シナリオの脚本について話すため八幡と楓はファミレスに移動した
八幡「えーとなになに?」
『野球部の期待の1年生エースが甲子園での連投により準優勝と引き換えに選手生命に関わる怪我を負ってしまう、周囲からも終わったと囁かれて傷心中の彼は野球部をやめて高校にも次第に行かなくなっていった、その翌年の夏、家族に勧められて野球部のない離島の高校に通うことになり、そこで出会ったヒロインや仲間達と過ごし奇跡を経験する』
楓「どうかな、このあらすじ」
八幡「ベタだな、無しだ」
楓「ええ!?いきなり全否定!」
八幡「内容がkey作品の二番煎じだ、サマポケとかリトバスとかCharlotteとか色々混ざってるだろ」
楓「うっ...」
八幡「二次創作とか、趣味で書いてるならこの内容でもいいかもしれないが、本気で自分のブランドとして売り出したいならジャンルに競合がいないブルーオーシャンを開拓して勝負すべきだな」
楓「それって例えば?」
八幡「そうだな...奇跡なんてそう簡単に起きないってコンセプトで主人公が堕ちるところまで堕ちて犯罪に走るとか、そこから立ち直るまでのリアルな泥水啜ったような話描けばウケるんじゃねーの」
楓「なるほど、そのジャンルは確かに開拓されてないかも」
八幡「人間は一枚岩じゃないからな、汚い部分もあるから深みが出るんだ、俺なんてほら、これまでの人生で泥水しか啜ってないから深みの塊だろ」
楓「どんな人生送ってきたのか知らないけど説得力がすごい... でも、そんな暗い話一般層にウケるのかな」
八幡「大丈夫だ、ひたすら鬱展開の漫画やゲームでもちゃんと売れてるし信者はついてる、それに言っただろ、最終的に自力で立ち直るんだよ、暗いだけの話でもご都合主義でもないリアリティだ」
楓「でもオタクコンテンツにおいて美少女ヒロインは必須だよね」
八幡「まあノベルゲームやアニメならそうだな、ガワで萌え豚釣ってグッズの売り上げ出すならそれが正解だ」
八幡「ていうかお前、いつからシナリオライター目指し始めたんだ?」
楓「あー、えっとね、本気でなりたいと思いだしたのは半年前くらいかな、アニメやノベルゲームにハマり出したのが2年前くらいなんだ」
八幡「ほーそれでまたなんでkey作品そんなに推してるんだ?」
楓「...結構重い話なんだけど、引かない?」
八幡「いきなり人のこと捕まえて自分の書いたシナリオ読ませてる時点でもう十分引いてるから大丈夫だ」
楓「ひどくない!?」
楓「...実は私、中学時代に鬱病になってまともに学校通えなくなったんだよね、それまで仲良かった友達とかもどんどん離れていってね、みんなが普通に学校通えてるのに自分は毎日何もできずに部屋にいて、もう死んじゃおうかなって思ったことも何度もあった、そんな時にたまたまとあるアニメを見たんだよね、主人公が大切な人を亡くして自暴自棄になって周りも助けられないような廃人一歩手前までいったんだけど、ヒロインだけはそんな状態になった主人公を立ち直るまで陰から見守り続けて尻叩いてくれてたんだ、それを見て、私にもこんな人がいてくれたらいいなって思ったしこういう芯のある人間になりたいとも思った、そこから他のkey作品も見だして心の支えになって、私もこんな風に救われたり生き方に影響を与えてくれる作品を作りたいって思ったんだ」
八幡「...そうか」
想像していたよりも、目の前にいる少女は苦い人生経験を積んでいた、俺は彼女に対して深みやリアリティがどうこう語っていたが、彼女自身が俺以上にキツい青春を送っていた事実に急に気恥ずかしさを覚えてしまった
少なくとも俺には、何か重大で理不尽な病気や怪我、障害が降りかかったことはなかったからだ
八幡「まあ、なんていうか想像でしかないが、俺がそんな状況になったら世の中恨みまくってただろうし、今のお前みたいに楽しそうにできてるのは十分すごいと思う」
楓「ありがとう、なんかごめんね、気遣わせちゃって、こんな話人にしたの初めてだよ」
八幡「そうなのか?こっちこそなんか聞いて悪かったな」
楓「ううん、比企谷くんならわかってくれるかもって思ったから話したんだ、あんなレポート書いちゃう人だからね笑」
八幡「ああ、順風満帆なリア充に話しても「うわ重...」って反応で終わるだろうな、わかってやれるなんて言うつもりはないが、泥の中歩いてきたのは同じだから他人事とは思わねーよ」
楓「そうだね、だから比企谷くんに声かけたんだと思う」
八幡「なるほどな、自分と価値観共有できそうな奴って意味では確かに最適だったかもしれないな」
会話する中で俺は感じていた、高校時代に奉仕部の活動を通して感じた何かとも違う、互いを根本的に理解し合える存在として期待を無意識に彼女にしてしまったのかもしれない
楓「じゃあシナリオも見てもらったし色々聞いてもらったし、今日は私に奢らせてよ!」
八幡「いや別にいいけど...まあ筋通したいってのはわかるから、じゃあ頼むわ」
創作談義を一旦終えて夕食を食べる
程なくして夕食を終え、2人でファミレスを後にする
楓「じゃあ今日はありがとね、比企谷くん次いつ学校来る?」
八幡「俺は基本的に月水金しか授業入れてないから次は月曜だな、火木は引きこもるって決めてる」
楓「そうなんだ、じゃあ次は月曜だね、あそうだ、LINE交換しよ」
八幡「いや俺LINEやってないから」
楓「え、そうなの!?今時人見知りでも誰でもやってるものだと思ってた」
八幡「連絡先に入ってるのは親と妹と高校時代の顧問くらいだよ、メアドなら交換できるぞ」
楓「じゃあそれで」
楓「じゃあね、比企谷くん、また学校で!」
八幡「おう、気をつけろよ」
こうして俺は今日、楓という少女に出会い、彼女の夢や過去を聞き、シナリオに俺なりのアイデアを出した、やってることが高校時代とあんまり変わってなくないですかね、夜道を歩きながら本日2本目のマッ缶を飲みながらそんなことを考えた。