オタクはカプ厨になるものでしょう?
第一話 我転生者につき
呪術というものが存在する。
呪術と聞けばまぁ、わかりやすく思いつくのは丑の刻参りとかだろうか? 現代に寄るならばコックリさんとか? 知名度があるものになるとそういうものが呪術として名を馳せているのだと思う。日本史の教科書で言えば卑弥呼とかが呪術を使ってたよね。お勉強が好きなそこの君は
太占は亀の甲羅を焼いて占いをすることで、盟神探湯はお湯に腕ぶち込んで火傷してなかったら罪を犯してない! とかいうトンチキ裁判のことだ。魔女狩りみたいなものである。でも、太古の昔、これが当たり前だったのだ。
どうでもいいけど盟神探湯の斬魄刀感異常だよね。多分水流系の斬魄刀だ。
話が逸れた。まぁ、ぶっちゃけ本当の呪術というものはそんなキャッチーなものじゃない。丑の刻参りもコックリさんも、それこそ太占や盟神探湯も、呪術としては使えるんだけどね。これは本質的ではない。
呪術というのはまさしく“呪い”だ。
しかし、それは時として人を殺すために用いられるものではなくなる。
それは身を守るための術なのだ。
例えば、妖怪という存在がいる。
化け物、鬼、怪物、呼び名の数こそ山ほどあれど、しかし、それらは全て日本においては呪霊という一つの区分で存在しているのだ。妖怪として著名な
これを祓うのが呪術、そして、呪術を扱うのが呪術師。
そんな彼らが活躍する大人気ヒットアニメといえば!
デケデケデケデケ……デンッ!
そう! 呪術廻戦である!
魅力的なキャラクターの数々! そして、魅力的なカップリングの数々! 現代のアニメブームにおいて一世を風靡したかの作品は、作品の終了後も根強いファンが存在する、そんな作品だ。
ウチの前世も、呪術廻戦を愛してやまない一腐女子であった。でもでも、ただの腐女子というわけでもなくて、腐もいけたというか……別に百合もノマカプもいける雑食ではあったので、実質的にただのキモオタだったわけだけど。それは小さな問題であろう。無理なのはナマモノだけだ。ナマモノって嫌じゃない? ウチだけ?
つまるところ、ウチは愛している作品に転生したということになる。この世で一番好きな作品(オタクには一番好きな作品が五十作品以上あるのが当たり前なので野暮なことをいっちゃあいけないよ)に転生したからには、やることがあると思うのだ。
そう! とても簡単で、単純なこと!
お前らのカップリングを見せろ! オラ! 早く見せろ!
てなわけで、これはウチが呪術廻戦のキャラクターたちのカップリングを成立させるために四苦八苦する、そんな物語である。
× × ×
時は2005年、4月。場所は都立呪術高専。
ウチは今、同級生の庵歌姫の膝の上に頭を乗せながら携帯を弄っていた。この時代、ガラケーと呼ばれる、転生前はスマホとPCを使いこなしていたウチからすれば古代のオーパーツのようなものが現役の世代であり、スマホなんて影も形も存在していない。
ので、仕方なくこれを使っているのだ。ちなみにフルネームはガラパゴス携帯である。略してガラケー。ポケモンみたいな言い方しちゃった。最近ハマってるんだよね、ポケモン。
フフフ、文明の利器に強い私からすればこの程度の旧世代のものもちょちょいのちょいで操ることができるのだ。いや、スマホ中毒のウチからすればネットがない世界なんて考えられないってだけだけど。最近は携帯小説読んでます。まぁ、悪くないって感じかな? よくはないけど。
メールボックスを確認しながらチュッパチャップス(最近のお気に入りはストロベリークリーム味)を転がす。そろそろ情報が回ってくると思っていたのだが、丁度いいタイミングで『you got a mail』と携帯から着信音が鳴った。これ、古のアニメでしか聞いたことなかったんだけどまさか実在するとは……『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』のアニメ一期とかで聞いたことあるね。懐かしさがぐいぐい来ます。
携帯をぽちぽち押していくとちゃんと望んでいた情報が届いている。心の中でしめしめと思いながらウチは口の端にチュッパチャップスの棒を転がして、口を開いた。
「んぁ、歌姫ちゃん歌姫ちゃん。今年の一年生すごいらしいよ」
「……アンタ、一時間近く無言で膝枕して貰っといて、急になんなわけ?」
「歌姫氏〜、話を聞いて欲しいですぞ〜」
「アンタこそ人の話聞きなさいよ」
携帯の画面から視線を上げると歌姫ちゃんと目が合った。あらやだ怖い顔。襲われる……? 優しくして……。
まぁ、ウチはカプ厨なので、夢は地雷なんですけどね。固定夢主とかは割と好きだけど、ウチが対象になるのは解釈違いだ。壁になりたい。というか生きてるウチとのカプとか実質ナマモノじゃん。殺すぞ?
「同級生二人だけのウチらの仲じゃん。許してよ」
「可愛い顔したら許されると思うな、この外見詐欺人間め」
「サギサギの実を食べたってこと? 強いかな?」
「全身詐欺人間じゃなくて、外見詐欺人間だって言ってんのよこのバカ」
頭をポカッと殴られる。いた〜い、なんて悲鳴をあげてみるが、助けに来る人はおらず……いや、まぁ、いるわけがないんだけど。今、外はそれどころじゃない騒ぎだし。ほら、チラッと窓の方見ると木が飛んでるよ。面白いね()
「で? 今年の入学生がすごいってなにがよ」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました」
腹筋に力を入れて体を起こす。傷がない歌姫ちゃんの顔を見つめてから指を一本ずつ出していった。
「一人目がまず五条家の御曹司! ウン百年ぶりの無下限と六眼の抱き合わせ! 五条家が庇護下から一番出したくない次期当主一直線のサラブレッド!」
「あぁ、五条家の……京都校じゃなくてこっちに来たんだ。なんでなんだろ。武者修行?」
「さぁ? 理由まではわかんないかな〜」
原作でもそこら辺触れられてなかったはずなんだよね。まぁでも、一応なんとなく私なりに考えはあるけど。
五条先生のことだ、なんだかんだと理由をつけて飛び出してきたに違いない。計画的家出のようなものだろう。京都だと御三家然り介入多そうだもんね、東京の方が羽を伸ばせると踏んだのだと考えるのが一番あり得そうな考えだ。同じような理由で真希ちゃんが東京校に来てたしね。
「で、二人目が一般家庭出身の
「へぇ、呪霊操術ねぇ……そんな珍しい術式が一般から出るとか最近は珍しいことがよく起こるわね、
「はーい、次行きますね〜」
歌姫ちゃんが何やら意味深な視線を投げつけてきたのでこちら側は気づいてませんよ〜という態度をとりつつ視線を携帯の画面に落とす。まぁ、この後の一人についても私は覚えがあるというか、好きなキャラクターなので、見なくてもわかるんだけどね。
「こっちも一般家庭の出身かな? 生得術式こそないものの、他人に反転術式をかけられるヒーラー女子。紅一点だね」
「反転アウトプット!? 超貴重じゃない!」
「ね、貴重だよね」
棒だけになったチャッパチャップスを口から取り出して指の上でくるくると回す。
ウチとしては正直、とうとう来た……! という気持ちでしかなかった。さしすだよ? さしす来たらそんなん誰でも興奮するだろ、オタクが“さしす”で興奮しないとかあり得ないから、マジで。
さしす。呪術廻戦において五条悟、家入硝子、夏油傑。の三人に与えられた称号であり、呪術廻戦の人気の一端を担っている存在であると言うように言ってもいいのかもしれない。そんな特別な存在。ウチの大好きな三人だ。
そして、軒並みクズの最悪の世代でもある。
ついでに言うと今入学して初日から大喧嘩しているのである。
「……で、そのうちの二人が今暴れてると」
「アラートうるさいね〜」
「入学初日から大喧嘩とか、最悪の世代じゃない?」
「ウチらの入学式もそんな感じじゃなかった?」
「アレは今思い出してもアンタが悪いからいいの」
それは暴論ではなかろうか。一方が悪いからもう片方が何をしてもいいというのは正義の過剰な使い方だと私は思いますが? え? つまり「徹底的な正義」ってこと? やば、歌姫ちゃん
ハァ……ハァ……取り消せよ……! 今の言葉……!
ま、まだこの世界じゃ確定してない本誌なんだけどね。知ってた? 2005年ってまだウォーターセブン編なの。フランキーが出てきてロビンちゃんが連れ去られるところね。あれってギア2が出たり六式が出たりで色々と衝撃的で良かったんだけどドラゴンボールのスカウターとか、七つの大罪の闘級みたいな役割をしてた道力ってどうなったんですか? あそこでしか出てないし……フクロウはチャパパとか言ってないで全員の道力測ってよね。
あ、前世のウチは生まれたばっかりでしたね。
「どうする? 止めに行く?」
「歌姫ちゃんって結局のところすごい真面目ちゃんだよね」
そういうところがいいところだと思うけど。と一言告げてから窓を開ける。外では呪力の奔流が流れ、なんかよくわかんない見たことない呪霊が飛び回り、木が折れ、地面は抉れ……え? まだ二人とも特級の認定ってもらってないよね? それでこれ? やばくない? 人間辞めてて笑うんだけど。いける? 大丈夫そ? ま、まぁ、原作では特級になる二人だし? 別に普通か、ええか、ほな……(よくない)
「あ〜……今二、三年って居たっけ?」
「押し付けようとしてんじゃないわよ。二、三年は補助監督志望の子しかいないの知ってるでしょ」
「え〜……これ止めるのもしかしてウチら?」
「なに私巻き込もうとしてんのよ。アンタでしょ、どう考えても」
「夜蛾先生じゃダメ?」
「ほら、あそこでこっち見てる。最早ちょっと諦めてるわよ」
何諦めてんのヤガセン。ほんと辞めてよね。最近は奥さんと別れるかもしれないみたいな話ばっかりしてきてただでさえめんどくささに拍車かかってるんだから、教員としての仕事ぐらいしてもろて……アンタも原作では特級認定受けるでしょうが。魂三点倒立みたいなやつ。あれ? 三点観測だっけ? 天体観測? 午前二時〜、踏切に〜、望遠鏡を担いでった〜ってこと? つい最近爆発的にヒットして聞き飽きたくらい聞いたからお腹いっぱいなんだけど。
「ほら、校庭の端で『こっち来て早く止めろ』みたいな目してるわよ。口パクもしてるし」
「いや、あれは『冷蔵庫のプリン食べていいぞ』の口だよ」
「それしてアンタしこたま怒られたでしょ」
「嫌なこと思い出させないで欲しい」
ヤガセンにゲンコツくらったのちに正座でしばらく過ごさせられたアレね。昭和の価値観じゃんって言いたくなったよ。ウチ、前世も今世も昭和生きたこと一秒もないけど。……ん? 今世は一応昭和生まれになるのか? 考え出すと辛くなるからやめとこうかな……。
「でもそろそろ止めないと寮も壊れそうだよね? しばらく宿無しはキツイなぁ〜」
「その場合は私とホテルにでも泊まりましょ」
「……たまに思うけど、歌姫ちゃん、ウチのことちょっと舐めてるよねぇ」
窓からグラウンドへと飛び降りる。三階くらいから飛び降りるぐらいなら術師はみんな……というか補助監督のみんなも余裕でできるフィジカルが身につくのが、この仕事の職業病です! これが本当の意味でブラック企業ってか!(激ウマギャグ)
それにしても……夏五じゃん……! いや〜! 元から思ってたんだよ? ケンカップルとして中々完成されたBL読まされてる感じというかさ、男同士の恋愛って湿度が高くていいよね! 恋人ではないけど、ウチの中では百回すれ違ったし、五百回は結婚式挙げてるから……weddingは国道沿いのchapelで決まりだッ!!
この二人のイチャイチャは末長く語り継がれ、まさに覇権になるんだ。二人が神話を作り上げるんだよ! オラッ! よく見ろ!! ここで最終回発情期起こせッ!!
「そこのお二人さーん! 元気ですか〜!」
極めて声は相手のことを知っている感じを出さないように、出来る限り推しカプに会えたってことを表に出さないように、毅然とした態度をとらなきゃ……! もし腐女子の気持ち悪い笑顔で対応なんてしちゃったら本当に初対面で嫌われることになる……! 陽キャに後ろ指さされて生きる人生はもうごめんだ……!(切実)
「もぉ〜、入学初日からヤンチャだなぁ〜。なんで喧嘩してるのか先輩に話してみな?」
「はぁ? 誰だよ、お前」
「危ないから下がってて貰えますか? 見てわからないと思いますけど喧嘩中なんです」
「……ウチ先輩よ? 何その言い方、不敬なんだけど。万死に値するぞ〜?」
世が世なら万死に値しますけど? と不満げな顔を見せてみるとケタケタと笑った五条悟が馬鹿にしたように中指を立てた。そしてそれに追従するような形で夏油傑が言葉を追加する。なんで喧嘩してるのかって聞いてるのに「見てわかんないと思うけど」とかどんだけ喧嘩売るの得意なんだよ、すげぇな。喧嘩を売るのが得意なフレンズなんだね! 推しじゃなかったら前髪引きちぎってるからな? ヘンテコな前髪しやがって。ぶっちぎってやろうか? あ〜ん?
「先輩? ハッ! 年功序列にしがみついてる奴はこれだから! 歳以外に自慢できるものねぇかよ!」
「失礼ですが貴女のことを敬いたいとは思いませんね……巻き込まれないうちに下がっていただけると嬉しいのですが……」
「う〜ん、一年生から極まったクズ」
チラリと歌姫ちゃんの方に目配せをする。すると、全てのことを察してくれた
「ブーストいる?」
「いらない。というか、
「それもそっか。じゃ、この子だけ見てるから」
「え」
「はいはーい」
歌姫ちゃんに肩を抱かれて案内されていく家入さんを横目に体を少しだけ伸ばす。
存分にくんずほぐれつしていただくための術式だ。肉体だけで絡み合ってもらうためだけの術式……それがウチの手に入れた術式なのである。
「それじゃあ一年坊ども今からウチがボッコボコにするけど、先に謝っとくね! ごめんね!」
「は? 何言ってんのお前」
「失礼ですが、どうやって私たちのことを倒すつもりですか?」
「コイツらマジで失礼だな……」
この術式の使い方で、難しいことは一つもない。マジで、馬鹿でもわかる簡単な使い方しかできないのがこの術式のすごいところだ。正直どんな馬鹿でも使いこなせると思う。それくらいには簡単な術式。そもそも、この術式には扱い方が一つしか存在しない。ピーキーな術式なのである。
つまるところ、簡単に言えば、使用することができるのはこれだけだと言うことだ。原作で言うと秤くんの術式に近いね。彼の領域『
「領域展開『
片手に結んだ手印、
そしてあえてポケモンチックに言わせてもらおう。
………………
目の前が、真っ暗になった!
初めまして、波間こうどです。初めましての方は初めまして。
これから頑張っていきます。よろしくお願いします。
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