反転術式で行く薬屋世界ハピエン計画   作:蜂鳥

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出会ったのは、あの二人でした。

 

 皇帝(後の)との衝撃的な出会いから早半年が過ぎ、俺は変わらず緑青感を目指し足を進めていた。

 子供の足で歩いて早2年と6ヶ月の月日が経とうとしている。

 

 千里の道も一歩から、とはいうものの。その千里は子供の足にはとてつもない距離である。

 それでも、目指す都まで後およそ6ヶ月という距離までになってきた。

 

 思えば随分と遠くまできたものだ。思い起こせば、数々の思い出が脳裏を過ぎる。

 

 野営中に狼の群れに追われ、一昼夜走り回って逃げた日。

 雨宿りに立ち寄ったボロ屋が盗賊の根城で、捕まらぬよう逃げた日。

 腹が減って思わず畑に大根を盗みにいって、鬼のような婆さんに追いかけられて逃げた日。

 

 そのどれもが、今では朝露の如く儚く、輝いて見えるものだ。

 

 

 ...いかん。雨が降ってきたみたいだ...。

 心の錬金術師がそういうのだ。雨だよ...。

 

 

 まあ考えたところで過去は変わらない。未来に生きていこう。

 

 もちろんこの約3年間、嫌なことばかりではなかった。

 今では按摩としてしっかりと日銭を稼げるようになっているし、反転術式を用いての呪術師もとい霊媒師活動で助けられた人も数多くいる。

 直近では、あの皇帝のご子息が生まれたと風の噂で耳にした。

 母子ともに無事とのことだ。

 

 噂では皇太后のご子息も元気に成長されているとのことなので、俺が渡したお守りは、壬氏様も皇太后のご子息も、どちらもしっかり守ることができたのだろう。

 俺が一番救いたいのは羅漢と鳳仙のラブラブ結婚生活への道行だが、その途中で変えられる鬱展開があるのなら。積極的に変えていきたいものだ。

 

 ハピエンはなんぼあってもいいもんですからねぇ!!

 

 そんなこんなで、現皇帝が座する都までの道のりで、最後となる大きな都についた。

 やはり都は栄えている。

 彼方此方に出店が並び、盛んに呼び込みの声が響いている。

 

 ここの都の統治者はそれなりに良い治世を敷いているのか、道ゆく人も旅人らしき人も、みな楽しそうに笑っている。

 

 この世界に生まれたこの約3年で、やはりこの世界で一平民が生きていくことの大変さは、身にしみて実感した。

 一度都を離れれば、外には野盗や人攫い、野犬にオオカミなど危険が溢れており、飢えと渇きに苦しむことも珍しい光景ではない。そんな生きるには辛い世界で、少しでも人々の笑顔が見れる瞬間は、ひと時ではあるものの安らぎを与えてくれる。

 

 それが、俺が按摩として、霊媒師として活動している一端にもなっているのだ。

 

 

======================================================

 

 

 とりあえず、今日泊まる宿を探そうと、色々見ながら歩き回ってゆくと、遠くの道に人だかりと、騒がしい声が聞こえてきた。

 

 喧嘩か?

 

 予想とは異なり、目に映ってきたのは、いっぱいの食材を荷車に乗せて、道をいく牛車の一団だった。

 その数なんと5つ。どれも文字通り山盛りの食材と米俵を乗せていた。何か大きな宴でもあるのかと思って、周りの声に耳を傾けてみると、どうやらそんな感じでもないらしい。

 

 「また牛車の列だ。これで今月に入ってからもう3回目だぞ?」

 「先月も、先々月も同じように山盛りの食材を乗せてやって来てるんだろ?もしかして戦でも近々あんのか?」

 「まさか、領主様が皇帝様に謀反を企んでいるとか?」

 「おいバカやめろ!首が飛ぶぞ!」

 

 え?この牛車が今月3回目?さらに先々月もおんなじ規模で来ている?

 見たところ、一台に乗っている食材の量はおよそ2〜300キロほどで、それが5台だとその量はおよそ1〜1.5トンにもなる。

 3回でその量は4.5トン、2ヶ月前から続いているとなれば、10トン近くの食料を買い込んでいることになる。

 食材は日々の生活の糧としてもだが、戦争の際に物資としても重要となるものだ。

 

 これだけの量の食材を買い込んでるとなれば、そりゃ戦の一つや二つ起こるんじゃないかと思うものだ。

 

 触らぬ神に祟りなし。

 変なことに巻き込まれないよう気をつけていこう。

 

 そんなことは置いといて、再び宿を探すことに。

 ついでに按摩の仕事も並行して行う。金は稼げるうちに稼いでおくのが重要なのだ。

 

 「按摩〜。按摩〜。頭痛・肩こり・痛みに疲労。全部まとめて楽になるよ〜い。」

 

 宣伝文句を唱えながら、徘徊していると、少し見栄えの良い屋敷の立ち並ぶ通りに差し掛かった。

 いわゆる高級住宅街というやつだ。

 こういうところは大抵門前払いされるか、厄介ごとに巻き込まれるかの2択だ。

 

 そそくさと退散しようとした時、ふと視界の端に、道にうずくまる初老の男性の姿が止まった。

 近くに従者らしき人の影はなく、服装も平民よりは上等だが良いとこの出の人にしては質素なもので、どこぞの家の使用人か何かかと思われる。

 その人は痛そうに腰を抑え、地面で呻き声を上げていた。

 

 なんだか前にもこんなことがあったなぁ。

 

 「もし。大丈夫ですか?」

 「痛たたた...あ、ああ。大丈夫だよ。気にしないで良いとも。イタタ...」

 「そのような様子で、心配するなという方が無理なお話です。腰を痛めたのですか?」

 「じ、実はそうでな。おそらくぎっくり腰だと思うのだが...。いや、年には叶わぬものだな」

 

 そう言って苦笑いをしながらこちらを見てくる初老の男性。ふくよかな、なんとも優しそうな顔立ちをした御仁だ。

 早速腰を注視してみると、腰の筋と筋肉に炎症が見られた。男性の言う通り、ぎっくり腰で間違い無いだろう。

 

 「よろしければ、腰をお揉みしましょう。私、これでも腕の立つ按摩でしてね。」

 「そ、そうなのか?随分と若い見た目だが...。イタタ!」

 「歳は若くても、腕は一端のものでございますよ?お代は入りませんので、さあさ。体をこちらへ。」

 「じゃ、じゃあすまんが少したのむ。屋敷は近いのだ。少しでも良くなれば歩けると思う。」

 

 いくらなんでも、ぎっくり腰を起こして歩くなんて無茶なことだ。

 これは、少し出力をあげて揉んで差し上げるか。

 

 男性の腰に手を当て、背骨に沿って筋肉を押し、続いて骨盤をゆっくり通していく。同時に反転術式を使用し、痛めた筋を治していく。今回は出力小よりちょっと上げて、中に近い力で術式を回す。

 

 「お、おお、おおおお〜!!なんと気持ちいい!痛みがだんだんと引いていくわい!」

 

 初老の男性の喘ぎ声など聞きたくはないが、楽になっているのであればよかった。

 念の為、もう少しだけ揉んであげよう。

 

 「おおおおおおお〜!!!!」

 

 できればそれはやめていただきたい。

 

 

======================================================

 

 

 「いや〜助かった!!あんなに痛かった腰がほれこの通り!!グイングイン動くわい!わっはっは!!」

 

 男性は嬉しそうに腰に手を当て、ぐるぐると腰を回し具合を確かめている。よほど嬉しかったのか、なんとも楽しそうに快活に笑っている。最初は優しい物静かな男性かと思ったが、実際は賑やかな好々爺なのかもしれない。

 

 嬉しいのはわかるが、そんなグイングイン腰を動かすな爺さん。ほぼゲッダンみたいな動きだぞそれ。

 

 「それはよかったです。しかし、あくまで応急処置なので、激しい運動は控えてくださいね。」

 「わかっておる、わかっておる!!わっはっは!!」

 

 まじで元気だなこの爺さん

 

 

 「そうじゃ。腰を治してくれた礼に、屋敷に来てくれまいか?是非もてなしたい!!」

 

 

 ん?この人もしかして屋敷の主人なのか?とてもそうは見えない服装だが。

 

 

 「いえ、そこまでしていただかなくても結構でございます。私がしたくてしたことですので。」

 「そういうな!!いいからいいから!!わっはっは!」

 「いえほんと、大丈夫ですので。いや、ちょっ、いや力つよ!!?」

 「わっはっは!!」

 

 何わろとんねん!!

 

 

 強引に連れてこられてしまった。この爺さん力強すぎだよ。こんなことなら出力小で直してあげるんだった。

 そんなことを考えているうちに、どうやら男性の屋敷についたようだ。

 

 しかし、その屋敷がまあでかい。

 他の屋敷の3倍ほどの面積がある。もはや城だ。

 ほえ〜、とバカみたいに口を開けて眺めていると、男性は笑いながら俺の手を引きながら門を潜る。

 同時に、奥から従者たちが2、3人バタバタと慌てながら走ってきた。

 

 「旦那様!!またそのような格好でお一人外出されて!少しは年相応の振る舞いをなさって下さい!!」

 「まあそういうな!死にかけの老人の楽しみの一つだ!多めに見てくれ!」

 「何が死にかけですか!現役の当主でしょう!」

 「わっはっは!!!」

 「何笑ってるんですか!?」

 

 おそらく従者の中でも一番の古株であろう男が老人に対して小言をぶつけるも、我関せずでまるで聞いていない。

 この爺さん、さてはなかなかのやんちゃもんだな。

 

 「少しは領主としての自覚を持ってですねぇ!?」

 「あ〜、もうはいはい。わかったわかった。......禿げるぞ?」

 「誰のせいですか!!!???」

 

 苦労してるんだなぁ。この人も。同情を禁じ得ない。

 

 

 ..............................ん?領主?

 

 

 「すいません?今なんと?」

 「ん?おお、そういえば言うとらんかったの。てか知らずに助けたのか。お人好しじゃのう。」

 

 

 「ワシがこの都、成綾の領主。その人である!」

 

  Oh,Jesus. また権力者かよ。

 なんぞ俺は権力者と出会う呪いにでもかかってんのか?

 

 

 

 「お父様?」

 「げっ!?」

 

 突然の領主発言に呆然としていた時、横から若い女性の声が聞こえてくる。

 領主を名乗る老人は目に見えてまずい、という感情を全開にした声と表情を露わにしている。

 

 「またそのような格好で平民のふりをされていたのですね。」

 「い、いやその〜。これはの?そ、そう!民の暮らしぶりを目にするためにだな!?」

 「そんなこと言って、遊びたいだけでしょうに。しっかり母上にはお伝えしておきますからね?」

 「ちょ、それは堪忍してくれ!?」

 「ダメです!」

 「頼むよ〜!!」

 

 

 「芙蓉〜!!」

 

 

 .................え?芙蓉?

 

 改めて声のした方向を見てみると、そこには。

 月の下で想い人のため、舞を舞い、作中でおそらく唯一ハッピーエンドを迎えたであろう後の後宮の華。

 その面影を感じる年若い女性がいた。

 

 すなわち。

 

 (ハピエン厨である俺の密かな推しカップリングである)芙蓉妃じゃん!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 




時系列

オリ主
9歳:芙蓉妃と武官のエピソードまじしゅきぃ...

領主
52歳:ワハハ!!

芙蓉
12歳:何わろとんねん!
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