とある大学の講義室
奉仕部として共に本物を求めて、関係を維持することを選び終わった高校生活、大学生になった俺は講義を受けていた
教授「皆レポートを大変よく頑張ったな、だがこの中に1人問題のある文章を書いたものがいる」
教授「えーゴホンッ」
「現代社会における『コミュニケーション能力』のインフレと、その欺瞞について」
「世の中は協調性や友人の数が人としての魅力だと語るが、コミュニケーション能力とはすなわちエネルギー量が同等の個体同士による傷の舐め合いであり、それをマジョリティ側が正当化しただけにすぎない、つまりそこから外れた者こそが真のエネルギー量が多く孤高な個体である
すなわち逆説的にぼっちとは馴染めないのではなく群れなくても生きていける強者なのだ」
講義室内が失笑や笑いに包まれる
男子「おい、誰だよあれ書いたの笑」
女子「ただの僻みじゃん」
教授「コミュニケーション能力のなさをエネルギー量の違いに変換するのは実に面白い視点だったよ、比企谷くん」
教授がそう言い講義室内の視線が俺に集まる
八幡「え、あーその、でもそれは事実というか」
教授「君の論理展開、そして『傷の舐め合い』という極端な語彙の選択は、非常に扇情的で面白い。既存の社会システムへの反逆精神としては評価できなくもない。……がね、社会心理学の観点から言わせてもらえば、これはただの『集団から拒絶された個体が、自己の尊厳を守るために行う過剰な合理的自己防衛(認知の不協和の解消)』、平たく言えば、盛大な負け惜しみだ」
言いたいことはあった、だがここで言い返すメリットもないので黙っておく、まさか悪ノリで書いたレポートを講義中に晒されるとは思わなかった、あのハゲ教授マジ許さねぇ
講義を終えた俺は、学校の近くにある学割のあるラーメン屋で昼食を済ませた後に図書館に向かった
八幡「入学して早1ヶ月、やっぱ有名私大だけあって無駄に広いし綺麗だよな、ここの図書館」
来た目的は自習や調べ物ではなく、趣味の読書のため、ぼっちの八幡にとっては早くも馴染みの場所になりつつあった
八幡(今日は何読もうかな、PSYCHO-PASSの狡噛慎也が読んでたスティーブンキングの「死のロングウォーク」でも読んでみるか)
一般文芸の棚から本を物色する、古い本だったので置いておらず、受付に頼んで書庫から持ってきてもらった
受付「お待たせしました」
八幡「ありがとうございます」
買ってきたMAXコーヒーをお供にしてさっそく読み始める、国から集められた少年達が命懸けで長い道のりを歩かされる話のようだ
謎の女子「ねぇ、それってさ」
2時間ほど集中して読んでいた頃に、ふと頭上から声がした
八幡「え?誰?」
謎の女子「あ、ごめん驚かせたね、私は姫宮楓
たまに講義で一緒の時あるけど気づいてなかったか」
八幡「ああ悪い、話す機会とかなかったしな
で、どうした」
楓「いやその読んでる本、死のロングウォークだよね スティーブンキングの」
八幡「へー若い女子でこれ知ってる奴いるのか、珍しいな」
楓「PSYCHO-PASSの狡噛慎也が読んでるってプロフィールに書いてあったからアニメファンとしてはね」
八幡「おー結構コアだなお前」
楓「比企谷くんこそ、なんでそれ読んでるの?」
八幡「俺も同じ理由だよ、アニメ好きなのか?」
楓「うん、実は私シナリオライター目指してて、将来はビジュアルアーツみたいな会社作って自分のブランド立ち上げたいんだ」
八幡「へーそりゃ立派な目標だな、それで結局用事って本の内容か?」
楓「いや実はさ、さっきの講義で君の書いた論文聞いて面白かったから、比企谷くん、ノベルゲームやアニメのシナリオ制作って興味ない?」
八幡「悪いけど他を当たった方がいいぞ、俺なんぞただ人より苦い思いして生きてきただけの捻くれ者だ」
楓「そこをなんとか!君みたいな人の汚い部分を言語化する鋭い視点を持った仲間が必要なんだよ」
こうしていると、奉仕部で依頼を受けていた日々を思い出すな
八幡「まあ、とりあえずどんな話書いてるのか見せてくれる?」
そして俺の大学生活はまた、大きく歪んでいくのだった