アパート内にて
八幡「んん、う〜ん」
昼12時に目が覚めた
今日は木曜日なので講義は受けずに引きこもると決めている
月曜日に姫宮楓の提案により結成されたサークルに半ば無理矢理参加することになってしまったが、俺は基本的にあの手の集団行動への耐性はなく、大学内でも事務連絡以外で声をかけてくる者などそれこそ彼女くらいのものだ
あれから連絡はなくサークルの活動場所などはまだ決まっていないのだが、まあ俺としては活動しなかろうと困ることはないので触れることはない
さて、今日は先週末買っておいた長編小説を読んで過ごすことにしよう
そう思いベッドから起き上がり携帯を見ると着信履歴があった
『比企谷くん、今日からサークルで集まって本格的にゲーム作りを始めるよ、活動場所は目星がついたから学校に着いたら教えるね』
面倒なので見なかったことにする
ブーッ
また携帯が鳴る
『ねぇ、既読ついたよね、なんで返さないの?
ねぇ見てるよね絶対』
え、何怖い、怖いよこの人
仕方ない返信しとくか
『悪い、今起きたばっかなんだよ、あと俺今日講義出ないから、また大学行った時参加するわ』
『そっか、じゃあわざわざ大学まで来てもらうのも悪いよね、わかったよ』
どうやら納得していただけたようだ、あいつの性格からして強引にでも連れ出してくるもんだと思ってたが、まあ何はともあれこれで休日出勤は免れた、今日は自由に過ごすことができる
シャワーを浴びてから、昨日の帰りに買い溜めしておいた弁当を食べながらテレビを見る
ピンポーン
不意にインターホンがなった、なんだ?Amazonなら頼んだ覚えはないが、ドアスコープを覗くとそこに立っていたのは姫宮、園田、吉野の3人だった
姫宮「おーい比企谷くん!遊びにきたよ!」
園田「サークル活動の報告をしにきたのでは」
吉野「みんなで1人の部屋に集まって一つの目標に向かって活動する、青春だな!」
え、なんでこいつらいんの?ていうかなんで俺の家知ってんの?怖いんだけど
寝たフリをしてやり過ごすことにしよう
園田「出てきませんね」
楓「おかしいな、30分前に起きたって連絡があったからまだ家にいるはずなんだけど、せっかくおみやげにMAXコーヒーと一蘭のカップ麺買ってきたのに」
ガチャリと鍵が開く音がした
八幡「お前らなんで俺の家知ってんだよ」
楓「あーやっぱり居留守してたんだ!もーなんで早く出ないの?」
八幡「いきなり来たのはお前らだろ」
楓「だって大学に来てないとは言ったけど参加できないとは言ってなかったもんね」
八幡「屁理屈すぎるだろ」
楓「比企谷くんに比べたら負けるよ」
八幡「ところで、マジでどうやって特定したんだよ」
楓「比企谷くん原付乗ってるでしょ、大学の同級生が比企谷の原付発見とかここの駐車場の写真SNSに投稿してたよ」
八幡「え、なにそれ怖い、大学で俺どういう扱いなの?普通に盗撮なんだよなぁ」
楓「とりあえず上がってもいいかな?」
八幡「はぁ...断っても帰るつもりねーだろ」
楓「それじゃあお邪魔しまーす!」
園田「お邪魔します」
吉野「上がらせてもらう」
勢いに負けて部屋に上げてしまった、この部屋は10畳の1LDKでそこまで狭くもないが4人集まっても余裕があるほど広くもないのだ
楓「うわー洗濯物取り込んだ後に畳んでないじゃん、ちゃんとやりなよー」
八幡「別に着る時にそのまま取れば困らないだろ」
楓「もー仕方ないなぁ」
そう言って姫宮は勝手に服やタオルを畳みだした
こいつ強引なだけだと思ってたが意外と生活力は高いのかもしれない
その間に園田は何をしてるのかと思ったら本棚を見ていた
園田「比企谷さん、司馬遼太郎や伊坂幸太郎がお好きなんですね」
八幡「ん?ああ司馬遼太郎の歴史小説は親父が好きで昔からよく読んでたからな、伊坂は有名になってからはあんま読んでないけど」
園田「そうなんですね、伊坂幸太郎の書く小説の主人公はどことなく比企谷さんと似たものを感じるので納得感があります」
園田はそう言いながら口元を緩めていた
伊坂の書く主人公といえば、斜に構えて世間を冷めた目で見ているがその実独自の美学を通そうとする、そんな人物が多い
八幡「買い被りすぎだろ、そんな大層なもんじゃない」
吉野「比企谷、ライトノベルは読まんのか?あれだけ創作に対する持論強いの見たら普段からかなりの数のエンタメに触れていると思ったんやが」
八幡「ああ、たまに読むけど巻数が多いとスペース取るから引っ越す時に全部家に置いてきた」
吉野「ちなみに何を読んでるん?」
八幡「そうだな、メジャーどころからコアなのまで読むけど、好きなのはイリヤの空や広い枠で言えば古典部シリーズだな」
吉野「ほーんどっちも特に文学的で知性的な作品やな、君のその俺は本質わかってるからみたいな雰囲気見るとその作品読んでるって言うのも納得ンゴねぇ」
八幡「お前が1番その手の雰囲気出てんぞ、飄々とした胡散臭さといい」
俺側から見たらそんな雰囲気出てたの?恥ずかしいんだけど、とりあえず皮肉で返しておく
楓「イリヤの空いいよねー、私水前寺が好きだな、自分の好きなものに真っ直ぐで、ああいう風に生きてみたい」
八幡「ああ、お前まさに女版水前寺だもんな、真っ直ぐで強引で行動力の鬼で」
楓「え、そうかな、えへへ」
八幡「いや褒めてないからね」
なんで照れてんのこいつ
八幡「ていうかお前らなんか用事があってきたんじゃねーのか」
楓「そうだった!サークルの活動場所が決まったから伝えにきたんだよ」
八幡「どこに決まったんだ?」
楓「旧グラウンドに元々運動部が使ってた部室があって、もうどこも使ってないから使ってもいいことになったんだ、そこならエアコンもついてるし結構広いんだよ!」
八幡「ほー、実質一部屋丸々このサークルで私物化できる訳か」
楓「でも数年間使われてないからすごい埃っぽいし誰かが置いていった荷物もあるから掃除しなきゃ使えないんだ、みんなで掃除しよう!」
八幡「まあそれはいいが、それならわざわざ家まで来なくてもメールで伝えればいいだろ」
楓「比企谷くんメールで呼んでも絶対来ないじゃん、1人だけサボったら後から気まずくなるのそっちだよ」
八幡「明日からやればいいだろ」
楓「ダメだよ、何事もできる時にすぐやらないといつまで経っても進まないんだから」
八幡「お前のその行動力はある意味感心するわ...わかったよ、今から一緒に学校に行けばいいのか?」
楓「うん!じゃあ来る途中にみんなの分のドーナツ買ってきたからこれ食べたら行こっか」
こうして俺は休日にサークルの掃除に駆り出されることになった、姫宮の買ってきたドーナツとマッ缶を頂く、それは胃がもたれそうなくらい甘かった