コウモリちゃん達をベッドへ運んだ後、幽世からうたた寝ケットシーの部屋へ戻る。
「…やっぱり」
幽世へ移動している間は時間が進まない様だった。
まだ夕日が差している。そうなると時間が余る。
例の魔物の眷属化失敗要因を確認しに森に行こうかな。
あっ、そうだ。ついでに依頼が受けられるなら受けてみよう。
そう思い、宿でシズさんに夕食をお弁当にしてもらい冒険者ギルドへ向かう。
キィッと扉を開く。外までも賑わっていた声が聞こえていたがギルドは夜に酒場をやるようだ。
依頼受けられるかな?そう思いながらも依頼看板を見ている。
討伐依頼>剥ぎ取り依頼>採取依頼の順で報酬の値段が高いようだ。
討伐依頼は魔物に襲われそうな村等からの依頼でそこの土地に行って依頼者に始めと終わりに確認を貰わないと行けない。
近場の別の場所で狩った魔物を報告する事を防ぐ為らしい。
剥ぎ取り依頼は何処にいる魔物でも良いから欲しい部位を何個という依頼である。
採取依頼は魔物以外の薬草なんかを採取する依頼。
今回は剥ぎ取り依頼を3つ程選んだ。
初日に狩りまくったゴブリンの歯と目。ウルフの毛皮と爪、オークの睾丸と胃だ。
…何に使うんだ?
殆ど常駐依頼のようで期限が設けられていない。
他は紙を剥がして持っていくような感じだが、ここら辺だけ木札を持っていくようだ。貼り直すのが面倒なのだろう。
いざ受付に行ってみるが誰も居ない。
やっぱり受付してないんだろうか?
「何だぁ!?依頼受けんのかぁ!」
とデケェ声で絡まれる。
振り返ると昨日見た顔だった。
……名前……真眼!
Cランク冒険者パーティ双狼のリーダー、バルド君ね。
はいはい、覚えてましたとも。
「……バルド」
「おうよ!名前覚えてんだなぁ!」
もちろんです、プロですから。
大きな胸を張る。
「おぉ…いや違う。受付は夕方頃からホールも担当すんだよ!呼べば来るぜぇ!おぉーい!受付!仕事だぜぇ!」
一瞬鼻の下を伸ばしたバルドもすぐに元に戻り受付さんを呼んでくれる。
「はいはいはい!ちょっと待ってくださいね!」
空の木製ジョッキをたくさん持った受付さんが返事後に多分厨房へ消えていく。
その後戻ってきて受付に入る。
「は~い、依頼ですね。わぁ!ルシアちゃんですか!」
「…ん」
コクリと頷くと、
「わぁ〜噂には聞いていましたが、本当に綺麗で可愛い〜!それなのに凄く強いんだよね!…あっ冒険者プレートも貸してね?」
「……強くない」
冒険者プレートと木札を渡しながら謙遜すると、
「テメェよくも自分が負かした相手の前で自分の強さを貶められるよなぁおい」
「……強い」
「おぅ!クソみてぇに強かったぜ!じゃ俺はお子様には楽しめない物を楽しんでくるぜ」
そう言って仲間のいる席に戻っていく。
お酒かぁ。…赤ワインあるかな?
いや売ってくれないか。氷雨が来たら買ってもらおう。
それと氷雨との布石も打っておこう。
「……迷子の女の子」
自分を指さしてそう言う、あぁ難しい。
逸れたお姉ちゃんを探し中なので、見つかったら言ってくださいが何故こうなるのか。
「???そ、そうなんですか?」
コクリと頷く。
「は、はぁ?なるほど?分かりました」
余りにも伝わらない、諦めよう。
氷雨も来るんだし今後は氷雨にコミュニケーションを任せようかな。
NPC達とは割と意思疎通取れるからね。
あとはセシリアさん。
せめて教導使っている時くらい喋れればなぁ。
「はい、依頼の手続き終わりました」
そう言って、冒険者プレートが返ってきた。
仕方ないのでそのまま出ていって街の外への門へ行く。
すると夜警の門番さんが話しかけてくる。
「嬢ちゃん、いくらこの街が安全な方とはいえこの時間に1人歩くのは危険だよ?早く家に帰んなさい」
窘められてしまった。
「……冒険者…外行く」
「嬢ちゃん、そういうの憧れるのは分かるが嬢ちゃん可愛いんだから余計そういうノリで動いてたら怖〜い人攫いに遭うよ?」
全然信じてくれなかった。
さっきから目線を合わせるように屈んで話しかけてくれる優しい門番のおじさん。
あっプレート。
「……ん」
冒険者プレートを手渡す。
「よく出来てるね。でもね、嬢ちゃんみたいな小さな女の子がBランクはちょっと盛りすぎだよ。だけどその年でここまでの物を作れるのは凄いよ!そういう才能が有るんじゃないかな?」
や、優しい。けどまるで信じてくれていない。
どうしようか。簡単に実力見せるか。
何か傷つけても問題ないものは…なさそう。
仕方ない。そこそこ硬くて見やすいように赤黒く自ら発光するドラクマイト鉱石を取り出す。
「えっ?それ、何処から出したの?」
「……見てて」
鉱石を上に投げる。
月光と鉱石の輝きで照らされ至る所に唸る線の輝きが見えた瞬間にバラバラバラと鉱石から金属部分だけを切り分ける。
「えっ?ん?……おぉ?」
「…冒険者…本当」
その後暫くしてから復帰した門番のおっちゃん。
「すまねぇな、そういや若い奴らが言ってたわ。凄え強い小さな女の子が冒険者ギルドに現れたらしいって。冗談だと思っちまってた。嬢ちゃんだったんだな」
別に不快になる事言われたわけでもないし、普通の対応だったと思う。
でも謝ってきてくれてるしリベンジだな。
「……全然……私迷子」
「んぉ?えっ?やっぱ止めた方が良いのか?」
駄目だったわ。振り出しに戻りそう。
「…じゃあね」
そう言って手を振って門の外へ出る。
暫く歩いた後、
「…眷属招来【氷雨】」
「ルシア様、ただいま参上仕りました。これからは私も護衛として誠心誠意守らせて頂きます」
ん〜?別に護衛としては要らない気がするが、フィールド効果や弱点のスリップダメージがあった時の対処をしてもらいたい。
後はお姉ちゃんをしてもらいたい。
「…姉」
「はっ!そうでした!……ルシア……ちゃん…」
パンパンと顔を叩き気合を入れ直す氷雨。
「もぅ!ルシアちゃん1人で突っ走って行っちゃ駄目でしょ!強いのは知ってるけど!」
そう言って少し頬をふくらませる。おぉ!演技派!
関係性の設定としては、強い妹はとても優しく悲鳴やら助けを求める声が聞こえて突っ走って行ってしまった。
今回は2度それが重なり、商人団を助けた後すぐに
姉の氷雨は妹のルシアが助けた商人団からルシアの向かった方向を聞き引き返して探しに来た。
そういう流れだ。
助けた商人団はもちろん鈴鹿達の予定である。
「…完璧…街」
「はぁ分かったわ。お姉ちゃんは先に探してる振りして街まで行けばいいのね?」
「……ん……依頼」
「じゃあ先に行ってるからね?」
通常会話から気合の入れたお姉ちゃんっぷりだ。
そう言って別れた後、始まりの森へ常世渡りで移動する。
久々に羽を出して空を飛ぶ。
パタパタ飛んでいるとゴブリン2,30体が居る。
せっかくだから装備変更無しで行こう。
これの方が細かい切り取り得意だし。
それと気になった事を試していこう。
真眼でゴブリンを見る。
緑の餓鬼のような見た目で力は弱い。群れで数の暴力に頼る。他者から奪う事しか出来ず何も生み出さない。雄しかおらず繁殖力が高くどんな種族とも交配可能。1匹見たら100匹居ると思え。首が細いので狙い目。
等つらつらと情報が出てくるが最後は、
鬲皮視縺ォ謾ッ驟阪&繧後※縺�k
と秘匿されている。
眷属化が効かないのはこれのせいかな?
後で他の魔物にも試してみるか。
ステージギミックを序盤で看破せずに楽しむ為に真眼は秘匿された情報は閲覧出来ない位までしか鍛えてない。
色々巡ってヒントを得て最終的に序盤の街に答えがあるという中々凝ったステージを真眼で見抜いてしまってからは真眼を鍛えていない。
なので1番ギルドで見せた能力で最もしょぼいのが真眼である。
真眼で分かれば楽だったが次のテストだ。
勢いを付けて地上に急降下して激突。ドォンと地面が抉れて着地する。
ゴブリン達は驚いた様子を見せるが、逃げずに挑んで来るようだ。
小便は済ませたか?神様にお祈りは?
「グギャギャ!ギャ!?」
そう声を発して一歩踏み出そうとしたゴブリンは地面に倒れ伏す。
踏み出そうとした足と身体が切断されていた。
今回の武器、ワイヤーによってだ。
夜の暗闇と細いワイヤー、周囲には木々や草花がたくさん。
こんな所では絶対にワイヤートラップは見破れない。
それを見た他のゴブリンは少し動きが止まる。
だが、こちらへ向かって来ようとする。
少しでも身体を動かそうとするたびにその間接と身体が切り離されていく。
何度も何度もそれが繰り返し、生きているゴブリンは居なくなった。
「……逃げようともしない」
その間一度も逃げようとする個体が居なかった。
全員、怯むし脅えるのだが数秒の硬直の後襲いかかろうとしてきた。
かなりの恐怖を与えられたはずだ。
これがゴブリンや魔物の習性なんだろうか?
生物として欠陥が無いだろうか?
死んだゴブリンから血が流れ出し暗闇に消えていくのを見つめながら考える。
目と歯を切り離し回収する。
飛んで魔物を見つけ恐怖テスト、素材集めを行った。
初日もそうだったが逃げる奴が居ない。
そして皆同様に秘匿されている。
ゴブリン5体、狼10体、オーク2体に対して眷属化テストしてみたが駄目だった。
コウモリちゃんや氷雨を呼んだ分は補えたし、お腹も満たせた。
飛んだら朝日も見えてきたから戻ろう。
そう思って常世渡りで影に潜ると、
【
【はじまりの森】
【幽世】 ←
あっ!日付が変わって宿が消えている!
しまった、飛んで帰っても2時間程かかる。
一か八か屋敷に飛ぶか?
でもこの場合セシリアさんのベッドの中に行くんだよな。
……別にセシリアさんに能力隠す必要無いかも。
あ、でも設定の姉妹でハグれた理由。
…いやでも助けたの朝だったし今回同様に元の場所に戻れなくなったで……いけるか?
目があったりしなければ血の霧で隠れて脱出しよう。
正確には俺がセシリアさんの下に出現したのだが。
スゥースゥーと大きな双丘が呼吸に合わせて上下している。
……いい匂いで安心する。ずっとここにいる。
はっ!血の霧!
ブワァッと霧散して半開きの窓から脱出。
ちょっと門まで飛んで戻り帰ってきたという証を残す。
「お〜良かった。帰ってきたか」
門番のおじさんはまだ交代の時間じゃなかったようだ。
「なぁ嬢ちゃんに姉居るか?」
おっ?氷雨か。
「…居る……迷子」
「あぁやっぱりか。…!迷子ってそういうことか!ハグレたって事かぁ……お姉さん探してたぞ、多分ギルドへ向かった」
「…ん……ありがと」
「おぅ、どういたしまして」
そう言って帰ってきたと演出して次に氷雨との合流の為、ギルドへ行く。
ギルドは24時間営業という訳では無いが、2階がタコ部屋のような狭い宿になっている為下の階も開いている。
そこに氷雨もいるだろう。
キィッと扉を開けると、
「はぁ…やっぱり居たわね。もぅ走って行くにしてもちゃんと追跡出来るようにしてね?」
「……うん」
ギュッと抱きついて感動の再会を演出する。
といっても今誰も居ないけど、人の居ない所でもしっかりやっておけば気づかぬ間に見られていても問題ない。
…氷雨は冷たくてすべすべしてて抱きつき心地が良い。
美人だし、…今日は一緒に寝よ。
その後、手を繋いで宿屋に向かった。