」

「…ん。悪くない」

「そっか!楽しいな!」

「…ん」

はぁ、もう。

楽しそうに剣を振っているグレアの顔を見て、しょうがないなという気持ちが湧く。

ルシアさんも付き合ってくれてるし。

あんなに楽しそうに剣を振るうグレアは初めて見た。

いつも無表情でつまらなそうに剣を振っていたグレアが、まるで無邪気に遊ぶ子供のように楽しそう。

ルシアさんへの恩返しをもっとしなくてはいけませんね。

 

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