旅行に行きたい! が、金はない。
お給料日に口座がほくほくになってもなぜか消え失せている給料日前。
諸行無常の響きあり。
時間は少し進んで羽田空港。時刻は朝イチ、つまりは5時前である。
そんなまだ陽すらも顔を出していない中で、ムスッとした顔をした歌姫ちゃんたちと合流した。なんでそんな顔してるの? 灰原くんと硝子ちゃんは嬉しそうだけど……ナナミン眉間の皺えぐいね(笑)
「アンタね、急に呼び出したかと思えば朝一の便で沖縄とかどういう神経してるのよ」
「いやいや、逆に呼んだこと感謝して欲しいくらいだよ? 経費で沖縄行けて、さらには査定にもちょっと色がつくんだからさ。そろそろ歌姫ちゃんも一級なりたくない?」
「そりゃなれるなら成りたいけど……」
「ま、歌姫みたいな弱っちぃのも俺らの先輩なら一級くらいにはなってて欲しいよな」
「悟、弱いものいじめはダメだよ」
「うるせぇよ!」
「七海! 僕飛行機初めて!」
「そうですか、よかったですね」
「うん! これって落ちたりしないんだよね?」
「不吉なこと言うでないわ……」
「あれ、理子ちゃんビビってる?」
「ビビッとらんが!?」
ウチは朝イチに空港へと赴くと速攻でチケットを確保、原作よりも大人数のチケットを確保して飛行機に乗り込んだ。飛行機の中と外を五条先生にちゃんと精査してもらい、入ってきた人間も全員ちゃんと確認すれば、呪詛師がこの飛行機に関わっていないことがわかる。
やっぱり六眼って無法じゃない? ってすごく思うんだよね。
みんなで揃って飛行機に乗り込む。これ交通費出ないと自費……つまりは30万以上の出費になるので、腐れみかんの皆さんにはきちんと交通費を出していただきたい所存。
「それじゃあみんなさっさと座って〜、お菓子はコンビニで買ったからたくさんあるでしょ、のんびり沖縄までの空の旅を楽しもう〜」
「……歌姫先輩〜、今から任務行くんですよね?」
「そうよ」
「なんでこんな遠足みたいなノリなんですか?」
「詩刀子と任務行く時は大体こんな感じよ、諦めなさい」
そうだよ。みんなのカップリング見るためなんだから仕方なかろうなのだ。
ちなみに席は飛行機の大体真ん中の列をウチらが占領している。平日の朝一から沖縄に飛ぶ人は少なくて、お客さんもまばらにはいるがそこまで多くない。ウチらが多分七割くらい占めてるんじゃなかろうか。
席順は五条先生、夏油くんが一列目、そこに続くようにウチと歌姫ちゃん。その後ろに硝子ちゃんと理子ちゃんで、その背後にナナミンと灰原くんだ。遠足みたいでテンション上がるね?
「沖縄行ったら何しよっか〜、やっぱりあれ? 美ら海か? ちゅらちゅらしちゃうか?」
「先輩、今から呪詛師と全面戦争するんだよな?」
「え? うん。そんなの君たちいればなんとかなるじゃん。ウチがするまでもなくない?」
「アンタが一番適任でしょうが」
「え〜、やだやだ! ウチはもっとだらだらしてたい! 折角のバカンスだよ!? ね、理子ちゃん! 海行こうよ!」
「海……!」
「黒井さんも連れてさ、海辺で遊びたくない? 最高に映えるよ。黒井さんも理子ちゃんも美人さんだからね」
もちろんウチが可愛いみんなを見るために決まってるんだよなぁ。ウチの全力で君たちのカップリングを見るために全力だぞ。本当だよ?
「バカンスしようよ。沖縄には
「脊髄で話さないでくれない?」
歌姫ちゃんに怒られちゃいました。いやでもさ、実際日本にだけ呪霊がいるって現状は相当におかしいものじゃないとダメじゃない? ウチの考えとしては普通に変なんだけど。アメリカとか絶対怨恨すごいし、古代エジプトから続く特級呪霊とかいるはずじゃない? これ研究のしがいがある……! いや、師匠が調べてるんだけどね。
「まず呪詛師ボコって黒井さん取り返すでしょ? バカンスして〜、帰る! これで任務達成だ! ガハハ! 勝ったな、風呂入ってくる」
「風呂どこだよ」
「先輩! もう飛ぶからシートベルトした方がいいですよ! アナウンス鳴ってました!」
「この男後輩にはちゃめちゃに舐められておるな……」
失礼な、親しみやすい先輩だって言ってよ。
「飛行機ってなんでこんなにテンション上がるんだろうねぇ〜」
「知らないわよ。……テンション上がるとか言ってる割に手握ってきてるのは何? 怖いの?」
「ち、ち、ち、ち、ちがわい!」
そもそも人間には空を飛ぶって機能がついてないのにわざわざ空を飛んで移動しようとか考える方が頭おかしいと思うんだよね。ウチがおかしいの? コレ。
「なんだよ先輩ビビってんのかよだっせ〜!」
「大丈夫ですよ。飛行機が堕ちても呪霊が拾ってくれますから」
「君たちここぞとばかりに……! 違うし! 全然違うし! 理子ちゃんだってビビってるし!」
「び、び、びびっておらぬが!?」
理子ちゃんの手を握ってる硝子ちゃんから「巻き込んじゃ可哀想ですよー」と声が飛ぶ。いや、むしろ巻き込まないと可哀想でしょ、それがカップリングを見る上でのお約束。ウチは壁であり、柱であり、障子に目ありってなわけである。ウチを通して上手く繋がってくれな。
「ま、沖縄着いたら爆速で全部終わらせてバカンス堪能しようよ。折角なんだからさ」
「そんなすぐに終わるわけないでしょ」
離陸する飛行機は沖縄を目指して飛び出す。
楽しい方へ、南へ。
「いや、それは終わるよ」
「だって私たちは最強ですから」
× × ×
季節は夏。
夏だ! 海だ! ポケモンだー! 夏はポケモン! ちなみに今年の映画は『ミュウと波動の勇者ルカリオ』でしたね。やっぱりね。うん。ポケモンは可愛くて熱くなれて楽しい。夏油くん、その術式ポケモンみたいじゃないか? ポケモンマスター目指してみない?
当たり前のように呪詛師を蹂躙した(誤字にあらず)ウチたちはのんきに海にまで来ていた。どうでもいいことを考えてられるくらいには余裕で、ウチが何の手を出さなくても余裕で黒井さんのことを救出したので、原作通りの展開になったのだろう。面白くもなんともなかったので割愛。あ、理子ちゃんと黒井さんの感動の再会シーンは涙なしに見れませんでした。ほろり。
それでは皆さん。目の前に沖縄の海、空には照りつけるような陽射し! とくれば叫ぶことはもちろん一つですよね?
さんはいッ!
「「「めんそーれ!」」」
五条先生と理子ちゃんと声をあげて砂浜を駆け抜ける。上に羽織ったビーチジャケットを脱ぎ捨てて海へと飛び込んだ。ざぶーん! と水音がして泡が身体中を纏う感覚、身体中を炭酸に晒されているような刺激と、さっきまで熱された体が深く沈むほどに冷やされていく体感はまさしく……快・感ッ!!
「プッハァ……! おーい! みんなも早くおいでよ!」
「……自分よりもテンション上がってるやついると落ち着くな」
「そうじゃな。妾も割とテンション高かったと思うのじゃが……」
「えー? 先輩を海辺で一人にするなよ〜」
ザブザブと足で波を掻き分けて浜辺へと戻っていく。あ、ビーチジャケットは歌姫ちゃんが拾ってくれてるみたいでした。ありがとね。
「……妾もう脱ぎたくないんじゃが」
「おいおい、お前はまだマシだろ、同性じゃねぇんだから。俺とかもうファスナー上げたから。これもう下ろさないから」
「?」
髪の毛を絞って海水を絞り出しながら首を傾げた。なんなんだ。見られて恥ずかしい体はしてないつもりなんだけどな。
……あ! もしかしてウチの体に負けてるのが嫌過ぎて上脱ぎたくないとか? 可愛いところあるじゃんかガキンチョども。
「フフン、恥ずかしい体してないからいくらでも見ていいよ。撮るのは事務所NGね」
「事務所どこよ」
知らんけど。
ウチは腰に手を当ててモデルポーズを取ると足を肩幅よりも少し広めに広げて、ベーと舌を出して見せた。ちょっとしたサービスである。
ちなみにウチの水着としてはパンツタイプの男物……にしようかと思ったんだけど、流石に前世の乙女を捨てきれなくてジェンダーレスの胸元も隠せるものにしました。スポーツタイプのものにして、前世でコスプレをするために身につけた裁縫スキルで可愛くフリルをつけて見せた。いいっしょ、これ。
「……腹筋バキバキ過ぎない? 俺も鍛えてるけどちょっと……」
「負けをまざまざと見せつけられてるみたいで心苦しいね」
「なんで胸隠しとるんじゃ、ちょっと……」
「理子様に卑猥なものを見せないでください!!」
「ウチそのものが卑猥ってこと?」
何そのエロの権化みたいな扱い。不服なんだけど……。
あ、腹筋はたくさん褒めて欲しいな。ウチこの腹筋を維持するために結構頑張ってるんだから。機能美と肉体美を調和させた最高の腹筋だよ。刮目するといいよ。
「アンタ、当たり前のように脱がないでよ。理子ちゃんには刺激が強いわ」
「え? うん……? ……? ウチが悪いの?」
「当たり前でしょ馬鹿」
「当たり前なんだ……」
ウチが知らない理論が展開されているのだろうか……まぁ、なんだって構わないんだけど……。うん……。なんかごめん……?
「あ、五条くん、理子ちゃん、ナマコいるよ! ナマコ!!」
「ナマコ!?」
「妾にも見せるのじゃ!!」
「ウハハハハハハハ!! 中身出てる!!」
「キモ!! キモなのじゃー!!」
「あ、あげる」
「うわっ、何投げてんだ先輩!!」
「あははは!!」
五条くんの天内ちゃんをイチャイチャさせながら海から上がる。黒井さんと夏油くんが並んでその姿を眺めているけどその目には憐憫と、どこか安堵が混じっていた。それは天内ちゃんが笑っていることへの安堵なのか、それとも、笑えていることへの哀れみなのか。
「……あの、いいんでしょうか観光なんて」
「沖縄来て観光しないなんて馬鹿のすることでしょ。理子ちゃんも楽しそうだからいいんじゃないですか? 黒井さんとも最後の思い出作りたいでしょうし」
「それは……」
「アンタね……まぁ、もういいんだけど。私と硝子はなんで呼ばれたわけ? 結局アンタら……というか夏油と五条でなんとかなったじゃない」
「怪我もしなかったですしね」
ウチに向かって歌姫ちゃんと硝子ちゃんが訪ねてくるけどごめん、それに関してはマジでウチが沖縄に呼びたかっただけ。ここからまだまだ時間かけて遊ぶし、その間居てくれたら嬉しいなって話だよ。
「それ結果論でしょ? 呪詛師集団なんてのがたくさんいて、ウチらの誰も反転使えないんだから硝子ちゃんはマストでしょ。むしろ呼ばない方がどうかしてない? 沖縄だよ?」
「それはまぁ……」
この任務失敗したら日本が大変なことになるのわかっているのだろうか。マジで。
「じゃあ私は?」
「歌姫ちゃんは普通にバカンス」
「私も! 必要だったって!! 言えよ!!」
「痛い痛い! ちょっ、髪の毛引っ張らないで!」
いやでも普通に術式的に過剰戦力になりそうじゃん……一応は一級に足る実力があるのかの考査みたいな形にしてるよ。一応ね。うん。そろそろバフ型な時点でこのメンツだと戦力としては過剰だよね。
「ま、ウチらだけだと男ばっかりでむさ苦しいでしょ。理子ちゃんが楽しむこと、それが今一番大事なんだから女の子増やさないとね」
「それはそうですね。……ですが、そろそろ時間です」
時間にしたらたったの一時間。それくらいの時間しかない。黒井さんを救出するのも大した時間がかからなかったけど、元を糺せば理子ちゃんが天元様と合体するのは満月の夜、つまりは明日だ。それまでに沖縄を発たなくてはならない。
「悟! もう時間だよ」
「もうそんな時間か」
夏油くんの声に反応して五条先生が振り返る。うわ、睫毛長いって。ここまで届くんじゃないか? ごめん、理子ちゃんのしゅんとした顔よりそっちのが気になる。なんて顔の造形してんだ。
「傑、戻るのは明日の朝にしよう」
「!」
「……だが」
「天気も安定してんだろ。それに、沖縄より東京の方が、
「もうちょっと真面目に話して」
くぅ〜!! 原作展開神だよなぁ〜! やっぱりね、無理をする五条を包容力のある大人びた夏油が包み込む!! この夏五が最高にキマるんだわ。マジで効くぜ。そのうち癌に効くようになる。
「フライト中に天内の懸賞金が解除された方がいいでしょ」
「悟……昨日から術式を解いてないだろう。他は誤魔化せても私は誤魔化せないぞ? 睡眠もだ、今晩も寝るつもりないだろ。本当に高専に戻らなくて大丈夫か?」
「問題ねぇよ。桃鉄99年やった時のがしんどかったっつーの……それに、お前もいる」
あ、ダメだ……あまりにも効く展開すぎる……やっぱりね、刺さるよねこういう致死量の、純度100%の夏五はさぁ……まぁ、ひとえにこのせいで大変なことになるんだけども。その辺りはおいおいね。
「理子ちゃーん。沖縄料理食べに行こっか。歌姫ちゃんなら沖縄の美味しいお店詳しいでしょ、なんか旅行雑誌調べてたし」
「……それは……はぁ、仕方ないわね。ここから結構近いところにソーキそばの名店があるわ」
「ならそこで! あ、車とかいるかな……? レンタカー借りてこようか?」
「うっわ先輩それ最高じゃん」
「沖縄制覇しようぜ」
「美ら海!」
「もちろん。行くに決まってるでしょ、沖縄巡り最高に楽しもうぜ!」
沖縄。原作ではサラッと流されて、たかだか一話13ページの内容だったけど、ウチはここに可能性を感じているのだ。更なるカップリングを、更なる高揚を。
だって、ここは楽しさの極致。ウチらがいるのは空港のその先。五条先生が戻りたくてしかたなかった夏の日なんだから。
だから、ここにもっと、原作では堪能し切ることができなかっただけの、原作ではまだまだ足りないと息巻いただけの物語があるはずなんだ。
「そうと決まればホテルにチェックインしないとね。どこがいいかな……やっぱあれか? いいホテル泊まって高専に請求するか?」
「先輩昨日のホテルもいいところだったのに今日も良いところ泊まったらヤガセンキレない? しかも硝子と歌姫まで連れてさ」
「平気平気! だって理子ちゃんのしたいことは遵守してあげないとなんだからさ! ね?」
過去に囚われた五条先生の眩い過去を、ウチが全て観察してみせよう!! カプ厨の名にかけて!!
物語でサラッと書かれたところを拡大し、解釈を書くのが好き好き侍。よろしくお願いします。今後ともよろしくお願いします。
たくさん評価嬉しい♡ 評価して♡ 承認欲求の化け物。それが僕。
そろそろ山場を作りたいと思いつつも詩刀子は中々勝手に動いてくれないので困ってます。毎日投稿は少なくとも懐玉・玉折編までは続けますので、応援のほどよろしくお願いします!!