よろしくお願いします〜。
暗く湿った牢屋の中、佇む二人の姿が、蝋燭の明かりでゆらゆらと揺らめいていた。
李信さんは俺の顔を何度か見つめた後、意を決した顔をして、ポツリポツリと、芙蓉様に異変が起こり始めた時のことを話し始めてくれた。
「芙蓉が、ああなったのは、今から1ヶ月前のことだーーー」
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その日は特段、いつもと変わらない穏やかな日だった。都ではそこかしこで呼び込みの声が聞こえていて、街の人も旅の人たちも、みな同じように笑顔であった。俺は護衛として、習い事から帰宅する芙蓉と一緒に、都を歩いていたんだ。
「ほんと、習い事が多くて嫌になるわ!お父様の気持ちもわかるけど、もうちょっと優しくしてくれても良くなくて?」
「芙蓉様には、立派な姫となられてほしいという、領主様の親心の表れでしょう。どうかご理解なさいませ。」
「むぅ...。また敬語で喋って。幼馴染なのですから、二人きりの時くらい、いつものように喋ってくれても良いではないですか?李信?」
「ご冗談を。私は一従者にすぎませぬ。ご勘弁を。」
「もう!いじわる!」
芙蓉の一族に長年支えてきた俺の一族は、幼い頃から護衛として側に侍る。芙蓉の護衛として側につくようになったのはずっと幼い頃だった。そのため、俺たちは身分は違えど、幼馴染のようなものだったのだ。それゆえ、芙蓉は二人きりの時はこのように敬語ではなくタメ口で話すよういつも言ってくる。それを俺がいつも諌めるのが、お決まりの流れだった。
「そうだ!李信!ちょっと付き合って?」
そう言って、建物の路地へと走り出す。いくら都とは言え、人攫いだって出没することがある。
「お嬢様!お待ちください!」
俺は急いで後を追った。昔から足が速かった芙蓉に追いつくのは、なかなか骨が折れたものだ。
芙蓉を追いかけていくうちに、都の中心からどんどんと離れていき、しまいには都を囲む塀に空いた穴から、よじよじと這い出ていくではないか。都の外に出て怪我でもされたら、俺の首が飛びかねない。急いで後を追った。
なんとか追いついた時には、都から少し離れた原っぱに出ていた。
「前に見つけたの。ここは風がすごい気持ちいいのよ?それ〜!!」
そう言って原っぱの中にダイブして、猫のようにゴロゴロと転げ回る。
高い衣服を着てそんなことをして、確実に俺が怒られる未来が見えて頭を抱えていると、こちらを楽しそうに笑いながら見上げてきた。
「ここなら、他の人の目もないよ?ね?」
...本当に。こういうところが、昔から好きだったのだ。
「わかったよ。全く、怒られるのは俺なんだぞ?わかってんのか?」
「えへへ、ごめんなさ〜い。」
本当に、困ったものだ。姫と護衛、その立場を忘れてしまいそうになる。
「ねぇ、李信。私は一体、誰と結婚するのかしらね。」
「...なんだよ、突然。」
ひとしきり遊んで疲れたのか。寝そべって空を見ながら、そんなことを呟いてきた。
正直、聞きたくないことだった。
「わかってるの。今習っているお花も琴も、それ以外の多くのことが、いつか来る誰かとの結婚のためだって。もちろんお父様が私のためにさせてくれてるってこともわかってる。...けど、それよりも私がやんごとなき方々と良縁を掴めるようにという意味の方が、きっと大きい。」
姫として生まれた以上、自分のために生きることは難しい。
家のためにその身を捧げることになるのは、都の領主の娘として生まれた芙蓉にとって、定められたことだ。
わかってはいるが、直接それを芙蓉が口にすると、胸が苦しくなる。
「でもどうせなら、私は李信と結婚したい。」
んしょ、そう言って体を起こし、芙蓉はこちらを向いてそう呟き、微笑んだ。
「李信といると、姫ではない素の私でいられるもの。私はこの時間がとても好き。」
「だから、李信に旦那さんになってほしいな。」
薄々気づいていたさ。俺たちが互いのことを好いていることなんて。でも、それができる身分じゃない。
都の姫とその護衛。どうしても、身分の差が壁となる。
「...俺も、芙蓉と結婚したいよ。」
「...うん。」
「でも、身分の差は大きい。どうやったって、それは覆らない。」
「...だったら、いっぱい出世して!!」
「は?」
突然何を言い出すかと思えば、なぜ出世に話が繋がるのか。
「前にお父様から聞いたの。手柄をあげた武官が、主上の座す後宮より姫を下賜されることがあるって。だったら、李信がものすごく頑張って出世したら、私と結婚できるかもしれないじゃない!」
「いや、それは...。」
「あら?私と結婚するために出世してくれないの?」
その言い方はずるいだろ。
確かに、高い功績を上げた武官や文官がその対価として、後宮の花を下賜される話は耳にしたことがある。しかし、それが自分にも当てはまるのかは疑問だ。第一、そのためには今の護衛の立場ではなく、武官や文官のような立場にならなくてはならない。それは実に現実味のない話に思えてしまう。
でも、好いた女にそう言われちゃ、男として黙ってはいられない。
「...わかったよ。将来、めちゃくちゃ出世してやる。」
「それで、芙蓉と釣り合うくらいになって、その時、結婚を申し込む。」
「だからそれまで、誰のものにもなるなよ?」
「うん!!!」
その時の花咲くような笑顔を、俺は生涯忘れないだろう。
その後、屋敷へと戻り、案の定こっ酷く怒られた。親父に頭を思い切り殴られた時は、出世の前に死ぬんじゃないかと思ったものだ。
でも、芙蓉と一緒にあの原っぱに行って良かったと、心底思ったのだ。
その日の夜だった。
夜の見張り番として、屋敷の警備をしていた最中、厨房の方から何やらガサゴソと音が聞こえてきたのは。
最初は犬か狐か、何かの動物が飯でも盗みにきたのかと思った。
でも、その音が異様におおきくて。動物じゃない、これは人間だと思った。
携えていた剣を持って、厨房に向かった。
扉の奥から、より何かが動く音が大きく聞こえてきた。
扉を蹴破って、中を見てみたら。
虚な目で、ひたすら飯をかき込んでいる芙蓉の姿があったんだ。
「芙蓉?」
夜の闇の中、手に持った松明の光に照らされて、寝巻きのまま両の手で飯を掴み口に運ぶ芙蓉が、ゆっくりとこちらを見た。
その姿は、昼間のものとは違い、まるで幽鬼のようであった。口からは絶えずあぁ...と言葉にならない声を漏らし、ひたすら口に飯を運び続けていた。
「な、何やっているんだよ?おい!やめろって!!」
剣を投げ捨て、食事をやめさせようと後ろから体を押さえる。しかし、いつもの芙蓉とは思えない力で抵抗されて、簡単に吹き飛ばされてしまった。
「あ、あああああああああ!!!!!」
その時の芙蓉は、まさに獣のようであった。
「......その後、いくら止めようとしても、食事を止めることはできなかった。大人たちが合流しても、結果は同じ。朝日が昇るまで、芙蓉は食事を続けたんだ。」
「その日から毎晩、芙蓉は飯を食べ続けた。でも次の日になると、芙蓉は昨日のことなど全く覚えちゃいない。なんで自分の手からご飯の匂いがするのか不思議そうに首を傾げていたくらいだ。」
「その後、芙蓉にこのことを告げるべからずと、領主様より御触れが出た。...それ以来、牛車で飯を運び続けているのさ。」
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...なるほど。そうだったのか。やはり、あの牛車は昼間に見た牛車と同じだったのか。
しかし、あんなに目立っていて大丈夫なのだろうか?それこそ都の人の間でも噂になっているが。
「ここに来る迄に色々と道を変えながらきているから、領主の屋敷に入っていることは誰もわかっていないと思う。それに、むしろ夜とか早朝に牛車を動かすと逆に人の目を引くからな。あえて昼に、人の目が多い時に運んでいるんだよ。」
なるほど。木を隠すなら森の中、てやつか。
...だとしたら、なぜ俺の目に届く場所に牛車をおいていたのか。そこが不思議だ。
「...ちなみに、芙蓉様がそのような状態になる前に、何か芙蓉様やその周りで変なことやおかしなことはなかったですか?」
「おかしなこと?............そういえば、食糧庫に長年使っていた蔵を、突然空っぽにして別に移したな。」
「蔵?蔵ですか?」
「ああ。俺が幼い頃よりずっと前から使っていた蔵なんだそうだ。急にそこを変えることになったって聞いて、ちょっと驚いたんだ。うちでも一番大きくて立派な蔵だったからな。」
「蔵、蔵ねぇ......。ちなみに、そこに芙蓉様はよく出入りしていたんでしょうか?」
「え?そうだな...、時々イタズラでそこから食べ物を盗んだりとかしたりしてたな。家の人間は、お転婆なところがあるのも知ってたから見て見ぬふりをしてたけど。」
「なるほど。じゃあ最後の質問です。」
「その蔵って、蜘蛛とか突然出てきたりしませんでした?」
「蜘蛛?まあ、元々いたと思うけど。...ただ、確かに蜘蛛をたくさん見ることが多くなったとは言っていた気がするな。それがどうした?」
なるほど。まだ確定じゃないが、李信様から話を聞けたことで、疑念がほぼ確信に変わった。
あとは、芙蓉様のところに行くだけだ。
「さて、じゃあ行きますか。」
「ど、どこにだよ。」
「決まってますよ。」
「堂々と、正面から芙蓉様に会いに行きますよ。」
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李信さんに助けて頂いたのち、二人で堂々と牢屋のあった建物から出ていく。どうやら牢屋があったのは屋敷のはずれ、その地下だったようだ。通りで虫やカビやらが生えていたわけだ。
建物から出ると同時に、こちらに向けて走ってくる複数人の人影が見えた。どうやら俺を殴ったあの男性とその部下のようだ。おそらく、李信さんがいなくなっていることから、俺が逃げ出すのではないかと思ったのだろう。だが、俺は堂々と正面から出てきたので、相手は面食らった様子だ。
「に、逃げると思いましたが...。なぜ、わざわざし、正面から出てきたのです?殺されるとわかっていたでしょう。」
よほど急いできたのだろう。息が上がってちゃんと喋れていない。まあ無理もない。俺が逃げれば、外部の人間に芙蓉様のことが漏れ出るわけだ。なんとしてもそんな事態は防ぎたいだろう。それにしては、牛車を来たばかりの俺にあっさりと見つかっているし、物音が聞こえる場所に俺を泊めるし、全然秘密にできていないのだが。
「確かに。あのまま李信さんに助けてもらって、この都から一刻も早く逃げ出すという選択をするのが普通でしょうね。私もまだ死にたくはないですし。」
「だったら、なぜ逃げなかったんです。正面から堂々と、逃げずに出てくれば私たちがあなたを殺さないとでも?」
「そんなことは思っていませんよ。逃げても逃げなくても、必ず私を殺すでしょうね。」
「じゃあなぜ。」
そんなの決まっている。俺が気に食わないだけだ。
この3年間で厄介ごとにも色々巻き込まれたし、苦労もした。時には死にそうになったこともあった。この世界では簡単に人は死ぬことと、厄介ごとに首を突っ込み過ぎればそのまま命を失いかねないことを教わった。
それでも、自分が持つ力で助けられる人がいるかもしれないのに、それを見て見ぬふりしてのうのうと生きるなんて。俺は御免被る。
「ダチを見捨ててあんたら、明日食う飯がうめぇかよ。」
明日も誇れる自分でいられるように。大好きなあの二人にあった時、堂々と真正面から顔を合わせられるように。俺は生きるだけだ。
「按摩...。」
「...たいそう立派な思いですね。だが、李信が言ったように、所詮あなたはただの按摩。体を揉むことしかできない者に、一体どうして、芙蓉様をお救いすることができると言うんです?」
「ただの按摩じゃないんですよ、私。」
「何?」
「腕の立つ霊媒師でもあるんです。」
「........何を言うかと思えば、くだらんことを言うな!!霊媒師など、インチキで人を騙し金をせしめるクズどもだ!言うに事欠いて、霊媒師だと!?そんな詐欺師を、芙蓉様に近づけるわけがなかろう!」
「インチキくさいのは認めますよ。ですが、そのインチキくさい霊媒師が、逃げれば助かるかもしれない状況の中で、こうして逃げずにあなたたちの前に堂々と姿を晒している。その気概は、汲んでいただきたいものですがね?」
「この、ガキが...!」
どうするかね。ぶっちゃけわかりやすいのは傷を治す反転術式をみせることだが、それすらインチキと思われる可能性があるし、術式をお偉いさんにがっつり見せるのも、それはそれで後々面倒なことになりそうだ。
ぶっちゃけノリと勢いで出てきてしまったからな。どうしようか。最悪ぶん殴って全員気絶させて、そのうちに芙蓉様の原因を調べにいくか。
今にも飛びかかってきそうな男たち。あたり一体には、張り詰めた空気が充満する。
「そこまでだ。」
口火が切られるその寸前、低く威厳のある声がその場を制した。
「旦那様...。」
「白峰。もういい。十分だ。」
「...はっ。」
昼間の様子とは打って変わり、冷たい刃のような雰囲気を醸し出している。これが、父ではない領主としての顔なのだろう。
「いやはや。まだ幼い身でありながらその肝の座りよう。実に見ていて感心する。」
「...恐縮です。」
「噂の中にもたまには真実がある、と言ったところかな?」
「は?」
噂?俺の噂が出回っているとでもいうのか?
「ここ数年、幼い少年の話が、時たま流れてきていた。内容は様々あれど、出会ったものの多くが、不思議な力で助けてくれたと語っていたという。それが当人たちの知らぬ知識や技術のことを指しているのか、はたまた本当に理解の及ばぬ力を持っていたのかは定かではなかったがな。」
...確かにこの3年間で現代の一般知識や医療知識を用いて、問題を解決してあげたことが何度かある。たまに呪霊関係で困っていて助けてあげた人たちもいた。しかし、噂になるほど大それたことはしていないはずだ。どれもこれも、大した事件でもなんでもなかった。呪霊関係だって、ほとんど低級の4級、3級の呪霊ばかりだった。
反転術式だって、人前で使う時は必ず変装をしていた。今回はちょっとカッコつけたけど。
黒曜本人は大したことをしていないという認識でいるが、チリも積もれば山となる。
長年痛かった腰が治った。
こちらを見てくる変な気配が、もらったお守りで消えた。
子供を助けてくれた。
病を治してくれた。
そんな小さな積み重ねを3年間、コツコツ重ねてきた黒曜が、噂話の種になるのは時間の問題であった。
例え反転術式を使う際に変装をしていたとしても、似たような少年の話が上がれば、自ずと同一人物ではないか?という疑念も生まれてくる。
結果、黒曜の預かり知らぬところで、黒曜という人間は少しずつ知られていったのだ。
「3週間ほど前、噂の少年らしき人物を見たとの話を聞きつけた。複数の場所で目撃情報があったこと。徐々にこちらに近づいてきていることから、近々必ずこの都にやってくるだろうと思っていた。」
領主がこちらをじっと見つめ、ゆっくりと歩いてくる。1つの都を背負う、男のその目と気迫は、静かでありながら目を離せぬ圧を放っていた。
「そして先日。噂の少年と思わしき人物がこの都にやってきた。...結果は噂通り。本来であれば、こんなに簡単に治るはずもない腰を、揉むだけでほとんど治してしまった。」
徐々に、徐々に。距離が縮まっていく。
「...確信したよ。お主は、何かを持っている者であるとな。」
やがて、距離はゼロになる。
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「...もしや、昼間噂になっている牛車が目に留まるように置いてあったのは、わざとですか?」
目に前に立つ、都の主人を前に、俺は抱いていた疑問をぶつけた。よくよく考えればおかしいのだ。本当に隠したいのなら、牛車は人の目につかない場所に隠しておいておくはずだ。俺が泊まった部屋も、芙蓉様が食事をしていた部屋からそう遠くない。膳を運んでいれば、その物音で目が覚めてしまうほどには、近い場所なのだ。それなのに、気づく位置に牛車を置き、物音で目が覚める位置に俺を泊める。明らかに、俺を試しているとしか思えない状況だったのだ。
「いかにも。」
俺の疑問に対し、領主は一切の誤魔化しもせず、認めた。
「...芙蓉様のあの姿を見せたく無い割に、物音が聞こえる距離に私を泊めたのも?」
「気づかせるためよ。」
泊めた場所についても、認めた。やはり、領主は俺を試したのだ。噂の少年がどんなものなのか。ただの子供か、それともこちらの用意した情報に気づかぬ馬鹿か。
「...なるほど。腰を痛めて見せたのも全てわざとということですか。」
であれば、あの出会いもまた、領主が仕組んだものであると考えるのが妥当である。やはり都の領主をやっているだけはある。のほほんとした好々爺に見せて、その実こちらを見定めていたとは。まさに狸ジジイだ。
「あれは本当に腰痛めただけ。」
ずっこけそうになった。
「いやほんとはもっと軽い怪我にする予定だったんじゃよ。それがマジで重い怪我しちゃって。ぶっちゃけ焦ったよほんと。わっはっは!!」
さっきまでのシリアスは一体なんだったのだ。この爺さん緩急が激しすぎる。そりゃあの白峰と言われた男性も、心労で禿げるわけだ。
「おい、小僧。なんですその目は。私は禿げてはいませんよ。」
バレた。
「...じゃが、結果お主が本当に特別な何かを持つ人間であると確信を持てた。」
そういうと、領主はその場に膝をつき、両手を地面につけ、頭を下げた。周りの家臣たちが息をのみ、思わずお付きの白峰がその身を起こそうとするも、領主は鉄の如く、その身を不動のまま貫いた。
「伏してお願い申し上げます。もはや私には、何をどうしてやればいいのか分かりませぬ。...どうか、どうか。芙蓉を、娘を助けてください。」
震える手で、地面に頭をつける領主の姿は、先ほどとは異なり、とても小さく見えた。きっとそれほどまでに追い詰められていたのだろう。思えばあのテンションの高さも、芙蓉様を困らせるような行動も、全て彼なりに芙蓉様に悟らせないようにという心からくるものだったのだろう。
俺だって、万能の天才じゃない。あくまで反転術式で人を治せるだけだ。もしあれが心の問題だったとしたら、いくら反転術式でも治せるものではない。
だが、窓から覗いて、頭に袋を被せられた時。確かに、ほんの一瞬だが見たのだ。
芙蓉様に纏わり付く、蜘蛛の糸のような一本のど汚い呪力の線を。
「顔をあげてください。」
相手が呪霊なら、話は別だ。
「さっき言ったじゃないですか。」
良くも俺の推しにど汚ねぇ呪力をくっつけてくれたな?
「友達を見捨てて、明日食う飯が美味いわけないでしょ?」
俺の反転術式で跡形もなく。
「だから助けます。芙蓉様は...。」
完膚なきまでに。
「友達ですから。」
ぶっ殺す。
「ちなみに、私がなんの力もない普通の子供だったり、芙蓉様の姿を見て逃げ出していたら、どうしたのです?」
「...その時は、眠ってもらうつもりだったよ。」
「ここでね。」
...やっぱ権力者は怖えわ。近付かんとこ。
時系列
オリ主
9歳:こわ...近付かんとこ。
領主
52歳:ワハハ.........。
白峰
39歳:まだ禿げてない。禿げてないんだ...!
李信
12歳:そういやあいつ、俺の傷治してなかった...?